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第一章
第一話 誘引
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"やっぱり、私には荷が重すぎる…"
ルシウスからの申し出を保留にしたレイは、彼の滞在中に使用することを許された屋敷の一室に入ると、椅子に座ってテーブルへと前のめりにもたれかかった。
「どうすれば……」
レイの頭の中は先ほどのことでいっぱいだった。レイはルシウスから申し出を受けた場合、仮に縁談が成立したとして、自分が次期王妃などの大役を任される器があるわけがないと考えていた。
ましては、王族とはその血統を重視するもの。貴族の私生児とはいえ、元は平民の出である自分の血が王家に混じることを良しとしない者たちもいる。
いわば、この縁談には利益も大きいが、それと同等か倍以上不利益も多い、当の本人には究極の選択であった。
「レイ様」
レイがテーブルにもたれかかり、頭を抱えて考えに耽っていると、本家の使用人の一人が部屋を訪ねてくる。
「何でしょうか?」
「ルシウス様からの言伝を預かっております。何やら、お渡ししたいものがあるとのことで、今から屋敷の裏庭、井戸の近くに来て欲しいと」
「わ、わかりました」
使用人の言伝を聞いたレイは、ドレスを整え、慌てて屋敷の裏庭へと急ぐ。その時、言伝を携えた使用人の表情が引っ掛かったが、特に何も考えず井戸へと辿り着く。しかし、そこにはルシウスの姿はなかった。
「ルシウス様?ッ⁉︎」
レイは突然、背後から何か硬いもので頭部を殴りつけられる。かなりの衝撃で視線が揺らぎ、意識が朦朧となってその場に倒れ込んだ。
「な……に?」
朦朧とする意識の中、聞き覚えのある声が聞こえる。忘れたくとも忘れたくない、あの姉たちの声が。
「ほ、本当にやるの?」
「えぇ、こんな奴に先に幸せになられちゃ腹が立つわ」
「でも、セシリア姉様…」
「何よ。今更私が間違ってるって言いたいの?やってしまった以上、あなたも共犯よ」
「……」
"セシリアにエリザ…な、なんでここに……"
そんなことを考えていると、再び頭に衝撃が走る。薄れゆく意識の中で最後に見たのは、醜い顔で笑い合う二人の姉達の姿だった。
◇
体が水に包まれ、頭が冷たい感覚に襲われる。しかし、不思議と呼吸が出来た。出血が酷いせいか、ほとんど身動きが取れない状態だった。
「う……うぅ」
ゆっくりと目を開けるレイの視界には、暗く光のない壁が広がる。ほとんど動かない顔を上げて頭上を見ると、円状の穴から星が輝く夜空が見える。
『聞こえる?定命の者』
すると、レイの頭の中に不思議な声が響く。それは男とも女とも取れないような不思議な声だった。
「誰……?」
『聞こえているわね。私は…そうね。とりあえず、ベアトリスとでも名乗っておきましょうか』
「ベアトリス…」
『さて、これからゆるりと死にゆくあなたに人生最大で最後のチャンスを与えるわ。このまま冷たい水に体温を奪われ、致死量の血を流して、寒さの中ゆっくりと孤独に死を迎え入れるか。私が与える力を使って定められた運命の世界を掻き乱すか。どちらか一つを選びなさい』
「世界を…掻き乱す…?」
『そうよ。この世界はやがて混沌に満ちる。後者を選ぶなら、あなたに全てを変えることができる力を与える。その力を何に使おうが、あなた次第よ』
「混沌……」
ベアトリスと名乗る正体不明の声に、レイは逡巡する。しかし、どちらにしてもこのままでは死を待つだけだと理解したレイは答えを出す。
「私は……死にたくない。力が欲しい、生きるために」
『ふふ。そう……ならこちら側に来なさい』
レイの覚悟を聞いたベアトリスは満足そうに応える。すると、井戸の水が彼女の体に纏わりつき、傷ついた体を即座に癒す。
そして、その背中を埋め尽くすほどの紋様を描いていく。
『さぁ、私たちを存分に楽しませなさい。レイ=フライア。世界を混沌の大海へと変えなさい』
「……っ!?」
気がつくと、レイは井戸の底で立ち上がっていた。先ほどまでの痛みは嘘のように消え、それどころか体の底から力が湧いてくるような感覚さえ覚える。
「一体、何が……?」
