54 / 57
陽太~アストルの幼年期
ep47:陽太視点⑦
しおりを挟む
転生してから1年が過ぎた。
のんびりした家族や、心配性の侍女たちに見守られながら、俺はすくすく育っている。
爆走ハイハイ、つかまり立ち懸垂の期間を経て、生後7ヶ月から歩き始めた俺は、1歳になる頃には走り回れるようになっていた。
「「「アストル、誕生日おめでとう!」」」
両親と兄が、誕生日を祝ってくれた。
庭園に白い丸テーブルと椅子が置かれ、テーブルにはケーキやお菓子やお茶が並べられている。
赤ん坊の小さい手でも持ちやすいカップに入ったミルクもあった。
「ありあとごじゃましゅ」
まだ発音は舌足らずだが、俺は喋れるようになった。
父、母、兄が、とろけそうな笑顔で聞いている。
家族に愛される喜びを感じる一方で、心の深いところで小さな痛みを感じた。
何かが、足りない。
この幸せな風景に、欠けているものがある。
(美月と華蓮ちゃんがいない誕生日なんて、初めてだな……)
温かいミルクを飲む合い間に、俺はカップの中に視線を落とす。
双子で生まれた前世では、誕生日は2人揃って祝われた。
その祝いの席には、幼馴染の華蓮ちゃんもいた。
2人が今ここにいないことが、寂しくて切ない気持ちを芽生えさせる。
「アストル? どうしたの?」
隣に座るアレクサンドルが、心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
向かいの席にいる父と母も、困惑した顔でこちらを見ている。
俺は自分の頬に、ツーッと伝う涙があることに気づいた。
「んんっ、わかんにゃい」
俺は慌てて袖口で涙を拭い、笑顔を作った。
前世の事情は、誰も知らない。
説明できないから、涙の理由は分からないということにしておこう。
◇◆◇◆◇
ハイハイやつかまり立ちを卒業した頃から、俺はオモチャの木剣を振って遊び始めた。
もちろん、これも鍛錬のために。
子供がオモチャの剣を振り回すのは、珍しいことじゃない。
前世の俺も、小さい頃に傘を剣代わりに振り回して遊んでたからな。
前世との違いは、こうして遊びながらもステータスを確認しているところだろうか。
スキル欄に「剣術」が追加された。
ゲームの攻略対象キャラでは、エトワール王国の王太子レグルスが持っているスキルだ。
レグルスの初期ステータスでは「F」だったけど。
アストルのステータスでは、習得直後から1つ上の「E」になっている。
「アストル様、お小さいのに剣の扱いがお上手ですね」
「本格的に稽古を始められるときが楽しみですね」
部屋の外へ脱走されるよりはいいと思ったか、サラもディナも壁際で待機しながら笑顔で見守っていた。
誰にも邪魔されないので、俺は全力で木剣を振り回す。
やがて、体力を使い切り、その場に寝転がった。
「アストル様は、本当に体を動かすのがお好きですよね」
「アレクサンドル様が大人しい赤ちゃんでしたから、違いに驚くばかりですね」
俺をベビーベッドに寝かせて着替えさせながら、侍女たちが話している。
疲労が眠りを引き寄せ、2人の声が遠くなっていく。
普通、ここまで動き回る乳幼児はいないだろう。
しかし、この城の人々はおおらかなのか、細かいところは気にしないようだった。
のんびりした家族や、心配性の侍女たちに見守られながら、俺はすくすく育っている。
爆走ハイハイ、つかまり立ち懸垂の期間を経て、生後7ヶ月から歩き始めた俺は、1歳になる頃には走り回れるようになっていた。
「「「アストル、誕生日おめでとう!」」」
両親と兄が、誕生日を祝ってくれた。
庭園に白い丸テーブルと椅子が置かれ、テーブルにはケーキやお菓子やお茶が並べられている。
赤ん坊の小さい手でも持ちやすいカップに入ったミルクもあった。
「ありあとごじゃましゅ」
まだ発音は舌足らずだが、俺は喋れるようになった。
父、母、兄が、とろけそうな笑顔で聞いている。
家族に愛される喜びを感じる一方で、心の深いところで小さな痛みを感じた。
何かが、足りない。
この幸せな風景に、欠けているものがある。
(美月と華蓮ちゃんがいない誕生日なんて、初めてだな……)
温かいミルクを飲む合い間に、俺はカップの中に視線を落とす。
双子で生まれた前世では、誕生日は2人揃って祝われた。
その祝いの席には、幼馴染の華蓮ちゃんもいた。
2人が今ここにいないことが、寂しくて切ない気持ちを芽生えさせる。
「アストル? どうしたの?」
隣に座るアレクサンドルが、心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
向かいの席にいる父と母も、困惑した顔でこちらを見ている。
俺は自分の頬に、ツーッと伝う涙があることに気づいた。
「んんっ、わかんにゃい」
俺は慌てて袖口で涙を拭い、笑顔を作った。
前世の事情は、誰も知らない。
説明できないから、涙の理由は分からないということにしておこう。
◇◆◇◆◇
ハイハイやつかまり立ちを卒業した頃から、俺はオモチャの木剣を振って遊び始めた。
もちろん、これも鍛錬のために。
子供がオモチャの剣を振り回すのは、珍しいことじゃない。
