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第8章:滅びる種が託すもの
第78話:研究ノートと過去の思い出
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人間の体は、約37兆個の細胞からできている。
その種類は200種以上もある。
そんな膨大な数と種類がある細胞は、元はたった1つの細胞(受精卵)だった。
卵子と精子が卵管で受精して受精卵が形成されたあと、受精卵は細胞分裂を繰り返しながら卵管を通って子宮へ移動する。
子宮に到着した受精卵は胚盤胞となり子宮内膜の表面に接着、胚盤胞液が子宮内膜に浸透し子宮内膜上皮と栄養胚胞が接着、蛋白分解酵素により子宮内膜上皮が侵食され、受精卵は内膜内へ侵入する。
これを着床といい、妊娠の成立を意味する。
着床後も受精卵は分裂を繰り返し、体を構成する臓器のもととなる「幹細胞」を生み出す。
幹細胞から更に様々な種類の細胞が生み出され、人間の体が出来上がる。
体内のさまざまな臓器がそれぞれの役割を果たすことで、人間の生命は維持されている。
臓器ごとに必要とされる細胞の種類が異なり、それを生み出すのも「幹細胞」である。
生命活動の要ともいえる幹細胞を活性化することで、老化を防ぐことができるだろう。
「人間はそんなことまで研究していたんだね」
古代文明研究所。
所長のモリオン博士は、俺が猫文明文字に訳した研究ノートの内容を読んでいる。
アニーの研究ノートは英語で書いてあり、難解な単語も多い。
しかし書いた本人が日本語に訳してくれたので、俺はそれを猫語に訳すだけで済んだ。
「タマは何年生きられるの?」
「幹細胞が活性化していられるのは、1回の投薬で10年の筈だったけど……」
モリオンから回された文書を読んだハチロウが訊いてくる。
俺はコールドスリープの被験者になる際に受けた説明を思い出しつつ答える。
『10年どころか二千年経っても活性化してるわ』
『数千年続くかもしれないね』
俺の背後霊たちがサラッとトンデモナイこと言ってるぞ。
二千年は眠ってたから気にならなかった(というか意識無かった)けど、数千年生きるってどんな?
「ボクは、タマに少しでも長く生きてほしいよ」
俺の膝の上から、白猫ミカエルが青い瞳で見上げて言う。
その言葉を聞いて、俺は子供の頃に実家で飼っていた老猫ムタを思い出した。
俺が小学生の頃、校舎内に迷い込んだ1匹の猫。
毛並みは汚れて毛玉だらけ、使用済みモップみたいになっていた。
薄汚れた首輪には、迷子札は付いてない。
長毛なので見た目ではわからなかったけど、抱き上げたらやけに軽かった。
身体はまるでミイラのように、骨が浮き出るほど痩せている。
放課後、猫を連れて家に帰り、飼いたいと言った。
「自分で世話するのよ」
「途中で棄てるのは絶対に許さないぞ」
という条件つきで、母も父も猫を飼うことを許可してくれた。
猫は末期の腎臓病だった。
母に教えられて病院に通い、何度か補液してもらった。
「ムタ、少しでも長く生きて」
あの頃、俺は何度もムタにそう話しかけていたんだ。
今のミカエルは、あの頃の俺と同じ気持ちなのかもしれない。
まあ多分、俺の方が長く生きるだろうけれどね。
その種類は200種以上もある。
そんな膨大な数と種類がある細胞は、元はたった1つの細胞(受精卵)だった。
卵子と精子が卵管で受精して受精卵が形成されたあと、受精卵は細胞分裂を繰り返しながら卵管を通って子宮へ移動する。
子宮に到着した受精卵は胚盤胞となり子宮内膜の表面に接着、胚盤胞液が子宮内膜に浸透し子宮内膜上皮と栄養胚胞が接着、蛋白分解酵素により子宮内膜上皮が侵食され、受精卵は内膜内へ侵入する。
これを着床といい、妊娠の成立を意味する。
着床後も受精卵は分裂を繰り返し、体を構成する臓器のもととなる「幹細胞」を生み出す。
幹細胞から更に様々な種類の細胞が生み出され、人間の体が出来上がる。
体内のさまざまな臓器がそれぞれの役割を果たすことで、人間の生命は維持されている。
臓器ごとに必要とされる細胞の種類が異なり、それを生み出すのも「幹細胞」である。
生命活動の要ともいえる幹細胞を活性化することで、老化を防ぐことができるだろう。
「人間はそんなことまで研究していたんだね」
古代文明研究所。
所長のモリオン博士は、俺が猫文明文字に訳した研究ノートの内容を読んでいる。
アニーの研究ノートは英語で書いてあり、難解な単語も多い。
しかし書いた本人が日本語に訳してくれたので、俺はそれを猫語に訳すだけで済んだ。
「タマは何年生きられるの?」
「幹細胞が活性化していられるのは、1回の投薬で10年の筈だったけど……」
モリオンから回された文書を読んだハチロウが訊いてくる。
俺はコールドスリープの被験者になる際に受けた説明を思い出しつつ答える。
『10年どころか二千年経っても活性化してるわ』
『数千年続くかもしれないね』
俺の背後霊たちがサラッとトンデモナイこと言ってるぞ。
二千年は眠ってたから気にならなかった(というか意識無かった)けど、数千年生きるってどんな?
「ボクは、タマに少しでも長く生きてほしいよ」
俺の膝の上から、白猫ミカエルが青い瞳で見上げて言う。
その言葉を聞いて、俺は子供の頃に実家で飼っていた老猫ムタを思い出した。
俺が小学生の頃、校舎内に迷い込んだ1匹の猫。
毛並みは汚れて毛玉だらけ、使用済みモップみたいになっていた。
薄汚れた首輪には、迷子札は付いてない。
長毛なので見た目ではわからなかったけど、抱き上げたらやけに軽かった。
身体はまるでミイラのように、骨が浮き出るほど痩せている。
放課後、猫を連れて家に帰り、飼いたいと言った。
「自分で世話するのよ」
「途中で棄てるのは絶対に許さないぞ」
という条件つきで、母も父も猫を飼うことを許可してくれた。
猫は末期の腎臓病だった。
母に教えられて病院に通い、何度か補液してもらった。
「ムタ、少しでも長く生きて」
あの頃、俺は何度もムタにそう話しかけていたんだ。
今のミカエルは、あの頃の俺と同じ気持ちなのかもしれない。
まあ多分、俺の方が長く生きるだろうけれどね。
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