メロウ電車

下田島

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偏頭痛

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その女性はおでこに手を当て、前かがみにうつむいていた。

僕の偏頭痛は会社を出た後も続き、じんじんと痛みが増している。夕方になると出る日があって、布団に入るまで苦しめられることもある。
地下鉄が駅に入り込んだ時の光が眩しい。
もう一度女性を見ると、今度は顎に指を当てて、何かを考えているように見えた。



仕事が終わるのが遅かった。はあ。家事が私を待っている。
旦那はもう帰っているだろうか。
そういえば、今日は特売の日だったから、ちょっといいお肉ですき焼きでもと考えていたけど、こんな時間じゃやめとこうかな。ご飯も余ってるし。
あーあ。クソ上司の顔がフラッシュバック。頭がいたい。



女性は、再び眉をひそめて指先をそこに当てた。いつもより冷房が強くきいているようだ。
いや、人のことを考えている場合じゃない。ああ咳まで出てきた。早く席に座りたい。

ようやく席を見つけ座った僕の前に、貼ってある広告が見えた。
「一息入れたい疲れに、トルナイン」
栄養ドリンクは飲むとその時はいいが、後から副作用が出るということを聞いてから、あまり飲まないようになった。

もし彼女の悩みをトルナインが一切消してくれるなら、そりゃ彼女だって飲むだろうし、僕も買いだめするくらい好きになるのにね。

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