無実の男爵令嬢と無能チートの牢番くん~最強SSRの侯爵令嬢が出るまで過去改変を繰り返し「囚人ガチャ」を引きまくるしかないようです~

鈴林きりん

文字の大きさ
15 / 18

死を待つ牢屋と彼女の願い~天気予報の結果~

しおりを挟む
 地下牢の中に愛しい彼女の姿があった。

「シュテファン、あぁようやく会えた」

「アンナ!」

 喜びが爆発しそうになるのと同時に血の気が引く。

 どうして彼女が「牢屋に入っている」んだ?
 混乱していると、アンナは何事もない風に扉を開けてこちら側に出て来た。

「あ、アンナ。どうして?」

「オリヴィア様にお願いして、あなたと会えるまでここに入れていただいたの」

「そうだったのか。あぁ、本当に無事なんだね。どこも痛くない? 何もされてないか? すまない。もっと早くに助けてあげられたら、辛い思いをさせて、ごめんよ。ごめんよ」

 気が付くと僕は泣いていた。
 とても弱い生き物になって、アンナと抱き合う。
 彼女もまた泣いていた。

「大丈夫。そんなに大変なことがあったんだね。私はあなたと別れてから数日しか経っていないよ。何かされたという記憶もない。全てはなかったことになったんだと思う」

「良かった、良かったよ」

「ねぇ、シュテファン。ここから、出よう」

 彼女は僕に顔を近づけて言う。

「え、でもそれは」

「とても色々なことがあってね。王太子殿下のことや、その他のことも。私達は今までと同じ生活はもう送れないと思う。あまりに大きなことに関わり過ぎた。侯爵家の庇護に入って、姿を隠した方がいいと言われたの」

「それは、そうだろう。祝福を盛大に使ってしまったからね。すっかり露見してしまった。僕はこれからどうなるだろう」

「わからない。でも、とにかくここから出よう。数日ここで寝泊まりさせてもらったけど、やっぱり人間が長く留まるような場所じゃないよ。あなたの存在を感じていたから耐えられたけど、もしも姿が見えるようにならなかったら、ってすごく不安だった」

「それは、そうだろう。ここは死を待つ牢屋だもの。君のような美しい人が来る場所ではない」

「あなたのような優しい人が留まる場所でもないよ」

 彼女の言葉の一つ一つに思いやりが溢れている。
 まるで亡くなった母親の言葉を聞いているようだ。

「だけど、僕が居なくなれば、また誰か別の人が牢番として縛られるよ」

「そうだね。でも、それも仕方のないことだよ」

「そうかな」

「王太子殿下が暗殺されたの」

「えっ?」

「ギルフォード殿下は元から隣国の密偵に接触されていたらしくて。詳細はわからないけど、国家転覆を狙う動きとして彼もまたなにがしかの陰謀に翻弄されていた。その結果、彼は命を奪われた。私は彼に殺されかけたから、許せはしないけど、何かの罪は感じたよ。私の代わりに殿下は死んだんだろうって」

「そんなことは。君は何にも悪くないじゃないか」

「生きることはきっと、そう言うことだよ。何の罪も背負わずに生きていくことなんてできない。でもね、自分が何を一番守りたいかだけはきっと選べると思う」

「何を守りたいか?」

「私はあなたが一番大事なの」

 力強くそれを伝えて来るアンナ。

「一緒に日の当たる場所で、話がしたい。もっと触れ合いたい。そして、いつか死ぬ時が来るのならさ、最後まで一緒に寄り添って居ようよ」

 彼女の涙を滲ませながらの言葉に、僕は心を抉られた。
 その温かさにもっともっと触れていたい。
 ずっと側に居たい。離れたくなんてない。

「うん。うん、わかったよ。ありがとう」

 愛していると、その場で言えるほど強くなかった。
 僕はちっぽけで己の運命一つ自分で変えられない愚かな人間だ。
 でも、アンナは僕に微笑みかけてくれた。
 だったら、せめて彼女に見合う人間にならなければ。

 そして僕は、牢屋から出た。
 一番の囚人は僕だったのかもしれない。

 外は天候を読める誰かが言っていたように雨だった。
 よく当たる祝福だ。

 日の出はまだ拝めないね、とアンナと共に困った笑みを交わし合う。
 暗い夜明けだ。これから訪れる困難を予想させる。
 同時に絶対に日の光の下で彼女と笑い合いたいと言う気持ちも湧いた。
 何事も捉え方次第だ。
 心構えは出来ている。
 今日が雨だと教えてくれた誰かに、感謝した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

