44 / 57
美月~聖女の力はひたすら隠す
ep38:美月視点㉘
しおりを挟む
副料理長ヴァッシュが樽の中に落ちるまでの経緯は、納品作業に忙しかった現場の人々は誰も見ていない。
ただ、検品のためワイン樽の近くにいたセアンヴレは、こんなことを言っていた。
「ワイン樽の検品中に魚が納品されたので、担当者を呼ぼうとして離れたんだけど、その直後にハンマーが落ちてきたんだ。あのまま樽の近くにいたら、頭にハンマーが当たっていたかもしれない」
「えぇっ?!」
「あんなの当たったら大怪我するぞ」
「危ないなぁって思いながら、ハンマーの持ち主を探してたら、副料理長が樽の中に落ちてきたんだ」
話を聞きながら、セアンヴレと親しい平民料理人たちが驚き青ざめている。
一緒に話を聞いていた私は、何が起きたのかなんとなく分かった。
ワインの納品作業をしていた場所は、料理人たちの寮の隣にある広場。
副料理長はセアンヴレに当てるつもりで、二階の窓からハンマーを投げ落としたのね。
でも、私がかけた付与魔法が発動して、セアンヴレは難を逃れただけでなく、彼に危害を加えようとした副料理長に災難が降りかかったんだと思う。
頭から落ちてきたってことは、窓の近くで転倒して外へ放り出されたのかしら?
私がセアンヴレのミサンガに追加付与したル・カルマという光魔法は、戦闘時はダメージ反射、日常生活では危害を加えようとする者に災難という形で反撃する効果を持っている。
つまり、事故を装ってセアンヴレに怪我をさせるつもりが、自分が事故ってしまったってことね。
◇◆◇◆◇
「それで? ヴァッシュは何故ワイン樽の中に落ちたりしたんだ?」
料理長に問われて、副料理長に従っていた料理人たちは気まずそうに顔を見合わせる。
ヴァッシュというのは、副料理長の名前らしい。
ゲームには出てこないから、初めて知ったわ。
「それと、ワイン樽の近くに落ちてきたというハンマーは何だ? ヴァッシュは何かするつもりだったのか?」
料理長は落ちてきたハンマーを副料理長が落とした物と断定したらしい。
ハンマーもワイン樽の近くに落ちていたから、当然関連性を疑うよね。
「そ、それは……その、樽の点検のためだそうで……」
「点検? それはセアンヴレに任せているから、ヴァッシュがする必要はなかろう?」
「セアンヴレは平民です。ワイン樽の状態の良し悪しなんか分かりませんよ」
「平民でも食材や酒を扱う商人の子だ。お前たちよりも目利きだと私は評価しているよ」
先輩料理人の1人が苦しい言い訳をしたけれど、料理長に即ツッコミを入れられた。
樽を開けて見るわけじゃないのにハンマー何に使うのよ、って私もツッコミを入れたいわ。
料理長が先輩たちを問い詰める一方で、私はセアンヴレを手伝って夕食用のパン生地を成形していた。
「ここのところ、ヴァッシュと君たちは食中毒騒ぎや負傷などが多いようだが、収穫祭という大切な催しのために納品されたワインを台無しにするようでは、私ももう庇いきれんよ」
解雇を匂わせる言葉に、先輩たちは料理長と目を合わせないように下を向く。
彼等が、本来の目的とは違う結果に焦っていることを、料理長は知らない。
その後、業務に支障が出るという理由で、副料理長と先輩料理人たちは解雇された。
食中毒を発生させた時点で解雇していれば、ワインを無駄にしなかったのにね。
残った料理人たちの中から、料理のセンスが良く仕事が丁寧だという評価を受けて、セアンヴレが副料理長に昇格された。
ただ、検品のためワイン樽の近くにいたセアンヴレは、こんなことを言っていた。
「ワイン樽の検品中に魚が納品されたので、担当者を呼ぼうとして離れたんだけど、その直後にハンマーが落ちてきたんだ。あのまま樽の近くにいたら、頭にハンマーが当たっていたかもしれない」
「えぇっ?!」
「あんなの当たったら大怪我するぞ」
「危ないなぁって思いながら、ハンマーの持ち主を探してたら、副料理長が樽の中に落ちてきたんだ」
話を聞きながら、セアンヴレと親しい平民料理人たちが驚き青ざめている。
一緒に話を聞いていた私は、何が起きたのかなんとなく分かった。
ワインの納品作業をしていた場所は、料理人たちの寮の隣にある広場。
副料理長はセアンヴレに当てるつもりで、二階の窓からハンマーを投げ落としたのね。
でも、私がかけた付与魔法が発動して、セアンヴレは難を逃れただけでなく、彼に危害を加えようとした副料理長に災難が降りかかったんだと思う。
頭から落ちてきたってことは、窓の近くで転倒して外へ放り出されたのかしら?
