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過去逆行開始~アンナ1~
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「わかった。その代わり、辛いのは覚悟してね」
「死ぬよりは何でもマシだよ」
男爵令嬢と言うよりも、恐らく彼女本来の口調で言う。
「違いないね」
力を集中させて、彼女に祝福を使う。
牢の中から消え去る。直後に、その場に現れた。
これが「逆行」によって起こる現象なのだ。
戻れる時間は数日程度。
僕からは一瞬で現れたように見えるが、彼女にとっては違う。
「どうなった? 何があったの?」
「わ、わからない。戻ったのは婚約披露パーティの夜でした」
異なる時間を過ごし、同じような結果を辿り「今」の僕の前に現れる。
何が起こっているかは彼女自身にしかわからない。
混乱している彼女から話を聞いていく。
確かに過去へと戻れたらしい。
もはやこちらの話を疑う様子はない。
「それではやはり途中で具合が悪くなり、また同じ結果になったと」
「はい。ただ、思えばあのとき、殿下に渡された飲み物を口にしてからだった気がします」
「そこで何かを盛られた可能性は?」
「そんな」
彼を信じたいのだろう、救いを求めるような顔をした。
何が正しいかは僕にはわからない。
ただ彼女にとってのやり直しを手伝うだけだ。
「もう一度やってみよう。ただし、用心して。飲み物や口にするものを気を付けて」
「はい」
再び、彼女は消えて一瞬で戻ってくる。
「どうだった?」
僕にとっては連続した時間だが、彼女からすれば過去に飛ぶたびに数日が経過している。
なので、様子は現れるたびに違っていた。
「少し考えて、殿下の視線が逸れた瞬間に飲み物を捨てました。そしたら具合が悪くならず、パーティには参加出来てたのですけど、殿下が私のためだとオリヴィア様の断罪をお始めになって」
「主導していたのは彼か」
「私はそんなことは願っていない、おやめてになってくださいと何度も申したのですが、殿下に押し切られてしまい。強く抵抗してはどんな咎めを受けるかもわかりません。周りの目も恐ろしくて。オリヴィア様は逆にその様子をいぶかしんでおられたようです」
「侯爵令嬢の断罪は以前同様に失敗した?」
「えぇ。陛下が現れ一旦は話をお預かりになられて。私は尋問を受け、殿下に虚偽の罪や愚かな行動を促したと言われて、またここへ」
「王太子殿下は?」
「わかりませんが、処罰を受けるような話は聞かされませんでした」
「正直、何か腑に落ちない」
「殿下の振る舞いですよね。確かに、なんと言うか」
「王太子が衆人環視の前で婚約者の断罪なんてね。彼は普段からそういう人物だった?」
「少なくとも常に私のためだと言って優しくしてくださいました。でも、それにしてはあのときは私を一切顧みようともせず、断罪そのものが目的のような態度でした。強く押しのけられ、殿下の護衛に取り押さえられてしまいましたし」
「失敗を恐れないにもほどがある。よほど愚かなのか、あるいは」
「何かの思惑があったか、ですよね」
息を吐くように言う。
「君自身がそう感じた?」
「あまりに強引でこちらを無視していました。まるで物のように。否定したくても、そうとしか思えない」
彼女にとっての数日間で心境に変化があったようだ。
明らかにもう、以前の信頼が欠け落ちている風に見えた。
ちなみに祝福で彼女の発言を精査したが、真実しか語っていない。
「理由を考えよう。王太子は何をしたかった?」
「わからない。私を処刑台に送ること? いえ、でもそんなことする必要はないと思う」
「男爵令嬢だしね。その気になれば権力でどうとでもできる」
「それに恨みを買うようなこともなかったと思います。というのも、向こうから親し気に接して来られて。尊い方ですし、こちらから関わったわけではないです」
「では、恥を掻かせたかったのは相手の方か」
「素直に考えれば、オリヴィア様との婚約を破棄するのが目的だったのでしょうか。それにしては結果がお粗末と言うか、私が損をしただけですけど」
静かな怒りを感じさせる口調だ。
絶望を超えて新しい感情が芽生えている風に見える。
「話が見えて来たね。オリヴィアと言う方はどういうお人柄なの?」
「噂だけ聞けば公明正大で立派な人物ですね。私は殿下から良くない話ばかり聞かされていましたが、彼が信用できないとなれば、そう、悪い噂は何もなかった。断罪の場でもむしろ私を気遣うのようなことも言っておられましたし」
「彼女を味方に付けることはできるだろうか」
「殿下から逃れて、オリヴィア様に匿ってもらうような?」
「できるだろうか」
