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第4章:飛び級した転生者
第37話:人か魚か?
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魚釣りは全体で見れば豊漁だった。
俺とバランさんだけ見ると不漁だが。
まあ、そんなときもあるよな。
女神様の加護は魚釣りには影響しないってことは分かったよ。
「そんなにガッカリしないで。たまたま運が悪かっただけよ」
ションボリしながら釣り竿を片付けていたら、セラフィナに慰められてしまった。
頭ナデナデされているんだが、6歳児同士の微笑ましい光景に見えるが、中の人の年齢的にはどっちも二十歳くらいだからね?
子供扱いされてる感が漂うのは、女の子の方が精神年齢が高いってことでOK?
「じゃ~そろそろ帰るか~」
俺と同じく1匹も釣れなかったバランさんが、苦笑しつつアンカーを海底から引き上げた。
ヴァルトさんとバランさんが筏の左右で櫂を使い、マルカさんが筏の後方で舵取りを担当する。
穏やかな海面を、筏は滑るように進んだ。
無人島で潮干狩りを楽しんでいたみんなのところへ戻ってみると、そちらもなかなかの収穫になっていた。
特別な魔石がとれる貝は白蝶貝に似た二枚貝で、採れる魔石は真珠に似た大きさと形をしている。
「この貝は魔石も採れて肉も美味しく食べられて、貝殻も高級時計の文字盤に使えるから、捨てるところは無いんだよ」
リピエノさんは説明しながら貝を小分けして籠に入れて、砂を吐かせる為に海水が入ったバケツに漬けていく。
潮干狩りで体力を使い切ったアトラスたちと、釣りでほどよく疲れたセラフィナは、木陰でお昼寝タイム。
マルカさんとヴァルトさんは釣ってきた魚を捌き始め、ミィファさん、ミュスクルさん、シェリーさん、ミニョンさんが鱗取りを手伝う。
「アルはまだ元気そうだな。海藻でも採集してみるか?」
「うん!」
釣りで収穫が無い残念コンビのバランさんと俺は、海岸付近で海藻を集めることにした。
ここらの海藻はどれも食べられるそうで、サラダやスープに使えるらしい。
浅瀬にジャブジャブ歩いて行ったら、あちこちに海藻が見えた。
もずくみたいに黒っぽいものもあれば、アーサみたいに綺麗な緑色のものもある。
ちょっとちぎって味見してみたら、プルプルした食感で磯の香りが口いっぱいに広がり、淡白ながらも深いコクがあった。
いいなこれ。味噌汁に入れたら絶対美味いぞ。
しばらく海藻を採集しながら浅瀬を歩いていた俺は、海藻ではないものも見つけてしまった。
それは、岩の間に倒れている子供。
長い髪は鮮やかなエメラルドグリーン、肌の色が青白いのは身体が冷えているからかもしれない。
「痛い……誰か助けて……」
辛うじて聞こえる、呻き声に近い微かな声。
倒れている子は上半身だけが見えていて、顔や腕や肩に擦り傷を負い、あちこちから血が流れ出ていた。
こちらからは岩に隠れて見えないから、下半身にも怪我をしているかどうかは分からない。
「大丈夫? 今助けてあげるよ」
「?!」
俺が声をかけながら歩いていったら、その子は驚いたようにこちらを見た。
頬の擦り傷が痛々しいけど整った可愛らしい顔立ちはセラフィナと並ぶ美少女系で、瞳の色は海の青色。
知らない相手だからかな? 怯えた顔になっている。
「い……嫌……来ないで……殺さないで……」
「え?」
なんか、誤解されてる?
少女は逃げようとしているのか、弱々しくもがき始めるけど立ち上がれない様子。
「落ち着いて。君を殺したりしないから」
「人間……私の言葉……分かるの……?」
って、この子もしかして人間ではない?
近付いて岩の向こう側を見て、俺は少女の言葉の意味を察した。
「うん、分かるよ」
「私……人間じゃない……」
少女の下半身は魚みたいに鱗で覆われていて、足は無く尾鰭がある。
所謂、地球では人魚と言われる容姿だ。
人魚と同じ下半身も、あちこち岩にぶつけたような傷がある。
「人間じゃないのは分かった。でも助けるよ」
俺が言ったら、少し安心したのか少女はもがくのをやめた。
言葉が通じるって大事だね。
「治癒」
俺は人魚っぽい女の子に片手を翳して、治癒魔法を発動させた。
人間ではない者にも、治癒効果は等しく現れる。
全身の擦り傷や打撲傷が完治していく様子を、少女は驚きながら眺めていた。
「他に何か助けてほしいことがあれば、手を貸すよ」
「あの……私を運んでもらえる? 浅瀬に打ち上げられて泳げないの」
「あっちの深くなってるとこまで抱っこして行けばいいかな?」
「うん、お願い」
お願いされて、俺は人魚っぽい子を抱き上げる。
体格的にはセラフィナよりも小柄で、軽々と運べた。
「ありがとう。私の名前はメーア、あなたの名前を教えて」
「アルキオネ。友達はみんな【アル】って呼ぶよ」
「じゃあ、私もアルって呼ぶわ。これは、お友達の印ね」
人魚っぽい子はメーアという名前らしい。
海へ帰る前に、彼女は友達の印と言って俺の唇にキスをした。
この世界のキスって、友達同士でも唇にするのか?