私がセアンヴレのミサンガに追加付与したル・カルマという光魔法は、戦闘時はダメージ反射、日常生活では危害を加えようとする者に災難という形で反撃する効果を持っている。
つまり、事故を装ってセアンヴレに怪我をさせるつもりが、自分が事故ってしまったってことね。
◇◆◇◆◇
「それで? ヴァッシュは何故ワイン樽の中に落ちたりしたんだ?」
料理長に問われて、副料理長に従っていた料理人たちは気まずそうに顔を見合わせる。
ヴァッシュというのは、副料理長の名前らしい。
ゲームには出てこないから、初めて知ったわ。
「それと、ワイン樽の近くに落ちてきたというハンマーは何だ? ヴァッシュは何かするつもりだったのか?」
料理長は落ちてきたハンマーを副料理長が落とした物と断定したらしい。
ハンマーもワイン樽の近くに落ちていたから、当然関連性を疑うよね。
「そ、それは……その、樽の点検のためだそうで……」
「点検? それはセアンヴレに任せているから、ヴァッシュがする必要はなかろう?」
「セアンヴレは平民です。ワイン樽の状態の良し悪しなんか分かりませんよ」
「平民でも食材や酒を扱う商人の子だ。お前たちよりも目利きだと私は評価しているよ」
先輩料理人の1人が苦しい言い訳をしたけれど、料理長に即ツッコミを入れられた。
樽を開けて見るわけじゃないのにハンマー何に使うのよ、って私もツッコミを入れたいわ。
料理長が先輩たちを問い詰める一方で、私はセアンヴレを手伝って夕食用のパン生地を成形していた。
「ここのところ、ヴァッシュと君たちは食中毒騒ぎや負傷などが多いようだが、収穫祭という大切な催しのために納品されたワインを台無しにするようでは、私ももう庇いきれんよ」
解雇を匂わせる言葉に、先輩たちは料理長と目を合わせないように下を向く。
彼等が、本来の目的とは違う結果に焦っていることを、料理長は知らない。
その後、業務に支障が出るという理由で、副料理長と先輩料理人たちは解雇された。
食中毒を発生させた時点で解雇していれば、ワインを無駄にしなかったのにね。
残った料理人たちの中から、料理のセンスが良く仕事が丁寧だという評価を受けて、セアンヴレが副料理長に昇格された。
0
あなたにおすすめの小説
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです
志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑!
10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。
もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。
(頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。
BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。
父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した!
メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!
お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?
夕立悠理
恋愛
もうすぐ高校一年生になる朱里には、大好きな人がいる。義兄の小鳥遊優(たかなしゆう)だ。優くん、優くん、と呼んで、いつも後ろをついて回っていた。
けれど、楽しみにしていた高校に入学する日、思い出す。ここは、前世ではまっていた少女漫画の世界だと。ヒーローは、もちろん、かっこよくて、スポーツ万能な優。ヒロインは、朱里と同じく新入生だ。朱里は、二人の仲を邪魔する悪役だった。
思い出したのをきっかけに、朱里は優を好きでいるのをやめた。優くん呼びは、封印し、お兄ちゃんに。中学では一緒だった登下校も別々だ。だって、だって、愛しの「お兄ちゃん」は、ヒロイン様のものだから。
──それなのに。お兄ちゃん、ちょっと、距離近くない……?
※お兄ちゃんは、彼氏様!!……だよね? は二人がいちゃついてるだけです。
聖女は支配する!あら?どうして他の聖女の皆さんは気付かないのでしょうか?早く目を覚ましなさい!我々こそが支配者だと言う事に。
naturalsoft
恋愛
この短編は3部構成となっております。1話完結型です。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
オラクル聖王国の筆頭聖女であるシオンは疑問に思っていた。
癒やしを求めている民を後回しにして、たいした怪我や病気でもない貴族のみ癒やす仕事に。
そして、身体に負担が掛かる王国全体を覆う結界の維持に、当然だと言われて御礼すら言われない日々に。
「フフフッ、ある時気付いただけですわ♪」
ある時、白い紙にインクが滲むかの様に、黒く染まっていく聖女がそこにはいた。
酒の席での戯言ですのよ。
ぽんぽこ狸
恋愛
成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。
何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。
そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる