最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし

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夏休み

添い寝

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 ☆★メア★☆


 「・・・・・・」


 俺はいつもの寝間着に着替え、枕を抱いて扉の前に立っている。

 つ、ついにこの時がやって来ちまった・・・。
 昨日はノリで「一緒に寝て良い?」なんて言ってOK貰っちまってこうしてるわけなんだけど・・・。
 いざ、こうして扉の前に立つと緊張しまくる・・・!!


 「・・・だ、大丈夫、大丈夫。いくら一緒に寝るって言っても、いきなり襲い掛かって来るなんて事はない筈だ・・・」


 城で働いていた男たちがこっそり隠していた「そういう本」を見た事があるせいで、知識だけはあるんだけども・・・。
 でもアヤトは他の男と比べて違う。
 昨日ミーナが全裸でアヤトに迫ったのに、動揺も恥ずかしがる事もしなかったんだ、今更俺が一人が隣にいたところで変わらない・・・きっと!

 自分に言い聞かせるように心の整理をして、ゆっくりと扉のドアノブに手を掛けようとする。
 しかしーー

 ーーガチャ!


 「ッ!!?」


 俺が手を掛ける直前にドアノブが回り、扉が一気に開かれる。
 そこにはいつものアヤトが「どうした?」とでも言いたげに俺を見つめていた。


 「扉の前で何いつまでもボーッとしてるんだ?」

 「あー、えっと・・・夜這いに・・・来た・・・ぜ?」


 予想外の出来事に頭が真っ白になり、何を言っていいか分からず放った言葉が、よりにもよってソレだった。
 一瞬自分が何を言ったか理解できなかったが、段々理解してくると顔が焼けるように熱くなり、中途半端に開いた唇が震え始めた。
 そんな顔を見られたくなくて、持ってる枕に顔を埋める。


 「・・・自分で言っといて自滅するなよ。今度って言ったからまだ来ないと思ってたが、結構早かったな?」


 「どうぞ」と言われ部屋の中に通される。
 特に何か飾られたわけでもない殺風景な部屋。
 そして綺麗に整えられているベッドを椅子代わりにして座る。

 ただ違うのはその部屋がアヤトの匂いで充満してるって事くらい・・・って、俺は何変態的な事考えてんだ!?

 煩悩を振り払う意味で頭を左右にブンブンと振ると、その動作に驚いたのか、アヤトが肩をビクリと跳ねた。


 「あ、アヤトの部屋って何も無いよな、つまらなくないか?」


 アヤトに何か言われる前にこっちから話題を出した。


 「あー・・・まぁ、俺に何かを鑑賞する趣味はないしな。向こうでやるゲームとかもユウキに誘われなきゃやらなかったしなぁ・・・」


 ゲーム?っていうとノワールとかがたまにやってたチェスとかみたいなもんかな?

 そう思いつつアヤトの悩んでる顔を、首を傾げて見る。
 別にいつものどうって事のない筈の表情なのに、こうやってちゃんと見ると何故かドキドキする。

 アヤトっていつも見た目はユウキの方がカッコ良くてモテるなんて言ってたけど、アヤトだって・・・いや、アヤトの方がカッコ良い。
 こうやって悩んだりする顔も、いつもの笑い掛けてくれる笑顔も、全部が。

 それに普段は隠れてるけど、腕や首周りから少し見え隠れしてる筋肉が想像を掻き立てる。
 そして目がアヤトの唇へ向く。

 アレにヘレナやミーナが・・・それに俺も・・・。

 ヘレナが、ミーナが、俺がキスしたアヤトの唇。
 そこから目が離せずジッと見つめ、魅入ってしまうーー


 「あのー・・・メア?顔近いんだけど」

 「・・・うにゃ!?」


 変な悲鳴を上げ、反射的にサッと後退した。

 いつの間にか近付いてた?・・・っていうかなんだよ、うにゃって!?
 ミーナじゃあるまいし・・・。

 またもや顔が熱くなるのを感じる。
 今の俺の顔は確認するまでもなく真っ赤になってるだろうな。


 「いや、そういえばアヤトの顔ってちゃんと見た事なかったなと思っただけ・・・それだけだ!!」


 目を合わせられず、そっぽを向きながら早口になる。
 そんな俺が面白いのか、アヤトが少しにやけた顔で俺をジッと見てくる。


 「確かに、俺もメアの顔をちゃんと見た事なかったなぁ・・・ふむ」


 わざとらしい口調をしながら顔を近付けて来る。
 そして顔の形を確認するように俺の頬に手を当て、撫でるように触ってくる。
 そうやって触られるとなんだがゾクゾクしてくる。


 「な、なんだよ?」

 「いや?ただやっぱり女の子なんだな、と。肌も柔らかくて、目も透き通るみたいに綺麗だ」


 普通だったらキザったらしいような台詞なのに、今はこのまま身を任せていたい。
 再び頬に戻ってきたアヤトの手に頬擦りする。
 そのまま親指が唇をなぞってくる。


 「「・・・・・・」」


 お互い無言。
 ただひたすらに触り触られる状態。
 でも、そんな状況に耐え切れる筈もなく、アヤトの顔に近付いて唇を重ねる。
 軽くした後、アヤトの顔を見ると笑い掛けてくれていた。
 そしてもう一度。今度はもっと深く。
 今の気持ちを全部注ぎ込むようにアヤトの口の中へ。
 そんな濃厚なやり取りを数回し、落ち着いたところで枕と共にベッドに身を放り出した。


 「アヤトは・・・まだ寝ないのか?」

 「寝るさ。ただ区切りの良いとこまでは読もうかと思ってな」


 アヤトが机に向かって行く。
 その机には数冊の本が重なっていて、その内一冊が中途半端に開かれていた。
 どうやら俺が来る直前まで何かを読んでいたようだった。
 内容は・・・


 「「魔術の成り立ち」?ってこの重なってるの全部似たような本ばっかじゃねえか!?」


 「魔法の原理」「魔法と精霊の関係性」「組み合わせによる魔術の変化」「七属性の性質」「魔力とは」などなど。


 「学園の図書館から借りて来たのか?」

 「ああ」


 確かにあそこの図書館は城よりも種類が豊富だ。
 けどだからって、わざわざそこに行って借りるような事はしない。
 だって城で読みふけっていたのは暇だからであって、特別本が好きなわけではないのだから。
 でもアヤトは教材からだけじゃなく、図書館からも借りて読んでいる。
 腕っ節が強いだけじゃなくて、頭も良い。
 ・・・そう思うと、段々と不安が募っていく。


 「不安そうだな?」


 ほら。
 恋愛とかには疎いアヤトでも、それ以外の怒りや不安をすぐに察して気を遣おうとしてくれる。
 嘘を吐こうとしてもきっとすぐバレる。だから最初から本音を言う。


 「アヤトってさ、何でもできるから、今更だけど俺が釣り合うのかなって・・・」

 「ああ、よくあるくだらない考えだな」

 「ちょっ!?くだらないってなんだよ!?」


 意外な返答に思わず食って掛かる。
 そんな俺をアヤトはまた微笑んで、子供をあやすように頭を撫でてくれる。


 「釣り合う釣り合わないとか、資格があるかどうかなんてより相手が好きかどうかだ。メアは俺の事を好きでいてくれるんだろ?ならそれで十分だ。たとえお前が王族じゃなくて奴隷だったとしても、戦う才能が無かったとしても、学は・・・まぁ、今と変わらないか。つまりは、だ」


 アヤトは撫でるのをやめ、コツンと頭を当てて来た。


 「気にするなってこった」

 「・・・そっか」


 アヤトが笑い、俺もそれに釣られてニッと笑う。
 俺の考えを否定されて元気付けられる事は分かってたけど、言葉にされるとやっぱり嬉しくなる。


 「さ、寝るぞ。明日も修行をするからな」

 「おう!」


 俺が横になると、アヤトもベッドの方に来て座り、上に向かって手をかざすと明るかった部屋がフッと暗くなる。
 普通ならスイッチを押してオンオフをするけど、アヤトみたいに魔力を器用に扱える奴はどこにいても点けたり消したりできるから便利だ。
 ベッドが沈むのを感じ、横にアヤトの気配がする。
 ドキドキと胸の鼓動が高鳴る。
 少しずつ夜闇の暗さに目が慣れ、月の明るさでアヤトの顔が見え始めた。


 「・・・・・・アヤト?」

 「スゥ・・・スゥ・・・」

 「早ッ!?」


 本当に寝てる?狸寝入りじゃなくて?
 寝付き良過ぎるだろ!

 試しに頬を突っついてみる。

 ツンツン・・・ムニムニ・・・グニーッ。

 反応しないのを良い事に、徐々に行動がヒートアップしていく。
 アヤトの肩に顔を近付けて匂いを嗅ぐ。アヤト自身と石鹸の匂いが混ざってる。
 そのままアヤトの胸にスッと腕を添わせると、服越しにゴツゴツとした感触が伝わってくる。
 いつも服を着ていて細く見えるけども、こうやって触ると分かる、逞しく鍛えられた肉体。
 たまに変なヘコみを感じるが、そんな事を確認するためだけに服を脱がすわけにはいかない。


 「・・・いつかこの体を見れる日が来るのか、な?」


 不意に溢れた呟きにハッとして口を塞ぐ。
 相変わらず静かに寝息を立てるアヤトの横顔に、大きく息を吐いた。
 もし起きてたら言えない、言えるわけない言葉。
 だってそれはアヤトの裸が見たいという意味になり、それはつまりーー


 「~~~~ッ!!」


 を想像してしまい、熱くなった顔を枕の代わりにアヤトの肩に埋める。
 そんな感じに悶々としていた割に、アヤトの腕を抱き枕にしていた俺は心地の良く、程良い温もりにスッと深い眠りに落ちていた。
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