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第8章:滅びる種が託すもの
第77話:イランの幹細胞研究
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人類滅亡前のイランは、独裁政治体制が問題視される一方で、教育に力を注がれていて、人間開発指数は0.800で高い分類に入っていた。
科学技術力も、ナノテクノロジーのような材料工学や幹細胞研究で世界トップクラスだった。
そんなイランの古代遺跡には、OIST卒業生の研究資料が残されている。
保存技術も使われているのだろう、資料室はかなり状態が良かった。
「幹細胞の活性化によるアンチエイジング……肌質の改善や関節、骨、血管の若返り……研究者は女性かな?」
研究ノートを読みながら、俺は呟く。
綺麗な筆跡、主に女性が興味を示しそうな分野の研究内容から、俺はノートの主が女性だろうと予想した。
『あら嬉しい。そう思ってくれるのね』
背後から霊の気配がして、俺の脳に念話が流れ込む。
同行している遺跡調査メンバーが、一斉に【やんのかポーズ】になった。
『アニー、実家に帰ったんじゃなかったのか?』
苦笑しつつ、クリストファが問いかける。
姿を現したのは、浅黒い肌に筋肉質な体躯の男性……
……否、オネエだ。
アニーと呼ばれたOIST卒業生の霊は、軽く肩をすくめてみせた。
『帰ってみたけど内戦で瓦礫の山になってたから、こっちに居着いたのよ』
卒業後にイランの研究機関に就職したアニーは、そこで最期の時を迎えたらしい。
霊が今も残っているのは、ケイトたちの研究にも参加していたんだろう。
アニーは俺に視線を戻すと、何やら満足げに微笑む。
『コーイチ、相変わらず若いわね。二千年経っても細胞が劣化しないなんて凄い。あんたはアタシの薬の最高の適合者ね』
「そうなのかな? 他に比べられる人がいなくてよく分からないけど」
俺はコールドスリープ開始前に投与された薬の開発者がアニーだと悟った。
薬はとてもよく効いている。
最初のコールドスリープ時の肉体年齢から、少しも老けないくらいに。
クリストファたちの研究は、特殊な薬物を投与した人間を仮死状態にして低温保存するというもの。
俺は事前にしっかり説明されていたから、今の自分の身体がどうなっているのか知っている。
細胞の劣化を防ぐ薬には、不老の効果があった。
『研究ノートはコーイチにあげる。あんたに投与した薬の情報だから』
「ありがとう」
ノートを貰えることになった俺は、静かに成り行きを見守る猫たちやヤラ姫に「これくれるって」と短く説明した後、発掘品を納めるカゴの中に入れた。
猫たちやヤラ姫には霊の言葉は通じないから、時折ちょこっと説明してあげたりする。
『ついでに、あんたの守護霊になっとくわ』
「それはクリストファで間に合ってるよ?」
『クリストファを愛でておくから大丈夫よ』
『えっ、愛でられたくないけど……』
困惑する俺とクリストファに構わず、アニーは俺の守護霊になった。
科学技術力も、ナノテクノロジーのような材料工学や幹細胞研究で世界トップクラスだった。
そんなイランの古代遺跡には、OIST卒業生の研究資料が残されている。
保存技術も使われているのだろう、資料室はかなり状態が良かった。
「幹細胞の活性化によるアンチエイジング……肌質の改善や関節、骨、血管の若返り……研究者は女性かな?」
研究ノートを読みながら、俺は呟く。
綺麗な筆跡、主に女性が興味を示しそうな分野の研究内容から、俺はノートの主が女性だろうと予想した。
『あら嬉しい。そう思ってくれるのね』
背後から霊の気配がして、俺の脳に念話が流れ込む。
同行している遺跡調査メンバーが、一斉に【やんのかポーズ】になった。
『アニー、実家に帰ったんじゃなかったのか?』
苦笑しつつ、クリストファが問いかける。
姿を現したのは、浅黒い肌に筋肉質な体躯の男性……
……否、オネエだ。
アニーと呼ばれたOIST卒業生の霊は、軽く肩をすくめてみせた。
『帰ってみたけど内戦で瓦礫の山になってたから、こっちに居着いたのよ』
卒業後にイランの研究機関に就職したアニーは、そこで最期の時を迎えたらしい。
霊が今も残っているのは、ケイトたちの研究にも参加していたんだろう。
アニーは俺に視線を戻すと、何やら満足げに微笑む。
『コーイチ、相変わらず若いわね。二千年経っても細胞が劣化しないなんて凄い。あんたはアタシの薬の最高の適合者ね』
「そうなのかな? 他に比べられる人がいなくてよく分からないけど」
俺はコールドスリープ開始前に投与された薬の開発者がアニーだと悟った。
薬はとてもよく効いている。
最初のコールドスリープ時の肉体年齢から、少しも老けないくらいに。
クリストファたちの研究は、特殊な薬物を投与した人間を仮死状態にして低温保存するというもの。
俺は事前にしっかり説明されていたから、今の自分の身体がどうなっているのか知っている。
細胞の劣化を防ぐ薬には、不老の効果があった。
『研究ノートはコーイチにあげる。あんたに投与した薬の情報だから』
「ありがとう」
ノートを貰えることになった俺は、静かに成り行きを見守る猫たちやヤラ姫に「これくれるって」と短く説明した後、発掘品を納めるカゴの中に入れた。
猫たちやヤラ姫には霊の言葉は通じないから、時折ちょこっと説明してあげたりする。
『ついでに、あんたの守護霊になっとくわ』
「それはクリストファで間に合ってるよ?」
『クリストファを愛でておくから大丈夫よ』
『えっ、愛でられたくないけど……』
困惑する俺とクリストファに構わず、アニーは俺の守護霊になった。
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