無実の男爵令嬢と無能チートの牢番くん~最強SSRの侯爵令嬢が出るまで過去改変を繰り返し「囚人ガチャ」を引きまくるしかないようです~

鈴林きりん

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牢番くんの打ち明けと男爵令嬢の決意

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「おとぎ話のような話ですね」

 さすがに都合が良すぎると感じたのだろう。
 これまでに彼女が受けて来た仕打ちを思えばわかる。
 今度は僕を信じてもらうために言葉を紡いだ。

「話すと長いんだけど、古くは建国王の時代にまでさかのぼってね。大昔に僕と同じ力を持った魔法使いが居たらしいんだ」

「歴史の授業で習った気はします。彼の者の大いなる祝福は世界を変えるものだと。それゆえに封じられ、もはや現代には残されていない、という話を」

「真偽を見抜き、そして他者を逆行させた伝説の魔法使い。建国王と共に荒れた国を平定した者の末裔、それが僕だ」

「それが何故牢番などに?」

 半信半疑と言った風に問い返す。

「祖先の持つ力は世界を変えた。それはかつては女神が与えたもうた素晴らしき祝福であり、同時にいつしか、おぞましい呪いへと変わった」

「何故?」

「良い結果だけをもたらすわけじゃないから。使った結果は予想が付かない。誰かを助けた代わりに誰かが死ぬことも多かったそうだ。やがては、不幸と不和をまき散らす者とも言われた」

「例えば戦で使えば、誰かを身代わりにしたり、本来なら死なない敵を殺したり?」

「それもまた、誰かの運命を弄ぶ、とも言えるだろう」

「私にはよくわかりません。ただ、それが本当ならとても恐ろしいです」

 彼女は震えて、己の身体を抱きしめる。

「だからこの力は呪いだ。祖先は祝福の使用を戒め、表舞台から姿を消すことに決めた。と言うより、恐れたんだ。能力は必ず子どもの誰か一人に受け継がれ、そして同じ血を持つ相手には使うことが出来ない。信頼できる相手を見定めるのも困難と言える。だからこその真偽を見抜く力、なんだけど」

「たとえ相手が真実を語っていても、何をするかは予測できない?」

「そう言うことだね。万能のように思えて落とし穴はある。案外使いにくい。よほど賢い者なら存分に使いこなせるだろう。だが、例えば幼子がそれを持つと考えてごらん」

「相手の秘密を気軽に暴露したり、過去に飛ばしたり、ですか。確かにそれはとても危ういですね。迂闊に周囲に露見しては身の危険も及ぶかもしれませんし。強く戒めて、いっそ絶対に使わないようにとでも言わないと何をしでかすか、ということですか」

 彼女はそれなりに柔軟らしく、ある程度は信用してくれたようだ。

「そうだね。強い祝福ゆえに身を滅ぼしかねない。残念ながら一族はやがて行き場を徐々に失い、いつしか誰かの代わりに牢番の一族としてここに縛られることになった。何代か前に力を使った結果らしいが、細かい経緯は知らない。誰かを過去へと送った結果なんて予想できるものではないからね。他人任せのアテにならない力だよ」

「無実の証明が出来るとなれば非常に有用ではあると感じますが」

「問題はそれを周囲に認めさせることだね。何事も信用は大事。ある程度身分や教養などもないとね。ならいっそ、何もしない方がいいと言う一族の考えも理解はできるよ。全てを隠して闇に葬り、秘密を抱えて歴史の影に消えていく。誰にも真実を語ることなくね」

「それをどうして私に教えてくれるんですか? 大事な秘密なんでしょ」

「本当は、使いたければ使ってもいいんだよ。もはや一族は僕を残すのみ。その結果をどう受け止めるかは自由にしろと親には言われている。哀れに思って気の毒な罪人の男性に使ったこともある」

「どうなったんですか? その方は助かったの?」

「上手く行かなかった。そこまで遠くの過去には戻れないんだ。精々が数日。繰り返しても既に状況は詰んでいた。やがては彼は絶望し牢の中で自害してしまった。だからもう二度と使うまいと思っていた」

「必ずうまく行く保証はないのね」

「だから使わないようにしていた」

「それを私のために?」

「僕はここで生きて、ここで死んでいく。でも、それも空しくてね。僕の祝福は僕自身には何も役に立たない。仮に運命を変えようと思うなら誰かの力を借りるしかない。つまり常に他者を必要とする祝福なんだ」

 だから誰かに縋りたい。そういった気持ちはある。

「生かせばとても強力でしょうが、常に危険が付きまとうのですね」

「そうだ、下手に露見すれば誰かに利用されるか殺される。誰かの嘘を見抜くことだってさ、幼子に限った話じゃない。なんでも顔に出し、素直に口にしてしまう人間には上手く扱えない。祝福は持ち手を選ぶし、周りにどう評価されるかなんてわからない」

「私の暮らした範囲で、木炭を出す祝福が時に褒められ、馬鹿にされるように」

「僕には使いこなす才覚も度胸もない。だから、ずっと隠し続けて暮らしてきた。息をひそめるようにしてね。でもそれも、だんだん疲れて来てしまった。どうせなら、一度くらいは誰かを助けてみたいんだ」

 生きている意味を見出したい。
 つまりは己の欲望と言えた。

「お願いします。私、死にたくない」

 必死にこちらに縋る。
 何度裏切られても信じずにはいられない。
 純粋でとても清らかな目だ。幼い、とも言えるかもしれない。
 だけど、自分がとうに失った生きる希望のようなものを彼女は持っていた。
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