118 / 169
勇者エリシオ編
第7話:魔王の記憶
しおりを挟む
今から986年前、魔王は自らの意志で永い眠りに就いた。
これまで繰り返した転生の中で、初めての事だった。
「おやすみ、と言っておこう。死ぬわけではないからな」
そう言うと、透明な蓋が閉じてゆく。
身体の力が抜けてゆき、意識がゆるやかに落ち始める。
遠い記憶が蘇る。
聖王国トワが建国された頃の出来事。
魔法がまだ少なかった時代の記憶。
魔王は剣によって勇者と戦い、刺し違えてその時の生を終えた。
互いの身体を貫いた魔剣と聖剣は、使い手が力尽きると同時に消失する。
(また転生か、面倒な…)
これまでの転生の記憶を持つ魔王にとって、死はその程度のものだ。
けれど、身体が冷えて動かなくなってゆく中、聞こえた音が何故か心に響く。
それは、命ある者が刻む音。
心臓が拍動する音。
何故それが今聞こえるのか?
不思議に思った魔王は、もう目を開ける事も出来ない肉体から星辰体となって抜け出す。
俯瞰したその視界に入ったのは、目を閉じて仰向けに倒れた金髪の青年と、その上に被さるように倒れている自分の肉体だった。
(そうか、あの音は奴の心臓の音か)
青年の胸に頭を乗せているので聞こえたらしい。
青年は先ほど自分と刺し違えた勇者だ。
辛うじて心臓は動いているが、大量の出血で地面を紅く染め、意識は既に無く瀕死の状態に見える。
その上に被さっていた魔王の身体は、勇者の仲間が眷属たちを全滅させると存在エネルギー供給が断たれ、黒い粒子と化して消えた。
星辰体も薄れ始める中、魔王は勇者に駆け寄る人々を眺める。
よく似た美しい顔立ちの乙女が、白い衣服が紅く染まるのも構わず青年を抱き起す。
既に大半の血が流れ出てしまった青年の身体は完全に力を失っており、グッタリとして動かなかった。
聖騎士たちがその周囲に集まり回復魔法を使っているようだが、致命傷を癒すには至らない。
魔王の記憶はその辺りで途切れていた。
災厄の主とも呼ばれる魔王は、古代神ルシエルから神の力を与えられた者、膨大なエネルギーを消費する代わりに絶大な攻撃力を持つ。
その力で創造神アーシアが創った生命体を滅ぼし、今は失われた神ルシエルが遺した知的生命体を繁栄させる目的で生まれてくる。
初代勇者は神の子とも呼ばれ、創造神アーシアの手で作られた者、魔王を倒す為に生まれてきた。
その顔立ちは柔和な雰囲気の美しさを持ち、争いとは無縁のように見える。
けれど戦い始めると、一切の感情が消えて全力で攻撃してきた。
普通の人間とは違い、出力制限の無い攻撃は魂をもエネルギーに変える。
魔王と戦う役目を与えられた存在は、攻撃を躊躇うような事は一切しなかった。
そして魔王は斃され、勇者も力を使い切って命を終えた。
その後、1000年周期で転生する魔王は何度か勇者と戦った。
いずれも異世界から召喚された異なる魂で、神に作られた金髪の勇者とは違う。
勇者の双子、神に作られた聖女は寿命が尽きると転生して存在し続ける。
しかし、初代勇者は一向に転生してこなかった。
魔王への攻撃に魂の力も注いだ故に、転生する力を失ったのだろうか。
永い時が過ぎ、何度目かの転生を間近に卵の中で眠っていた魔王は、強烈な光の力を浴びて目覚めさせられた。
眷属が注いでくれたエネルギーの大半が消え去り、覚醒前の身体を護る卵も砕け散る。
何の力も無い、身体を動かす事も意識を保つ事も出来ない状態で生まれてきた。
いつもなら多くの眷属がいて力に満ちているが、今回はそれが全く無い。
(転生失敗だな。まあいい、倒されてまた転生するとしよう)
最初はそう考えた。
虚弱な魔王などすぐに勇者が倒すだろうと思っていた。
しかし想定外な方向へ流れが進む。
「大丈夫? 怪我はないか?」
問いかけてくる金色の髪の青年。
あろうことか、魔王は川で溺れて勇者に助けられた。
更に予想外な事に、聖女の浄化で瀕死となった魔王を、その勇者は庇っていた。
虚弱な魔王の身体は、魔力を与えてもらってどうにか生きられる状態。
底無しと言われる魔力を持つ勇者は、魔王を抱き締めて魔力を注いだ。
本来殺し合う相手が生きる力を与えてくれる事に、魔王は困惑する。
(あの音は聞こえるだろうか…?)
