【完結】猫の惑星〜この星の人類は滅亡しました～

第７章：二千年前の願い

第６７話：メタボコンビの失敗

　アンナが届けてくれた肉は、素晴らしく美味しかった。
　俺の食生活、二千年前はジビエ料理といえばイノシシくらいだったけど、最近いろいろな肉に恵まれている。

「今日は特にいいのが狩れたのよ、美味いでしょ？」
「山鳥って初めて食べたけど、こんなに美味いんだね！」

　炙り焼きした山鳥のモモ肉が特に美味い。
　猫たちには味付け無し、俺の分だけ塩コショーを振って焼き上げた。
　山鳥の肉は臭みが無く、鶏肉よりも旨味があるよ。
　これはいくらでも食べられる！

　山鳥ヤマドリ
　鳥綱キジ目キジ科ヤマドリ属に分類される鳥類。日本の固有種。
　体型は雉に似ているが、雄の羽色は極彩色のキジと異なり、金属光沢のある赤褐色。
　雌は雉の雌と似た羽色だけど、尾羽が雉の雌よりも短い。
　北海道と沖縄を除き、全国的に分布している。
　標高1500メートル以下の山地の森林や藪地（灌木叢林）などに生息。
　渓流の周辺にあるスギやヒノキからなる針葉樹林や、下生えがシダ植物で繁茂した環境を好む。
　肉は食用になり、とても美味である。

　山鳥は、俺が生まれ育った沖縄にはいない。
　雉はいっぱいいるけど、食べたことは無かった。
　二千年前はコウライキジという外来種の雉が沖縄島、伊是名島、宮古島、石垣島で野生化して増え過ぎ、在来種のミフウズラなど地上で採餌する鳥類との生態的競合が懸念されていたな。
　子供の頃に新聞で「特定外来種の駆除」とかいう記事を見たような。
　定期的に狩っていた人類はいなくなったけれど、猫文明で肉の需要は高くなっているから、今も引き続き狩られている。

　ところで……

「俺の肉、返せ！」
「お前さっき俺の肉とっただろ！」

　……ま～たやってる。

　美味しく香ばしく焼き上がったモモ肉の奪い合い。
　しかしメタボドジッ子コンビは、やってはならぬことをやらかした。
　争う２匹の元を離れた肉が飛び、近くの池にポチャッと落下しちゃったよ。

「「あ……」」
「なにやってんのよ！　馬鹿コンビ！」

　池に沈んだ肉を見て呆然とするミノルとアババ。
　アンナが激怒して、メタボコンビの顔に猛烈往復ネコパンチを浴びせた。

　夕飯にアンナが居合わせたのが、２匹には不幸というべきか。
　アンナが怒るのは当然だ。
　せっかく獲ってきた肉を粗末に扱われたわけだから。
　他の猫たちも同感のようで、誰もアンナを宥めに入らなかった。
（とばっちり食うのが嫌だったからともいう）

「あんたたちの肉、削ぎ落してやろうか？」
「「ヒィィッ！　ごめんなさい～！」」
「悪いと思ったなら、狩ってきな！」
「「……えっ」」
「雉でも山鳥でも自分で狩るんだよ！」
「「えぇぇっ？！」」

　ブチ切れアンナが無茶振りしている。
　食うときは素早いが普段はどんくさいメタボコンビに、狩りとか無理だろ。

「とっとと森へ行ってこい！」
「「はい～っ！」」

　アンナに追い立てられ、ミノルとアババは大慌てで瞬間移動していった。
　メタボは鳥を狩れるのか？
　片付け済んだら見に行ってみよう。