転生トリオのシナリオ改変~ゲーム知識で断罪も滅亡も回避します~

BIRD

文字の大きさ
43 / 57
美月~聖女の力はひたすら隠す

ep37:美月視点㉗

しおりを挟む
 王宮の料理長から依頼が入ったのは、秋の収穫祭が近付く頃のことだった。

「ルナとアランは冒険者だろう? 料理に使う香草の採集を頼めるかい?」
「はい、採集はずっとやってきたので、何がどこで手に入るか分かりますよ」

 依頼内容は、かけだし冒険者でもできるお仕事。
 但し、採集歴2年目の私たちなら、よりよい素材を見つけることができる。
 料理長は、それを予想して私たちに指名依頼を出してくれた。
 知り合いだから安心できる、という気持ちもあるのかもね。

「採ってきてほしいのは、肉料理に使うロマランだ。ルナなら品質の良し悪しも分かるだろう?」
「はい、質の良いものを選んで採ってきますね」

 ロマランの採集場所は、王都から歩いて行ける海岸。
 水はけが良く日当たりが良い場所を好む植物で、海岸沿いの乾燥した岩場に自生している。

「あったよルナ」
「うん、いい香り。やっぱりここが一番ね」

 私たちは岩だらけの海岸を見回して、すぐに目的のものを見つけた。
 爽やかでフレッシュなグリーン系の香りがする香草を摘んで、短い松葉のような葉が散らないようにそっと籠に入れていく。
 籠はすぐにロマランでいっぱいになった。

「依頼達成ね」
「うん、新鮮なうちに早く届けに行こう」

 採れたて新鮮な香草で山盛りになった籠を抱えて、私たちはお城に向かう。
 お城の裏門近くまで来たとき、板が割れるような音と、水の中に大きな物が落ちるような音が聞こえた。
 物資の搬入のため開いている裏門から城内に入ると、なんだか大騒ぎになっている。

「溺れてるぞ! 急げ!」

 騒ぎの中心には、大きなワイン樽がたくさん並んでいる。
 収穫祭のために納品されたものかな?
 ただ、一部の樽には、ワインの保存に要らなそうなオブジェがついていた。

「足持って!」

 ワイン樽の蓋に、人間が突き刺さってる。
 頭から腰まで、樽の中にスッポリ入ってるよ。
 お尻から足先までは、樽の外に出ている……というか、はえてるみたいに見えた。

 どうしたらそうなるの?
 私もアランも呆然としてしまった。

 よく見れば、足が出ている樽の近くに、ハンマーが落ちている。
 ワイン樽の蓋を割って開けるための道具だけど、なんで今そこに?
 今日は納品だけで、開封は来週の筈なのに。

「ちょ! 暴れるな!」

 顔が見えないので誰なのか分からないけど、息ができなくて苦しいのか、樽から出ている足はジタバタしていた。
 騎士たちが助け出そうと足を掴むのだけど、暴れて振り払われてしまう。
 そうしているうちに、足は萎れた草みたいに力を失い、樽の縁から垂れ下がった。

「急げ!」
「引っ張り出せ!」

 ようやく、騎士たちが足を1本ずつ持って引きずり出すことができた。
 ワインの香りが辺りに広がる。
 白いコックコートを赤紫色に染めて、樽から引き出されたのは、セアンヴレ虐めのリーダーだった。

「副料理長!」

 虐めグループの料理人たちが、必死で呼びかけている。
 宮廷医師がすぐに駆け付けて、心肺停止状態だった副料理長はすぐに蘇生された。

 この世界の蘇生術は、現実世界と少し違う。
 医師は魔法医と呼ばれ、魔法を使って治療を施す。
 駆け付けた魔法医は水属性と風属性を使える人で、患者の肺を満たしているワインを吐き出させるために水を操る魔法を、肺の中に空気を送り込むために風魔法を使っていた。

「〇×▲▽◆□……?」
「……え?」

 意識が戻った副料理長は、ぼんやりしながら意味不明な言葉を呟く。
 周囲の人々がキョトンとする。
 その後、副料理長は酒に酔った人みたいに真っ赤な顔になり、大イビキをたてて眠ってしまった。

「全く、人騒がせな奴め。お前たち、そいつを医務室に寝かせておけ」

 騒ぎを聞きつけて様子を見に来た料理長が、呆れたように軽くため息をついて命じる。
 蘇生されたもののワインで酔っ払って泥酔してしまった副料理長は、手下の料理人たちに医務室へと運ばれていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

だってお義姉様が

砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。 ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると…… 他サイトでも掲載中。

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。

BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。 父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した! メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!

お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?

夕立悠理
恋愛
もうすぐ高校一年生になる朱里には、大好きな人がいる。義兄の小鳥遊優(たかなしゆう)だ。優くん、優くん、と呼んで、いつも後ろをついて回っていた。  けれど、楽しみにしていた高校に入学する日、思い出す。ここは、前世ではまっていた少女漫画の世界だと。ヒーローは、もちろん、かっこよくて、スポーツ万能な優。ヒロインは、朱里と同じく新入生だ。朱里は、二人の仲を邪魔する悪役だった。  思い出したのをきっかけに、朱里は優を好きでいるのをやめた。優くん呼びは、封印し、お兄ちゃんに。中学では一緒だった登下校も別々だ。だって、だって、愛しの「お兄ちゃん」は、ヒロイン様のものだから。  ──それなのに。お兄ちゃん、ちょっと、距離近くない……? ※お兄ちゃんは、彼氏様!!……だよね? は二人がいちゃついてるだけです。

聖女は支配する!あら?どうして他の聖女の皆さんは気付かないのでしょうか?早く目を覚ましなさい!我々こそが支配者だと言う事に。

naturalsoft
恋愛
この短編は3部構成となっております。1話完結型です。 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★ オラクル聖王国の筆頭聖女であるシオンは疑問に思っていた。 癒やしを求めている民を後回しにして、たいした怪我や病気でもない貴族のみ癒やす仕事に。 そして、身体に負担が掛かる王国全体を覆う結界の維持に、当然だと言われて御礼すら言われない日々に。 「フフフッ、ある時気付いただけですわ♪」 ある時、白い紙にインクが滲むかの様に、黒く染まっていく聖女がそこにはいた。

悪女として処刑されたはずが、処刑前に戻っていたので処刑を回避するために頑張ります!

ゆずこしょう
恋愛
「フランチェスカ。お前を処刑する。精々あの世で悔いるが良い。」 特に何かした記憶は無いのにいつの間にか悪女としてのレッテルを貼られ処刑されたフランチェスカ・アマレッティ侯爵令嬢(18) 最後に見た光景は自分の婚約者であったはずのオルテンシア・パネットーネ王太子(23)と親友だったはずのカルミア・パンナコッタ(19)が寄り添っている姿だった。 そしてカルミアの口が動く。 「サヨナラ。かわいそうなフランチェスカ。」 オルテンシア王太子に見えないように笑った顔はまさしく悪女のようだった。 「生まれ変わるなら、自由気ままな猫になりたいわ。」 この物語は猫になりたいと願ったフランチェスカが本当に猫になって戻ってきてしまった物語である。

処理中です...