転生トリオのシナリオ改変~ゲーム知識で断罪も滅亡も回避します~

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美月~ルナの冒険者養成スクール生活

ep30:美月視点⑳

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 その日、孤児院の子供たちは全員、未知の御馳走への期待に目をキラキラさせていた。
 エトワール国立孤児院は、他の孤児院に比べて食事の質は高い。
 でもそれは、現実世界での学校給食みたいなもので、栄養バランスや味が良くても豪華さは低い。

(お肉柔らかい! ハーブの使い方絶妙! このソース何使ってるんだろう?)

 他の子に負けない勢いでお肉を頬張りながら、私は食堂の子ならではの好奇心スイッチが入ってしまった。
 子供が食べやすいように、お肉はサイコロステーキになっている。
 口に入れると肉汁と共にローズマリーに似たハーブの風味がふわっと広がり、ソースの酸味が心地よく舌に残る。
 その酸味が次への食欲をそそり、みんな夢中で料理を食べつくした。

「王太子殿下から孤児院の皆へのプレゼントだよ。気に入ってもらえたら嬉しいな」

 優しい笑顔で話すのは、まだ若い料理人の男性。
 ゲームでも見たことがある人だ。
 確か、セアンヴレって呼ばれてた。
 まだ新人だけど料理のセンスが良くて、レグルスのお気に入りだった人。
 でもそのせいで先輩料理人に妬まれて、虐められていた。
 服に隠れて見えないけど、あちこち痣だらけになっている筈。

「美味しい御馳走ありがとう! これ、お礼に受け取って下さい」

 私は孤児院のバザー用に作っておいたシャンス草のミサンガを1つ、セアンヴレに渡した。
 ミサンガには、セアンヴレが殴られても怪我をしないように、不運除けの回避魔法を付与してある。

 土属性魔法:トゥッシェ・デュ・ボワ

 ゲームとはシナリオが変わっているけど、これから彼に起こるかもしれない事件に備えて。
 シナリオ通りなら、セアンヴレはレグルスの誕生日前に大怪我をして、料理ができなくなる。
 敵の攻撃を回避する魔法に護られていれば、怪我をせずに済むかもしれない。

「素敵な御守りだね。料理人は腕には装飾品を着けられないから、足首に着けておくよ」

 セアンヴレは嬉しそうに笑いながら、ミサンガを左の足首に結びつけた。
 彼がしゃがんだときに、向こう脛の辺りに青タンがあるのが見える。

(誰かに蹴られたのかな? 凄く痛そう。……きっと他にも怪我してるよね)

 私はコッソリと治癒魔法を使った。
 詠唱もエフェクトも無く使用した魔法は、誰にも気づかれずに傷を全て治していく。
 ミサンガを結び終えて立ち上がったセアンヴレだけが、痛みが消えたことに気づいて一瞬キョトンとした。

「お兄ちゃん、ありがとう!」
「凄く美味しかったよ!」
「王太子殿下に、時々ここで料理を振る舞うように言われてるから、また来るよ」

 孤児院の門前に出て見送る子供たちに笑顔で手を振って、セアンヴレはお城へ帰っていった。
 レグルスの誕生日は来週だ。
 ゲームと同じなら、その前日に事件は起こる。
 彼が無事でありますように。


 ◇◆◇◆◇


 レイカと呼ばれていた水色髪の女の子は、翌週にお菓子をドッサリ届けてくれた。
 使用人が届けに来るかと思ったら、本人も一緒だ。

(ラメゾンのチョコレート!)

 孤児院の子供たちの中で、最もテンション上がったのは私だった。
 ゲームで見た美味しそうでお洒落なスイーツを、味わえる幸せ!
 ラメゾンのチョコレートは、この世界に転生したのならいつか食べてみたいって思ってた。
 ゲームでは攻略対象のブラキウムがルナにプレゼントしていて、「口どけの良さと香りの広がりが特徴で、一口サイズに整えられた形も芸術作品みたいなチョコレート」って表示されてたのを覚えてる。

「急いで一度に食べちゃダメよ、食べたら歯を磨いてね」

 レイカは、笑顔でそう言いながら、子供たちにチョコレートが入った小箱を手渡していく。
 貴族の令嬢というよりも、子供の世話に慣れたお姉さんという感じがした。

(メッセージカードだ。もしかして全員に書いてくれたのかな?)

 レイカが帰った後。
 チョコレートを食べようと箱を開けた私は、小さな封筒が入っていることに気づいた。
 彼女の髪や瞳と同じ水色の封筒には、水連に似た花を模したパールホワイトの封蝋がついている。

(この封蝋、貴族家の家紋よね。レイカってどこの令嬢なんだろ?)

【星空の彼方】のミニゲームにあった家紋当てクイズを思い出しながら、封蝋を眺める。
 ミニゲームは陽太にお任せだった私に、思い出せる貴族家はなかった。

 でも。
 メッセージカードの文面を見たとき、分かったことがある。
 レイカは、私と同じ転生者だ。
 だって、メッセージカードはエトワール語ではなく、日本語で書かれていたから。

 メッセージカードには、こう書いてあった。

 「内密でお話ししたいことがあります。
 あなたの都合のいいときに、下記の場所にある屋敷に来て下さい。
 門番に名前を告げれば、通してくれるようにしておきます。」

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