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第31話:嵐鍋みそ味②
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…嫌だ。
タニシの思い出もさることながら、この世界で鍋を食べる事自体が嫌だ。
異界の人間と鍋を囲う。
民話ではそのような場面はほぼ死のメタファーだ。
すでに色々食べているため今さらではあるのだが、この世界の奇妙な様相が少し分かった今、改まって鍋を食べるのは気分がよくない。
「…ま、お前は食わねえわな。」
にっ、と生徒会長が笑った。
なぜこの場面で挑発する。
「急いでいるからな。」
「風紀委員長様だもんな。
中身わからない鍋なんて食べられないよな。」
口の端を持ち上げ、目を覗き込むようにしてまた笑う。
こいつ…本当に腹立つな。
お前に付き合ってここにいるというのに。
あと、辺りの連中の目だ、
「ま、そうだよな」と言わんばかりのこの雰囲気。
うっとうしいことこの上ない。
何とでも言えばいい…。
とにかくここを出よう。
「挑発するな。急いでいるから行くぞ。
邪魔したな。」
もう生徒会長は置いていこうと思い、立ち上がって引き戸のドアに手をかけた…、が、しかし、なぜか開かない。
思い切り力を入れてもびくともしない。
驚いて内鍵を見たがかかっている様子は無い。
「…何してんだ…開かないのか?」
後ろから声をかけられる。
「ああ、開かないな。」
答えながらドアの刷りガラスの向こうを伺うと、ガラスに斜めに黄色い影がよぎっているのが見える。
モップの影だ。
だれか引き戸の向こうにモップをかけている。
2枚のドアのモップのかかっていない側は最初から開かないようになっているため出られない。
「閉じ込めか?お前らいじめでも受けてんのか。」
俺の脇から顔を出し戸をを覗き込んだ生徒会長が一座を振り返って聞いた。
「そんなんじゃねえ、下らない悪ふざけがはやってんだよ。
引き戸の部屋はほとんど無いからよくやられるんだよな。」
「ばかくせ、スマホで外のやつ呼べばすぐ出れるし。」
そういってピアスの生徒はスマートフォンを取り出す。
しかし救援を呼んで5、6分経つ頃になっても誰も来ない。
「なかなか来ねえな……。」
「おい、委員長、急いでるってんなら窓から出るか?」
オールバックの生徒が提案してきた。
「いや、雨具は外の戸口脇に置いてきている、そこに行くまでにズブ濡れになりそうだからやめておく。」
窓を覗いたが建物のこちらの面には庇が全く無かった。
風邪でも引いたら明日以降に差し支える。
結局、しばらく座って救援を待つことになった。
他の生徒も誰彼に救援を頼んでいたようだったが、数分待っても人の来る気配はない。
「来ねーな誰も。」
「薄情なやつらだな。おい。」
彼らの一人がまた電話をかける。ハンズフリーで話しているので話し相手の声が聞こえる。
「おい、タキ、なんか閉じ込められたから来てくれよ。」
「あ、わりー、いまyoutube見てっから、見終わるまでちょっと待って、あと15分くらいで終わっから。」
「お前、3つ隣の部屋だろ、すぐ来いっつの。」
言い終わるまでに電話は切れていた。
その後何度かかけ直していたが相手はもう電話に出なかった。
「…あのさ、15分つってるし、まあちょっと待ってくれよ。」
オールバックの生徒がそういって話しかけてくる。
15分、十分長い。
ただ、風紀委員を呼んでも彼らが廻っている場所はすでに遠い、どうせここに来るまでに同じかそれ以上かかるだろう。
分かったと答えてそのまま待つことにした。
待つ間の手持ち無沙汰、鍋を囲む面々を見るでもなく見ていると、一座に生徒会長が混ざりまた何やら面白がって鍋をつついたりし始めている。
「何だよこれ…グミかよ…、具のチョイスほんと酷ぇな…。」
口が悪いが、何だか場には馴染んでいるようだ。
馴染むのが早いな、と思って見ているとふと生徒会長と目が合った。
居たか、とでも言うかのように目を開いた後に、その目を細め口の端を上げる。
そしてこちらに寄ってきたかと思うと、また箸をよこしてくる。