前世の俺も、小さい頃に傘を剣代わりに振り回して遊んでたからな。
前世との違いは、こうして遊びながらもステータスを確認しているところだろうか。
スキル欄に「剣術」が追加された。
ゲームの攻略対象キャラでは、エトワール王国の王太子レグルスが持っているスキルだ。
レグルスの初期ステータスでは「F」だったけど。
アストルのステータスでは、習得直後から1つ上の「E」になっている。
「アストル様、お小さいのに剣の扱いがお上手ですね」
「本格的に稽古を始められるときが楽しみですね」
部屋の外へ脱走されるよりはいいと思ったか、サラもディナも壁際で待機しながら笑顔で見守っていた。
誰にも邪魔されないので、俺は全力で木剣を振り回す。
やがて、体力を使い切り、その場に寝転がった。
「アストル様は、本当に体を動かすのがお好きですよね」
「アレクサンドル様が大人しい赤ちゃんでしたから、違いに驚くばかりですね」
俺をベビーベッドに寝かせて着替えさせながら、侍女たちが話している。
疲労が眠りを引き寄せ、2人の声が遠くなっていく。
普通、ここまで動き回る乳幼児はいないだろう。
しかし、この城の人々はおおらかなのか、細かいところは気にしないようだった。
0
あなたにおすすめの小説
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです
志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑!
10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。
もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。
(頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。
BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。
父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した!
メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!
お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?
夕立悠理
恋愛
もうすぐ高校一年生になる朱里には、大好きな人がいる。義兄の小鳥遊優(たかなしゆう)だ。優くん、優くん、と呼んで、いつも後ろをついて回っていた。
けれど、楽しみにしていた高校に入学する日、思い出す。ここは、前世ではまっていた少女漫画の世界だと。ヒーローは、もちろん、かっこよくて、スポーツ万能な優。ヒロインは、朱里と同じく新入生だ。朱里は、二人の仲を邪魔する悪役だった。
思い出したのをきっかけに、朱里は優を好きでいるのをやめた。優くん呼びは、封印し、お兄ちゃんに。中学では一緒だった登下校も別々だ。だって、だって、愛しの「お兄ちゃん」は、ヒロイン様のものだから。
──それなのに。お兄ちゃん、ちょっと、距離近くない……?
※お兄ちゃんは、彼氏様!!……だよね? は二人がいちゃついてるだけです。
聖女は支配する!あら?どうして他の聖女の皆さんは気付かないのでしょうか?早く目を覚ましなさい!我々こそが支配者だと言う事に。
naturalsoft
恋愛
この短編は3部構成となっております。1話完結型です。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
オラクル聖王国の筆頭聖女であるシオンは疑問に思っていた。
癒やしを求めている民を後回しにして、たいした怪我や病気でもない貴族のみ癒やす仕事に。
そして、身体に負担が掛かる王国全体を覆う結界の維持に、当然だと言われて御礼すら言われない日々に。
「フフフッ、ある時気付いただけですわ♪」
ある時、白い紙にインクが滲むかの様に、黒く染まっていく聖女がそこにはいた。
悪女として処刑されたはずが、処刑前に戻っていたので処刑を回避するために頑張ります!
ゆずこしょう
恋愛
「フランチェスカ。お前を処刑する。精々あの世で悔いるが良い。」
特に何かした記憶は無いのにいつの間にか悪女としてのレッテルを貼られ処刑されたフランチェスカ・アマレッティ侯爵令嬢(18)
最後に見た光景は自分の婚約者であったはずのオルテンシア・パネットーネ王太子(23)と親友だったはずのカルミア・パンナコッタ(19)が寄り添っている姿だった。
そしてカルミアの口が動く。
「サヨナラ。かわいそうなフランチェスカ。」
オルテンシア王太子に見えないように笑った顔はまさしく悪女のようだった。
「生まれ変わるなら、自由気ままな猫になりたいわ。」
この物語は猫になりたいと願ったフランチェスカが本当に猫になって戻ってきてしまった物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる