44 / 87
第4章:飛び級した転生者
第38話:無人島ディナー
しおりを挟む
人魚(?)に、キスされちゃった。
スバルが固まってるよ。
僕はスバルと感覚を共有しているから、メーアの唇が触れた感触もしっかり伝わってきた。
僕はミィファさんに育てられたから、頬や額におやすみのキスをしてもらったことは何度もある。
孤児院のみんなに、僕がキスしてあげたことも何度かあった。
でも、メーアみたいに唇にキスされたのは初めてだ。
(……多分あれだ、きっと挨拶みたいなやつだな)
フリーズしていたスバルの思考が、ゆるゆると動き始める。
スバルはメーアを治療した場所に置いていた海藻入りのバケツを回収して、岸へと歩いていった。
「アルは凄いなぁ」
「えっ?!」
浅瀬から岸へ上がった途端に声をかけられて、スバルは飛び上がりそうなくらい驚く。
驚いた勢いそのままに横を振り向けば、バランさんがバケツを傍らに置いて座っているのが見えた。
「海神族は人間を怖がる筈なのに、大人しく抱っこされてるから驚いたよ」
「えぇぇ……バランさんいつから見てたの?!」
「そろそろ帰るぞ~ってアルを呼ぼうとしたら、海神族の子供を抱き上げるところだったな」
「そ、そうなんだ……」
……つまり、キスされたのも見られたってことだね。
バランさんはニコニコ笑っているよ。
「さて、そろそろみんなのところへ行こう」
「うん」
バランさんはメーアのことについて深く追求はしなかった。
海藻がたっぷり入ったバケツを手に立ち上がり、歩き出すバランさんにスバルも続いた。
マルカさんたちが調理をしている場所に近付くと、風に乗って美味しそうな香りが漂ってくる。
大きな石を組んだかまどから、焚火がパチパチ音をたてているのが聞こえてきた。
かまどの上には金網が乗せられていて、リピエノさんが殻をはずした貝肉と殻付きの蟹を炙っている。
アトラスたちはお昼寝から目を覚ましていて、焼けた貝肉や蟹をお皿に乗せてもらい、テーブルに運ぶのを手伝っていた。
もうひとつのかまどの上には大きな鍋が置かれていて、マルカさんが魚の煮付けを作っている。
マルカさんは隣のかまどでも調理していて、そちらには油を入れた鍋を置いて魚の唐揚げを作っていた。
唐揚げはセラフィナがテーブルまで運んでいる。
ミィファさんが担当するかまどの上にも鍋が置いてあり、そちらではスープが作られていた。
「海藻採れたぞ~」
「ありがとう! この鍋に入れてくれる?」
ミィファさんに言われて、バランさんが海藻の水気を軽く絞って鍋に入れる。
海藻を入れ終えるとミィファさんが軽くかき混ぜて、すぐに火を消した。
香ばしく焼けた貝肉と蟹。
甘辛く煮えた魚。
カラリと揚がった魚。
魚で出汁をとり、海藻を入れて風味を増したスープ。
野草と海藻のサラダには塩とスパイス少々、近くの低木から採れた酸味のある果実を絞ってかけてある。
デザートは、海岸近くの木から採れた大きなフルーツ。
普段はパンとスープだけで食事を済ませている孤児院のみんなには、ビックリするような御馳走だ。
学園の食堂でもここまで色々まとめて並ぶことはないよ。
「カニさんおいしい~っ!」
「お魚の煮付けおいしいね!」
アトラスたち孤児院男子は、ワイルドにかぶりつく焼き蟹が特に気に入ったらしい。
ミラとクロエは煮付けを食べながら嬉しそうに笑っている。
「この魚、青緑色だったのに揚げたら赤くなるのね」
セラフィナは姿揚げされた魚を不思議そうに見つめた。
鱗と内臓を取り除いて身体に切れ目を入れて揚げられたのは、セラフィナが最初に釣った魚だ。
「アルも食べてみる? はい、あ~んして」
セラフィナが、フォークに差した魚の唐揚げをこちらに向ける。
スバルは一瞬戸惑ったけど、素直に口を開けて一口サイズに切った唐揚げを食べさせてもらった。
表面カリッと、中はフワッとした魚の唐揚げは、塩が軽く振ってあるだけで臭みは無く美味しい。
(セラフィナにとって、俺ってどういう存在なんだろう?)