「今は、急いでないよな?」
そう言い、またにやっと笑う。
こいつは、俺への嫌がらせの名人だろうか。
しかし、即座に断れなかった。
そう、急いではいない。
断る理由は『食べたくない』のみだ。
そう言って断ってもいいのだが、本当にそうしていいものか迷いが生じた。
彼らにどう思われてもいい、と言ったが本当にそうなのだろうか。
彼らは人間の心を持っていないかもしれない、しかし持っている可能性もあるのだ。
もしそうならこの学校にまだ居続け脱出方法を探る必要があるのだから彼らの気を損ねるのは得策ではない。
そしてすでに色々食べているため食べたくないのは気分の問題でしかないのだ。
断る口実もない。
しょうがない……もう、腹を括るか。
「…タニシは……、入ってないよな。」
覚悟を決めて箸を受け取ったが、ヤモリの姿が頭にちらついたのでつい聞いてしまった。
「無い。ザリガニを入れようとした馬鹿も居たけど、殴って止めた。」
「そうか。」
彼らの鍋に入れていい物の規準がよく分からないが…とりあえず気休めになったのでそのまま箸を鍋に入れた。
目をつむり、そのまま箸を手繰る。
そこで気がついたが、食べられない物は箸の手応えで分かる。
さっきの男は何で木彫りの像なんてつかみ出したんだろうか。
とりあえず柔らかい手応えのものを引き上げたが、生徒会長の時と同じく目を開いてもそれが何であるかはよく分からなかった。
構わず口にそのまま放り込む。
……サトイモだ、ごく普通の食材だった。
いろんな具材の味が混ざり合っていてさぞかしエグい味になっているだろうと思われたが、そこまででもない。
イカスミのコクと味噌の強い味の下に、しっかり取った出汁の味を感じたのにちょっと驚いた。
「…いい出汁の味がするな…。」
決して美味いわけではないが。
「ああ、わざわざ昆布を水出しした後に二番出汁をとってるからな。」
「なんか、やたらと仕切るうるさい鍋奉行が居てな。
サボれないんだ。」
…この顔ぶれで、どんな顔してそんな細やかな準備を。
「お前ら、変なこと言うなよ、委員長が笑ってるし。」
言われて驚いた。
俺は、笑ってたのか、自分で全く気がつかなかった。
見渡せば居住まい悪そうにしていた部屋の面々が、いつの間にかひざを乗り出してきていることに気が付いた。
その内の誰かが、何か言いかけたところでドアの開く音がした。
「や、見終わったから来たわ。」
「おせーよ。」
助けが来たらしい。
ようやく終わりかと思い、箸と皿を置いて立とうとするとオレンジ髪の生徒から声をかけられた。
「なあ委員長、次はどこに行くんだ?」
「旧校舎だ。」
「…旧校舎か。」
答えると、皆一様に妙な顔になって黙り込んだ。
含みのある沈黙、何だろう。
生徒会長も真顔で何も言わないままだ。
「幽霊が出るって噂だよな…。」
ぽつ、とピアスの生徒が呟いた。
幽霊…これは、いわゆる学校の怪談と言うやつだろうか。
興味からどんな噂か聞こうと思ったのだが、校内で有名な話のような言い方だ。俺が知らないのは不自然である可能性があるので取り合えず話の行方を伺う事にした。
「だな…。
旧校舎に…夜な夜な、自殺した生徒の亡霊が出る…て最近よく聞くよな…。
先月も勝手に入り込んだやつが目撃して、そのあと積んであった資材が倒れてきて大怪我したらしいぜ…。」
幽霊か…ホラースポットに行く事も結構あるし特に怖くは無いな、と思ったがちょっと待てと考え直す。
ここが物語の世界なら、現実の世界の幽霊の有無とは別に幽霊が実在している可能性があるのだ。
『物語の世界で出てくる噂はかなりの確立で実現の前振りである』という法則に従えば、実際に出くわす可能性があるかもしれない。
そう思うとぞっとした。
俺は怪談は好きだが、幽霊が恐しいと思った事はほとんど無い。
今まで一度も見た事が無いし、ホラースポットを歩いても出会った事が無いためだ。本当を言えばあまり実在を信じていなかった。
しかし、はっきり居るものとなれば話は別だ。確実にこちらに悪意があり、体力で勝てない相手なのだから。
もう少し自分の班に人数を割いておくべきだっただろうか……?
黙って考えている間に隅っこに居た金髪の男が座ったまま、いざって生徒会長の方へ寄っていった。
「やるよ、これ。」
男は、ラップに包んでひねった白い粉を生徒会長に差し出す。
「何だよこれ?」
生徒会長は受け取ったそれをかざして不思議そうに見た。
「塩、投げれば効くだろ。」
「お前それアジシオだろ。んなもん効くかよ。」
「塩は塩だろ。」
「あのなあ…。」
やり取りが終わった頃に声を掛けた。
「じゃあ、行こう。」
「そうだな。んじゃ、邪魔したな。」
生徒会長がそう言い立ち上がる。
「…またな。」
部屋の面々がそう答えた。
こちらを見ているものもあれば、鍋に向かったまま後ろ手に手を降るものもいた。
こうして奇妙な一幕は閉じた。
その後オールバックの生徒が気が付いたかのように慌ててドアから出てきたので、合流して7人でJ寮を見回った。
その後は特に何事も起こらず見回りが終わり、玄関でオールバックの生徒と別れた。
それから、旧校舎への道を辿りながら先程までの出来事について考えていた。
先程居た面々に、昴の説明した『王道BL学園物語』の登場人物に当てはまる人物は居ただろうか?
居なかった。
時任と鳥羽、先程の部屋に居た者、襲いかかってきた者、助けた生徒、誰も該当していない。
彼らの役回りは分からないままだ。
彼らの役割は何だろうか、この辺りの事もまた後で昴に話してみよう。
そんな事を考えていると横で生徒会長がぽつりと呟いた。
「つまんねえな、お前ヤモリでも引き当てねえかと思ったのに。」
こいつは……と思いはしたが自分と全く同じ事を考えていたらしいと気が付いて何か言う気は失せた。
考えていた、か。
分からないな。どうにも色々。
自分の感情が晴れる気配もない霧の中にあるように感じた。
タニシの思い出もさることながら、この世界で鍋を食べる事自体が嫌だ。
異界の人間と鍋を囲う。
民話ではそのような場面はほぼ死のメタファーだ。
すでに色々食べているため今さらではあるのだが、この世界の奇妙な様相が少し分かった今、改まって鍋を食べるのは気分がよくない。
「…ま、お前は食わねえわな。」
にっ、と生徒会長が笑った。
なぜこの場面で挑発する。
「急いでいるからな。」
「風紀委員長様だもんな。
中身わからない鍋なんて食べられないよな。」
口の端を持ち上げ、目を覗き込むようにしてまた笑う。
こいつ…本当に腹立つな。
お前に付き合ってここにいるというのに。
あと、辺りの連中の目だ、
「ま、そうだよな」と言わんばかりのこの雰囲気。
うっとうしいことこの上ない。
何とでも言えばいい…。
とにかくここを出よう。
「挑発するな。急いでいるから行くぞ。
邪魔したな。」
もう生徒会長は置いていこうと思い、立ち上がって引き戸のドアに手をかけた…、が、しかし、なぜか開かない。
思い切り力を入れてもびくともしない。
驚いて内鍵を見たがかかっている様子は無い。
「…何してんだ…開かないのか?」
後ろから声をかけられる。
「ああ、開かないな。」
答えながらドアの刷りガラスの向こうを伺うと、ガラスに斜めに黄色い影がよぎっているのが見える。
モップの影だ。
だれか引き戸の向こうにモップをかけている。
2枚のドアのモップのかかっていない側は最初から開かないようになっているため出られない。
「閉じ込めか?お前らいじめでも受けてんのか。」
俺の脇から顔を出し戸をを覗き込んだ生徒会長が一座を振り返って聞いた。
「そんなんじゃねえ、下らない悪ふざけがはやってんだよ。
引き戸の部屋はほとんど無いからよくやられるんだよな。」
「ばかくせ、スマホで外のやつ呼べばすぐ出れるし。」
そういってピアスの生徒はスマートフォンを取り出す。
しかし救援を呼んで5、6分経つ頃になっても誰も来ない。
「なかなか来ねえな……。」
「おい、委員長、急いでるってんなら窓から出るか?」
オールバックの生徒が提案してきた。
「いや、雨具は外の戸口脇に置いてきている、そこに行くまでにズブ濡れになりそうだからやめておく。」
窓を覗いたが建物のこちらの面には庇が全く無かった。
風邪でも引いたら明日以降に差し支える。
結局、しばらく座って救援を待つことになった。
他の生徒も誰彼に救援を頼んでいたようだったが、数分待っても人の来る気配はない。
「来ねーな誰も。」
「薄情なやつらだな。おい。」
彼らの一人がまた電話をかける。ハンズフリーで話しているので話し相手の声が聞こえる。
「おい、タキ、なんか閉じ込められたから来てくれよ。」
「あ、わりー、いまyoutube見てっから、見終わるまでちょっと待って、あと15分くらいで終わっから。」
「お前、3つ隣の部屋だろ、すぐ来いっつの。」
言い終わるまでに電話は切れていた。
その後何度かかけ直していたが相手はもう電話に出なかった。
「…あのさ、15分つってるし、まあちょっと待ってくれよ。」
オールバックの生徒がそういって話しかけてくる。
15分、十分長い。
ただ、風紀委員を呼んでも彼らが廻っている場所はすでに遠い、どうせここに来るまでに同じかそれ以上かかるだろう。
分かったと答えてそのまま待つことにした。
待つ間の手持ち無沙汰、鍋を囲む面々を見るでもなく見ていると、一座に生徒会長が混ざりまた何やら面白がって鍋をつついたりし始めている。
「何だよこれ…グミかよ…、具のチョイスほんと酷ぇな…。」
口が悪いが、何だか場には馴染んでいるようだ。
馴染むのが早いな、と思って見ているとふと生徒会長と目が合った。
居たか、とでも言うかのように目を開いた後に、その目を細め口の端を上げる。
そしてこちらに寄ってきたかと思うと、また箸をよこしてくる。
「今は、急いでないよな?」
そう言い、またにやっと笑う。
こいつは、俺への嫌がらせの名人だろうか。
しかし、即座に断れなかった。
そう、急いではいない。
断る理由は『食べたくない』のみだ。
そう言って断ってもいいのだが、本当にそうしていいものか迷いが生じた。
彼らにどう思われてもいい、と言ったが本当にそうなのだろうか。
彼らは人間の心を持っていないかもしれない、しかし持っている可能性もあるのだ。
もしそうならこの学校にまだ居続け脱出方法を探る必要があるのだから彼らの気を損ねるのは得策ではない。
そしてすでに色々食べているため食べたくないのは気分の問題でしかないのだ。
断る口実もない。
しょうがない……もう、腹を括るか。
「…タニシは……、入ってないよな。」
覚悟を決めて箸を受け取ったが、ヤモリの姿が頭にちらついたのでつい聞いてしまった。
「無い。ザリガニを入れようとした馬鹿も居たけど、殴って止めた。」
「そうか。」
彼らの鍋に入れていい物の規準がよく分からないが…とりあえず気休めになったのでそのまま箸を鍋に入れた。
目をつむり、そのまま箸を手繰る。
そこで気がついたが、食べられない物は箸の手応えで分かる。
さっきの男は何で木彫りの像なんてつかみ出したんだろうか。
とりあえず柔らかい手応えのものを引き上げたが、生徒会長の時と同じく目を開いてもそれが何であるかはよく分からなかった。
構わず口にそのまま放り込む。
……サトイモだ、ごく普通の食材だった。
いろんな具材の味が混ざり合っていてさぞかしエグい味になっているだろうと思われたが、そこまででもない。
イカスミのコクと味噌の強い味の下に、しっかり取った出汁の味を感じたのにちょっと驚いた。
「…いい出汁の味がするな…。」
決して美味いわけではないが。
「ああ、わざわざ昆布を水出しした後に二番出汁をとってるからな。」
「なんか、やたらと仕切るうるさい鍋奉行が居てな。
サボれないんだ。」
…この顔ぶれで、どんな顔してそんな細やかな準備を。
「お前ら、変なこと言うなよ、委員長が笑ってるし。」
言われて驚いた。
俺は、笑ってたのか、自分で全く気がつかなかった。
見渡せば居住まい悪そうにしていた部屋の面々が、いつの間にかひざを乗り出してきていることに気が付いた。
その内の誰かが、何か言いかけたところでドアの開く音がした。
「や、見終わったから来たわ。」
「おせーよ。」
助けが来たらしい。
ようやく終わりかと思い、箸と皿を置いて立とうとするとオレンジ髪の生徒から声をかけられた。
「なあ委員長、次はどこに行くんだ?」
「旧校舎だ。」
「…旧校舎か。」
答えると、皆一様に妙な顔になって黙り込んだ。
含みのある沈黙、何だろう。
生徒会長も真顔で何も言わないままだ。
「幽霊が出るって噂だよな…。」
ぽつ、とピアスの生徒が呟いた。
幽霊…これは、いわゆる学校の怪談と言うやつだろうか。
興味からどんな噂か聞こうと思ったのだが、校内で有名な話のような言い方だ。俺が知らないのは不自然である可能性があるので取り合えず話の行方を伺う事にした。
「だな…。
旧校舎に…夜な夜な、自殺した生徒の亡霊が出る…て最近よく聞くよな…。
先月も勝手に入り込んだやつが目撃して、そのあと積んであった資材が倒れてきて大怪我したらしいぜ…。」
幽霊か…ホラースポットに行く事も結構あるし特に怖くは無いな、と思ったがちょっと待てと考え直す。
ここが物語の世界なら、現実の世界の幽霊の有無とは別に幽霊が実在している可能性があるのだ。
『物語の世界で出てくる噂はかなりの確立で実現の前振りである』という法則に従えば、実際に出くわす可能性があるかもしれない。
そう思うとぞっとした。
俺は怪談は好きだが、幽霊が恐しいと思った事はほとんど無い。
今まで一度も見た事が無いし、ホラースポットを歩いても出会った事が無いためだ。本当を言えばあまり実在を信じていなかった。
しかし、はっきり居るものとなれば話は別だ。確実にこちらに悪意があり、体力で勝てない相手なのだから。
もう少し自分の班に人数を割いておくべきだっただろうか……?
黙って考えている間に隅っこに居た金髪の男が座ったまま、いざって生徒会長の方へ寄っていった。
「やるよ、これ。」
男は、ラップに包んでひねった白い粉を生徒会長に差し出す。
「何だよこれ?」
生徒会長は受け取ったそれをかざして不思議そうに見た。
「塩、投げれば効くだろ。」
「お前それアジシオだろ。んなもん効くかよ。」
「塩は塩だろ。」
「あのなあ…。」
やり取りが終わった頃に声を掛けた。
「じゃあ、行こう。」
「そうだな。んじゃ、邪魔したな。」
生徒会長がそう言い立ち上がる。
「…またな。」
部屋の面々がそう答えた。
こちらを見ているものもあれば、鍋に向かったまま後ろ手に手を降るものもいた。
こうして奇妙な一幕は閉じた。
その後オールバックの生徒が気が付いたかのように慌ててドアから出てきたので、合流して7人でJ寮を見回った。
その後は特に何事も起こらず見回りが終わり、玄関でオールバックの生徒と別れた。
それから、旧校舎への道を辿りながら先程までの出来事について考えていた。
先程居た面々に、昴の説明した『王道BL学園物語』の登場人物に当てはまる人物は居ただろうか?
居なかった。
時任と鳥羽、先程の部屋に居た者、襲いかかってきた者、助けた生徒、誰も該当していない。
彼らの役回りは分からないままだ。
彼らの役割は何だろうか、この辺りの事もまた後で昴に話してみよう。
そんな事を考えていると横で生徒会長がぽつりと呟いた。
「つまんねえな、お前ヤモリでも引き当てねえかと思ったのに。」
こいつは……と思いはしたが自分と全く同じ事を考えていたらしいと気が付いて何か言う気は失せた。
考えていた、か。
分からないな。どうにも色々。
自分の感情が晴れる気配もない霧の中にあるように感じた。
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