よこはま物語 弐、ヒメたちのエピソード

✿モンテ✣クリスト✿

文字の大きさ
31 / 48
ヒメと明彦4、良子・芳芳編

第25話 良子の家3、プータローたちから聞いた話

しおりを挟む
20

 良子に電話をかける前に家に寄った。何があるかわからない。良子の家から林田達夫のアパートに直接突入することもありうる。

 黒の長袖のTシャツ、黒のジーンズ、黒の野球帽。指ぬきしてあるなめし革の手袋。関節の部分を補強してある。骨折しちゃあたまらない。良子の分の手袋も持っていこう。砂を詰めたブラックジャック。外傷を負わせず相手の力を削ぐ。振り出すと伸びる警棒。これ、うまく遠心力で振り出さないとちゃんとロックしないんだ。米軍基地の横流しとアメ横で手に入れたものだ。

 こんなものを見たら良子は顔をしかめるだろうなあ。合気道の道場の師匠がみりゃあ、ぶん殴られるだろう。合気道は護身術なんだから。チビ(160cm はチビじゃないだろ?と良子には言われる。165cm のノッポには言われたくない!)なんだから武器も持たないと。

 良子の家は昔ながらの良家のお家って感じだ。家の境界線を背の高い鉄製目隠しフェンスで囲んでいる警備厳重な我が家と違う。我が家は襲撃されるからね。良子の家は、低い生け垣で囲われている。最近、玄関を改修してモダンなドアになっている。昔はノッカーでコンコンとしていたが、今やマイク、スピーカー付きチャイムだ。日本は豊かになっている。

 チャイムを押す。応答もなく、ドアが開かれる。「ファン、入って!待ってました」と言う。ちゃんとスリッパも揃えてある。「あなた、全身、黒づくめ?」と私の服装を見る。「お客様がいるのよ。紹介するわ」と応接間に歩いていく。

 いつもながら、相手を置いてきぼりにする行動。実に良子的だ。だけど、お客様?ダレ? 応接間に入った。ソファーから男女が立ち上がる。あれ?この女、写真の美姫に似てるわね?

「ファン、こちらお客様というより、この美姫の話の当事者。宮部明彦さんと小森雅子さんです。明彦、雅子、彼女がさっき話した私の小学校の同級生。張本芳子さん。中国名は張芳芳。もう面倒くさいから、お互い、ファンファン、明彦、雅子と呼べばいいわね。雅子は明彦の今カノ。だから巻き込まれちゃったの。雅子は私たちと同じで、美姫の手紙を怪しいと思ってる。単なる家出と思っていた明彦をここまで引っ張ってきたのよ。さ、みんな座って。ファン、お昼まだでしょ?天ぷら蕎麦を注文しておいたわ。すぐくるからね。これ、ほうじ茶。さ、『美姫を見つけたと思う、いい知らせじゃない』の話、説明して」

 このハイスピードで場を仕切る癖、止めてくれ!理解力が追いついていかないよ、元生徒会長!え~、元彼氏が、今カノと彼氏と寝ている元生徒会長と一緒に、元カノを探しているって構図だね?それで、中華系マフィアの家の娘の嗅ぎつけてきた話をみんな待っているんだね。私のことは二人に説明済みだね。やれやれ。

 私は、中華街でプータローたちから聞いた話を彼らにした。プータローの仲間が、サテンにいた時、林田達夫というヤツのダチがしていた話を盗み聞きした、なんでも、この前の月曜日に丘の上の女の子を達夫がひっかけて、アパートに住まわせてるということを話していた。そのダチがその女の子を見て、いい女だから輪姦させてくれって頼んだけど、達夫はこの子は『商品で金づるになる』からダメだ、って断られたってことだ。

「う~ん、剣呑な話ね。その林田達夫ってだれ?」と良子。明彦と雅子は不安そうな顔をしている。
「良子も知ってるだろ?中華街の大手のH飯店。あそこのばあさんの孫息子だよ。林田ってのは、私と同じ、日本に帰化するとき、名字を『林(リン)』から変えたんだ。上海系帰化中国人だ。達夫はチンピラで、ばあさんが激怒して勘当したんだ。H飯店の社長はばあさんの息子が継いでいるが、実質はばあさんが力を握ったままだ。社長は、ばあさんに内緒で達夫に金を渡して、中村川沿いのアパートを借りている。この話を聞いて、達夫のアパートに行ったけど、人の気配がしない。こりゃあ、一人じゃ無理だ、というので、良子に電話したんだ」

「ファン、美姫が『商品で金づるになる』ってなんの話?」
「ちょっとね、別のルートで別の剣呑な話を聞いたんだ。正直言うと、別のルートというのは、加賀町署の刑事の吉村警部補から聞いた」
「ファン、刑事からよく話を聞き出せたわね?」
「私の体と引き換えだよ、って冗談。吉村刑事、名前が浩司だけど、私の彼氏なんだよ。話せば長いから省略するけど、去年からの付き合いだ。一昨日の木曜日の夜、浩司を呼び出して、内緒ってことで、聞き出した。個人の手紙を見せて悪かったけど、美姫の手紙と封筒のコピーを見せて事情は説明した。だから、彼はこの話を知っている。だけど、両親から捜索願も出ていない、状況証拠のこの手紙だけじゃあ、警察も動きようがないということだ」

「あなた!マフィアの家の娘の彼氏が加賀町署の刑事!なにをやっているんだか」
「良子、偶然なんだよ。コペンで気が合っちゃって、ホテルに入って、さあ、やるしかない!って後に、彼が刑事と知ったんだ。それで、彼とセックスした後に、私の家のことをバラした。浩司、あなたは未成年の女子高生でマフィアの家の娘とセックスしたんだよ、ってね。ということで、浩司は美姫の話は警察署には黙っているってこと」
「う~ん、刑事がこっち側というのは心強いけどねえ。それで?」

「浩司の話では、彼の情報屋が『台湾系のグループが変なことをしているみたいだ』と彼に言ったそうだ。なんでも、日本全国から女性を誘拐してきて(横浜だけだと警察に嗅ぎつけられるからさ)、本牧かどこかの倉庫に誘拐した女性を集めて、数人単位で船に密航させて、香港か広東に売り飛ばしているって話だ。若い女の誘拐と海外への日本女性の人身売買だ。一人、末端価格で数百万円以上で売れる。中国人は日本女性が好きだからね。それが台湾マフィアだけならいいけど、彼らは米軍の不良兵士と組んでいるという話だ。もしかすると、米軍施設を秘密で使わせているかもしれない」
「その林田達夫と台湾マフィアにつながりがあるってこと?」
「林田の家は上海系で、台湾マフィアは中国の秘密結社の流れを組むので、本来は接触がないはずなんだけど、達夫はばあさんから勘当されていて、金が欲しい達夫から台湾野郎に近づいて、美姫を海外への日本女性の人身売買の一人に加えようとしていると私は思う。18才の美姫なら高く売れるだろうから。達夫も数百万円いただけるって寸法だ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

処理中です...