最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし

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武人祭

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 「新しい武器を作ってみたから試してくれ」

 メアにストレッチをさせた後、そう言ってメアとレナに作った物を渡す。
 メアには完成した刀を、レナには狙撃銃スナイパーライフルを。

 「なんだその・・・・・・黒くて長い硬そうなやつは?」
 「メア・・・・・・卑猥」
 「何が!?」

 だってその三拍子は・・・・・・ねえ?
 俺とメアが言った事を理解できてしまったのか、レナが顔を赤くしていた。レナはむっつりなようだ。

 「あの・・・・・・これ、は?」

 レナが渡された物を見て首を傾げる。二人とも見た事のないものに興味津々だった。

 「ああ、それは俺の世界の武器を少し改良したものだ。モデルは『SV-98』、ボルトアクション式軍用狙撃銃。銃身六百五十mm、全長千二百七十mm、口径七.六二mm、重量は改良した事によって六千gから四千gへ減量・・・・・・つまりこれは四kgの重さがある」
 「「・・・・・・」」

 するとポカンとした表情になるレナたち。特に豆知識などではなく名前と大きさ重さなどを軽く説明しただけなんだがな・・・・・・。

 「簡単に言うとレナが使っている弓のような遠距離型武器だ。もちろん使い勝手はまったく違うし、使用者を選ぶ。試しに使い方を実践して見せるから、レナも後に続いてみろ」

 もう別に一つ作ってあった狙撃銃を収納庫から取り出す。軍用対物狙撃銃『バレットM82』。それはレナに渡したものよりも大きく重く、戦車などの対物を想定したスナイパーライフルだ。
 撃ちやすい寝た体勢になり、付いている二脚バイポッドを立てて固定し、肩に当てて頬を付け、スコープを覗き込む。

 「かなり音がデカいからこれで耳塞いでおけ」
 「お、おう・・・・・・?」

 二人に耳当てを渡す。混乱しながらも指示に従って頭に被ってくれる。

 「すぅー・・・・・・」

 カチリと安全装置を外して大きく息を吸って止める。
 ただ撃って当てるだけならどんな体勢だろうともできるが、これはあくまで見本。特にレナに理解できるようにゆっくりと手本を見せる。
 集中するとわかる。無駄な雑音が消えて周囲の草木が揺れる音だけが耳に残る。
 狙いを定めたらゆっくりと引き金を引くーー

 ーーズドンッ!

 「「ッ!?」」

 凄まじい轟音とともに銃口から弾が発射される。
 あまりの音の大きさにメアたちは表情を歪めて耳当ての上から手を当てて塞ぐ。
 撃たれた弾は目に見えない速さで進んで行き、遥か先で大きく爆発する。その光景を目の当たりにした後ろ二人は唖然としてしまっていた。

 「・・・・・・っと、こんな感じだ。わかったか?」
 「え、えっと・・・・・・」
 「とりあえず凄いってのはわかったぜ・・・・・・」

 どうやら「結果」のインパクトが強過ぎたようだった。なんとなくでもいいから理解してほしかったのだが・・・・・・。

 「ま、いいか。なら実践で試してもらおうか」

 二人をさっきまで俺がしていた体勢にさせる。メアは俺が使っていた物を使わせた。

 「撃つまでの手順は簡単だ。ここにセーフティー装置がある。これが入っていると撃てなくなるから、射撃時は必ず外すように。上に付いてるのはスコープっつって、覗くと正面の離れた場所が見えるようになるから遠距離に最適だ。もちろん裸眼でもいいがな」

 メアがスコープを覗き込んで「おぉ~」と興味津々の様子だった。しかしレナからのリアクションがなかったので気になった。

 「レナはあまりこういうのは好きじゃなかーー」

 ーーパァン!

