最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし

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武人祭

初代魔王の実力

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 ☆★☆★
 「一体どういう事か説明してもらおうか、カタルラント殿?」

 アヤトたちが学園へ行った後、威圧を加えるようにペルディアさんが私のフルネームをここぞとばかりに呼んできた。

 「本名で呼ばないでください。でなんですか、何を聞きたいんですか?」
 「とぼけるな、お前に光の適性がある事をなぜ黙っていたのかという話だ」

 なぜか責めるような言い方・・・・・・光の適性があると何か不都合でもあるのでしょうか?

 「黙ってるも何も、自慢する事でも卑下する事でもないと思ったから言わなかっただけですよ」

 そう言って未だに片付いていない朝食をチマチマと口に運ぶ。
 私は少食な上に食べるのが遅く、たまにアヤトに心配される時もあります。
 もしかしてこれが原因で私の体はいつまでも小さいままなのでしょうか?などと考えた時期もありましたが、今更食生活を変えるのも面倒なのでこのままでいっかな~なんて今は思っています。
 と、そんな事を考えていると、ペルディアさんが大きく溜め息を吐く。

 「闇の適性に加えて光の適性まで持っていれば、かなり色々と魔術を使えるのだろう?十分自慢になるじゃないか・・・・・・」
 「それはでしょう?」

 私の含みのある言葉に、ペルディアさんが眉をひそめる。

 「どういう意味だ?」
 「・・・・・・私は闇と光の適性は高いですが、それ以外が皆無なのですよ」
 「なんだと!?闇と光以外が・・・・・・」

 信じられないと言った様子のペルディアさんに対し、私は頷いて彼女が言い淀んだ言葉の先を口にする。

 「もちろん、ロクな魔術は使えませんよ。かろうじてその二つの適性が高いおかげで強力な魔法が使えます。それに光と闇を合わせれば『エクスプロージョン』なんて魔術も撃てますし」

 私が『魔王』なんてものに就けたのも、その適性高さ故なのだから。
 ただ何の不具合か副作用か、身体の成長が止まり年齢による衰弱なども見られない・・・・・・いや、私の体は元々貧弱なので、衰弱してるかどうかなど自分でもわかりませんけど。

 「これでわかりましたか?世にも珍しい光と闇を宿す私ですが、言うところの宝の持ち腐れというやつです。だから言わなかったし、ある意味言いたくなかったんですよ」

 そして朝食を食べ終わり、最後にお茶をズズズッと飲む。

 「いやいや、お前さんは胸を張っていいと思うぞ」

 すると黒王竜が人の姿になった者、グレイとアヤトに名づけられたおっさんが居間に入ってきた。

 「無い胸を張ってどうしろと言うんですか?あと、朝食はもう残っていませんよ。ヘレナさんが全部食べましたから」
 「何?あの大食らいめ・・・・・・まぁ、お前さんが例え絶壁だったとしても、自信を持っていいとは思うがな」

 グレイはそう言って、私たちが朝食を食べていたテーブルとは違うもう一つの遊び用テーブルの椅子に腰をかけた。
 おい、今このおっさん、私の胸を貧乳と言うどころか絶壁と言ったか?
 喧嘩を売ってきましたね、このおっさんニート・・・・・・
 するとグレイは将棋を机の上に置いて、私を手招きで呼ぶ。
 またですか・・・・・・と呆れながらも、グレイとは対局の席に着く。

 「闇も光も、適性が高ければ魔術にも負けない強力な魔法が使えるだろう?それにお前さんの魔力は相当多い。適性の少なさを十分以上にカバーしとるじゃないか」

 そしてグレイは無言で先手を差して始める。勝手ですね・・・・・・別にいいですけど。

 「別に慰めてもらわずとも、私は元々落ち込んでなんかいませんよ。昔はちゃんと魔王をやれるくらいの実力はたしかに持っていたのですから」

 パチッと私も自分の駒を進める。
 そして向こうも駒を進め、私の駒を取る。

 「要らぬ心配だったか。だがそれもそうか、ここにお前さんをバカにするような輩はそうそういないだろう」
 「わかってますよ、アヤトも当たり前のように快く私たちを受け入れてくれている・・・・・・敵になると残忍ですが、味方になると過保護なんじゃないかというくらいに色々してくれますからね」

 前に『人間の大陸はやはり暑い』なんてちょっとした弱音を吐いたら、次の日には部屋の温度を下げる魔道具を私の部屋に置いてくれましたし。
 ただでさえ強いのに、優しくてなんでもできる優良物件なんですから、そりゃあメアさんやミーナさんが惚れるわけですよ。
 なんて事を考えていると、グレイがニヤニヤと顎を擦りながら私の方を見てきていた。
 なんでしょう、なんでこの男は表情だけでこんなにも人をイラつかせる事ができるのでしょうか・・・・・・?

 「なんじゃ、やっぱお前さんも惚れたのか、アヤトに?」
 「私はとっくに惚れてますよ。衣食住を無償で提供してくれる方には滅法弱いんです」
 「・・・・・・現金な惚れ方じゃな」

 そんな感じにグレイが呆れた物言いをしてる間に、彼が不用意に置いた角行を取る。
 油断が産んだ悲劇に、目の前でグレイが『ぬあぁぁぁっ!?』なんて叫ぶが、私は気に話を続ける。

 「そりゃあまぁ、こんな面倒臭い見た目ガキで何千年生きてるかもわからないロリババアを介護しようとする物好きなんていないと思いますからね。しかも彼、私が『なんでもしますから』と言った時なんて、ちゃんと女扱いしてきたんですよ?そんな事されたら、私みたいなチョロいのは釣れちゃいますって・・・・・・あっ、王手」

 話をしている間に、私はいつの間にかグレイを追い詰めていたらしい。

 「くっ、別の事を考えさせて気を逸らす作戦は失敗か・・・・・・」
 「なんちゅう小賢しい作戦を立ててるんですか・・・・・・ま、我ほどの実力であれば、このような遊戯など容易い事よ!」

 眼帯をかけているところに手を当てて決めポーズを取る。
 アヤトたち異世界人からするとこの動作を中二病と言って、カイトたちくらいのような影響を受けやすい多感な時期である思春期の子供が、カッコいいと思う空想や思想の動作を行う事を指すらしい。
 特にエリさんなど、『見ていて痛々しいからやめろし』なんて言葉もかけられたりしたが、これが私の生き方なのでやめる気はさらさらありませんね。
 と、グレイが今度はチェスを取り出しました。頑張りますねぇ・・・・・・。

 「性懲りも無くまだやるんですか・・・・・・負ける気はありませんよ?」
 「そうでないと面白くないわい。リアナとやって勝っても、何の面白味もないしな!」

 そう言ってガッハッハッと笑うグレイ。
 よかったです、彼女が朝に弱くて。
 起きてたら今頃ここは戦場と化していた事でしょう。
 何はともあれ私も結局暇ですので、この人の暇潰しに付き合ってあげましょう。

 「ふっ、我は魔王ランカ・カタルト!初代にして頭脳明晰、闇と光に愛されし世界の支配者!汝らの挑戦は全て受け、ことごとく潰そうではないか!」

 朝から近所迷惑になりそうな声を張り上げ、私は高らかにそう叫んだ。
 本来、勇者か勇者の子孫でなければ現れないと言われる光の適性。
 それが私には宿ったのは何か意味があってなのかは知りませんが、私自身はそれを鼻にかける事なく生きようと決めているのです。
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