よこはま物語 壱½ Ⅰ、ヒメたちとのエピソード

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雅子編1

第14話R3 京都に行っても、座敷牢に入るわけやないんやさかい

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明彦が大学二年、小森雅子が大学三年、仲里美姫が浪人生の頃。台湾マフィアとの抗争も終わり、一段落した秋の話。

🔴よこはま物語 弐、ヒメたちのエピソード
 ヒメと明彦4、芳芳・良子編以降を参照。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/913345710/245940913



 う~ん、頭痛いわ。口の中ヘドロみたい。飲み過ぎや。これは授業出られへんなぁ。って、天井見上げて思た。横見ると、明彦とミキちゃんがスヤスヤ寝てる。二人共スッキリしてるみたい。何か、一回、ミキちゃんに起こされたような気がした。

 ヨタヨタ起き上がった。あかんわ。まず、シャワー浴びな。頭淀んでる。トイレ済まして、シャワー浴びて、シャンプーした。こめかみと首筋揉んでみた。効かへんなぁ。後で、明彦にマッサージしてもらお。ダメージ度、150パーセント、いうとこかしら。でも、夜やないさかい、休学して京都に連れ戻される、いうんは、あんまりピンとこなくなった。ああいう問題は夜考えたらあかんわなぁ、思う。

 体拭いて、素っ裸で、寝室に着替え取りに行った。Tシャツとホットパンツでええや。二人共まだ寝てる。うちが潰れた後も二人で話し込んでたんかしら?キッチンとダイニング綺麗になってた。お酒の空き瓶三本。バランタインの十七年半分飲まれてる。二人共盛大に飲んだもんやなぁ。

 パーコレーターセットして、コンロかけた。あんまり食欲ないわ。冷凍庫漁ると、この前作った野菜スープあった。玉ねぎ、人参、キャベツ、トマト、じゃがいも、キャベツ、いんげん豆、マッシュルームとベーコンコトコト煮て、塩と胡椒だけで明彦が作ったんの余りや。いっぱいある。あの二人も食べるやろ。パンはええや、食べたくない。昨日のご飯の残りあるさかい、それで済まそ。

 まずはコーヒー飲んだ。う~ん、おいしい。あれ?何時やろって時計見ると、七時半やん?五時間くらい寝たんかしらなぁ。二人何時まで騒いでたんやろ?

 テーブルの上に明彦の煙草あったさかい、一本もろて、コーヒーマグ持ってベランダ出た。雀がチュンチュン鳴いてる。あ~あ、この生活もあと二ヶ月くらいなんかしら?手放したくないなぁ。どうしようもないけど。

 京都に行っても、座敷牢に入るわけやないんやさかい、電話もかけられる、東京にも出てこれるかも。明彦と美沙子さん京都に呼んじゃったってええ…うち、諦め悪いんかしら?あ~あ、こういう古典的でドラマに出てくるようなストーリーに自分が出演するとはなぁ、思いもよらへんかったなぁ。

 二人起こすことにした。寝室行って、明彦揺さぶる。「明彦」って言うて揺さぶる。「朝食作ったんやけど、食べる?」って聞く。明彦パッチリ目開けた。こいつって目覚めええんやさかい。
「雅子、おはよう。朝食って何を作ったの?」
「あまりもん。野菜スープにご飯。コーヒー淹れたけど、緑茶も入れよか?」
「うん、お腹が空いた。あれ、ヒメは?」
「まだ寝てるで。起こす?」
「うん、起こそうか」

 今度はミキちゃんに「朝やで、朝食、あるで」って揺さぶると、彼女も目パッチリ。うちみたいにグズグズせえへんのなぁ。「雅子さん、おはよう。今、何時?」
「七時四十五分やで」
「ふ~ん、まあ、寝たわ。お腹が空いた」って伸びした。ミキちゃん、Tシャツ姿やさかい、パンツ見えてるで。