困惑するレイ、辺りを見渡すがそこには誰もいない。ベアトリスと名乗った存在が何なのか分からないまま、おもむろに井戸の内壁に手を掛ける。
「この力……いつっ⁉︎」
突然の頭痛を感じる。自らの身に宿った得体の知れない強大な力に困惑しながらも、レイは壁の石を伝って井戸の底から這い上がる。
辺りはすでに暗く、屋敷に灯りが灯っていない所から見るに、すでに寝静まるほど深夜になっていると推測する。
水と血で汚れたドレスの裾を絞っていると、離れの方からランタンの光が近づいてくることに気がつく。
「れ、レイ様?」
「セラ?」
「レイ様ぁあ‼︎」
レイの姿を見たセラは、ランタンを置いてレイへと抱きつくと大泣きする。そんなセラの頭を撫でながら、レイは優しく抱き寄せる。
「よかったですぅ、無事で、本当に… 」
「ごめんセラ。心配かけて」
「ひぐっ、本当に心配したんですよぉ、本家の使用人からレイ様は体調を崩されて離れに戻ったと言われて……でも、何処を探してもレイ様が見つからず、今までずっと探していたんです…」
「でも、どうしてすぐに分かったの?」
「井戸の方からレイ様の魔力を探知して、慌ててこっちに向かった次第です」
「魔力を?」
セラの言葉を聞いて、レイは先ほど感じた凄まじい魔力の正体が自分のものであると知る。それは、レイの膨大な魔力を感知してここまで来たからだと納得した。
「すぐに手当てしますね」
「いや、それよりもすぐにこの屋敷を離れよう」
「え?」
レイはセラにこれまでの経緯を端的に説明する。セシリア、エリザの姉たちの手によって井戸に投げ入れられたこと、そして人を超越した存在とのやり取りを。
「あの人たち……まさかそこまでしてレイ様を……、許せません」
「待って、セラ」
セラは本家の義姉たちの行動に怒りを覚えていた。レイが貴族の私生児だと分かった時から、彼女に対して当たりが強かったことは知っていたが、ここまでの仕打ちをするとは思いもしなかった。
今にも殴り込みに行こうとするセラの肩を、レイが手を掛けて止める。
「アタシが無事だと分かった以上、何としてでも殺しに来るはず。こんな所、さっさと離れて逃げないと……」
「そうですね。では、すぐにこの屋敷を離れましょう」
レイとセラは早速荷物をまとめて運び出し、離れを後にする。目立たないように屋敷の裏門にやってきた2人だったが、セラが唐突に立ち止まる。
「セラ?」
「レイ様、ここでお待ちを」
「こんな夜更けに、どちらへ行かれるのですか?」
暗闇のせいで姿は見えないが、レイにはその声は聞き覚えがあった。その声の主に向けて、セラはいつでも魔法を放てるように右手を差し向ける。
「ジェラードさん?」
「はい。ジェラードでございます。何やら慌ただしく荷造りをされているご様子でしたので、気になりまして」
「そこを退いていただけますか?」
「レイ様。では一つ、私の質問に答えていただけますか?」
「質問?」
「姉君が憎いですか?」
「ッ⁉︎」
ジェラードの一言で、レイは彼が全てを知っていることに気づく。そして、その質問が何を意味するのかも。
「さぁ、どうかしら。一度殺されかけてるし、憎むなって言う方が難しい。でも」
「でも?」
「アタシは憎しみなんてちっぽけな感情に囚われたりしない。生まれた環境や育った環境、それがもたらす結果がたまたまこうだっただけ。なら、アタシは誰かが自分と同じ結果を迎えないようにする」
「レイ様……」
「セラは先に行って。アタシもすぐに追いつくから」
レイの言葉を受けたセラは、小さく頷いてその場を後にする。そして、再びジェラードと2人きりになったレイは彼に問う。
「もういいかしら、アタシもそろそろここを抜け出したいの」
「えぇ、構いませんよ。ですが、最後に1つだけ」
ジェラードはレイの前に跪く。
「ティアニスト家に仕えて20年余り、貴女のような方が貴族に生まれて快く思います」
「さぁ、何のことだか。私はただの私生児、名前はレイ=フレイア。貴族なんて柄じゃないわ」
「ご謙遜を。では、道中お気をつけて」
ジェラードに見送られながら、レイはセラの後を追うように屋敷を後にする。そして、2人は誰にも悟られることなくティアニスト伯爵家の屋敷から姿を消したのだった。
表向きは、失踪として。
◇
〈王都東部 シティ・オブ・マンスリー〉
「ん……」
レイが目を覚まして辺りを見渡すとベッド脇にある窓から日の光が差し込んでいることに気づく。
「お目覚めになられましたか、レイ様?」
セラが声をかけてきたのでそちらを向くと、彼女は椅子に座っていた。その表情はどこか嬉しそうに見える。
「よく寝たぁ。セラも寝れた?」
「ぐっすりと眠れました!」
「なら良かった。それじゃあ、まずは腹ごしらえでも行こうか」
「はいっ!」
レイの言葉にセラはうなずき、二人は部屋を出ると階段を下って一階へ降りていく。
"何だか、レイ様が逞しく見えてしまいます"
「王都なんて久しぶりだね」
「そうですね。最後に来たのは、確かレイ様が6歳の頃でしたか」
「そんな前だっけ?」
6歳というと、レイがルシウスと出会った頃だ。あの頃はまだ王都に慣れていないこともあってか、よく迷子になっていたらしい。
「あの時は大変でしたね」
「でも、あの後すぐにお母様に見つかって、城に連れ戻されたんだっけ」
「はい!それでまたニーナ様に叱られてましたよね!」
ニーナ=フレイア、今は亡きレイの母親。ティアニスト家を出たレイは、亡き母の姓であるフレイアを名乗っている。
当時のことを思い出したのかセラはクスクスと笑う。レイもつられて笑い、思い出話に花を咲かせながら繁華街へとたどり着く。
「それじゃあ、今日はセラの食べたいものを食べよっか」
「え?でも……」
「遠慮しないの。セラには心配かけたし、あなたの事だから昨日から何も食べてないでしょ?」
「ふふ、レイ様には全てお見通しって訳ですか……分かりました!」
レイの言葉に少し悩んだ後、セラは嬉しそうにうなずく。2人は様々な屋台を見て回り、気になったものを片っ端から買っていく。そして、一通り買い終えた2人は広場で昼食を取ることにした。
「さて、これからどうしようか…」
「レイ様、その事でお話があるのですが」
「何?」
昼食を食べ終えた2人は広場のベンチに腰掛けて今後について話し合う。そんな中、セラが神妙な面持ちで口を開く。
「実は、レイ様にお会いしたいと仰る御方がいます」
「アタシに?」
「はい。その方はレイ様のことをご存知で、一連の経緯についても詳しく知っておられます。是非ともお会いしたいと」
セラの言う人物に心当たりがないレイは首を傾げるが、会ってみないことには始まらないので彼女の提案を受けることにした。
「分かった。案内して」
「かしこまりました!」
2人はベンチから立ち上がると、その人物が待つ場所へ向かう。
「ここです」
セラが案内した場所は、繁華街の路地裏にある小さな酒場だった。レイはセラと共に酒場の中に入ると、カウンターに腰を下ろす見知った顔の老紳士が待っていた。
「レイ様、こちらへおかけください」
「マスター、こちらの御方にレモネード酒を」
レイはセラに老紳士の隣に座るように促され、それに従って隣の席へと座る。
「昨夜ぶりでございます、レイ様」
「その声、ジェラード?」
「以下にも。"元"ティアニスト家執事長ジェラード=フォアソンでございます」
「元?」
「はい。私はこの度、レイ様にお仕えするべく、ティアニスト家の執事長を辞して参りました」
ジェラードはそう言うと、バーテンにドリンクを注文する。果実酒の注がれたグラスがレイの前に置かれる。
「辞めたの?」
「えぇ、これからは、レイ様にお仕えするつもりでございますので」
「ジェラードは使用人の中で一番古くから仕えていたはず。ティアニスト卿とも仲が良かったし、そんな簡単に辞めても大丈夫?」
「心配には及びません。私は、自分の信念こそが正しいと考える主義ですので、お気になさらず」
レイは彼が自分に仕えようとする理由が分からなかった。
「昨夜、レイ様が口にしたあの言葉を聞き、私は確信しました。レイ様はこの理不尽な世界を変えるだけの力を持っていると」
「あの日の夜も言ったけど、アタシを買いかぶり過ぎよ。アタシはそんな大層な人間じゃないし」
「ご謙遜を。レイ様、改めて私はあなた様にお仕え致します。生い先短い老いぼれの願い、聞いていただけませんか?」
ジェラードはそう言うと、グラスに入った果実酒を一気に飲み干す。そして、空になったグラスをカウンターに置くと再び口を開く。
「レイ様、私からもお願いです」
「仕方ないわね……分かったわ」
2人の熱意に根負けしたレイはその申し出を受け入れることにした。すると、それを聞いたセラが嬉しそうに顔を綻ばせる。
