【本編完結】株式会社SETA異世界派遣部~ゲーム大会で優勝したら異世界に招待された~

BIRD

文字の大きさ
23 / 169
勇者セイル編

第22話:放課後のボア狩り

しおりを挟む



プルミエ王都の冒険者ギルド。
今日の授業が全て終わり、イリアを王城まで送り届けた星琉は魔石を売りに来ていた。

冒険者ギルドが買い取りをする相手は冒険者登録をした者だけだが、星琉の場合は勇者の称号持ちでSランク以上の冒険者扱いになるそうで、冒険者と同じくギルドに魔石を売る事が出来た。
魔石は魔導具の動力になるそうで、地球での乾電池みたいに使うらしい。
瀬田の発明品もアーシアで使うものは魔石を動力とするものが多い。
今回売った魔石は下位の魔物から採れたものばかりなので単価は低いが、最後に狩ったコウモリが大量だったのでそこそこいい収入になった。
魔石の買い取りをしてくれる冒険者ギルドは星琉が持つスマホの【SETA Pay】にチャージしてくれるので、得た収入は地球でも使える。

「魔石売り終わったか?今からボア狩りに行くが一緒にどうだ?」
買い取りのチャージが済んだ頃、声をかけられた。
誘ってくれたのはAランク冒険者パーティ、星琉が日本にいる家族の為に肉になる魔物を狩りたがってるのは冒険者間で知られており、声をかけてくれた。
「ありがとう!勿論行くよ」
星琉即答。
ミノタウロスは狩った事があるがワイルドボアは初狩りだ。
(ボア肉、良質な豚肉みたいな味って渡辺さん言ってたっけ。お肉とれたらトンカツだ)
ワクワクするお肉大好き少年であった。

ワイルドボアは森の奥に棲むイノシシっぽい魔物だった。
「奴らは普段の動きは遅いが瞬発力が凄くてな、突進攻撃を食らうと大怪我するから気を付けろよ」
冒険者たちのリーダーが教えてくれた。
「OK」
星琉は頷いた。
「急所は眉間または首、やれるな?」
「うん」
星琉が答えると、冒険者たちは後ろに下がって待機した。

「行きます」
少年の姿がフッと消えた。
ボッ!
数頭のボアが一斉に消滅。
直後にポポポンッと音がして解体済の肉が次々に出た。
「あれ?」
解体スキル使ってないのに?と呟く星琉。
「うん、クリティカルだな」
「オーバーキル多過ぎて消滅かよ」
「解体サービス付きか、さすが異世界人」
「本体消滅したのに肉が残るとか意味分かんねーけど」
冒険者たちがガハハと笑う。
更に、野球ボールくらいのサイズの魔石がコロンコロンと5~6コ地面に転がった。
「あれ?魔石でた」
キョトンとする星琉。
「ドロップ運すげーな。滅多に出ないぞボア魔石」
複数転がった魔石を見て冒険者たちが目を丸くした。
魔石は100%出るワケではなく、一定の確率でドロップするらしい。
下位の魔物ほど出やすく、上位になるとなかなか出ない上に狩りの難易度も上がるので、高額取引されるという。
「前にミノ狩った時は出なかったけど、運が上がったかな?」
なんで上がったんだろう?星琉は首を傾げた。
と、ヒランッと落ちてくる1枚の葉っぱ。
もしや、と手に取ると…

『就職祝いに運UPしといたよ byアイラ』

「・・・・・・」
それでいいのか?とツッコミたい星琉。
「女神様から就職祝い貰えるとか、さすが異世界人だな」
またもガハハと笑われてしまった。

その後、ギルドに買い取ってもらった魔石はかなりの高額で、1個でコウモリの大群以上の価格がついた。
一気にSETA Pay残高が増えたが、実のところ星琉の生活にお金はほとんどかからない。
お城住み込み3食付で家賃も食費も光熱費もかからないし、衣服まで支給されている。
刀を古美術商で見つけたので予備に買おうとしたら、勇者に使ってもらえるなら光栄だとタダで手渡されてしまった。
街へ買い物に行く以外に使いどころがなく、買うのもパンや菓子くらいだ。
(実家に送金しとこう)
思い付いた星琉、SETA Payの振り込み機能を使い、実家の家計費の口座に送金した。

それからスマホの転移アプリで実家へ行き、食べ盛りのチビッコたちに街で買ってきたパンを手渡し、祖父母にも手渡し、まだ帰宅していない家族分は母に預けた。
「こんなにいいの?生活大丈夫?」
「平気平気、それ半分くらいパン屋のオジサンのサービス品だよ」
息子の財布を心配する母に星琉は笑って答えた。
パン屋はイリアと同じですっかり馴染みになっていて、試食用だと言って色々くれて、時には買った数より多いパンを貰う事もあった。
「あと、冷凍庫に豚肉みたいな肉入れとくから」
「豚肉みたいな肉ってなんなの」
「ワイルドボアっていうやつで、見た目はイノシシなんだけど味は豚肉と同じだよ」
「高かったんじゃないの?無理しなくていいのよ」
「大丈夫だよ、これ自分で狩った獲物だから」
狩りで手に入れたという肉を冷凍庫に詰め込む息子を見て、この子は一体どういう仕事してるんだろう?と疑問に思う母であった。

実家に差し入れをした後、星琉は転移アプリで王城の厨房へ行き、シェフに肉を渡した。
「シェフ、トンカツって作れる?」
「おう作れるぞ。賢者シロウ様の大好物だから国内の料理人はみんな作れるんだ」
「じゃあこの肉でみんなにトンカツよろしく!」
「まかしとけ!」
そんなワケで、その日のディナーは王族も王宮で働く人々も、トンカツ定食を美味しく頂いた。
瀬田が和食と一緒に【箸】も広めたそうで、王族も貴族も平民もみんな箸が使えるという。
「イリア、箸使い上手いね」
「小さい頃にシロウからお箸マナー教わったのよ」
お箸で品良くトンカツ定食を食すプリンセスが仕上がっているようだ。

星琉が狩ったボア肉は臭みも無く柔らかく、脂身も美味しい高品質な豚肉そのもの。
衣のパン粉は馴染みのパン屋から仕入れているそうで、外側サクッと軽い食感に仕上がっていた。
ソースは瀬田が広めたというトンカツソースの他に、味噌ダレや大根おろしダレまである。
(トンカツ最高!ボアまた狩りに行こう)
美味しいトンカツに大満足の星琉であった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

処理中です...