 二人にスープとご飯渡した。緑茶淹れた。「うん、この野菜スープと御飯って、お腹の中でおじやになるね」って明彦言う。変なやつ。あっという間に二人共食べてしもた。こいつら、二日酔いってないんやろか?うちまだ頭痛いのに。

「あなた方、健康的やなぁ。うち頭痛いわ」二人に皮肉言う。
「ウィスキーを煽って飲むからよ」ってミキちゃん。
「マッサージするか?」って明彦が言うてくれた。
「おねがい、首筋とこめかみ」って言うとうちの後ろに回って、こめかみと首筋マッサージ始めた。気持ちええ。

「雅子さん、寝てる時、起こしたんだけど、起きないから、私と明彦でしちゃったわ。彼はルール違反だ、って言ったけど、あなたに隠れてするわけじゃなし、寝ているあなたの横でするのはセーフよ、って言って、明彦、食べちゃった。気にする?」

「う~ん、ああいう話の後で、ようできるなぁ、二人共。まぁ、ええよ。ミキちゃんと明彦なんやさかい」



 最後はあっけなかった。私と明彦が雅子さんを東京駅まで見送りに行った。彼と彼女は泣くでもなく、淡々とお弁当とお茶を明彦が買ってあげたり、私に二人の写真を取らせたり、雅子さんが明彦のジャケットの襟を直したり。
 
 ハグもなく、彼女は新幹線に乗り込んだ。
「じゃあね、明彦、元気でね」
「雅子も。たまに電話するよ」
「うん、ありがとう。ミキちゃん、お世話になりました」
「こっちの方こそ。お元気でね」
「うん、じゃあ、二人共バイバイ」とスタスタ座席に移動してしまった。
 
 でかい鼻の新幹線の後ろ姿を二人でしばらく見ていた。それも有楽町の警視庁丸の内警察署の当たりでカーブして見えなくなった。
 
「あっけなかったね、明彦」
「長すぎたんだ。あの九月の初めから今日まで三ヶ月近くだろう?九月の初めで雅子が消え失せたら、それはもっと感情が二人共爆発したでしょうけど、三ヶ月じゃあね。二人共先が見えている関係というのがわかっていて、蛇の生殺しの三ヶ月だった。ヒメには間に入ってもらって助かった。二人だけだったら、修羅場になっていたかもしれない。そういう別れ方ってイヤじゃないか?ヒメ、ありがとう」
「私も見ていて辛かったもん」

「結局、男女の仲は、独占欲、所有欲、支配欲、依存心や執着心がないとダメなんだろうね。ゼロの執着心や依存心なんてありえない。お互い、未来はない、お互い、将来もお互いを所有欲できない、依存心や執着心が生まれないのだから。だから、こういう関係になって、いいお友達でいましょう、という関係には移行できない。男女の仲は友達ではいられない」



(明彦には、今は言えない。雅子さんからお願いされているもの。私が消えたら、ミキちゃん、明彦に抱かれてくれない?私の知らない女の子と明彦が付き合えるように助けてくれない?京都に電話をかけさせないようにしてくれない?って。このお願いは彼には黙っていて、って。三ヶ月間、彼女、わざと距離をおいて彼に冷淡に接していた。雅子さん、今でも、彼を思って身悶えしてると思う。それをこんなお願いして、なんとか彼に自分を忘れさせようとして。明彦、あなたの彼女はあなたにとって、最高の女だったのよ)

 あの夜、私が彼に話した「二人の運命のめぐり合わせは交差しなかったのよ。二人共が最終ゴールじゃなくて、通過点だった」も、明彦に言った「私ね、未来が見える能力があるの。言っておくけど、明彦には、もっとひどい未来もある。別れもこれが最初でも最後でもない。でもね、二年後、真冬にキミは出会うの。キミの運命に出会うのよ。覚えておくのよ。1979年の二月。突然、女神が降臨する」も、私は知っていた。これが変更できないことを。私が酔っ払って言った戯言でも何でもない。私には見えたの。
 
 雅子さんと明彦は未来でも二度と交差しないと決まっている。ひどい話ね。
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