「しかし、失礼ながら変わられましたな。レイ様。以前のあなた様ならば、私の申し出など優しく一蹴していたでしょう」
「そうね。アタシもそう思うわ」
レイはグラスに入った果実酒を飲むと、グラスをカウンターに置く。
「あの夜の出来事以来、アタシの中で燻っていた何かが爆発したみたいに変わった。今までの自分が、病気を含めて自分じゃないように感じる。不思議なのは、特に何かした訳じゃないのに体の調子も良くなっているのよ」
「…不思議なこともあるものですね。昔、死の淵から生還した者が、潜在能力を発揮するといった事例を聞いたことがありますが、レイ様もその類なのでしょうか?」
「アタシを戦闘民族か何かと勘違いしていない?」
「はは、これは失礼いたしました」
「でも、はっきりと分かることが一つ。この力は自分のため、人のために使うために授かったものってことがね」
「レイ様…」
その言葉にジェラードとセラが感銘していると、酒場の入り口の扉が勢いよく開いた。
「かか!今日もゴミどもが溜まってやがるぜ!」
「アニキ、今日は何を飲みやすか⁉︎」
「おいマスター!エールを樽ごと持ってこいや!」
酒場に入ってきたのは如何にもチンピラな風貌をした5人の男たち。彼らはテーブルに着くまでの間、動線の客たちにちょっかいをかけていたが、誰もそれに反応せず沈黙を貫いていた。
中にはそそくさと会計を済ませて出ていく賢明な判断をする者もいた。レイは視線をレモネード酒に向けたまま、隣に座っていたジェラードに問う。
「ジェラード、あいつらは?」
「恐らく、ここ最近王都で勢力を伸ばしつつあるギャング、ブラックマターズでしょう。あの黒いバンダナや黒い布を体に巻きつけているのが目印でございます」
「ぶ、ブラックマターズ…」
「何、セラも知っているの?」
「殺人、強盗、恐喝、誘拐、金さえ積めば何でもやる極悪集団です…」
「そんな奴らが、何で堂々と街を歩いている?」
「そ、それは…」
「きゃあ⁉︎」
セラが答えを言おうとした時、ブラックマターズの座る席の方から悲鳴が聞こえる。酒を持ってきたウェイターの女性が、大柄なブラックマターズに抱きしめられ、人前で恥部を晒されていたのだ。
「や、やめてください!」
「へへ、良い体してんじゃねぇか」
「な、何を、ウチのウェイターを離してください!」
「あぁ?黙れやゴルァ!」
ブラックマターズは静止に入ったマスターの頭に、手にしていたビールジョッキを投げつける。幸い、ジョッキは木製のためマスターの命に別状はないが、マスターは頭から血を流してふらついてしまう。
「俺らをブラックマターズだって知ってんのか!」
「ぞ、存じています。ですが、これ以上は」
「舐めてんのか!もっぺん食らわしたらぁ‼︎」
「ッ⁉︎」
「おいたが過ぎるぞ、テメェら」
再び振り下ろしたジョッキは、マスターに命中する手前で静止される。ブラックマターズの極太の腕を受け止めたのは、その二回り以上小さい華奢な白い腕だった。
"こ、こいつ、受け止めやがった⁉︎"
「何モンだごるッ⁉︎」
ブラックマターズの男が言い終える前に、レイの右ストレートが岩のような顔にめり込む。椅子に座っていた男は、その衝撃で後方へと倒れてしまう。
「あ、アニキ⁉︎」
「てめぇ!誰に手ェ出したんか分かってんのか⁉︎」
「誰にだって?知らねぇな。ブラックママーズかブラックオマターズか知らねぇが、堅気さんに迷惑掛けてんじゃねぇぞ」
「れ、れ、レイ様⁉︎」
その場にいた全員が、驚愕と同時に恐怖した。圧倒的な体格差、その上男女という決定的な力の差をものともせず、仰け反らせたレイ。彼女の強さに驚愕するが、これから始まるのは、王都で幅を利かせているギャングたちによる数に物を言わせた乱闘。酒場にいた客たちは外へ逃げるか、酒場のカウンターへ行き、安全な場所で身を隠す。
「野郎ども!カチコミだ!」
外で待機していたと思われる10人ほどのブラックマターズが、酒場の中に入ってくる。その手には剣や短刀、小型の銃器も確認できる。
しかし、そんなブラックマターズを前にしても、レイは表情ひとつ変えず拳を鳴らしていた。
「ジェラード」
「はい、お嬢様」
「背中は任せた。首刈りジェラードの実力、アタシに見せてもらうよ」
「ッ⁉︎はは、このジェラードにお任せください」
