よこはま物語 壱½ Ⅰ、ヒメたちとのエピソード

✿モンテ✣クリスト✿

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加藤恵美・真理子編

第5話 メグミと 5

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 買い物を済まし、ホテルにチェックインする。九時になっていた。

「わお!こんな時間から二人きりなんて、信じられない!」とメグミがベッドに座って、ポンポンと飛び跳ねる。
「ほら、メグミははじけるばかりに健康じゃないか?」とぼくが言った。
「健康なんだもん。ねえねえ、買った下着に着替えるの、明彦見たい?」
「エッチだなあ、見たいけど」
「じゃあ、見せてあげる」と言って、メグミはポロネックのセーターを脱いで、スカートのジッパーを引き下げた。

「ねえねえ、明彦?」とメグミが言う。
「何?いま、キミの脱衣姿に興奮しているところなんだけど?」
「メグミね、明彦の前だと羞恥心って溶けて消えてなくなっちゃうみたい・・・」と着ているブラをはずして、フロントホックのブラをつけた。「慣れちゃったんだよ、いっぱいエッチしたから」
「そういうものかな?」とパンティも新しいものをはいた。「メグミじゃないからわからないよ」とぼくはシャツを脱いで、「ほら、これ羽織って」とメグミに渡す。
「サンキュー」とぼくのシャツをメグミはボタンをしないで羽織った。ちょっとブカブカだから、袖を折り返す。

 ミニバーをチェックして、ぼくはメグミにブランディーの水割りを作った。自分はウィスキーの水割りを作る。TVをつけ、ベッドに寄り添って横になった。

「これって、夫婦みたいじゃない?」
「夫婦になったことがないからわからないよ」
「でも、楽しい。二時間とか時間を気にしないでいいんだものね」
「明日のお昼までにはチェックアウトしないとね」
「十二時間以上あるよ?」
「メグミは寝ないつもりかい?」
「あれ?明彦、寝ちゃうの?」
「寝ないでしてたら、ぼくは死んじゃうよ」
「じゃあ、二人で死ぬまでやりましょうよ。それで、明日、ホテルの人が部屋の鍵をこじ開けて、死んでいる私たちを発見するの」
「やれやれ・・・」

 フロントホックブラの外し方の研究をしてみた。
「これではずれるのか?これは便利だよね」
「エッチ!何が便利なのよ?」
「メグミを脱がすのに便利だってこと」
「まったく・・・」とメグミはストラップを肩から外して、袖口から出した。手を抜いてストラップを抜く。もう片方も。
「そういう、シャツを脱がずにブラを脱ぐ方法って、誰に教わるの?」
「学校の授業で」
「うそ?」
「うそ!伝承の知識なんだよね、友人のお姉さんから教わって、それが妹に伝わって、さらにさらに・・・という具合よ」
「なるほどなあ・・・照明、消す?TVは?」
「どっちも消して・・・」

 健康的にドスンバタンした。二人とも息が切れて、メグミの乳房の間にはぼくの汗がたまっている。ぼくは、バスルームに行ってハンドタオルを二つとってきて、メグミの汗を拭いてやった。時計を見ると十二時になっている。
「ねえ、のど渇かない?」
「渇いた」
「コーク飲む?ビール飲む?」
「コークの後にビール!」
「ほら」と、ぼくは、コークのプルトップをとってメグミに渡した。

「いままでだったら、これで延長も終わりで、ハイ、さようなら、だったけど、今晩は、夜はこれからなんだね?明彦?」
「あのさ、今、終わったばっかりじゃないか?」
「ボクシングの試合だと、ワンラウンド三分、合間が一分でしょ?だから、三時間のワンラウンドだったから、明彦には合間を一時間あげよう!」
「なに言ってるんだか。一時間待てますか?」
「待てるわけないでしょ?健康的なメグミなんだよ?」
「まあ、お話でもしようよ」
「お話だけ?」
「多少さわり合っても差し支えないけどね・・・」
「エッチ!」
「どっちが?」

 ぼくらはコーラを飲み終わって、ビールの缶を開けた。
「メグミ?」
「なあに?」
「ちょっと気になっていることがある。訊いてもいい?」と、ぼくは水曜日の電話の切り際が気になったのでメグミに訊いてみた。

