よこはま物語 壱½ Ⅰ、ヒメたちとのエピソード

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加藤恵美・真理子編

第7話 真理子と 1

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 何事にも終わりは来るもの。

 いつものように飯田橋駅でメグミと落ち合った。腕を組んで、二人が最初に行った神楽坂のホテルに入って、いつものように三時間、エッチをした。ホテルを出て、早稲田通りに出たのだ。

 そこに真理子がいた。

「宮部明彦くん、メグ、こんなところで会うのは奇遇というべきかしらね?何していたのかなあ?」と真理子が言う。「ホテルに二人で入って出てきたというのは何を意味するの?あなたがた?」

「・・・」

 そりゃあ、ぼくもメグミも言葉が出ない。これほどギョッとした経験はぼくの短い生涯でなかった。

 ところが、メグミはぼくをかばうように数歩前に出て、真理子に面と向かったのだ。メグミよりも真理子の方が長身だ。

「マリ、私が悪いのよ」とメグミが言う。おいおい、それはマズイよ。ぼくは、メグミのさらに前に立って、真理子の顔を見た。すぐ近くで。「真理子、言い訳はしない。でも、ぼくがキミを裏切ったんだよ。悪いのはぼくだ」

 真理子がにこやかに言う。「美しいわね、二人で悪いのはぼくだ、私だって。でも、ふたりで私をバカにしたのね?」
「真理子、そんなことはない。ちょっと話を聞いて欲しい」とぼくは真理子に言った。それで、メグミに「メグミ、悪いけど、一人で帰っておくれ。ちょっと、ぼくは真理子と二人だけで話さなければいけないことがあるから」と言った。

 メグミは「それって・・・」と言ったけど、「わかった、メグミ、帰るね。マリ、ゴメン・・・」と言って、神楽坂を下っていった。

「真理子、どこか喫茶店にでも入ろう?」とぼくが言うと「あら?私にはホテルに入ろうとは言ってくれないの?」と泣き顔で言う。
「酒でも飲むか?いつものここ下ったところのジャズバーで?」
「うん、いいよ」と真理子は言う。

 ジャズバーで、ぼくのボトルを頼んだ。サントリーのだるま。水割りにして。焼き鳥を注文した。二人とも食べない焼き鳥を。冷めるだけの焼き鳥。

「真理子?」
「え?」
「ホテルに入ってから出るまで、ずっと待ってたのか?」とぼくが訊くと、「あの路地の正面に喫茶店があって、そこで、紅茶を飲んで、待っていたのよ。いつ出てくるんだろうって。一時間、二時間、三時間・・・」

「どうして、気づいたんだ?」
「今日ね、大学に行って、帰ろうと思って飯田橋の駅に行ったら、明彦とメグが駅前にいたの。声をかけようと思ったら、手をつないで、交差点を渡っちゃった。私も信号ひとつ遅れて渡って、どこに行くのかな?とついていった。そうして、あなたがた、三丁目で右に曲がって、ホテルに入るのが見えたの。クソッと思ったわ。・・・いつから、こういうことをしていたのよ?明彦?」
「五月からだ」とぼくが言う。
「5、6、7、8、9、10、11、12・・・八ヶ月ね?」と真理子が指折り数えた。

「そうだ、その通りだ」
「八ヶ月も、私に隠れて、明彦とメグはこんなことをしていたのね」
「そうだ。その通り」
「なんで、そういうことができるの?明彦?」
「言い訳なんてしない。そうなっちゃったんだ」
「どうして?明彦が欲しいって言ってくれたのなら、私は明彦とセックスしたって構わなかったのに。なぜ?」

「説明しても、真理子には理解できないかもしれない」
「説明してもらわないと、私は理解も何もできない」
「説明が難しいのだけど・・・」
「私と明彦は、それほど離れてしまったの?説明くらいできるでしょ?」
「つまりだ、率直に言う、話のはじめは・・・」とぼくは最初からすべて事実だけを説明した、五月の最初から。

「そう、それって、メグが誘ったのよね?」
「そうじゃない、メグミが誘ったとかそういう話ではないんだ」
「だって、あのとき、私、用事があって、あなたとメグを残して新宿に行ったじゃない?そのあと、メグがあなたにセックスしよう、って言ったのよね?それはメグが明彦を誘ったわけでしょ?」
「いや、ぼくがしてもいいと言ったんだ」

「わからない・・・」
「わからなくていい。とにかく、ぼくが真理子を裏切った」
「私の何がいけなかったの?メグだって、彼氏がいるのよ?」
「ゴメン。真理子が悪いわけがない。ぼくが悪いんだ」
「なんでかな?なんで?」
「そうなってしまう何かがあったんだよ」
「それは、私が明彦にセックスして欲しいと、メグみたいに言わなかったからなの?」
「そういう話ではないと思う。真理子とメグミは違う人間だ。真理子がメグミみたいにセックスしよう、なんて言えない」
「言えるわ」
「・・・」

「私、明彦がセックスしようって言ってくれるのを待ってたのよ」
「それは、真理子が自分をぼくにあげたいと思っていたってこと?」
「いいえ、二人とも好きなら、セックスすればもっと好きになるじゃないの?」
「そういう話じゃないと思う」
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