198 / 303
武人祭
ドM参戦
しおりを挟む「■■ーーフリーズ!」
短い詠唱が唱えられ、フィーナを中心に周囲の地面や草木が一気に凍らされていく。
ソレを見たレナは素早く手を斜め上にかざし、ドレスグローブから黒い紐状のものを飛ばして木の枝に巻き付け、次の瞬間レナの体が引っ張られるように空中へと飛ぶ。
レナはそのまま空中で体を逸らして弓を向けて放ち、フィーナも自分の適正である火、水、風、土を駆使して物量で攻める戦法に出た。
そしてレナは腕から紐を飛ばして木から木へ器用に移り、フィーナもレナに負けじと木に飛び移って対抗し始めた。
「なんとまぁ、アクロバティックに・・・・・・」
「・・・・・・」
感心してる俺の横でミランダが唖然とした顔をしていた。
「彼女たちは・・・・・・いや、フィーナ殿はまだ分かる。しかしレナ殿は一体・・・・・・?」
「凄いだろ?うちの狙撃手。正直技術だけなら俺の世界でも十分に通用するレベルだし、鍛えればかなりのレベルになる。今あんたと戦っても・・・・・・いや、ダメだな」
「ダメ?何故だ、あの子の技術はすでに人の域を超えている。私も腕に自信があるが、レナ殿が簡単に負けるなど・・・・・・」
「負けるよ。あんたが最初から全力で近接戦に持ち込もうとすればレナは簡単に負ける。それが今のアイツの弱点だ」
今は遠距離を得意としているフィーナを相手にしてるから凄まじいポテンシャルに見えるが、あの欠陥を克服しなければ使い物にならないだろう。
「まぁ、それは後で分かるとして。今はアイツらを見てるとしよう」
ミランダにフィーナたちの視線を戻すよう誘導する。
アイツらの戦いは徐々に苛烈となっていった。
実は今ここら一帯に回復魔術を展開してしている。だからある程度の無茶はできる・・・・・・が、体が真っ二つになったら流石にどうなるかなど分からない。
もしかしたらギリギリ生きているなら下半身が千切れても再生するかもしれないが・・・・・・今度そういう実験もしておこう。
ちょっとだけヒヤヒヤしたが手を出さずにいる事に決めた。
しばらくするといつの間にかレナが劣勢に追い込まれていた。
「さっきまでの・・・・・・余裕は・・・・・・どこに行ったのかしら!?」
「あぅ・・・・・・ふぃ、フィーナさん、だって・・・・・・」
両者共に息切れして疲弊はしている。
しかしフィーナは魔力が減っているだけであって威力自体はそのままで放たれるのに対し、レナの方は腕に疲労が溜まり威力が落ちてきていた。腕がプルプル震えているのが見える。
いくらレナでもあんな無茶な撃ち方を続けていればそうなる。むしろ今までよく撃てていたものだ。
だがフィーナもフィーナだ。
レナの高精密度の射撃を全部交わしながら魔術を放っているため、全体的に疲労している。
もはやレナの弓を避けるのにも転がって回避するのがやっとのようだ。
フィーナが優位と言っても僅差である。
そんな二人に今まで傍観していたカイトたちが割って入る。
「大丈夫か、レナ?」
「カイト君・・・・・・うん、ありが、とう・・・・・・」
「フィーナをここまで追い込むなんて、レナも凄えな」
「・・・・・・何しに来たのよ?」
「え、加勢?」
メアとミーナはフィーナの方に、カイトはレナの方へと立つ。
このまま放置しておいて乱闘のようにさせてもいいが、せっかくゲストがいるんだ。相手してもらおうじゃないか。
すると両者の真ん中にミランダが立ち塞がった。
お嬢様らしい服装に木刀という、なんともシュールな絵面で。
「ミラ姉・・・・・・?」
「君たちの戦いを見てウズウズしてしまったよ。私の相手もしてくれないか?」
「最高ランクの冒険者を相手に・・・・・・!?」
ミランダの言動にカイトたちが驚愕する。
アイツの表情から嘘や冗談ではない事を感じているのだろう。
