【本編完結】株式会社SETA異世界派遣部~ゲーム大会で優勝したら異世界に招待された~

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勇者セイル編

第21話:ダンジョンへ行こう

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異世界アーシアの学校には冒険者や研究者になる事を想定したダンジョン実習がある。
プルミエ王立学園もそんな学校の1つで、3年生になると実習が入っていた。
生徒たちの安全確保の為、実習には冒険者たちが付き添う。
星琉たちのクラスもダンジョン実習があり、それに付き添う事になった冒険者たちは…

「よおセイル!」
「何だ、お前がいるんなら俺たちいなくてよくねぇか?」
「このダンジョンの魔物、ミノより弱ぇぞ?」
ガハハと笑う筋肉まつりムキムキマッチョ冒険者たち。
以前ミノ狩りに連れて行ってくれた人々だ。

「初めて行く場所だから慎重にしとくよ」
星琉は言う。
「まあそうだな、慣れない場所なら警戒しといて損は無い」
冒険者たちも納得。
初めて入るダンジョンは、オーソドックスな天然の洞窟タイプだった。
明かりは光魔法で出来るが、星琉がやるとまだ調整が下手で眩しすぎるのでイリアが担当した。
「闇を照らせ、聖光ホーリーライト
聖女が片手を掲げると光る球体が現れ、辺りを照らし始めた。

序盤現れたのはスライム。
以前星琉たちが狩ったベリースライムの下位になる魔物だ。
3年生たちはそのくらいは余裕で狩れるらしく、短剣を投げる者、魔法を放つ者、それぞれ得意な分野で攻撃して倒してゆく。
星琉は刀を使うほどの魔物ではないので、そこらの小石を拾って投げつけた。
核を砕かれたスライムはゼリー素材を残して消えた。
ベリースライムは赤色でイチゴ味だったが、この無色透明なゼリーは何味だろう?
「わらび餅みたいな色だなぁ」
「それ、シロウも言ってたわ」
星琉が呟くとイリアが言う。
「ベリーと違って味がそんなにしなくて『きなこ付けたら美味い』って食べてたの」
「きなこ…この国にあったりする?」
「シロウが大豆の栽培を広めたから、そこから作ったのがあるわよ」
また1つ日本人に嬉しい物が。
「瀬田さんより後の時代に来て良かった~」
後できなこ買ってこよう、と計画する星琉であった。

戦ってるイメージが沸かない聖女で王女な美少女イリアは、光魔法で弓矢を作り出し射貫くという意外な特技を見せた。
「イリアが戦ってるとこ初めて見た。カッコイイなぁ」
「やだ、そんな見ないで恥ずかしいから」
星琉が見惚れて褒めたらイリアは照れていた。

次に現れたのはゴブリン。
スライムよりは強いが学生たちが倒せないほどではないらしい。
攻撃力がそこそこある生徒は1人で1体を倒し、一撃で倒せない生徒はペアを組んで1体を同時攻撃で倒していた。
イリアの弓矢は威力が高いらしく1人で1体を倒している。
星琉はスライムと同じく小石、イリアが弓矢で射貫いている眉間が急所だろうと把握してそこを狙う。
ボッ!と音を立ててゴブリン消滅。
「………あれ?」
キョトンとする星琉。
ゴブリンが消えた後に、コロンと転がる魔石。
「うん、クリティカルだな」
「普通は消滅までしないけどな」
ガハハと冒険者たちが笑った。

お次はオーク。
先の2種より体力があるので一撃で倒せないらしく、生徒たちのほとんどは3~4人一組で1体に攻撃を加えて倒していた。
一部の生徒は1人で1体を倒せるくらいの攻撃力があり、その中にイリアもいた。
星琉はふと疑問に思い、コッソリ聞いてみる。
「その光の弓矢、空港では何で使わなかったんだ?」
「発現させる前に接近されて突き飛ばされたから…」
意外と不便なのよコレ、とイリアは苦笑した。
近接では物理の方が有利なようだ。

星琉はオークも小石を試す。
狙いはイリアや一撃で倒せる生徒が攻撃を当ててる場所だ。
このぐらいでいいかな?とテキトーに投げてみると…
ボッ!
「………あ、また?」
オーク消滅。
またもやコロンと転がる魔石。
「うん、クリティカルだな」
「普通はそんなしょっちゅう出ないけどな」
冒険者たちにまたガハハと笑われた。

いつもなら3年生の初めはオークまでにして帰る。
が、今回は星琉がいるから先へ進もうという事になった。

洞窟がホールみたいに広くなった部分の入口前まで進むと、奥から大量の小さい魔物の気配がした。
「あれは通常は範囲魔法で殲滅するんだが、今はまだそこまで使える生徒はいないだろう」
冒険者のリーダーが説明する。
星琉が気配探知で調べると、魔物たちが天井からぶら下がっているのが分る。
「姫さん、あっちに光を貰えるかい?」
「どうぞ」
冒険者に頼まれて、ポイッと光の玉を投げるイリア。
明るくなった中、舞い始めたのはコウモリ型の魔物。
「セイル、お前なら剣術で全部やれるだろ?」
「うん」
言われて、星琉はここに来てようやく刀を使う事となった。
背後で、生徒たちも先生もわくわくしながら見守っている。

「行きます」
星琉の姿がフッと消えた。
コウモリが次々に消滅、小粒の魔石が雨のように降る。
刀を振るう少年の姿は全く見えない。
瞬時に20~30匹まとめて消え去るコウモリと、バラバラ落ちる魔石だけが見えた。

「ねえ、あれ範囲魔法より速くない?」
「詠唱するより早いよね?」
生徒たちがザワついた。
ほんの2~3秒で全てのコウモリが消滅していた。

「こんなもんかな?」
なんでもない事のように納刀して言う星琉。
「…っていうか全部クリティカルじゃねーか」
「お前の攻撃どうなってんだ?」
冒険者たちのツッコミが入った。
コウモリの大群が消え去った後には、大量の魔石が地面に転がっていた。
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