「くぞオルァ‼︎」
「来いクソ野郎ども、行儀をつけてやる」
ルシウスからの申し出を保留にしたレイは、彼の滞在中に使用することを許された屋敷の一室に入ると、椅子に座ってテーブルへと前のめりにもたれかかった。
「どうすれば……」
レイの頭の中は先ほどのことでいっぱいだった。レイはルシウスから申し出を受けた場合、仮に縁談が成立したとして、自分が次期王妃などの大役を任される器があるわけがないと考えていた。
ましては、王族とはその血統を重視するもの。貴族の私生児とはいえ、元は平民の出である自分の血が王家に混じることを良しとしない者たちもいる。
いわば、この縁談には利益も大きいが、それと同等か倍以上不利益も多い、当の本人には究極の選択であった。
「レイ様」
レイがテーブルにもたれかかり、頭を抱えて考えに耽っていると、本家の使用人の一人が部屋を訪ねてくる。
「何でしょうか?」
「ルシウス様からの言伝を預かっております。何やら、お渡ししたいものがあるとのことで、今から屋敷の裏庭、井戸の近くに来て欲しいと」
「わ、わかりました」
使用人の言伝を聞いたレイは、ドレスを整え、慌てて屋敷の裏庭へと急ぐ。その時、言伝を携えた使用人の表情が引っ掛かったが、特に何も考えず井戸へと辿り着く。しかし、そこにはルシウスの姿はなかった。
「ルシウス様?ッ⁉︎」
レイは突然、背後から何か硬いもので頭部を殴りつけられる。かなりの衝撃で視線が揺らぎ、意識が朦朧となってその場に倒れ込んだ。
「な……に?」
朦朧とする意識の中、聞き覚えのある声が聞こえる。忘れたくとも忘れたくない、あの姉たちの声が。
「ほ、本当にやるの?」
「えぇ、こんな奴に先に幸せになられちゃ腹が立つわ」
「でも、セシリア姉様…」
「何よ。今更私が間違ってるって言いたいの?やってしまった以上、あなたも共犯よ」
「……」
"セシリアにエリザ…な、なんでここに……"
そんなことを考えていると、再び頭に衝撃が走る。薄れゆく意識の中で最後に見たのは、醜い顔で笑い合う二人の姉達の姿だった。
◇
体が水に包まれ、頭が冷たい感覚に襲われる。しかし、不思議と呼吸が出来た。出血が酷いせいか、ほとんど身動きが取れない状態だった。
「う……うぅ」
ゆっくりと目を開けるレイの視界には、暗く光のない壁が広がる。ほとんど動かない顔を上げて頭上を見ると、円状の穴から星が輝く夜空が見える。
『聞こえる?定命の者』
すると、レイの頭の中に不思議な声が響く。それは男とも女とも取れないような不思議な声だった。
「誰……?」
『聞こえているわね。私は…そうね。とりあえず、ベアトリスとでも名乗っておきましょうか』
「ベアトリス…」
『さて、これからゆるりと死にゆくあなたに人生最大で最後のチャンスを与えるわ。このまま冷たい水に体温を奪われ、致死量の血を流して、寒さの中ゆっくりと孤独に死を迎え入れるか。私が与える力を使って定められた運命の世界を掻き乱すか。どちらか一つを選びなさい』
「世界を…掻き乱す…?」
『そうよ。この世界はやがて混沌に満ちる。後者を選ぶなら、あなたに全てを変えることができる力を与える。その力を何に使おうが、あなた次第よ』
「混沌……」
ベアトリスと名乗る正体不明の声に、レイは逡巡する。しかし、どちらにしてもこのままでは死を待つだけだと理解したレイは答えを出す。
「私は……死にたくない。力が欲しい、生きるために」
『ふふ。そう……ならこちら側に来なさい』
レイの覚悟を聞いたベアトリスは満足そうに応える。すると、井戸の水が彼女の体に纏わりつき、傷ついた体を即座に癒す。
そして、その背中を埋め尽くすほどの紋様を描いていく。
『さぁ、私たちを存分に楽しませなさい。レイ=フライア。世界を混沌の大海へと変えなさい』
「……っ!?」
気がつくと、レイは井戸の底で立ち上がっていた。先ほどまでの痛みは嘘のように消え、それどころか体の底から力が湧いてくるような感覚さえ覚える。
「一体、何が……?」
困惑するレイ、辺りを見渡すがそこには誰もいない。ベアトリスと名乗った存在が何なのか分からないまま、おもむろに井戸の内壁に手を掛ける。
「この力……いつっ⁉︎」
突然の頭痛を感じる。自らの身に宿った得体の知れない強大な力に困惑しながらも、レイは壁の石を伝って井戸の底から這い上がる。
辺りはすでに暗く、屋敷に灯りが灯っていない所から見るに、すでに寝静まるほど深夜になっていると推測する。
水と血で汚れたドレスの裾を絞っていると、離れの方からランタンの光が近づいてくることに気がつく。
「れ、レイ様?」
「セラ?」
「レイ様ぁあ‼︎」
レイの姿を見たセラは、ランタンを置いてレイへと抱きつくと大泣きする。そんなセラの頭を撫でながら、レイは優しく抱き寄せる。
「よかったですぅ、無事で、本当に… 」
「ごめんセラ。心配かけて」
「ひぐっ、本当に心配したんですよぉ、本家の使用人からレイ様は体調を崩されて離れに戻ったと言われて……でも、何処を探してもレイ様が見つからず、今までずっと探していたんです…」
「でも、どうしてすぐに分かったの?」
「井戸の方からレイ様の魔力を探知して、慌ててこっちに向かった次第です」
「魔力を?」
セラの言葉を聞いて、レイは先ほど感じた凄まじい魔力の正体が自分のものであると知る。それは、レイの膨大な魔力を感知してここまで来たからだと納得した。
「すぐに手当てしますね」
「いや、それよりもすぐにこの屋敷を離れよう」
「え?」
レイはセラにこれまでの経緯を端的に説明する。セシリア、エリザの姉たちの手によって井戸に投げ入れられたこと、そして人を超越した存在とのやり取りを。
「あの人たち……まさかそこまでしてレイ様を……、許せません」
「待って、セラ」
セラは本家の義姉たちの行動に怒りを覚えていた。レイが貴族の私生児だと分かった時から、彼女に対して当たりが強かったことは知っていたが、ここまでの仕打ちをするとは思いもしなかった。
今にも殴り込みに行こうとするセラの肩を、レイが手を掛けて止める。
「アタシが無事だと分かった以上、何としてでも殺しに来るはず。こんな所、さっさと離れて逃げないと……」
「そうですね。では、すぐにこの屋敷を離れましょう」
レイとセラは早速荷物をまとめて運び出し、離れを後にする。目立たないように屋敷の裏門にやってきた2人だったが、セラが唐突に立ち止まる。
「セラ?」
「レイ様、ここでお待ちを」
「こんな夜更けに、どちらへ行かれるのですか?」
暗闇のせいで姿は見えないが、レイにはその声は聞き覚えがあった。その声の主に向けて、セラはいつでも魔法を放てるように右手を差し向ける。
「ジェラードさん?」
「はい。ジェラードでございます。何やら慌ただしく荷造りをされているご様子でしたので、気になりまして」
「そこを退いていただけますか?」
「レイ様。では一つ、私の質問に答えていただけますか?」
「質問?」
「姉君が憎いですか?」
「ッ⁉︎」
ジェラードの一言で、レイは彼が全てを知っていることに気づく。そして、その質問が何を意味するのかも。
「さぁ、どうかしら。一度殺されかけてるし、憎むなって言う方が難しい。でも」
「でも?」
「アタシは憎しみなんてちっぽけな感情に囚われたりしない。生まれた環境や育った環境、それがもたらす結果がたまたまこうだっただけ。なら、アタシは誰かが自分と同じ結果を迎えないようにする」
「レイ様……」
「セラは先に行って。アタシもすぐに追いつくから」
レイの言葉を受けたセラは、小さく頷いてその場を後にする。そして、再びジェラードと2人きりになったレイは彼に問う。
「もういいかしら、アタシもそろそろここを抜け出したいの」
「えぇ、構いませんよ。ですが、最後に1つだけ」
ジェラードはレイの前に跪く。
「ティアニスト家に仕えて20年余り、貴女のような方が貴族に生まれて快く思います」
「さぁ、何のことだか。私はただの私生児、名前はレイ=フレイア。貴族なんて柄じゃないわ」
「ご謙遜を。では、道中お気をつけて」
ジェラードに見送られながら、レイはセラの後を追うように屋敷を後にする。そして、2人は誰にも悟られることなくティアニスト伯爵家の屋敷から姿を消したのだった。
表向きは、失踪として。
◇
〈王都東部 シティ・オブ・マンスリー〉
「ん……」
レイが目を覚まして辺りを見渡すとベッド脇にある窓から日の光が差し込んでいることに気づく。
「お目覚めになられましたか、レイ様?」
セラが声をかけてきたのでそちらを向くと、彼女は椅子に座っていた。その表情はどこか嬉しそうに見える。
「よく寝たぁ。セラも寝れた?」
「ぐっすりと眠れました!」
「なら良かった。それじゃあ、まずは腹ごしらえでも行こうか」
「はいっ!」
レイの言葉にセラはうなずき、二人は部屋を出ると階段を下って一階へ降りていく。
"何だか、レイ様が逞しく見えてしまいます"
「王都なんて久しぶりだね」
「そうですね。最後に来たのは、確かレイ様が6歳の頃でしたか」
「そんな前だっけ?」
6歳というと、レイがルシウスと出会った頃だ。あの頃はまだ王都に慣れていないこともあってか、よく迷子になっていたらしい。
「あの時は大変でしたね」
「でも、あの後すぐにお母様に見つかって、城に連れ戻されたんだっけ」
「はい!それでまたニーナ様に叱られてましたよね!」
ニーナ=フレイア、今は亡きレイの母親。ティアニスト家を出たレイは、亡き母の姓であるフレイアを名乗っている。
当時のことを思い出したのかセラはクスクスと笑う。レイもつられて笑い、思い出話に花を咲かせながら繁華街へとたどり着く。
「それじゃあ、今日はセラの食べたいものを食べよっか」
「え?でも……」
「遠慮しないの。セラには心配かけたし、あなたの事だから昨日から何も食べてないでしょ?」
「ふふ、レイ様には全てお見通しって訳ですか……分かりました!」
レイの言葉に少し悩んだ後、セラは嬉しそうにうなずく。2人は様々な屋台を見て回り、気になったものを片っ端から買っていく。そして、一通り買い終えた2人は広場で昼食を取ることにした。
「さて、これからどうしようか…」
「レイ様、その事でお話があるのですが」
「何?」
昼食を食べ終えた2人は広場のベンチに腰掛けて今後について話し合う。そんな中、セラが神妙な面持ちで口を開く。
「実は、レイ様にお会いしたいと仰る御方がいます」
「アタシに?」
「はい。その方はレイ様のことをご存知で、一連の経緯についても詳しく知っておられます。是非ともお会いしたいと」
セラの言う人物に心当たりがないレイは首を傾げるが、会ってみないことには始まらないので彼女の提案を受けることにした。
「分かった。案内して」
「かしこまりました!」
2人はベンチから立ち上がると、その人物が待つ場所へ向かう。
「ここです」
セラが案内した場所は、繁華街の路地裏にある小さな酒場だった。レイはセラと共に酒場の中に入ると、カウンターに腰を下ろす見知った顔の老紳士が待っていた。
「レイ様、こちらへおかけください」
「マスター、こちらの御方にレモネード酒を」
レイはセラに老紳士の隣に座るように促され、それに従って隣の席へと座る。
「昨夜ぶりでございます、レイ様」
「その声、ジェラード?」
「以下にも。"元"ティアニスト家執事長ジェラード=フォアソンでございます」
「元?」
「はい。私はこの度、レイ様にお仕えするべく、ティアニスト家の執事長を辞して参りました」
ジェラードはそう言うと、バーテンにドリンクを注文する。果実酒の注がれたグラスがレイの前に置かれる。
「辞めたの?」
「えぇ、これからは、レイ様にお仕えするつもりでございますので」
「ジェラードは使用人の中で一番古くから仕えていたはず。ティアニスト卿とも仲が良かったし、そんな簡単に辞めても大丈夫?」
「心配には及びません。私は、自分の信念こそが正しいと考える主義ですので、お気になさらず」
レイは彼が自分に仕えようとする理由が分からなかった。
「昨夜、レイ様が口にしたあの言葉を聞き、私は確信しました。レイ様はこの理不尽な世界を変えるだけの力を持っていると」
「あの日の夜も言ったけど、アタシを買いかぶり過ぎよ。アタシはそんな大層な人間じゃないし」
「ご謙遜を。レイ様、改めて私はあなた様にお仕え致します。生い先短い老いぼれの願い、聞いていただけませんか?」
ジェラードはそう言うと、グラスに入った果実酒を一気に飲み干す。そして、空になったグラスをカウンターに置くと再び口を開く。
「レイ様、私からもお願いです」
「仕方ないわね……分かったわ」
2人の熱意に根負けしたレイはその申し出を受け入れることにした。すると、それを聞いたセラが嬉しそうに顔を綻ばせる。
「しかし、失礼ながら変わられましたな。レイ様。以前のあなた様ならば、私の申し出など優しく一蹴していたでしょう」
「そうね。アタシもそう思うわ」
レイはグラスに入った果実酒を飲むと、グラスをカウンターに置く。
「あの夜の出来事以来、アタシの中で燻っていた何かが爆発したみたいに変わった。今までの自分が、病気を含めて自分じゃないように感じる。不思議なのは、特に何かした訳じゃないのに体の調子も良くなっているのよ」
「…不思議なこともあるものですね。昔、死の淵から生還した者が、潜在能力を発揮するといった事例を聞いたことがありますが、レイ様もその類なのでしょうか?」
「アタシを戦闘民族か何かと勘違いしていない?」
「はは、これは失礼いたしました」
「でも、はっきりと分かることが一つ。この力は自分のため、人のために使うために授かったものってことがね」
「レイ様…」
その言葉にジェラードとセラが感銘していると、酒場の入り口の扉が勢いよく開いた。
「かか!今日もゴミどもが溜まってやがるぜ!」
「アニキ、今日は何を飲みやすか⁉︎」
「おいマスター!エールを樽ごと持ってこいや!」
酒場に入ってきたのは如何にもチンピラな風貌をした5人の男たち。彼らはテーブルに着くまでの間、動線の客たちにちょっかいをかけていたが、誰もそれに反応せず沈黙を貫いていた。
中にはそそくさと会計を済ませて出ていく賢明な判断をする者もいた。レイは視線をレモネード酒に向けたまま、隣に座っていたジェラードに問う。
「ジェラード、あいつらは?」
「恐らく、ここ最近王都で勢力を伸ばしつつあるギャング、ブラックマターズでしょう。あの黒いバンダナや黒い布を体に巻きつけているのが目印でございます」
「ぶ、ブラックマターズ…」
「何、セラも知っているの?」
「殺人、強盗、恐喝、誘拐、金さえ積めば何でもやる極悪集団です…」
「そんな奴らが、何で堂々と街を歩いている?」
「そ、それは…」
「きゃあ⁉︎」
セラが答えを言おうとした時、ブラックマターズの座る席の方から悲鳴が聞こえる。酒を持ってきたウェイターの女性が、大柄なブラックマターズに抱きしめられ、人前で恥部を晒されていたのだ。
「や、やめてください!」
「へへ、良い体してんじゃねぇか」
「な、何を、ウチのウェイターを離してください!」
「あぁ?黙れやゴルァ!」
ブラックマターズは静止に入ったマスターの頭に、手にしていたビールジョッキを投げつける。幸い、ジョッキは木製のためマスターの命に別状はないが、マスターは頭から血を流してふらついてしまう。
「俺らをブラックマターズだって知ってんのか!」
「ぞ、存じています。ですが、これ以上は」
「舐めてんのか!もっぺん食らわしたらぁ‼︎」
「ッ⁉︎」
「おいたが過ぎるぞ、テメェら」
再び振り下ろしたジョッキは、マスターに命中する手前で静止される。ブラックマターズの極太の腕を受け止めたのは、その二回り以上小さい華奢な白い腕だった。
"こ、こいつ、受け止めやがった⁉︎"
「何モンだごるッ⁉︎」
ブラックマターズの男が言い終える前に、レイの右ストレートが岩のような顔にめり込む。椅子に座っていた男は、その衝撃で後方へと倒れてしまう。
「あ、アニキ⁉︎」
「てめぇ!誰に手ェ出したんか分かってんのか⁉︎」
「誰にだって?知らねぇな。ブラックママーズかブラックオマターズか知らねぇが、堅気さんに迷惑掛けてんじゃねぇぞ」
「れ、れ、レイ様⁉︎」
その場にいた全員が、驚愕と同時に恐怖した。圧倒的な体格差、その上男女という決定的な力の差をものともせず、仰け反らせたレイ。彼女の強さに驚愕するが、これから始まるのは、王都で幅を利かせているギャングたちによる数に物を言わせた乱闘。酒場にいた客たちは外へ逃げるか、酒場のカウンターへ行き、安全な場所で身を隠す。
「野郎ども!カチコミだ!」
外で待機していたと思われる10人ほどのブラックマターズが、酒場の中に入ってくる。その手には剣や短刀、小型の銃器も確認できる。
しかし、そんなブラックマターズを前にしても、レイは表情ひとつ変えず拳を鳴らしていた。
「ジェラード」
「はい、お嬢様」
「背中は任せた。首刈りジェラードの実力、アタシに見せてもらうよ」
「ッ⁉︎はは、このジェラードにお任せください」
「くぞオルァ‼︎」
「来いクソ野郎ども、行儀をつけてやる」
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