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夏休み
不向き
しおりを挟む「ユウキ、お前の能力って物の複製だったよな?」
いつも通り修行をする少し前、魔空間に連れて来たユウキにお互い座りながら話し掛ける。
「ん?」とユウキが振り返る。
「あー・・・そういう事になるのか?」
「なんだ、把握してないのか?」
「まぁ、そういうの試してないしな。俺は複製、というか創造と思ってるけど・・・アレ?違いってあるか?」
「そうだな・・・じゃあ今試してみるか?ちょっと「銃」出してくれ」
「銃?って拳銃?まぁ、FPSもよくやってたから出せると思うけど・・・」
そう言ったユウキの手に拳銃が出てきた。
手渡されたソレをじっくりと見る。
確かにゲームでも見る型だ。
「・・・軍用自動拳銃ハンドガン、M1911か」
「え、見ただけで種類も分かるの?」
「少し。特に自分に向けられたモンは覚えてるよ」
「そ、そう・・・返しにくいよ、ソレ・・・」
ユウキの戸惑いを流して中身を見る。
銃口、照星、排莢口、遊底、照門、撃鉄、安全装置、銃把。
銃の外側だけではなく内側も作られているかを確認する。
「・・・うん、大丈夫だ。ちゃんと作られてる」
「そうなんだ?・・・んで、ちゃんと作られてるから何なんだ?」
「「創造」だったら中の創造・・・部品の一つ一つを思い浮かべないとならなかったけれど・・・良かったな、複製ならすぐに使える。便利な能力じゃないか」
「ああ、そういう事。確かに思ってたより、便利なんだな。それでその銃どうするんだ?言っとくけど長くは持たないぞ?」
「分かってる。だからまた今度もう一度見せてくれ」
「おう?分からんが分かった」
「よし」と言って立ち上がる。
話はまた後日にし、修行を始めるために雑談しているカイトたちの方へと歩く。
「修行かー・・・よくやるなぁー・・・特に女の子相手にも容赦無く」
「嫌だったのなら言ってくれれば止めるさ。だけど言わないから続けてるだけだ。まぁ、レナはともかくメアは乗り気みたいだがな」
「見事なまでに元気なオレっ娘だもんな」
「なんだ、俺の話か?」
自分の話題が出された事が聞こえて気になったのか、メアが駆け寄って来た。
「ああ、メアは魅力的な女の子だなって」
「あー、ソレアヤトに言ってほしかったなー」
「おい、コイツ俺の精神にさらりとダブルコンボ打ち込んで来やがったぞ」
「お前じゃないんだよ」という意味と目の前で惚気られてるというのでダブルというわけだ。
まぁ、一応言っとくか。
「メアは魅力的な女の子ダナー」
ほぼ棒読みで。
「おう、ありがとっ♪」
「クソ・・・感情の篭ってない筈の言葉で喜び喜ばせるとこを見せ付けられるとか・・・爆発しろよ。むしろさせようか?」
「火薬の無いこの世界で魔法すらロクに扱えてないお前にできると?」
手の平に軽い小さな爆発を起こして見せる。
どこぞの口の悪い爆弾人間を連想させてみたのだが流石はユウキ。
「やめろよ。そのまま口悪く「このくそナードが!」とか罵倒されて爆殺されんのは勘弁してくれ」
「流石、何のネタかすぐに理解したか」
「俺は何の話か分からないんだけどな?」
俺とユウキのやり取りを見てたメアが頬を膨らませて少しスネていた。
このまま話が発展するわけでもなさそうだからそろそろメアたちの相手に戻るとしよう。
「さて、今日の修行だが・・・魔法の訓練でもするか」
「「魔法の?」」
ユウキを含めた俺以外の全員の声が重なった。
カイトがその先の疑問を口にする。
「って事は今日は実践は無しですか?」
「そこは魔法を覚える速度による。覚えたら魔法と体術、剣術を交えてやる」
「うわー、よりハードですね・・・」
「ハードじゃない修行なんて修行じゃねえよ。って事で修行を・・・・・・ん?」
ふと、ある事に気付いて頭を傾げる。
「どうしたアヤト?男がそんな事しても、ノクトレベルじゃねえと萌えねえぞ」
「いや・・・そういえば魔法ってどうやって教えるんだろうかと」
「・・・はい?」
カイトが「何を言ってるんだこの人は?」という目で見てくる。
俺も自分が何を言ってるか理解できてるから悔しいけど何もいえない。
「じゃあ・・・師匠は今までどうやって魔法や魔術を使ってたんですか?」
「んー・・・感覚っていうか、想像?」
「想像、ですか・・・?」
カイトの言葉に頷いて七属性の魔法を目の前の宙に浮かべる。
「「アレはできるか?」「こんな事ができたらいいな」そんな感じで使ってた」
「嘘でしょ・・・」
「アヤトがそれなら俺にもできるかな?」
なんて言ってユウキも実践しようとした。しかしーー
ーーボンッ!