全員が戸惑っている中、一番にメアが突進する。
「でやっ!」
「おっと・・・・・・随分逞しくなられましたね、メア様」
「軽く流された・・・・・・!」
そしてミランダはそのままメアへと容赦なく斬り返した。
「っぶね!? やっぱミラ姉は昔から強ぇな!」
「メア様も成長なされた。少し前までなら今ので一発当てて気絶まで持っていけたのですが」
「怖ぇ・・・・・・初っ端から本気かよ?」
「フフフッ、まだ本気じゃありませんよ?」
ミランダの言っている本気とは、俺との決闘で見せた動体視力強化のスキルを使用した時の事を言っているのだろう。
と言っても、スキルを使用していない現段階でもまだ本気ではない事は確かだ。
伊達に最高ランクの冒険者を務めてないという事か。どこぞの筋肉ダルマと違って。
するとミランダの地面が鋭利に尖り襲い掛かる。
ソレをミランダは体を僅かにズラして避け、魔術を放った本人を見る。
そこにはミランダを憎々しく睨むフィーナがいた。
「あんた、何のつもりよ・・・・・・?弟子でもないくせに」
「厳しいな・・・・・・彼に手解きを受けている点では同じ弟子じゃないか?」
「たまにしか面見せない奴を同類とは思いたくないわね。それで?私は何のつもりか聞いてるんだけど」
「いや、何。さっき言った通り私も相手をしてほしくてね。もちろん君たち全員が相手になってくれて構わない」
そう言ってミランダはさっきまでの穏やかな笑みではなく、俺と出会った時のような高圧的な雰囲気を纏わせる。
その気迫に負けてほとんど全員が数歩下がってしまう。
ギリギリ足を止めたのはカイトぐらいだった。
「君は中々胆力があるようだ。まずは君から来るか?」
「・・・・・・これも修行って事ですかね?」
カイトの視線が俺へと向けられる。
「さぁ?そこは本人たちの気持ち次第じゃないか?・・・・・・なんて、アヤト殿の言葉を借りてみたんだが」
「それは俺も同意ですッ!」
カイトがミランダに正面から突っ込む。
「私相手に正面から挑むか!」
「そんなわけないでしょう!」
迎撃しようとしたミランダとの距離が近付いた瞬間、カイトの姿がミランダの目の前から消え、背後へと回っていた。
チャンスを捉えても油断せず、静かに一閃を放つ。
「ッ!?」
ミランダが素早く反応し、カイトの一閃を受け止める。
「今のは驚いたぞ・・・・・・!」
「反応された!?」
「誰を相手にしてると思ってる?もっと本気で来なければその剣は届かないぞッ!」
交えた剣は鍔迫り合いをするまでもなくカイトの体が剣ごと数メートル吹き飛ばされる。
大人子供の年齢差もあるだろうが、ミランダは華奢な体に見合わず剛腕。カイトが正面から受け止められる筈がない。
「グッ・・・・・・!」
「ほら、どうした?相手がアヤト殿でないからと遠慮せず掛かって来い!!」
ミランダが片手を前に出して指をクイッと曲げて挑発をする。
だが気付くとすでにレナがミランダの目の前にいた。フィーナの時と同様、宙で弓を引いた姿勢で。
そして風に揺られ、いつもは前髪で隠れていた素顔を覗かせる。
しかしその顔は美人ではあったがいつものレナではなく、獲物を狙い仕留めるような鋭い眼光をしていた。
その目に睨まれたミランダは体を小刻みに震わせ、頬を紅潮させて笑っていた。
あ、アイツ・・・・・・。
レナの弓に「黒い矢」が突然現れる。
それは一撃必殺の威力を持つあの弓専用の矢。それがレナの技術で必中必殺のへと昇華している今、たとえミランダ相手でもただでは済まない。
「沈んで」
静かに一言だけハッキリと呟いたレナは弓を引き、キリキリと音を立てた後、高威力の矢が放たれた。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。