初めて添い寝した時、魔王はふと思う。
かつて刺し違えて斃れた時と同じく、その身体の上へ覆い被さるようにうつ伏せてみる。
…といっても子供の身体ゆえ、覆い被さるというよりは上に寝そべるような体勢だが。
子守慣れした勇者は、赤子を慈しむかのように頭や背中を撫でてくる。
温かい体温を感じ、胸に当てた耳に鼓動が聞こえた。
ずっと昔に聞いた鼓動は途切れ途切れの弱々しいものだったが、しっかりとした音が聞こえる。
(…命の音か…。こんなにも心安らぐものだとはな…)
魔王の心に、何か温かい感情が芽生えた。
「もしも転生して眷属がいっぱい出来たら、その時代の勇者と戦うの?」
「生まれ変わってもまた戦うのか?か。 あの頃ならYESと答えたであろうが、今はNOだ」
勇者の問いに、魔王はそう答えた。
フッと笑むと、は前世で刺し違えた相手の胸にまた耳を寄せる。
命ある者の証、心臓の鼓動が聞こえた。
「もう疲れたから転生はせぬ。封印されてノンビリ過ごしてやろう」
そう告げた魔王は勇者の腕に身体を預け、その温もりを心地よく感じながら眠る。
封印されたその日、魔王は自らの目覚めに【鍵】をかけた。
唇を重ねた後、勇者が呆然とする様子が面白かった。
そして、目覚めにはこれと同じ行為が必要だと告げる。
魔王を目覚めさせられるのは、【鍵】が何か知る勇者、またはそれに連なる者のみとなった。
これまで繰り返した転生の中で、初めての事だった。
「おやすみ、と言っておこう。死ぬわけではないからな」
そう言うと、透明な蓋が閉じてゆく。
身体の力が抜けてゆき、意識がゆるやかに落ち始める。
遠い記憶が蘇る。
聖王国トワが建国された頃の出来事。
魔法がまだ少なかった時代の記憶。
魔王は剣によって勇者と戦い、刺し違えてその時の生を終えた。
互いの身体を貫いた魔剣と聖剣は、使い手が力尽きると同時に消失する。
(また転生か、面倒な…)
これまでの転生の記憶を持つ魔王にとって、死はその程度のものだ。
けれど、身体が冷えて動かなくなってゆく中、聞こえた音が何故か心に響く。
それは、命ある者が刻む音。
心臓が拍動する音。
何故それが今聞こえるのか?