「ん熱ぅっ!?」
突き出した手の平から何を出そうとしたのか知らないが、とりあえず爆発した。
いや、アレはどちらかと言えば暴発が正しいだろう。
証拠にユウキの手が火傷してしまっている。
「ほら、回復」
「お、おう、悪い・・・痛て、失敗か・・・」
「それもその筈ですよ」
聞き覚えのある声が会話に入って来る。
振り返ると空間に亀裂が入っていて、そこからノワールとあーしさん、そしてランカもやって来ていた。
あーしさんを見たユウキの肩がビクッと跳ねる。
どうやら拳が溝に打ち込まれた事が多少トラウマになっているようだ。
そんな事はお構い無しにノワールが説明を続ける。
「本来ならば少量の魔力しか持ち合わせていない者は魔力の正しい出し方を知らなければ魔法を行使する事すらできません。そしてユウキ様の場合、中途半端に魔力が多いせいで魔力を魔法に変換しようとする直前で失敗し暴発してしまうのです」
「じゃあ、アヤトのは?」
「アヤト様の場合は・・・特例、というより異例という言葉が正しいのでしょう。確かにアヤト様程の膨大な魔力があれば魔法くらいなら無理矢理にでも出せましょうが・・・ですがソレだけではなく本当に感覚的に掴めてしまっているのでしょう。そして、精霊たちに好かれているのも要因の一つでしょうね」
ニッコリと笑って微笑み掛けてくるノワール。
ノワールからですら言われた異例という言葉が胸に刺さる。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか言葉を続けた。
「ですので魔力関係に関する教育はアヤト様は向いておりませんので代わりの者を連れて来ました」
「・・・ソレがあーしさんとランカか?」
「いえ、エリ様は教育を受ける側でございます。ですので教えるのは私とランカで行います」
サラッとランカを呼び捨てにしたのが気になったが、ソレを聞くのは今じゃなくてもいいか。
「んじゃあ、今回は俺の出番は無さそうだし、どうしようか・・・」
「んじゃ、俺と遊んでくれよ!」
手持ち無沙汰になっているとナルシャが話し掛けて来た。
というかーー
「いたのか、お前・・・」
「いたよ。お前がここに閉じ込めてからずっといたよ」
「謝らねえからな?魔城でそうだったけど、お前を放置すると何かしら物をぶっ壊すから心配なんだよ」
現にコイツ、魔城でフィーナを追い掛け回してた時あらゆる物を城の中に壊してたからなぁ・・・。
「ウッ・・・ま、まぁ?ここは色んな動物がいて食料には困らないから別に俺は不自由してないし?魔物がいないから退屈でちょっと物足りないけど・・・」
「なぁ、アヤト。この金髪美人でもう一人のオレっ娘は誰?」
ユウキがコッソリと耳打ちして来た。
「覚えてないか?魔王戦の時ヘレナにグルグル巻きにされて担がれてたり、魔城の中で暴れてたりしてた奴の事」
「あ?・・・あー・・・いたな、そんな奴」
「そんな奴っていうか、それがこのナルシャって奴なんだけど・・・」
「おう!そう言うお前はなんか変な奴!」
「「変な奴・・・」」
ナルシャの一言にユウキは苦笑いし、俺は軽く吹いた。
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