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夏休み
変化文字
しおりを挟む「はぁ・・・」
家に帰ると玄関先で何故だかあーしさんがorz状態になって分かりやすく崩れ落ちた。
これはアレだろうか?心配しろとか声を掛けてくれとか、そう言った意思表示なのだろうか?
「どうしたあーしさん」
「あーしさん言うなし。・・・いや、実際ここどこよって話ね。なーんか外国みたいな建物ばっかだし、住んでる人の髪も逆に黒が少ないし。あんたに至っては一瞬で違う場所に移動する変な技使うし、その先にあった屋敷があんたんちだって言うから入ったら明らかに人じゃない人の形をした何かが浮いてるし・・・」
「え、それもしかして私たちの事?」
空中を浮遊していたアルズや他の精霊たちがあーしさんの言葉を聞いて集まって来た。
「もしかしなくてもそうっしょ?何?あんたら以外にも人じゃない奴いるわけ?」
「竜とかもいるよ?それに君、アヤトと同じ異世界の人なんでしょ?なら「人族じゃない」って言い方をするなら魔族や亜人、悪魔だっているよ!!」
「なんだかありえねえくらいにデカいおっさんもいるし・・・頭痛えわ・・・」
「それはもしかして俺の事を指して言っているのか?言っとくが俺はちゃんとした人間だからな?」
ガーランドがフラリと立ち上がりながら暗い表情のあーしさんにそう言う。
その口から「改造ゴリラだろ・・・」と小さく呟いたのは聞かないフリだ。
「んで、あんたはこっち側なんだよな?」
あーしさんが俺の方を見て聞いて来た。
「それは地球出身かって意味で聞いてるならイエスだ。ちなみに俺は学生で高三だ」
「なんであんたの口から出る言葉って信じ難いんだろうな?」
「ハハハ。どういう意味だ?」
身長が百八十近くあるからっておっさん扱いしようとでも?やめてほしい。
するとふと、もう一通の送られて来た手紙の事を思い出した。
「あ、そうそう。ノルトルンからの手紙に忘れないうちに返事しとかないとな」
「あ、そういえばそっちもありましたね。行くんですか?」
「まあな。ユウキを迎えに行くついでだ」
「・・・大丈夫ですかね?」
「「今回みたいに誘い出される罠なんじゃ」、か?完全には否定できんけど、一応行くさ」
収納庫に入れておいたノルトルンの手紙を取り出し、「承諾」の印に魔力を注ぐ。
すると上に書いてあった文章が溶けるように消え、違う文章が浮き出てくる。
【この文章になったという事は承諾してくれたようだな。心より感謝する。では後日そちらに迎えの馬車を送らせてもらう。友人共々貴殿を歓迎しよう】
なるほど、魔力を流すと別の文字が出てくる仕掛けか。面白いな。
「何々、何この面白そうな手紙?」
「あぁ、イリアんとこから来たやつか?」
俺の肩越しに覗き込んで来たあーしさん。
そしてもう片方の肩に顔をピタリとくっ付けるメア。
なんかお前ら仲良くなってない?
するとついでにうちに上がっていた学園長がわざわざ椅子を持って来て横から手紙を覗こうとしていた。
「今度はどんな厄介事なんだい?」
「厄介事って決め付けないでくれる?これはただの招待状だ」
「どうだか。この王家の印、魔力によって文章が変わる珍しい手紙、その差出人。少なくとも普通じゃないよね」
「そう・・・か?」
「うん。まぁ、それも含めてちょっと聞きたい事があるんだけどさぁ・・・」
再び椅子を動かそうとしていたルビアの代わりにココアが運び、俺たちの正面に座る。
「異世界人とかなんとか・・・アレって本当の話かい?」
「ああ」
「「ああ」って・・・随分簡単に頷いてくれたね。初めて会った時は勝負に勝ったらとか言って聞かせてくれなかったのに」
「ああまぁ・・・学園長ならいいかなと思っただけだ」
「認めてくれたってのは嬉しいけどねぇ・・・」
「納得いかないか?かつて勇者の仲間として戦っていた「六英雄賢者様」」
俺の言葉に学園長は目を見開いて驚いたが、すぐに「そうか」と言って何かに納得していた。
「そういえば君の近くには情報源がいたね。ああそうさ、僕は昔召喚された勇者と共に旅に出た事があった。だからなのだろう?君が話してくれたのは」
「まぁ、それも要因の一つではあるけども・・・学園長の人柄は大体把握したからな。たとえ俺やあーしさんが異世界人だと知っても悪い方に利用したりしないだろうってな」
「だからあーしさん言うなし」
「そうかい。・・・って事はアレかな?君も何か名目があってラライナの王様に召喚されたのかい?」
「いや、ここに送ったのは僕で、目的なんか与えてないよ」
誰にも気付かれずにさり気なく学園長の横に座っていたシト。
急に会話に割り込まれ驚いた学園長が飛び跳ねて机に膝をぶつける。
「~~~~ッ!!き、君は・・・誰なのかな・・・?どこか見覚えがある気がするんだけど・・・」
「あー、ごめんごめん、驚かせてしまったね。僕はシトって言うんだけど・・・名前で分かるかな?」
「えっ、シトって・・・シト様!?神様じゃないか!どういう事だいアヤト君!?」
なんだか青くなった焦燥の顔をして慌てて問い掛けられる。
あーしさんはシトの頭を撫でて「ショタ神様とかウケるww」とかやってる。何がそんな面白いんだか・・・。
「今聞いた通り俺はコイツに召喚されたんだ。別に勇者召喚とかじゃないから勇者として世界を救うとか言う大義名分もないし、観光気分でこの世界に居座らせてもらおうと」
「はぁ、神様に・・・?君も色々と大変な事情がありそうだね・・・それじゃあ無理矢理この世界に連れて来られたと?」
「いやいや、そこは合意の上さ」
あーしさんにイジられながらシトが答える。
「彼は魔法のない元の世界でもイレギュラーな存在でね。そんな面しーー貴重な人物を連れて来てみたわけだ!」
「随分傍迷惑な人を連れて来てくれたもんだ・・・」
「それ本人の目の前で言うか?」
「むしろ君に言ってるようなものだよ」
より酷いな・・・。
「それで?その神様がここにいる理由をまだ説明してもらってないんだけど?」
「そんなのアヤト君の側にいたいからさ♪」
シトがそう言ってウィンクをすると俺と学園長の背筋がゾッとし、頭を撫でていたあーしさんが手を止めて軽く引いていた。
「え、あんたそういう趣味が・・・」
「なんで俺を見て言う?俺はノーマルだぞ。好きになるとしてもメアみたいな女の子だ」
「ならいいけど・・・ん?あんたらって恋人じゃなかったっけ?なんか今の言い方・・・」
・・・あ。
確かに今の言い方だと俺はまだメアの事を好きじゃないみたいになってる・・・。
マズい、恋人なのは変わりないが、それがお試しというか、メアから告白されて俺の方は別に嫌いじゃないからなし崩し的に付き合っている、ってのがバレたら印象悪いんじゃないか?
最悪アーク以下って事に・・・。
ふむ、ここは「何言ってるんだお前」みたいな答えで返して誤魔化すか。
「あぁ?恋人同士だぞ、俺たちは」
俺の言葉にメアははにかみながら頬を擦り付けて来る。
「あ、ああ、だよね。あーしの気のせい、か?まぁ、そうだよな、そんだけくっ付いてんだからそれはねーか」
よし、なんとか誤魔化せた。
とは言え、そもそも俺がちゃんとメアたちの事を好きになれれば誤魔化すも何もしなくていいんだが・・・。
・・・メアには教えてくれと言ったが、やっぱり俺自身が探して理解した方がいいよな。
細やかな決心を胸に小さく溜息を吐くと、正面にいた学園長が訝しげな目で俺たちを見ていた。
「王族と恋仲って、君はどうしてそう・・・いやまぁ、それくらいの問題なら別にいいか。僕関係ないし」
学園長は「こっちには持ち込まないでくれよ」と付け加え、ココアから出されたお茶をすすった。
なんというか、本当にいい性格してやがる。
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