転生トリオのシナリオ改変~ゲーム知識で断罪も滅亡も回避します~

BIRD

文字の大きさ
37 / 57
美月~聖女の力はひたすら隠す

ep31:美月視点㉑

しおりを挟む
 日本語で書かれたメッセージ。
 私を転生者だと確信しているような内容。
 彼女の顔はゲームで見かけた気がするのに、どのシーンだったのか思い出せない。

 気になることがありすぎて、私はメッセージカードに書かれた場所へ向かった。
 エトワール王国の首都ウルバンは、中心に王城があり、その周囲を貴族たちの屋敷が囲み、それを平民たちの家や商店などが囲む。
 私が暮らしている孤児院から貴族の家へ行くには、平民街と貴族街を隔てる門を通る必要があった。

「私はルナです。レイカ様のお屋敷へ行きます」
「ああ、聞いてる。迎えの馬車が来るから、そこのベンチに座って待ってな」

 ちょっと丁寧な口調で門番に声をかけると、すんなり通してくれた。
 迎えの馬車まで用意してくれるなんて、気前がいいお嬢様ね。

「ルナ様、お待たせしました。どうぞお乗り下さいませ」

 しばらくして迎えに来たのは、パステルブルーとパールホワイトでカラーリングされた、可愛いデザインの馬車だった。
 ゲームで見た記憶は無い。
 ミニゲーム「貴族の馬車当てクイズ」は陽太にお任せだったから、私には馬車のデザインを見ても、どの貴族家の物か分からなかった。

 乗り心地の良い馬車に運ばれて行った先には、馬車と同じカラーリングの屋敷があった。
 正門をくぐり、手入れされた庭園の一角で馬車から降りた私は、お迎え役の侍女に案内されて庭園を進む。
 フリージアに似た様々な色彩の花が咲いていて、フルーティーで甘い香りが漂っている。
 小さな池があって、そこには水連に似た白い花が浮かんている。
 池の近くを通り抜けると、水色の丸屋根と白い円柱で造られた西洋風の東屋が見えてきた。
 東屋には白い丸テーブルと椅子があって、テーブルには菓子が並べられている。
 2つの椅子の片方には、海色のドレスを着た水色髪の少女が座っていた。

「ルナ様をお連れしました」
「ご苦労様。二人だけで話したいから、みんな下がってちょうだい」
「畏まりました」

 お茶を淹れ終えると、侍女たちはみんな離れていく。
 東屋には、少女と私だけが残った。

「ようこそ。まだフルネームは名乗ってなかったわね。私はレイカ・エータ・ラ・アルリシャ。レイカと呼んでくれたらいいわ。敬語も使わなくていいから、楽に話して」

 椅子の1つに座っていた水色髪の少女が、微笑みを浮かべつつ名乗る。
 アルリシャというファミリーネームを聞いて、私はようやく彼女が誰か思い出した。
 ゲームでは、悪役令嬢カレンの取り巻きだった女生徒だ。
 でも、ゲームのアルリシャ嬢とは、雰囲気と髪型が全然違う。

 ゲームのアルリシャ嬢は、いつも主人公を睨む意地悪そうな少女だった。
 今ここにいるレイカは、ちょっと気の強そうな顔立ちではあるけれど、穏やかな笑みを浮かべている。
 髪型は、ゲームでは腰までのばしたストレートロングなのに、こちらでは肩に届く辺りで前下がりワンレングスカットされている。

「ここに来たということは、あなたはやはり転生者ね?」

 確認するように問われて、私は頷く。
 隠す必要はなさそう。
 そんなことを問うのなら、レイカも転生者だよね。

「聞いてもいい? どうしてエトワール国立学院に入学しなかったの?」
「推しに誘われて、冒険者養成スクールに入学したから」
「推し? 冒険者養成スクールに攻略対象なんていたかしら?」
「攻略対象じゃないよ、ゲームではチュートリアルしか出てこない子」
「えっ? ……あ、そっか、それでアランと一緒にいたのね」

 レイカは私の推しが誰かすぐに理解したみたい。
 彼女は溜息混じりに呟いた。

「……はぁ。学院に主人公も悪役令嬢もいないし、シナリオ改変され過ぎて先が読めないわ」

 悪役令嬢がいないと聞いて、私はドキッとする。
 華蓮ちゃんは学院に入らずに、どうしているの?

「知ってる? カレンは社交界に一切出てこないまま、ソレイユ王国へ行っちゃったそうよ」
「えっ? 滅亡した国に?」
「滅亡してないわ。光の防壁がソレイユ島全体を覆って、ペリルの攻撃を防いだの」
「それって、もしかして……」
「……ソレイユにも転生者がいるんでしょうね」

 更なる転生者とシナリオ改変の情報。
 この世界はもう、ゲームとは全然違う物語になってしまったのね。
 私たちのゲーム知識は、どこまで通用するんだろう?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。

BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。 父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した! メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!

お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?

夕立悠理
恋愛
もうすぐ高校一年生になる朱里には、大好きな人がいる。義兄の小鳥遊優(たかなしゆう)だ。優くん、優くん、と呼んで、いつも後ろをついて回っていた。  けれど、楽しみにしていた高校に入学する日、思い出す。ここは、前世ではまっていた少女漫画の世界だと。ヒーローは、もちろん、かっこよくて、スポーツ万能な優。ヒロインは、朱里と同じく新入生だ。朱里は、二人の仲を邪魔する悪役だった。  思い出したのをきっかけに、朱里は優を好きでいるのをやめた。優くん呼びは、封印し、お兄ちゃんに。中学では一緒だった登下校も別々だ。だって、だって、愛しの「お兄ちゃん」は、ヒロイン様のものだから。  ──それなのに。お兄ちゃん、ちょっと、距離近くない……? ※お兄ちゃんは、彼氏様!!……だよね? は二人がいちゃついてるだけです。

聖女は支配する!あら?どうして他の聖女の皆さんは気付かないのでしょうか?早く目を覚ましなさい!我々こそが支配者だと言う事に。

naturalsoft
恋愛
この短編は3部構成となっております。1話完結型です。 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★ オラクル聖王国の筆頭聖女であるシオンは疑問に思っていた。 癒やしを求めている民を後回しにして、たいした怪我や病気でもない貴族のみ癒やす仕事に。 そして、身体に負担が掛かる王国全体を覆う結界の維持に、当然だと言われて御礼すら言われない日々に。 「フフフッ、ある時気付いただけですわ♪」 ある時、白い紙にインクが滲むかの様に、黒く染まっていく聖女がそこにはいた。

酒の席での戯言ですのよ。

ぽんぽこ狸
恋愛
 成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。  何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。  そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。

処理中です...