「この前の水曜日、メグミ電話をかけてきたじゃない?」
「かけたよぉ~」
「それで、電話切るとき、あのとき、ぼくはメグミが切るのを待っていたんだけど、『お休みなさい、明彦』の後、メグミ何か言わなかった?」
「え?え?何か聞こえたの?」
「聞こえた。メグミが『好き・・・』というのが聞こえた」
「・・・」
「言っただろ?『好き』って」
「言ったとしたらどうなの?」

「ぼくを好きと言ってくれたのなら、それはぼくにとってすごくうれしい言葉だけれど、ぼくらは『楽しい』『気持ちいい』『面白い』はよく言うけれど、お互いを『好き』だとは言ったことがないだろ?」
「それって、『好き』とは言ってはいけないということ?」
「そういうことじゃない。ぼくもメグミのことが好きだ。だけど、あの時の『好き』に何かがあったと思う」
「どういうこと?」
「(一緒にいて楽しいから)好きだ、とか、(話しているのが楽しいから)好きだ、という『好き』じゃないような気がする」
「違う意味でメグミは電話を切るときに『好き』と言ったと思うの?」
「そう思う、そう感じさせる声でメグミは受話器を置くときになにげなく『好き』と言ったとそう感じたんだ」
「・・・」
「もしも、違う意味で好きだと感じ始めていたとしたら、ぼくが真理子と会うのをメグミは苦痛に感じるようになる。もしも、ぼくがメグミを違う意味で好きだとしたら、メグミが彼氏と会うのを苦痛に感じる」

「明彦」とメグミがビールの缶を両手で押し包むように持って、縁越しにぼくを見た。「もしも、じゃなかったら、明彦はどうするの?」
「わからない。もっと話をする必要がある」
「もしもじゃないのよ、私」
「じゃ、もっと話をしよう」
「明彦はどうなの?私のことが好きなの?違った意味で」
「わからない。混乱しているのかもしれない。でも、どのような意味でもメグミのことをぼくは好きだ、という自信はあるんだけどね・・・」と、ぼくははだけたメグミのシャツを着せてやりながら言った。

「明彦でもわからないかぁ~。」とシャツをかき合わせながらメグミは言う。「普通、つきあいだして、愛だ恋だと語って、私はあなたのもの、あなたは私のもの、という意識になって、キスして、セックスして、というプロセスじゃない?それが、私たちって、最初にエッチから入って、でも、彼氏がいる、彼女がいる、エッチだけの付き合いでいようね、ということで数ヶ月経って、今頃になって、本当は好きなの、というのは変だよねえ・・・」とメグミはビールをチビチビと飲みながら言った。

「おまけに、メグミは、真理子の明彦を奪っちゃった、という感覚がないんだ」とぼくの太ももにあごをのせた。「それで、明彦は私のもの!という感覚がない代わりに、だんだんと、私は明彦のもの!という感覚がうまれてきたんだよ。おかしいかな?」と、メグミはぼくを見上げて言った。「キスした、エッチした、男の子に抱かれた、というだけで、その男の子のもの!ということにはならないとメグミは思う。だけど、だんだんね・・・だんだん・・・明彦がどう思っているか知らないけど、私は明彦のものと感じてきたのよ。明彦はわたしのものとは思わないんだけど・・・私って、おかしい?」

「おかしくないよ。ぼくも同じように感じている。だけど、ぼくがメグミをぼくのものと思わなくても、メグミが『私は明彦のもの』と思っていて、ぼくが『ぼくはメグミのもの』と思っているなら、もう、どうしようもなくなるじゃないか?始まりがエッチで始まったとしても、もう、メグミがこの前電話で言った『かたやプラトニックで、かたやエッチばっかり。そういう関係って多様性があって好き』という関係は続けられない」
「続けられないとすると、どうするの?」
「メグミを選ぶしかぼくには選択肢はないってことだ。メグミがどう考えようと」
「じゃあ、そうして」
「え?」
「メグミを選んで。メグミも明彦を選ぶ」
「そうしよう。ただ、そうなると・・・」
「そうね、そうなると・・・でも、いま、『そうなると』の後の行動をする必要はないわよね?」
「だって、午前0時だからね」
「じゃあ、明日から、『そうなると』の後の行動を考えるとして・・・」
「うん?」
「頭が痛い問題はそのくらいにしておいて、さ、もっとやろ?」
「了解」
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