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陽太~アストルの幼年期
ep50:陽太視点⑩
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火球はもう降らなくなった。
黒い空が、青空へと変わっていく。
人々は何が起きたか分からないまま、青く澄み渡る空を見上げていた。
「……一体、どうなっているの……?」
「分からん……。だが、危機は去ったようだ」
少々のことでは動じない母も父も、今回のことはさすがに驚いたらしい。
叔父や近衛騎士たちは、まだ少し警戒しつつ空を見上げていた。
「兄上、もう大丈夫だよ」
「アストル……僕はもう疲れたよ……」
防壁の維持に全力を尽くしていた兄に声をかけたら、気が抜けてフラーッと倒れてしまった。
慌てて抱き留めてから振り返って見ると、母が同じように父に抱き留められていた。
「シェリルとアレクサンドルは休ませた方が良さそうだな」
「はい」
母をお姫様抱っこで運ぶ父の後ろに、兄をお姫様抱っこする俺が続く。
5つ年上の兄は華奢で小柄で、成長が早い5歳の俺に身長を追い越されている。
運ぶのは余裕だった。
「大きくなったな、アストル。赤ん坊の頃は、毎日アレクサンドルに抱えられていたのに」
後ろを振り返った父が、笑みを浮かべる。
映画では、アレクサンドルは大人になれずに逝った。
こんな風に抱えて運ぶシーンは無かった。
その悲劇を回避できて、本当に良かったと思う。
◇◆◇◆◇
騒ぎから1ヶ月後。
兄の誕生日前夜、俺は聖剣の台座がある塔の最上階へ向かっていた。
長い螺旋階段をひたすら歩く。
目的は、聖剣ポラリスを台座に戻すこと。
ソレイユ王族は、10歳の誕生日に勇者か否かを調べることになっている。
明日は兄10歳の誕生日で勇者チェックの日、聖剣が台座に刺さってないとまずい。
「アレクサンドルは聖者でしょ?」
「勇者じゃないのは明らかじゃない?」
『まだ勇者が現れてないから、王族はみんな儀式を受けるんだよ』
不思議がるリゼとロジェに、念話で説明しつつ歩く。
俺は自分が勇者であることを、家族にも明かしていない。
人知れず葬った魔族のことは、気まぐれで去ったのだろうということになっている。
それもあって、勇者の出現が待ち望まれていた。
「我は既に主のものなのに、わざわざ儀式を受けるのか?」
『勝手に持ち出したのがバレたら怒られるからね』
ポラリスとしては、既に台座から抜き取られた上に真名を教えた相手がいるのに、他の者の儀式を受ける意味が分からないらしい。
俺が4歳で聖剣を抜いたのは魔族の襲撃対策で、儀式は兄の後に改めて受けようと思っていた。
『じゃあ、明日までここにいて』
「主、後ろ……」
台座に飛び乗り、元の大きさに戻した聖剣を刺そうとしたとき、ポラリスが何か言いかける。
何だろうと思って振り返った俺は、サーッと青ざめた。
父と母と兄が入り口付近に立っていて、半目でこちらを見つめている。
「……アストル……?」
「えっ? あ、えっと……」
ヤバイ。どうしよう。
俺は思いっきり見られてるのも構わず、両手で刀身を掴んで台座に刺した。
ちょっと雑だが、気のせいってことにしようと思ったんだ。
「じゃ、おやすみなさ……いっ?!」
「まちなさい」
退散しようとした俺は、父に後ろ襟を掴まれてしまった。
その後?
しっかり怒られたよ。
黒い空が、青空へと変わっていく。
人々は何が起きたか分からないまま、青く澄み渡る空を見上げていた。
「……一体、どうなっているの……?」
「分からん……。だが、危機は去ったようだ」
少々のことでは動じない母も父も、今回のことはさすがに驚いたらしい。
叔父や近衛騎士たちは、まだ少し警戒しつつ空を見上げていた。
「兄上、もう大丈夫だよ」
「アストル……僕はもう疲れたよ……」
防壁の維持に全力を尽くしていた兄に声をかけたら、気が抜けてフラーッと倒れてしまった。
慌てて抱き留めてから振り返って見ると、母が同じように父に抱き留められていた。
「シェリルとアレクサンドルは休ませた方が良さそうだな」
「はい」
母をお姫様抱っこで運ぶ父の後ろに、兄をお姫様抱っこする俺が続く。
5つ年上の兄は華奢で小柄で、成長が早い5歳の俺に身長を追い越されている。
運ぶのは余裕だった。
「大きくなったな、アストル。赤ん坊の頃は、毎日アレクサンドルに抱えられていたのに」
後ろを振り返った父が、笑みを浮かべる。
映画では、アレクサンドルは大人になれずに逝った。
こんな風に抱えて運ぶシーンは無かった。
その悲劇を回避できて、本当に良かったと思う。
◇◆◇◆◇
騒ぎから1ヶ月後。
兄の誕生日前夜、俺は聖剣の台座がある塔の最上階へ向かっていた。
長い螺旋階段をひたすら歩く。
目的は、聖剣ポラリスを台座に戻すこと。
ソレイユ王族は、10歳の誕生日に勇者か否かを調べることになっている。
明日は兄10歳の誕生日で勇者チェックの日、聖剣が台座に刺さってないとまずい。
「アレクサンドルは聖者でしょ?」
「勇者じゃないのは明らかじゃない?」
『まだ勇者が現れてないから、王族はみんな儀式を受けるんだよ』
不思議がるリゼとロジェに、念話で説明しつつ歩く。
俺は自分が勇者であることを、家族にも明かしていない。
人知れず葬った魔族のことは、気まぐれで去ったのだろうということになっている。
それもあって、勇者の出現が待ち望まれていた。
「我は既に主のものなのに、わざわざ儀式を受けるのか?」
『勝手に持ち出したのがバレたら怒られるからね』
ポラリスとしては、既に台座から抜き取られた上に真名を教えた相手がいるのに、他の者の儀式を受ける意味が分からないらしい。
俺が4歳で聖剣を抜いたのは魔族の襲撃対策で、儀式は兄の後に改めて受けようと思っていた。
『じゃあ、明日までここにいて』
「主、後ろ……」
台座に飛び乗り、元の大きさに戻した聖剣を刺そうとしたとき、ポラリスが何か言いかける。
何だろうと思って振り返った俺は、サーッと青ざめた。
父と母と兄が入り口付近に立っていて、半目でこちらを見つめている。
「……アストル……?」
「えっ? あ、えっと……」
ヤバイ。どうしよう。
俺は思いっきり見られてるのも構わず、両手で刀身を掴んで台座に刺した。
ちょっと雑だが、気のせいってことにしようと思ったんだ。
「じゃ、おやすみなさ……いっ?!」
「まちなさい」
退散しようとした俺は、父に後ろ襟を掴まれてしまった。
その後?
しっかり怒られたよ。
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