 話しかけようとした瞬間レナの銃が発砲され、近くの木に大きな穴が空いた。どうやら早速撃ってしまったようだった。
 アンバランスになった木はミシミシと音を立てて倒れる。

 「あ・・・・・・す、凄い、です!見えない、ものがあの木を・・・・・・」

 すると興奮して立ち上がろうとしていたレナがドサリと地面に崩れ落ちる。

 「お、おい、どうした!?」

 心配したメアが立ち上がってレナに駆け寄る。

 「あ、れ・・・・・・?体、が・・・・・・」
 「魔力切れだバカたれ。説明を最後まで聞かないから・・・・・・」

 呆れ気味に溜め息を吐くとレナが唸りながら落ち込んでしまう。まぁ、ここら辺はしっかり言って聞かせないとな。

 「まずこれは実弾じゃなく、魔力を弾として撃つ・・・・・・まぁ、この世界風に言えば魔道具ってやつだ。しかも込められる魔力限界はかなり高い。少ない魔力を連発する事もできれば、多い魔力で強力な一撃を繰り出せる。他にも色々運用は効くが・・・・・・問題は使い方を知らなきゃ、レナみたいに魔力がごっそり持ってかれるからな」
 「ご、めん、なさい・・・・・・」

 申し訳なさそうに謝るレナを近くの木陰に移動させて寄りかからせる。残念だが、魔力切れのレナには見学していてもらおう。

 「さて、メア。次はお前の番だけど・・・・・・まぁ、やりやすいようにやるか。まずはさっきと同じ体勢になってくれ」

 レナのぐったりした姿を見てしまったメアが戸惑いながら俺を見てくる。そんな目をしても中止にはしません。
 渋々な感じにさっきと同じ体勢になる。怖いのか引き金に指を置こうとしない。
 そうなるだろうとは思っていたので、その体の上に俺が覆い被さる。

 「にゃっ!?」

 ミーナみたいな猫っぽい奇声を発して驚いて顔を赤くするメア。 
 俺は気にすることなく銃を持っている手の上に俺の手を添えて違うところにあった指を引き金のある場所に誘導する。

 「な、な、な・・・・・・」
 「集中しろ、メア」
 「ッ!」

 邪な考えで頭が一杯になっているメアに威圧を加えて緊張感を生み出す。そのままの状態で説明を続ける。

 「今はセーフティーがかかっている状態だ。これを外して、まずは魔力をゆっくり送り込んでみろ」
 「お、おう・・・・・・!」

 緊張の中でメアは自然に引き金に手を置いていた。
 メアの喉からゴクリと音が聞こえ、思わずニヤリとしてしまう。
 しかしそれはそれとして、目を集中させて魔力の流れを読み取る。魔力が順調に銃に流れているのが見える。

 「よし、そこまでだ。ここで銃と手の間に蓋をするイメージをしろ。でなきゃ、引き金を引いた瞬間にまた魔力を吸われるぞ」
 「わかった。魔力を止める・・・・・・蓋をするイメージ・・・・・・!」

 メアがブツブツ呟きながら深く集中しようとしていた。すると徐々に目が赤く、髪が光り始める。魔神化の兆候だった。
 魔人化は刀だけの影響かと思っていただけに少し驚いてしまった。しかしメアの理性に何か変化があるわけでもなさそうだったので、試しにそのままにしてみる。

 「イメージ・・・・・・イメージ・・・・・・」

 すると未だにブツブツと呟くメアの持つ銃に変化が起きる。銃の見た目ではなく、メアが流し留めている魔力が、だ。
 元々白い煙のように曖昧だった魔力が黒い炎のようなものへと変わっていた。
 このまま撃ってしまえばきっと惨事になるだろうなとは思うが、この方向であれば人的被害はない。今のうちに検証しておいた方がいいだろう。

 「イメージが固まったら・・・・・・撃て」

 俺の言葉を合図にメアが引き金を引く。空気が震える振動とともに見えない高速の弾が銃口から放たれる。
 一つ目の轟音が鳴り終わり、数秒の時差で二つ目の轟音が鳴る。
 まるで爆弾でも落とされたかのような爆発と土煙が遠く広がった。

 「おぉう!?」

 予想外の結果にメアが驚き、その拍子に魔人化が解ける。最近慣れてきたのか、前のように暴走する前に解ける事が多くなってきた気がする。
 多少汎用性はんようせいに欠けるが、たとえ一瞬でもデメリットを少なくして使えるならいいか。何事にも妥協は大切だ。
 メアが撃った前方の景色が丸々くり抜かれたように消し飛んでいるのを見てそう思った。

 そしてその後、カイトや村娘たちが慌てて駆け付けてきたのは言うまでもない。
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