【本編完結】株式会社SETA異世界派遣部~ゲーム大会で優勝したら異世界に招待された~

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勇者エリシオ編

第46話:転生した勇者と勇者の子孫

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 聖剣を得た(というか生まれた時から持ってた)エリシオは、聖王国トワの勇者として認定され、公式に発表された。
 プルミエ王家としては先々代の国王になったファラリス以来の認定である。
 ファラリスは認定された当時はプルミエ王太子で、トワの神殿奥にある勇者の居室を使う事は無かった。
 今回認定されたエリシオはプルミエの王子だが、神殿での生活を希望した。

「僕は気楽な第三王子だから、トワ神殿の子になるよ」
 エリシオは、使い魔たちと共に勇者の居室に来ていた。
「とか言って実は部屋を増やしたいだけでしょ?」
 部屋の点検を手伝うセイラがツッコむ。
 メインの生活の場が変わるだけで、プルミエ王城のエリシオの部屋はそのまま残されている。
「プルミエは姉様がいるから、僕の出番は無さそうだし」
 笑って言うエリシオは、トワの勇者の正装、青い騎士服を纏っていた。
「あら、エリが勇者になるなら私は聖女専門になろうかと思ったのに」
 などと言うソレミアは、赤い騎士服を着て腰には祭礼用の宝剣を差しており、聖女感ゼロである。
「ソレミアはその騎士服が一番似合うと思うわ」
 トワの聖女の正装、白いローブを纏ったセイラが微笑んだ。

 聖王国の祝祭には大陸各国の聖女が集い、大通りでのパレードには勇者と共に聖女たちも参加する。
「兄様、マーニも来ましたよ!」
 5歳になったカートルの聖女が無邪気な笑顔で駆け寄って来て抱きつく。
 マーニ・ペンタイア。
 成長と共に銀の髪は長くなり、白い肌や青い瞳もそのままに、赤ん坊は可愛らしい幼女になっていた。
「来てくれてありがとう、マーニ!」
 エリシオも満面の笑みで迎えて、妹のように思っている女の子を抱き上げる。
 末っ子の彼は妹が欲しかったので、マーニに「兄様」と呼ばせていた。
 パレードのフロートは白い5枚の花弁をもつ国花イジェが飾られ、ほんのり甘い香りを漂わせる。
 トワの聖女セイラがエリシオの隣に座り、幼いマーニはエリシオの膝の上に座った。

「ところでエリ、後で練武場に来てくれる?」
「いいよ。 …って姉様まさか…」
 祝祭が終わった後、エリシオはソレミアに声をかけられた。
 指定された場所から、大体の予想がついてしまう。


 プルミエ騎士団・練武場。
「もしもご先祖様の転生者が現れたら、手合わせしてみたいと思ってたの」
 ニコニコしながらソレミアが言う。
「あ、やっぱり」
 予想通りの展開に、半目になるエリシオ。
変身チェンジ出来るでしょ?」
「多分」
 期待に満ちた笑みを向けるソレミア。
 練武場の見学席には勇者セイルの末裔たちが座り、同じ笑みを浮かべてこちらを見ている。
「ファロス様の時と同じで、セイル様とも交代出来ますよ」
 エリシオに代わって答えたのは剣の精霊ルーチェ。
 魂に残る前世の生体情報マトリクスを使い、SETAの魔道具と精霊の力で変身させられるという。

 変身用アプリ:Transform

 エリシオの右腕にあるブレスレットにダウンロードされたアプリの1つ。
 元は演劇用に開発された物で、外見を変化させる。
 肉体だけでなく、衣装まで設定出来て一緒に変化する。
 通常は身体能力に大きな変化は無いが、エリシオのように前世の再現となると大きく変化する。

 しょうがないなと溜息をついて、エリシオは左腕に右手をかざす。
 白い花を抱く青い竜が描かれた鞘に納められた日本刀カタナが、右手に現れた。
 ルーチェと名付けた聖剣を手に、魂の中にいる前世の心を呼び出す。
 表層意識が、現世から前世に切り替わった。
 生体情報マトリクスが活性化し、金髪の少年は黒髪の青年へと姿が変わる。
 変身を済ませると、エリシオ改めセイルは聖剣を左腕の中に戻した。

「まさか転生して子孫と対戦するとは思わなかったよ」
 苦笑するセイル。
「ご先祖様の再来と言われてるけど、実際に同じ強さか知りたいの」
 微笑むソレミア、その顔立ちはセイルと似ており、兄妹のように見える。

 練習用に刃を潰して殺傷力を落とした日本刀カタナを持ち、先祖と子孫の対戦が始まった。
 どちらも納刀した状態からのスタート。
 ソレミアの姿がフッと消える。
 抜刀一閃!
 しかしそこにセイルはいなかった。
「!」
 移動したセイルに気付き、ソレミアは次の一閃を放つ。
「残念」
 それを躱してセイルが言う。
 ソレミアが3撃目を放てば、セイルは無駄の無い僅かな動きでそれを避ける。

 技術面で言えば、ソレミアはセイルと並ぶものがあった。
 しかし素の身体能力に差がある。
 セイルは創造神アーシアが特別に創り上げた戦闘特化の魂を持ち、転移者・転生者特有の規格外なステータスを持つ。
 ソレミアはそのセイルから身体能力の遺伝子を受け継いではいるが、能力的に超えられない壁を感じた。

「女性だから手加減するなんて失礼な事はしないよ」
 セイルが落ち着いた口調で言った直後、ソレミアは崩れるようにその場に倒れる。
 祖先譲りの気配探知も素早さも、追い付けないレベルの斬撃。
 見学していた他の王族や騎士たちも、誰も視えなかった抜刀一閃。
 いつ抜いたか誰も視えなかった刀を鞘に納め、セイルはソレミアを抱き上げる。
 ソレミアは完全に意識を失っており、抱えられても身動き一つしなかった。
 エリシオの記憶から場所を把握し、ソレミアを部屋まで運んでベッドに寝かせた。

「気絶させただけだから、そのうち目を覚ますよ」
 セイルは練武場に戻って来ると、残っていた人々に告げた。
「圧倒されるソレミアなんて初めて見たよ」
 と言うのは長男で王太子のサモス。
「お姫様抱っこされた姉様を見るのも初めてよ」
 第二王女のセレネも言う。

 ソレミアを圧倒した祖先に驚きつつ、主に男性陣がウズウズしている様子。
「ご先祖様…」
「…是非、私も」
「手合わせを!」
 2人の王子に加えて国王まで混ざり、セイルに手合わせを求める。
(俺の子孫は脳筋ばっかりか!)
 セイルは苦笑した。
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