っていうか、これもしかしてファーストキス?
呆然とする俺をその場に残して、メーアは沖へと去っていった。
俺とバランさんだけ見ると不漁だが。
まあ、そんなときもあるよな。
女神様の加護は魚釣りには影響しないってことは分かったよ。
「そんなにガッカリしないで。たまたま運が悪かっただけよ」
ションボリしながら釣り竿を片付けていたら、セラフィナに慰められてしまった。
頭ナデナデされているんだが、6歳児同士の微笑ましい光景に見えるが、中の人の年齢的にはどっちも二十歳くらいだからね?
子供扱いされてる感が漂うのは、女の子の方が精神年齢が高いってことでOK?
「じゃ~そろそろ帰るか~」
俺と同じく1匹も釣れなかったバランさんが、苦笑しつつアンカーを海底から引き上げた。
ヴァルトさんとバランさんが筏の左右で櫂を使い、マルカさんが筏の後方で舵取りを担当する。
穏やかな海面を、筏は滑るように進んだ。
無人島で潮干狩りを楽しんでいたみんなのところへ戻ってみると、そちらもなかなかの収穫になっていた。
特別な魔石がとれる貝は白蝶貝に似た二枚貝で、採れる魔石は真珠に似た大きさと形をしている。
「この貝は魔石も採れて肉も美味しく食べられて、貝殻も高級時計の文字盤に使えるから、捨てるところは無いんだよ」
リピエノさんは説明しながら貝を小分けして籠に入れて、砂を吐かせる為に海水が入ったバケツに漬けていく。
潮干狩りで体力を使い切ったアトラスたちと、釣りでほどよく疲れたセラフィナは、木陰でお昼寝タイム。
マルカさんとヴァルトさんは釣ってきた魚を捌き始め、ミィファさん、ミュスクルさん、シェリーさん、ミニョンさんが鱗取りを手伝う。
「アルはまだ元気そうだな。海藻でも採集してみるか?」
「うん!」
釣りで収穫が無い残念コンビのバランさんと俺は、海岸付近で海藻を集めることにした。
ここらの海藻はどれも食べられるそうで、サラダやスープに使えるらしい。
浅瀬にジャブジャブ歩いて行ったら、あちこちに海藻が見えた。
もずくみたいに黒っぽいものもあれば、アーサみたいに綺麗な緑色のものもある。
ちょっとちぎって味見してみたら、プルプルした食感で磯の香りが口いっぱいに広がり、淡白ながらも深いコクがあった。
いいなこれ。味噌汁に入れたら絶対美味いぞ。
しばらく海藻を採集しながら浅瀬を歩いていた俺は、海藻ではないものも見つけてしまった。
それは、岩の間に倒れている子供。
長い髪は鮮やかなエメラルドグリーン、肌の色が青白いのは身体が冷えているからかもしれない。
「痛い……誰か助けて……」
辛うじて聞こえる、呻き声に近い微かな声。
倒れている子は上半身だけが見えていて、顔や腕や肩に擦り傷を負い、あちこちから血が流れ出ていた。
こちらからは岩に隠れて見えないから、下半身にも怪我をしているかどうかは分からない。
「大丈夫? 今助けてあげるよ」
「?!」
俺が声をかけながら歩いていったら、その子は驚いたようにこちらを見た。
頬の擦り傷が痛々しいけど整った可愛らしい顔立ちはセラフィナと並ぶ美少女系で、瞳の色は海の青色。
知らない相手だからかな? 怯えた顔になっている。
「い……嫌……来ないで……殺さないで……」
「え?」
なんか、誤解されてる?
少女は逃げようとしているのか、弱々しくもがき始めるけど立ち上がれない様子。
「落ち着いて。君を殺したりしないから」
「人間……私の言葉……分かるの……?」
って、この子もしかして人間ではない?
近付いて岩の向こう側を見て、俺は少女の言葉の意味を察した。
「うん、分かるよ」
「私……人間じゃない……」
少女の下半身は魚みたいに鱗で覆われていて、足は無く尾鰭がある。
所謂、地球では人魚と言われる容姿だ。
人魚と同じ下半身も、あちこち岩にぶつけたような傷がある。
「人間じゃないのは分かった。でも助けるよ」
俺が言ったら、少し安心したのか少女はもがくのをやめた。
言葉が通じるって大事だね。
「治癒」
俺は人魚っぽい女の子に片手を翳して、治癒魔法を発動させた。
人間ではない者にも、治癒効果は等しく現れる。
全身の擦り傷や打撲傷が完治していく様子を、少女は驚きながら眺めていた。
「他に何か助けてほしいことがあれば、手を貸すよ」
「あの……私を運んでもらえる? 浅瀬に打ち上げられて泳げないの」
「あっちの深くなってるとこまで抱っこして行けばいいかな?」
「うん、お願い」
お願いされて、俺は人魚っぽい子を抱き上げる。
体格的にはセラフィナよりも小柄で、軽々と運べた。
「ありがとう。私の名前はメーア、あなたの名前を教えて」
「アルキオネ。友達はみんな【アル】って呼ぶよ」
「じゃあ、私もアルって呼ぶわ。これは、お友達の印ね」
人魚っぽい子はメーアという名前らしい。
海へ帰る前に、彼女は友達の印と言って俺の唇にキスをした。
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