転生トリオのシナリオ改変~ゲーム知識で断罪も滅亡も回避します~

BIRD

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陽太~アストルの幼年期

ep46:陽太視点⑥

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 俺がこの世界に転生して5ヶ月が過ぎた。
 視力未発達でぼやけていた視界は、身体の成長とともにハッキリ見えるようになっていった。
 ハイハイができるようになった俺は、今日もお城の回廊で赤ちゃん暴走族と化している。
 赤ちゃんがハイハイできるようになるのは生後8ヶ月くらいが平均らしいが、アストルは身体能力が高いおかげで5ヶ月頃にハイハイができるようになった。

「アストル様、お待ち下さい~っ!」
「お部屋にお戻り下さいませ~っ!」

 追いかけてくるのは、王妃付きの侍女2人。
 名前は確か「サラ」と「ディナ」だったかな。
 ベビーベッドから抜け出した俺を、部屋に戻そうと必死だ。

「もう、アストルったら……」

 俺と並行して飛んでいるリゼはといえば……

「……面白いから手伝ってあげる!」

 ……止めるどころか、加勢するんだ。

 リゼは俺に移動速度アップの精霊魔法をかけてくれた。
 俺のハイハイがギュンッと加速して、侍女たちを一気に引き離す。

「「えぇっ?!」」

 侍女たちが揃って驚きの声をあげる。
 俺は彼女らを遥か後方へ置き去りにして、回廊を超高速ハイハイで進む。

 俺は別に、侍女たちを困らせようとしてるわけじゃない。
 筋力を鍛えたいだけなんだ。
 生後5ヶ月の赤ん坊にできる筋トレといえば、ハイハイしかない。

「ふふっ、アストルは毎日元気ねぇ」

 赤ん坊が城内を爆走しても動じないのは、シェリル王妃。
 俺の現世の母は、少々のことでは慌てない。
 庭園で優雅にお茶を飲みながら、回廊を爆速で通り抜ける我が子を眺めていた。

「おぉアストル、元気なのはよいが外には出るなよ。石ころなどで怪我をするからな」

 同じく動じないのは、ソレイユ国王オロール。
 現世の父も、赤ちゃんが侍女を振り切る速度でハイハイしていても驚かない。
 回廊ですれ違っても笑顔で見送っていた。

 ハイハイ暴走タイムは、俺の体力が尽きたところで終了する。
 俺はその場で停止して、うつ伏せ寝でウトウトし始めた。
 回廊の途中で寝落ちても大丈夫ってことを知っているからね。

「こらこらアストル、寝るなら部屋に戻らなきゃ」

 眠りかける俺を、抱き上げて部屋まで運ぶのは、第一王子アレクサンドル。
 不思議なことに、俺がどこで寝落ちても、必ず見つけて部屋まで運んでくれるんだ。

「アレクサンドル様、ありがとうございます」

 侍女たちはゼエゼエと息を切らして部屋まで来ると、ベビーベッドで寝ている俺を見て安堵のため息をつく。
 振り回されたことを怒りもせず、膝や袖口が少し汚れたベビー服を着替えさせたり、手足や顔を拭いたりしている。


 ハイハイ筋トレを始めてしばらく経つと、「つかまり立ち」ができるようになった。
 しかし俺の場合は、何かにつかまって立つという普通の赤ん坊の行動ではない。

「「えぇぇっ?!」」

 サラとディナは、今日もあたふたしている。
 ベビーベッドの柵を掴んで「懸垂」する赤ん坊なんて、滅多にいないだろうな。
 柵を掴んでブラーンとぶら下がるくらいなら、普通の子もやると思うけど。
 俺のは筋トレ目的なので、柵を掴む両手よりも高い位置まで顎がくる。

「あああ、アストル様、お、おやめ下さいませ!」

 サラが俺を抱えて柵から引き離そうとするが、俺はギューッと柵を握り込んで離さない。
 赤ん坊の握力は案外強い。
 ベビーベットが引きずられて、位置がズレていくだけだった。

「まあアストル、力持ちね」

 母はといえば、窓辺で刺繍をしながら笑顔で眺めている。

 赤ん坊が爆走したり懸垂したりするけれど、ソレイユ城内は今日も平和だ。
 多分、誰もこの先の悲劇なんて思いつきもしないだろう。
 この幸せな年月を、のんびり過ごすわけにはいかない。
 俺の努力とそのわけを知っているのは、契約精霊のリゼだけだった。 
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