モグモグしながらセラフィナの笑顔を眺めて、スバルはそんなことを考えていた。
スバルが固まってるよ。
僕はスバルと感覚を共有しているから、メーアの唇が触れた感触もしっかり伝わってきた。
僕はミィファさんに育てられたから、頬や額におやすみのキスをしてもらったことは何度もある。
孤児院のみんなに、僕がキスしてあげたことも何度かあった。
でも、メーアみたいに唇にキスされたのは初めてだ。
(……多分あれだ、きっと挨拶みたいなやつだな)
フリーズしていたスバルの思考が、ゆるゆると動き始める。
スバルはメーアを治療した場所に置いていた海藻入りのバケツを回収して、岸へと歩いていった。
「アルは凄いなぁ」
「えっ?!」
浅瀬から岸へ上がった途端に声をかけられて、スバルは飛び上がりそうなくらい驚く。
驚いた勢いそのままに横を振り向けば、バランさんがバケツを傍らに置いて座っているのが見えた。
「海神族は人間を怖がる筈なのに、大人しく抱っこされてるから驚いたよ」
「えぇぇ……バランさんいつから見てたの?!」
「そろそろ帰るぞ~ってアルを呼ぼうとしたら、海神族の子供を抱き上げるところだったな」
「そ、そうなんだ……」
……つまり、キスされたのも見られたってことだね。
バランさんはニコニコ笑っているよ。
「さて、そろそろみんなのところへ行こう」
「うん」
バランさんはメーアのことについて深く追求はしなかった。
海藻がたっぷり入ったバケツを手に立ち上がり、歩き出すバランさんにスバルも続いた。
マルカさんたちが調理をしている場所に近付くと、風に乗って美味しそうな香りが漂ってくる。
大きな石を組んだかまどから、焚火がパチパチ音をたてているのが聞こえてきた。
かまどの上には金網が乗せられていて、リピエノさんが殻をはずした貝肉と殻付きの蟹を炙っている。
アトラスたちはお昼寝から目を覚ましていて、焼けた貝肉や蟹をお皿に乗せてもらい、テーブルに運ぶのを手伝っていた。
もうひとつのかまどの上には大きな鍋が置かれていて、マルカさんが魚の煮付けを作っている。
マルカさんは隣のかまどでも調理していて、そちらには油を入れた鍋を置いて魚の唐揚げを作っていた。
唐揚げはセラフィナがテーブルまで運んでいる。
ミィファさんが担当するかまどの上にも鍋が置いてあり、そちらではスープが作られていた。
「海藻採れたぞ~」
「ありがとう! この鍋に入れてくれる?」
ミィファさんに言われて、バランさんが海藻の水気を軽く絞って鍋に入れる。
海藻を入れ終えるとミィファさんが軽くかき混ぜて、すぐに火を消した。
香ばしく焼けた貝肉と蟹。
甘辛く煮えた魚。
カラリと揚がった魚。
魚で出汁をとり、海藻を入れて風味を増したスープ。
野草と海藻のサラダには塩とスパイス少々、近くの低木から採れた酸味のある果実を絞ってかけてある。
デザートは、海岸近くの木から採れた大きなフルーツ。
普段はパンとスープだけで食事を済ませている孤児院のみんなには、ビックリするような御馳走だ。
学園の食堂でもここまで色々まとめて並ぶことはないよ。
「カニさんおいしい~っ!」
「お魚の煮付けおいしいね!」
アトラスたち孤児院男子は、ワイルドにかぶりつく焼き蟹が特に気に入ったらしい。
ミラとクロエは煮付けを食べながら嬉しそうに笑っている。
「この魚、青緑色だったのに揚げたら赤くなるのね」
セラフィナは姿揚げされた魚を不思議そうに見つめた。
鱗と内臓を取り除いて身体に切れ目を入れて揚げられたのは、セラフィナが最初に釣った魚だ。
「アルも食べてみる? はい、あ~んして」
セラフィナが、フォークに差した魚の唐揚げをこちらに向ける。
スバルは一瞬戸惑ったけど、素直に口を開けて一口サイズに切った唐揚げを食べさせてもらった。
表面カリッと、中はフワッとした魚の唐揚げは、塩が軽く振ってあるだけで臭みは無く美味しい。
(セラフィナにとって、俺ってどういう存在なんだろう?)
モグモグしながらセラフィナの笑顔を眺めて、スバルはそんなことを考えていた。
11
あなたにおすすめの小説
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。
名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。
【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。
シトラス=ライス
ファンタジー
万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。
十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。
そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。
おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。
夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。
彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、
「獲物、来ましたね……?」
下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】
アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。
*前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。
また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる