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武人祭
保護
しおりを挟む修行も区切りの良いところだったので、ミランダの要望通りこの魔空間に住む予定である奴らに会わせる事となった。
住まわせる場所は前に作った露天風呂の近くにしており、すでに家を二軒建ててある。ちなみに建てたのは俺だ。
今のところ保護しているのは女だけなので、その内の一軒に雑魚寝してもらっている状態となっている。
そいつらのいるところへ行くと、すぐに俺たちに気付いた。
「ようこそ、アヤト様。今回はどういったご要件でしょう?」
最初に近付いて出迎えてくれたこの人は、保護する事になった奴らの代表となっているリカという女だ。
その笑顔を見たミランダがホッとする。不満や不自由が見受けられなかったからだろう。
そんなミランダにリカが視線を向ける。
「・・・・・・どこかでお会いしましたか?」
「いや、初めてだ。もしかしたらあなたは私を見た事あるかもしれないが・・・・・・先に挨拶を済まさせてもらおう。私はミランダ。ミランダ・ワークラフトだ」
「・・・・・・ああっ! あなたがあの!?」
リカはようやく思い出したようで、スッキリした顔をする。
代わりにミランダは僅かに頬を紅潮させて掻いていた。
「ハハハ、なんだか恥ずかしいな・・・・・・」
「そうなのか? 言われ慣れてると思ってたが」
何気なくそう言うと頬を紅潮させたままのミランダがこっちを向く。やめろよ? 今のは責めてるわけじゃないからな?
初対面の奴がいるこの場ではっちゃけるなよ?
「前までは難なく受け入れたのだろうけれども、アヤト殿に負けてから私のような者が「あの」とか「有名な」と言われたところで素直に喜べなくなっているのだ」
俺の思いは杞憂らしく、普通の会話内容だった・・・・・・と安心していると。
「しかしそんな賛辞よりも『この恥さらしがっ!』などと罵倒してくれた方がむしろ・・・・・・」
「よし、こいつらの様子も見た事だし、お前の話はこれで終わりだな。さっさと帰れ」
ミランダの下に亀裂を作り、屋敷へ落とそうとした。しかし亀裂を小さめに作ってしまったがためにミランダは腕を引っ掛けて耐えてしまっていた。
「待ってくれ! もう少し話を・・・・・・!」
這いずり出て来ようとするミランダの顔面を踏み付ける。
「チッ、ゴキブリみたいにしつこいな・・・・・・」
「ああ、こんな状態で私を喜ばせてどうするつもりだ!?」
喜ばせるつもりなどないのにこうである。
するとミランダの亀裂から出ている上半身が大きく跳ねる。
「んぁっ!? な、なんだ? 足が・・・・・・くひっ!? や、やめっ・・・・・・」
何かが向こうにいるらしく、その後もミランダはビクビクと痙攣し、涎を垂らした艶めかしい表情になっている。これはメアたちに見せちゃいけないような気がする。特に年頃なカイト辺りには。
後ろを見るとミーナとメアは少し頬を染めて何が起きてるか気になってるだけの状態だが、フィーナとカイトとレナが顔を真っ赤にして俯いていた。もう遅かったか。
ミランダの状態が蕩けた顔をしているせいで完全にR指定である。
すると亀裂の向こうから僅かに「キューン」と聞き覚えのある鳴き声が聞こえる。ああ、ベルか。
大方、空間を繋げた先にベルがいて、目の前に出てきたミランダの足を咥えて引っ張っているのだろう。
そこである事を思い付き、未だに喘ぎながら頑張って耐えているミランダの腕に手を添える。
「アヤト、殿・・・・・・?」
不安そうに、しかしやはり期待の眼差しを宿した目を俺に向けるミランダ。
「丁度良いからそいつの相手をしててくれないか?」
添えた手に力を入れて徐々に引き剥がしていく。
「待て、本当に待てっ!? 私にこの淫獣の相手をしろというのか!? 確かに全く嫌というわけではないが、慰め者にされるのは・・・・・・」
などと卑猥且つ意味不明な言動をしているミランダの腕にさらにミーナの手が加わる。
「ベルを淫獣呼ばわり・・・・・・許すまじ」
「ああ、今のはちょっと口が滑っただけーー」
ミランダの言い訳にならない言い訳の途中、俺とミーナが息を合わせる。
「「そーい」」
完全に引き剥がされたミランダは嬉しそうな悲鳴を上げながら亀裂の中へと消えていった。
これ以上ミランダの醜態を聞きたくないので、すぐに亀裂を閉じ、ノワールへと念話を通す。
『ノワール、今少しいいか?』
『アヤト様からとは珍しい。何かございましたか?』
『ベルって今どこにいるかわかるか?』
俺の問いに向こうから「ふむ・・・・・・」と少し考え込むような声が聞こえた。
『たった今、ミランダ様を咥えて喜びながら自室へと駆け込んで行きましたが・・・・・・』
心の中で密かに「ああ・・・・・・」と呟きつつ、ノワールへ指示を出す。
『その部屋に出入りできないようロックをかけといてくれ。できれば防音も』
『わかりました。ではあの部屋には空間魔術で包み、扉と窓の固定化と音の消音を行います』
『ああ、よろしく頼む』
それだけ言って念話を切る。すると目の前にリカが不安そうな表情で俺を見ていた。
「あの・・・・・・今の方はミランダ様、ですよね?」
恐る恐ると遠慮気味に聞いてくる。
「ああ。思ってたイメージと違うか?」
「あ、ええ、まぁ・・・・・・流石に」
「だよなー」と俺も同意する。ミランダの噂って「凛々しい」とか「格好良い」なはずなのに・・・・・・あんなになっちゃってるんだもんな。
「あ、そうそう、そういえば用事だったよな。・・・・・・あれ、確か用事ってミランダにお前らの様子を見せるってだけで、他に用事は・・・・・・ねえな」
「ないですか・・・・・・あ、そうだ!」
何か良いアイディアを思い付いたようにリカは手を合わせる。
「お背中流しましょうか?」
「断る」
その誘いを一瞬で一蹴した。
何故この流れでその考えが出てくるのか教えてほしい。
「そうですか? 前の村にいたお爺さんたちは喜んでくださいましたが・・・・・・」
「俺、お爺さんじゃないから。若い男だから、俺」
「そんじゃあ、尚更嬉しいんじゃないッスか?」
すると次は軽い感じの女が割って入って来た。
「もう、スイ! アヤト様に失礼でしょ?」
「えー? でも前に兄さんはそういうの気にしなくていいって言ってたじゃん? ねぇ、兄さん?」
そう言ってスイと呼ばれた女が俺に同意を求めてくる。
そして年齢的には俺の方が年下なのに「兄さん」と呼んでくるのが引っかかる。
まぁ、言い方的にノクトのような兄弟的な意味合いじゃなく、おばさんが若い男をそう呼ぶような感覚に近い。どうせ背が自分より高いからとかそういう理由だろう。
「まあな。『様』なんてのもあまり好きじゃないしな。ノワールやココアからのは諦めているが、そうやって崇められるのはちょっとな・・・・・・」
「で、ですが・・・・・・聞いた話ですとこの世界を作ったのは・・・・・・」
おい誰だ、自慢話みたいに俺の事話した奴は? ・・・・・・いや、そういや一人いたな。
「おっ、アヤトじゃねえか!」
俺の名を呼ぶ声が聞こえる。その声がした方を見ると青肌をした金色の長髪の魔族、ナルシャの姿があった。
「てめえか!」
「何がっ!?」
この魔空間でこいつらと一緒に住まわせているナルシャ。ここがどういう場所か把握していて口が軽そうな奴といったらこいつしか該当しない。
そして聞き出せば案の定この世界を作ったのが俺だと話したらしい。しかもまるで自分の事のように自信満々に、との事。
とりあえずナルシャにはお仕置きでデコピンを打ち込み、神格化されても困るから彼女たちにはなるべく「様」以外で呼ぶようにと釘を刺しておいた。
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