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美月~聖女の力はひたすら隠す
ep37:美月視点㉗
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王宮の料理長から依頼が入ったのは、秋の収穫祭が近付く頃のことだった。
「ルナとアランは冒険者だろう? 料理に使う香草の採集を頼めるかい?」
「はい、採集はずっとやってきたので、何がどこで手に入るか分かりますよ」
依頼内容は、かけだし冒険者でもできるお仕事。
但し、採集歴2年目の私たちなら、よりよい素材を見つけることができる。
料理長は、それを予想して私たちに指名依頼を出してくれた。
知り合いだから安心できる、という気持ちもあるのかもね。
「採ってきてほしいのは、肉料理に使うロマランだ。ルナなら品質の良し悪しも分かるだろう?」
「はい、質の良いものを選んで採ってきますね」
ロマランの採集場所は、王都から歩いて行ける海岸。
水はけが良く日当たりが良い場所を好む植物で、海岸沿いの乾燥した岩場に自生している。
「あったよルナ」
「うん、いい香り。やっぱりここが一番ね」
私たちは岩だらけの海岸を見回して、すぐに目的のものを見つけた。
爽やかでフレッシュなグリーン系の香りがする香草を摘んで、短い松葉のような葉が散らないようにそっと籠に入れていく。
籠はすぐにロマランでいっぱいになった。
「依頼達成ね」
「うん、新鮮なうちに早く届けに行こう」
採れたて新鮮な香草で山盛りになった籠を抱えて、私たちはお城に向かう。
お城の裏門近くまで来たとき、板が割れるような音と、水の中に大きな物が落ちるような音が聞こえた。
物資の搬入のため開いている裏門から城内に入ると、なんだか大騒ぎになっている。
「溺れてるぞ! 急げ!」
騒ぎの中心には、大きなワイン樽がたくさん並んでいる。
収穫祭のために納品されたものかな?
ただ、一部の樽には、ワインの保存に要らなそうなオブジェがついていた。
「足持って!」
ワイン樽の蓋に、人間が突き刺さってる。
頭から腰まで、樽の中にスッポリ入ってるよ。
お尻から足先までは、樽の外に出ている……というか、はえてるみたいに見えた。
どうしたらそうなるの?
私もアランも呆然としてしまった。
よく見れば、足が出ている樽の近くに、ハンマーが落ちている。
ワイン樽の蓋を割って開けるための道具だけど、なんで今そこに?
今日は納品だけで、開封は来週の筈なのに。
「ちょ! 暴れるな!」
顔が見えないので誰なのか分からないけど、息ができなくて苦しいのか、樽から出ている足はジタバタしていた。
騎士たちが助け出そうと足を掴むのだけど、暴れて振り払われてしまう。
そうしているうちに、足は萎れた草みたいに力を失い、樽の縁から垂れ下がった。
「急げ!」
「引っ張り出せ!」
ようやく、騎士たちが足を1本ずつ持って引きずり出すことができた。
ワインの香りが辺りに広がる。
白いコックコートを赤紫色に染めて、樽から引き出されたのは、セアンヴレ虐めのリーダーだった。
「副料理長!」
虐めグループの料理人たちが、必死で呼びかけている。
宮廷医師がすぐに駆け付けて、心肺停止状態だった副料理長はすぐに蘇生された。
この世界の蘇生術は、現実世界と少し違う。
医師は魔法医と呼ばれ、魔法を使って治療を施す。
駆け付けた魔法医は水属性と風属性を使える人で、患者の肺を満たしているワインを吐き出させるために水を操る魔法を、肺の中に空気を送り込むために風魔法を使っていた。
「〇×▲▽◆□……?」
「……え?」
意識が戻った副料理長は、ぼんやりしながら意味不明な言葉を呟く。
周囲の人々がキョトンとする。
その後、副料理長は酒に酔った人みたいに真っ赤な顔になり、大イビキをたてて眠ってしまった。
「全く、人騒がせな奴め。お前たち、そいつを医務室に寝かせておけ」
騒ぎを聞きつけて様子を見に来た料理長が、呆れたように軽くため息をついて命じる。
蘇生されたもののワインで酔っ払って泥酔してしまった副料理長は、手下の料理人たちに医務室へと運ばれていった。
「ルナとアランは冒険者だろう? 料理に使う香草の採集を頼めるかい?」
「はい、採集はずっとやってきたので、何がどこで手に入るか分かりますよ」
依頼内容は、かけだし冒険者でもできるお仕事。
但し、採集歴2年目の私たちなら、よりよい素材を見つけることができる。
料理長は、それを予想して私たちに指名依頼を出してくれた。
知り合いだから安心できる、という気持ちもあるのかもね。
「採ってきてほしいのは、肉料理に使うロマランだ。ルナなら品質の良し悪しも分かるだろう?」
「はい、質の良いものを選んで採ってきますね」
ロマランの採集場所は、王都から歩いて行ける海岸。
水はけが良く日当たりが良い場所を好む植物で、海岸沿いの乾燥した岩場に自生している。
「あったよルナ」
「うん、いい香り。やっぱりここが一番ね」
私たちは岩だらけの海岸を見回して、すぐに目的のものを見つけた。
爽やかでフレッシュなグリーン系の香りがする香草を摘んで、短い松葉のような葉が散らないようにそっと籠に入れていく。
籠はすぐにロマランでいっぱいになった。
「依頼達成ね」
「うん、新鮮なうちに早く届けに行こう」
採れたて新鮮な香草で山盛りになった籠を抱えて、私たちはお城に向かう。
お城の裏門近くまで来たとき、板が割れるような音と、水の中に大きな物が落ちるような音が聞こえた。
物資の搬入のため開いている裏門から城内に入ると、なんだか大騒ぎになっている。
「溺れてるぞ! 急げ!」
騒ぎの中心には、大きなワイン樽がたくさん並んでいる。
収穫祭のために納品されたものかな?
ただ、一部の樽には、ワインの保存に要らなそうなオブジェがついていた。
「足持って!」
ワイン樽の蓋に、人間が突き刺さってる。
頭から腰まで、樽の中にスッポリ入ってるよ。
お尻から足先までは、樽の外に出ている……というか、はえてるみたいに見えた。
どうしたらそうなるの?
私もアランも呆然としてしまった。
よく見れば、足が出ている樽の近くに、ハンマーが落ちている。
ワイン樽の蓋を割って開けるための道具だけど、なんで今そこに?
今日は納品だけで、開封は来週の筈なのに。
「ちょ! 暴れるな!」
顔が見えないので誰なのか分からないけど、息ができなくて苦しいのか、樽から出ている足はジタバタしていた。
騎士たちが助け出そうと足を掴むのだけど、暴れて振り払われてしまう。
そうしているうちに、足は萎れた草みたいに力を失い、樽の縁から垂れ下がった。
「急げ!」
「引っ張り出せ!」
ようやく、騎士たちが足を1本ずつ持って引きずり出すことができた。
ワインの香りが辺りに広がる。
白いコックコートを赤紫色に染めて、樽から引き出されたのは、セアンヴレ虐めのリーダーだった。
「副料理長!」
虐めグループの料理人たちが、必死で呼びかけている。
宮廷医師がすぐに駆け付けて、心肺停止状態だった副料理長はすぐに蘇生された。
この世界の蘇生術は、現実世界と少し違う。
医師は魔法医と呼ばれ、魔法を使って治療を施す。
駆け付けた魔法医は水属性と風属性を使える人で、患者の肺を満たしているワインを吐き出させるために水を操る魔法を、肺の中に空気を送り込むために風魔法を使っていた。
「〇×▲▽◆□……?」
「……え?」
意識が戻った副料理長は、ぼんやりしながら意味不明な言葉を呟く。
周囲の人々がキョトンとする。
その後、副料理長は酒に酔った人みたいに真っ赤な顔になり、大イビキをたてて眠ってしまった。
「全く、人騒がせな奴め。お前たち、そいつを医務室に寝かせておけ」
騒ぎを聞きつけて様子を見に来た料理長が、呆れたように軽くため息をついて命じる。
蘇生されたもののワインで酔っ払って泥酔してしまった副料理長は、手下の料理人たちに医務室へと運ばれていった。
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