まず、後宮に入れませんっ! ~悪役令嬢として他の国に嫁がされましたが、何故か荷物から勇者の剣が出てきたので、魔王を倒しに行くことになりました

菱沼あゆ
ファンタジー
 妹の婚約者を狙う悪女だと罵られ、国を追い出された王女フェリシア。  残忍で好色だと評判のトレラント王のもとに嫁ぐことになるが。  何故か、輿入れの荷物の中には、勇者の剣が入っていた。  後宮にも入れず、魔王を倒しに行くことになったフェリシアは――。 (小説家になろうでも掲載しています)

転生王女の破滅回避プラン90! ~無自覚人たらし王女、アリスが来るまでに美形側近を溺愛モードにしていました~

とびぃ
ファンタジー
◆「悪役令嬢」の皮をかぶった「ブラック企業耐性MAXの元オーナーパティシエ」が、命を懸けた90日間のRTA(リアルタイムアタック)に挑む! 主人公リリアは、激務で過労死した元オーナーパティシエ(享年29歳)。次に目覚めたのは、乙女ゲームの**「断罪される悪役令嬢」**でした。90日後、ヒロイン・アリスが来訪する日までに、ヒステリックな女王の理不尽な命令で処刑される運命! 「二度と過労死(バッドエンド)は嫌だ!」 死刑執行(激務)から逃れるため、リリアは前世の経営スキルを発動します。彼女の目的は**「破滅回避」と「優雅なスローライフ」。恋愛なんて非効率なものは不要。必要なのは、最高の業務効率と、自らの命を守るための『最強の経営資産』**だけ! ◆美形たちを「最高の業務効率」と「お菓子」で買収! リリアは、絶望と疲弊に沈む攻略対象たちを、冷徹な『経営哲学』で救済します。 • 愚直な騎士団長ジャック:予算不足で士気が崩壊した騎士団を『エナジークッキー』と『現場理解』で再建。「貴女こそが真の主君だ!」と忠誠(独占欲)を捧げる。 • 過労死寸前の宰相ラビ:書類の山を『完璧な事務処理』と『脳疲労回復チョコ』で劇的改善。「貴女の知性は神の領域!」と行政権限(支配欲)を委譲する。 • ミステリアスな情報屋チェシャ猫:「退屈」を嫌う彼を『予測不能な策略』と『日替わり気まぐれスコーン』で餌付け。「君という最高の獲物を独占する!」と影のシナリオライターとなる。 ◆RTA成功の代償は「逃げ場のない溺愛ライフ」? 90日後、最強の布陣でヒロインの告発を論理的に打ち破り、見事RTA成功! リリアは安堵とともに「明日からは優雅なスローライフ!」と宣言しますが、彼らの溺愛は彼女の想像を超えていました。 彼らの忠誠心は、リリアの「自由」を脅かす**狂気的な『独占任務』**へと進化! 「貴女の創作活動は、この国の公務です。24時間私が管理します」 破滅フラグは折ったのに、なぜか最強の美形たちに囲まれ、自由を奪われる新たな**「難易度インフィニティの溺愛ライフ」**が幕を開ける! これは、過労死寸前王女の、甘くて恐ろしい逆ハーレムエピローグ!

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

離婚するはずの旦那様を、なぜか看病しています

鍛高譚
恋愛
「結婚とは、貴族の義務。そこに愛など不要――」 そう割り切っていた公爵令嬢アルタイは、王命により辺境伯ベガと契約結婚することに。 お互い深入りしない仮面夫婦として過ごすはずが、ある日ベガが戦地へ赴くことになり、彼はアルタイにこう告げる。 「俺は生きて帰れる自信がない。……だから、お前を自由にしてやりたい」 あっさりと“離婚”を申し出る彼に、アルタイは皮肉めいた笑みを浮かべる。 「では、戦争が終わり、貴方が帰るまで離婚は待ちましょう。   戦地で女でも作ってきてください。そうすれば、心置きなく別れられます」 ――しかし、戦争は長引き、何年も経ったのちにようやく帰還したベガは、深い傷を負っていた。 彼を看病しながら、アルタイは自分の心が変化していることに気づく。 「早く元気になってもらわないと、離婚できませんね?」 「……本当に、離婚したいのか?」 最初は“義務”だったはずの結婚。しかし、夫婦として過ごすうちに、仮面は次第に剥がれていく。 やがて、二人の離婚を巡る噂が王宮を騒がせる中、ベガは決意を固める――。

転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す

RINFAM
ファンタジー
 なんの罰ゲームだ、これ!!!!  あああああ!!! 本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!  そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!  一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!  かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。 年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。 4コマ漫画版もあります。

処理中です...