不思議に思った魔王は、もう目を開ける事も出来ない肉体から星辰体となって抜け出す。
俯瞰したその視界に入ったのは、目を閉じて仰向けに倒れた金髪の青年と、その上に被さるように倒れている自分の肉体だった。
(そうか、あの音は奴の心臓の音か)
青年の胸に頭を乗せているので聞こえたらしい。
青年は先ほど自分と刺し違えた勇者だ。
辛うじて心臓は動いているが、大量の出血で地面を紅く染め、意識は既に無く瀕死の状態に見える。
その上に被さっていた魔王の身体は、勇者の仲間が眷属たちを全滅させると存在エネルギー供給が断たれ、黒い粒子と化して消えた。
星辰体も薄れ始める中、魔王は勇者に駆け寄る人々を眺める。
よく似た美しい顔立ちの乙女が、白い衣服が紅く染まるのも構わず青年を抱き起す。
既に大半の血が流れ出てしまった青年の身体は完全に力を失っており、グッタリとして動かなかった。
聖騎士たちがその周囲に集まり回復魔法を使っているようだが、致命傷を癒すには至らない。
魔王の記憶はその辺りで途切れていた。
災厄の主とも呼ばれる魔王は、古代神ルシエルから神の力を与えられた者、膨大なエネルギーを消費する代わりに絶大な攻撃力を持つ。
その力で創造神アーシアが創った生命体を滅ぼし、今は失われた神ルシエルが遺した知的生命体を繁栄させる目的で生まれてくる。
初代勇者は神の子とも呼ばれ、創造神アーシアの手で作られた者、魔王を倒す為に生まれてきた。
その顔立ちは柔和な雰囲気の美しさを持ち、争いとは無縁のように見える。
けれど戦い始めると、一切の感情が消えて全力で攻撃してきた。
普通の人間とは違い、出力制限の無い攻撃は魂をもエネルギーに変える。
魔王と戦う役目を与えられた存在は、攻撃を躊躇うような事は一切しなかった。
そして魔王は斃され、勇者も力を使い切って命を終えた。
その後、1000年周期で転生する魔王は何度か勇者と戦った。
いずれも異世界から召喚された異なる魂で、神に作られた金髪の勇者とは違う。
勇者の双子、神に作られた聖女は寿命が尽きると転生して存在し続ける。
しかし、初代勇者は一向に転生してこなかった。
魔王への攻撃に魂の力も注いだ故に、転生する力を失ったのだろうか。
永い時が過ぎ、何度目かの転生を間近に卵の中で眠っていた魔王は、強烈な光の力を浴びて目覚めさせられた。
眷属が注いでくれたエネルギーの大半が消え去り、覚醒前の身体を護る卵も砕け散る。
何の力も無い、身体を動かす事も意識を保つ事も出来ない状態で生まれてきた。
いつもなら多くの眷属がいて力に満ちているが、今回はそれが全く無い。
(転生失敗だな。まあいい、倒されてまた転生するとしよう)
最初はそう考えた。
虚弱な魔王などすぐに勇者が倒すだろうと思っていた。
しかし想定外な方向へ流れが進む。
「大丈夫? 怪我はないか?」
問いかけてくる金色の髪の青年。
あろうことか、魔王は川で溺れて勇者に助けられた。
更に予想外な事に、聖女の浄化で瀕死となった魔王を、その勇者は庇っていた。
虚弱な魔王の身体は、魔力を与えてもらってどうにか生きられる状態。
底無しと言われる魔力を持つ勇者は、魔王を抱き締めて魔力を注いだ。
本来殺し合う相手が生きる力を与えてくれる事に、魔王は困惑する。
(あの音は聞こえるだろうか…?)
初めて添い寝した時、魔王はふと思う。
かつて刺し違えて斃れた時と同じく、その身体の上へ覆い被さるようにうつ伏せてみる。
…といっても子供の身体ゆえ、覆い被さるというよりは上に寝そべるような体勢だが。
子守慣れした勇者は、赤子を慈しむかのように頭や背中を撫でてくる。
温かい体温を感じ、胸に当てた耳に鼓動が聞こえた。
ずっと昔に聞いた鼓動は途切れ途切れの弱々しいものだったが、しっかりとした音が聞こえる。
(…命の音か…。こんなにも心安らぐものだとはな…)
魔王の心に、何か温かい感情が芽生えた。
「もしも転生して眷属がいっぱい出来たら、その時代の勇者と戦うの?」
「生まれ変わってもまた戦うのか?か。 あの頃ならYESと答えたであろうが、今はNOだ」
勇者の問いに、魔王はそう答えた。
フッと笑むと、は前世で刺し違えた相手の胸にまた耳を寄せる。
命ある者の証、心臓の鼓動が聞こえた。
「もう疲れたから転生はせぬ。封印されてノンビリ過ごしてやろう」
そう告げた魔王は勇者の腕に身体を預け、その温もりを心地よく感じながら眠る。
封印されたその日、魔王は自らの目覚めに【鍵】をかけた。
唇を重ねた後、勇者が呆然とする様子が面白かった。
そして、目覚めにはこれと同じ行為が必要だと告げる。
魔王を目覚めさせられるのは、【鍵】が何か知る勇者、またはそれに連なる者のみとなった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります
はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。
「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」
そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。
これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕!
毎日二話更新できるよう頑張ります!
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる