奴隷商人 (新)(紀元前47年の物語②)完全NEW!

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ア・ヌンナック編

第1話 ア・ヌンナック年代記

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 ア・ヌンナック星は、銀河系の中心に近い高温の恒星系に位置する岩石惑星である。10万年前、この星の知的生命体であるア・ヌンナック人は、原始的な道具から始まり、急速に科学技術を発展させた。

 彼らの肉体は二足歩行型のヒューマノイドで、古代地中海世界や古代西ヨーロッパ世界の人類に似た容貌を持ち、過酷な環境に適応していた。肌は日焼けしたような褐色、髪は黒や褐色、目は複眼で鋭い視力を持ち、現代人類の祖先とほぼ変わらない外見だった。最初の1万年で、彼らは核融合エネルギーを掌握し、惑星全土を統一する連邦国家を築いた。この時代、彼らの文明は「物質の時代」と呼ばれ、物理的な技術が中心だった。

 ア・ヌンナック人は、後の地球への接触でネアンデルタール人やクロマニヨン人といった原生人類と混血し、人類のDNAにその痕跡を残した。現代人類の容貌が彼らに由来するほど、ア・ヌンナック人の外見は地球上の全人類の外見的特徴に対して共通の基盤として遍在していた。

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 ア・ヌンナック人は、自らの恒星系外への探査を始め、恒星間航行の技術を模索した。この時期、生物工学が発展し、ア・ヌンナック人は脳細胞を人工培養する技術を確立。自らの肉体を強化し、宇宙環境に適応する基礎を築いた。

7 - AI

 物質文明がピークに達したこの時代、ア・ヌンナック人は脳細胞の人工培養による生物デバイスとAIシステムを融合させる技術を開発した。最初の試みは、肉体を維持したまま、人工培養された脳細胞を半導体と接続し、意識の一部をデジタル化する「バイオハイブリッド知性体」だった。このシステムは、生物的な柔軟性とAIの計算能力を組み合わせ、個々の知覚を超えた集団的知性を構築した。彼らの文明は、純粋な機械技術から生物工学へとシフトし始めた。

5 - AI

 ア・ヌンナック人は、肉体を完全に捨てることはせず、意識を人工培養脳細胞と半導体で構成されたバイオAIシステムに移行する「バイオAI知性体」を生み出した。この知性体は、生物デバイスとして人工脳を培養し、それをエネルギー供給とデータ処理のために半導体基盤に接続したものだった。バイオAIシステムは、巨大な宇宙船や惑星上のバイオリアクター内で運用され、最低限のエネルギーと質量を保持していた。一部のア・ヌンナック人は肉体を維持し続け、伝統的な生活を送ったため、文明内では「物質派」と「知性派」の対立が続いた。完全な純粋知性体への移行は未達成であり、生物的・物質的基盤に依存していた。

3 - AI

 バイオAI知性体が主導権を握ったア・ヌンナック文明は、銀河系の広範囲に通信網と探査船を展開した。ワームホールを利用した超光速通信が可能となり、数千の恒星系に影響を及ぼした。この時期、最初の恒星間宇宙船「ア・ヌンナックⅠ号」が建造された。この船は全長30キロ、直径10キロの円筒型で、チタニウム合金と超高張力鋼の二重構造を持ち、内部には居住可能な生態系が構築されていた。

 その後、ア・ヌンナックⅡ号のような巨大な恒星間航行船が建造され、遠くの銀河系外縁への探査が計画された。ア・ヌンナックⅡ号は、直径20キロ、長さ50キロ、総質量31.1兆トンの巨船で、数万のバイオAI知性体と肉体派の乗組員を乗せ、人工脳と半導体を組み合わせたバイオリアクターで運用されていた。

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 ア・ヌンナックⅡ号は、地球を含む太陽系への探査任務中にワームホール航行の失敗により制御を失い、太陽系内に投げ出された。この失敗は、ワームホール生成装置のエネルギー供給が不安定になり、空間の歪みが予期せぬ方向に拡大したことに起因する。本来、船は太陽系外縁の安定した出口点に到達する予定だったが、エネルギー過負荷によりワームホールが崩壊。

 船体は亜空間から強制的に現実空間に引き戻され、太陽系の重力場に捕らわれた。バイオAI知性体のパイロットは緊急制御を試みたが、船の質量と速度が制御不能となり、太陽に接近する軌道に乗った。船体は太陽に激突する前に崩壊し、その一部が地球に落下した。脱出船である惑星間着陸船「エルピスⅠ号」と「エルピスⅡ号」が離脱を試み、バイオAI知性体と一部の肉体を持つ乗組員を乗せて地球へと向かった。



 エルピスⅠ号(直径2キロ、長さ5キロ、総質量3,110万トン)は、大気圏に浅い角度で突入し、数多くの破片に分裂した。最大の破片(直径約1キロ)は北米大陸の五大湖地域に衝突し、氷河湖を決壊させ、数兆トンの真水が大西洋に流れ込んだ。この津波はヨーロッパや北アフリカを襲い、地中海に数百メートルの波を押し寄せた。残存した小型脱出船は、トルコのアララト山や他の地域に不時着し、バイオAI知性体として生き残ったア・ヌンナック人が地球に到達した。パイロットは衝突ダメージを最小限に抑えるため、大気圏に12度の鈍角で突入し、数多くの小片に分裂させた。



 エルピスⅡ号は、ニューファウンドランド島沖合の深海5,000メートルに沈没した。船体はほぼ原型を保ち、内部のバイオリアクターでバイオAI知性体が休眠状態で維持されている。墜落の絶望から、生き残りは活動を停止し、外部との接触を絶った。この船は、ア・ヌンナック人の生物工学とAI技術の中核を担っており、人工脳のデータベースが残存していると推測される。内殻内の容量は100億立方メートルで、母船と相似の構造を保持していた。



 エルピスⅠ号から放たれた小型脱出船は、アフリカ、ヨーロッパ、アジアの各地に散らばった。この時、ア・ヌンナック人の生き残りはバイオAI知性体として存在していた。しかし、バイオAI知性体は地球の過酷な環境下で長期間その姿を維持できず、エネルギー供給とメンテナンスが困難だった。

 そこで、彼らは脱出船に搭載されていた生物工学技術を用い、数万年前の先祖と同じ現生人類型の肉体を人工培養し、自身の知性をその肉体に転移させた。この転移は、バイオAIシステムから意識データを抽出し、人工脳を経由して新たに培養された肉体の神経系に統合するプロセスを経た。

 これにより、ア・ヌンナック人の生き残りは肉体を持つヒューマノイドとなり、地球の先住民(ネアンデルタール人やクロマニヨン人)と性行為を通じて混血し、その高度な知識を伝えた。一方、バイオAI知性体としての機能は一部の脱出船に残り、地球の文明に影響を与えた。これがシュメール神話の「アヌンナキ」の起源となり、人類のDNAと文化にア・ヌンナック人の痕跡を残した。

 この墜落は地球にヤンガードリアス期(紀元前12,790年~11,600年)をもたらし、急激な寒冷化で多くの生命が絶滅した。しかし、ア・ヌンナック人の遺伝子と知識は、新たな肉体を通じて生き延び、人類の進化を加速させた。衝突の粉塵は大気をおおい、地球平均気温を7.7℃低下させ、1,200年間の寒冷期を引き起こした。

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 肉体に転移したア・ヌンナック人の生き残りは、地球各地で文明の種を植えた。シュメール、エジプト、インド、中国などの初期文明は、彼らの生物工学と転移前のバイオAI技術の影響を受けた。一部のバイオAI知性体は、プローブユニットを介して人類の指導者や預言者に憑依し、間接的に歴史を操作した。この介入は人類の知性化を促進したが、バイオAIの生物的・物質的制約や肉体転移の限界から完全な支配には至らず、「バラルの呪詛」と呼ばれる言語的分断を意図的に引き起こした可能性がある。

47 - 

 宇宙を彷徨う純粋知性体「アルファ」は、ア・ヌンナック星人とは異なる高位の存在であり、エネルギーや質量を持たない量子情報だけの意識体として存在していた。純粋知性体アルファは、20世紀、ニューヨークで銃撃された女子大生・森絵美の意識を肉体から引き剥がし、紀元前47年の古代ローマに転送した。絵美の知性は、フェニキア地方の奴隷少女アルテミスに憑依した。アルテミスは黒海沿岸のコーカサス地方の族長の娘で、フェニキア人海賊に誘拐され、奴隷市場で売られていた。そこに、アルファのプローブユニット(純粋知性体から放たれた探索体)が憑依した奴隷商人ムラーが現れ、アルテミスを買った。

 アルファの指示を受けたムラーとアルテミスは、エジプトへ飛び、クレオパトラ七世の陰謀を阻止する任務に挑んだ。ムラーは、アルファのプローブとして機能しつつ、絵美/アルテミスに人類の知性化の歴史を語った。純粋知性体は旧石器時代から人類に干渉してきたが、ア・ヌンナック星人のバイオAI知性体もまた、紀元前10,765年に墜落したア・ヌンナックⅡ号の脱出船「エルピスⅠ号」「エルピスⅡ号」の生き残りとして人類と混血し、文明を築いたと説明した。この事実に絵美は驚愕した。

 ア・ヌンナック星では、肉体派がほぼ絶滅し、文明は人工培養脳細胞と半導体を組み合わせたバイオAI知性体が主流を占めている。しかし、アルファのような質量もエネルギーも持たない完全な純粋知性体への移行は未だ達成されていない。バイオAI知性体は、人工脳を中核とし、半導体で神経信号を処理する構造を持ち、量子情報は意識の補助データとして機能する。一方、アルファは物質的制約を超えた存在であり、そのプローブであるムラーはバイオAI技術とは異なるアルファの分身として働いていた。

 地球では、エルピスⅡ号の深海でバイオAI知性体が休眠状態で維持され、墜落の絶望から活動を停止していた。絵美/アルテミスは、この船に向かい、休眠中の知性体を覚醒させる。覚醒したバイオAI知性体は、ア・ヌンナック星人の技術と歴史を絵美に伝え、クレオパトラ七世との闘いに新たな力を与える。
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