【完結】猫の惑星〜この星の人類は滅亡しました～

第７章：二千年前の願い

第６６話：ニクいアイツ

「あ～っ！　ミノルが俺の肉食った！」

　アババの怒声が響き渡る。
　いつもの庭園バーベＱ、焼けた肉を小皿に取り分けてあげたら、アババが待つ小皿の肉をミノルがかっさらった。
　当然、アババは大激怒。

　ミノルは普段のドッシリした動き（鈍いともいう）が嘘のように、咥えた肉を素早く飲み込む。
　やり返されないように自分の小皿の肉も丸飲みだ。

「ちゃんと噛まないと消化に悪いぞ」

　せっかく美味い肉なんだから味わって食えよと思いつつ、俺はアババの皿に肉を追加してあげた。
　アババも今度は奪われてたまるかと、皿に近付くトングから肉をもぎとるように大急ぎでかぶりつき、丸飲みしている。

「あ～っ！　アババが俺の肉食った！」

　次に焼けた肉の分配で、今度はミノルの怒声が響く。
　彼の小皿に先に肉を置いて、ミノルがそれを食ってる間にアババに肉をあげようとしたら、アババは意趣返しとばかりにミノルの皿から肉を奪った。

「いっぱいあるんだから、喧嘩するなよ」

　俺は呆れながらまた肉を焼き、今度は半分ずつに切り分けて、ミノルとアババの小皿に同時に置く。
　が、２匹は自分の皿に急いで顔を突っ込むと同時に、隣の相手の頭をバシッと片手（前足）で叩くように押さえつけた。
　口に肉入ってるからウアウア言う声しか聞こえないが、多分「盗るなよ」「お前こそ」とか言い合ってるんだろう。

　っていうかなんで仲悪いのに隣に座ってるの？
　本当は仲良しなのか？

　食べ終わって片付け後。
　どうにかバーベＱを終えたんだけど、２匹が暗黒フォースを漂わせて睨み合ってるぞ。

「お前の肉は俺のもの、俺の肉も俺のもの！」
「俺の肉は俺のもの、お前の肉も俺のもの！」

　……なんか、ジャ〇アンみたいなのが２匹いるんだけど。

　所謂、似た者同士。
　一触即発、頭からシッポの先まで毛を逆立てて【やんのかポーズ】する２匹。
　他の猫たちは、巻き込まれないように離れて様子を見ている。
　睨み合う猫の間に入ってはいけない。
　そこへ踏み込むことはピンと張ったゴム紐を切るようなもので、高確率でとばっちりがくるからね。

「「勝ぶ……」」

　言いかけた２匹の上から、ドサドサッと何かが降ってきた。
　獲れたて新鮮な雉と山鳥の下敷きになった２匹、静かになったけど大丈夫？

「そんなに肉が欲しいなら、好きなだけ食らうといいわ」

　そう言って、丸ごとの肉（鳥）に埋もれた２匹の横に、軽やかに着地して現れたのは肉屋アンナ。
　今夜の食材を届けに来てくれたらしい。

「ナイスタイミングだ、アンナ」

　俺はアンナを褒め讃えながら、鳥の山を瞬間移動で解体部屋に運び、埋もれて気絶しているメタボコンビを救出した。
　元々仲が悪いアババとミノル。
　この食いしん坊たちを仲良くさせるには、どうしたらいいんだろうね？