「やるしかないよね」
不運な男爵令嬢は意を決したように顔を上げた。
繰り返しの試行錯誤が始まった。
「死ぬよりは何でもマシだよ」
男爵令嬢と言うよりも、恐らく彼女本来の口調で言う。
「違いないね」
力を集中させて、彼女に祝福を使う。
牢の中から消え去る。直後に、その場に現れた。
これが「逆行」によって起こる現象なのだ。
戻れる時間は数日程度。
僕からは一瞬で現れたように見えるが、彼女にとっては違う。
「どうなった? 何があったの?」
「わ、わからない。戻ったのは婚約披露パーティの夜でした」
異なる時間を過ごし、同じような結果を辿り「今」の僕の前に現れる。
何が起こっているかは彼女自身にしかわからない。
混乱している彼女から話を聞いていく。
確かに過去へと戻れたらしい。
もはやこちらの話を疑う様子はない。
「それではやはり途中で具合が悪くなり、また同じ結果になったと」
「はい。ただ、思えばあのとき、殿下に渡された飲み物を口にしてからだった気がします」
「そこで何かを盛られた可能性は?」
「そんな」
彼を信じたいのだろう、救いを求めるような顔をした。
何が正しいかは僕にはわからない。
ただ彼女にとってのやり直しを手伝うだけだ。
「もう一度やってみよう。ただし、用心して。飲み物や口にするものを気を付けて」
「はい」
再び、彼女は消えて一瞬で戻ってくる。
「どうだった?」
僕にとっては連続した時間だが、彼女からすれば過去に飛ぶたびに数日が経過している。
なので、様子は現れるたびに違っていた。
「少し考えて、殿下の視線が逸れた瞬間に飲み物を捨てました。そしたら具合が悪くならず、パーティには参加出来てたのですけど、殿下が私のためだとオリヴィア様の断罪をお始めになって」
「主導していたのは彼か」
「私はそんなことは願っていない、おやめてになってくださいと何度も申したのですが、殿下に押し切られてしまい。強く抵抗してはどんな咎めを受けるかもわかりません。周りの目も恐ろしくて。オリヴィア様は逆にその様子をいぶかしんでおられたようです」
「侯爵令嬢の断罪は以前同様に失敗した?」
「えぇ。陛下が現れ一旦は話をお預かりになられて。私は尋問を受け、殿下に虚偽の罪や愚かな行動を促したと言われて、またここへ」
「王太子殿下は?」
「わかりませんが、処罰を受けるような話は聞かされませんでした」
「正直、何か腑に落ちない」
「殿下の振る舞いですよね。確かに、なんと言うか」
「王太子が衆人環視の前で婚約者の断罪なんてね。彼は普段からそういう人物だった?」
「少なくとも常に私のためだと言って優しくしてくださいました。でも、それにしてはあのときは私を一切顧みようともせず、断罪そのものが目的のような態度でした。強く押しのけられ、殿下の護衛に取り押さえられてしまいましたし」
「失敗を恐れないにもほどがある。よほど愚かなのか、あるいは」
「何かの思惑があったか、ですよね」
息を吐くように言う。
「君自身がそう感じた?」
「あまりに強引でこちらを無視していました。まるで物のように。否定したくても、そうとしか思えない」
彼女にとっての数日間で心境に変化があったようだ。
明らかにもう、以前の信頼が欠け落ちている風に見えた。
ちなみに祝福で彼女の発言を精査したが、真実しか語っていない。
「理由を考えよう。王太子は何をしたかった?」
「わからない。私を処刑台に送ること? いえ、でもそんなことする必要はないと思う」
「男爵令嬢だしね。その気になれば権力でどうとでもできる」
「それに恨みを買うようなこともなかったと思います。というのも、向こうから親し気に接して来られて。尊い方ですし、こちらから関わったわけではないです」
「では、恥を掻かせたかったのは相手の方か」
「素直に考えれば、オリヴィア様との婚約を破棄するのが目的だったのでしょうか。それにしては結果がお粗末と言うか、私が損をしただけですけど」
静かな怒りを感じさせる口調だ。
絶望を超えて新しい感情が芽生えている風に見える。
「話が見えて来たね。オリヴィアと言う方はどういうお人柄なの?」
「噂だけ聞けば公明正大で立派な人物ですね。私は殿下から良くない話ばかり聞かされていましたが、彼が信用できないとなれば、そう、悪い噂は何もなかった。断罪の場でもむしろ私を気遣うのようなことも言っておられましたし」
「彼女を味方に付けることはできるだろうか」
「殿下から逃れて、オリヴィア様に匿ってもらうような?」
「できるだろうか」
「やるしかないよね」
不運な男爵令嬢は意を決したように顔を上げた。
繰り返しの試行錯誤が始まった。
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