16 / 42
第1章 尾崎と比嘉編
第13話(2) 新幹線の優子と智子、尾崎、2017年11月16日(木)
しおりを挟む
神田、BAR官兵衛、2017年11月16日(木)
BAR官兵衛に尾崎は先に来た。優子と智子は東京駅で報告と引き継ぎ、着替えをしてからちょっと遅れてバーに来た。
尾崎は三國優子と小林智子に挟まれてカウンター席に座った。ショルダーバックを探る。口元を結んだビニール袋を取り出す。中に赤い箱が入っているのが透けて見える。
「これ、おみやげ。チルドだから帰ったら冷蔵庫に入れないとね」と俺は二人に袋を渡した。「もちろん毎日行き来しているからおなじみなんだろうけど、匂いを気にしてパーサーが買って帰ることはあまりないんじゃないかと思ってね」
「ありがとうございます。何です?」と優子。
「551蓬莱の豚まんと焼売。2箱ずつあるよ。あ!マスターの分も買ってきた。悪いんだけど冷凍庫に入れておいて」
「私にもですか?ありがとうございます。冷凍庫に入れておきます。帰りにお渡ししますね」とマスター。
「尾崎さん、ありがとうございます。言われるように、蓬莱の豚まん、熱々を大阪で食べますが、持って帰るのは商売柄問題がでます。先輩とクルーを組んだら文句言われます」と智子。
「そうでしょう?いつだったか、車内で熱々の豚まんを食べているリーマンがいて、近くの席の大阪のオバちゃんがクレームをしていたのを見たことがある。『たこ家道頓堀くくる』のたこ焼きのテークアウトなんか、『新幹線車内および駅構内でのお召し上がりはご遠慮願います』という注意書きシール”が貼られるようになった。確かに豚まんやたこ焼き、臭うからなあ。その内、新幹線で飲食禁止なんてことにならないか心配だよ」
「密閉された車内ですから匂いがこもりますものね。食べ物ではないですけど香水のキツイお客様もいて、さすがにクレームする方はおりませんが、私どもに顔をしかめて指差す方もおられます」と優子。
「香水がきついのは俺もダメだな。グリーン車を利用するのも普通車よりも空いているからだ。周囲に人が居ないのが快適だ。子供も少ないしな。会社では普通車運賃しか請求できないから自腹だよ」
「飛行機もそうなんでしょうが、新幹線の車内も社会の縮図、何があるかわかりませんよね」と優子が言う。
「クレーマーも多いんでしょう?あ!注文をしないと。君たちは何にする?俺はね、グレンリベットの12年をいただけます?」
「トリプル、ロック、ソーダを別グラスでしたね?」と尾崎の前回の注文を覚えているマスター。
「イエス。三國さんと小林さんは?」
「じゃあ、私は尾崎さんと同じものを」と優子。
「え~、二人共濃いのが好きなんだぁ。尾崎さんは新幹線の中でもミニチュアボトル3本でしたものね?」と智子。
「ダブルで十分しか持たない。トリプルなら十五分は持つ。勘定は同じだからな。頼まれる方もカクテルほど面倒じゃないが手間が3分の2に減る。洗い物も少なくなるだろ?」
「合理的なお考えです。ええっと、智子はぁ・・・メーカーズマークを・・・優子、睨まないで!わかりました!水割りにしません!ダブルのロックで。炭酸をお願いします」
「三國さん、行政指導?小林さんの水割り禁止なの?」
「智子の割り方だと酎ハイなみに割るからバーボンだろうが角瓶だろうが味がわからなくなっちゃうってことです。個人の好みなんですけどね。この子、ワインも値段で判断して味はわからず。そんなんじゃあ、ブショネを出されてもわかんないでしょ?って指導します!」
「ああ、コルクが緩んだりして酸化しちまった劣化ワインだな」
「尾崎さん、優子はお母さんみたいなんですよ。いつも叱られてます。一昨日もワインもそうだけど人間としても『ブショネ』になるな!と説教されました!」
「私はそこまで言ってないよ、智子。『私、ブショネのワインにならないもん!』って言ったのはあなたでしょ?」
「それは面白い表現だな。覚えておこう」
「優子は私の婚活のプロフカードもウソばっかりって言うんですよ!」
「だって、あなたのプロフは私のことじゃないの?」
「婚活のプロフカード?なんですか?それは?」
「へへ、え~、私、いつも持っているんですよ。印刷して大量生産。書くのも面倒なので。婚活で会った人に話しの接ぎ穂で渡すんですよ・・・これです!」
「小林さん、実際に婚活してるのですな。なるほど」
「智子でいいです。彼女も優子でいいですよぉ」
「智子さんに優子さん。わかった。了解。でも、俺は名字でお願いしますよ。『紀世彦』なんて止めて欲しい。俺のオヤジを恨むよ。ああ、プロフカードだね。どれどれ・・・」
「ふむ。智子さんの性格はサバサバしているんだね?」
「それ、私です。智子はウジウジのツンデレです」
「まあ、ウジウジのツンデレとは正直に書けないか・・・休日は博物館巡りで、デートは映画館、水族館、カウンターバー・・・」
「それも私のことです。私、一人で博物館や美術館に行くんですよ」
「な、なるほど・・・俺と同じだな・・・」
「私、優子をイメージして書きました!彼女のほうがモテる要素はあるので!だって、優子に言われる前に言いますが、オフの休日で場外馬券売り場なんて書けないでしょ?デートにいきたい場所って居酒屋かファミレス、食べ放題のビュッフェも同じくでしょ?身長も5センチサバを読んでます。163センチは優子の身長。正直書くとこうなります。優子に言われたんで正直に書いてみたんですが・・・」
「これが正直バージョン?」と尾崎。
「正直バージョン、智子作ったの?私にも見せてよ」と優子。
「飯伏幸太ってレスラーの?得意料理が冷凍食品全般・・・」
「智子、あなた、好きな歌手が柴田淳、華原朋美、指原莉乃ってみんなダメンズ好きなダメ女じゃないの?それに、趣味特技でセックス?!」
「身長はバレるから158センチに直すとして、あとは優子さんバージョンのほうが良さそうだな」
「でしょ?尾崎さんもそう思うでしょ?正直バージョンだとクズ女でしょ?」
「いや、智子さん、そんな卑下しないで。居酒屋はいいんじゃないか?俺もホッピーとか好きでさ、この前の雨の日曜日も上野のアメ横の居酒屋でモツ焼き食ってホッピー飲んだよ」
「あら、私も日曜日の午後に上野の美術展に行ってました」と優子。「上野の森美術館『怖い絵』展。空いていると思ったのに長蛇の列で。1時間並んだわ」
「ほほぉ、俺もそこ行ったんだ。午前中だったが。同じく1時間並んだ」
「偶然ですね。時間がずれていたら・・・それでアメ横にお一人でモツ焼きを食べてホッピーを飲まれたんですね・・・」と優子。
「いや、それがね、俺が絵のマチエールのことで独り言を言っていたら、女の子がそれを聞いていて『第一章から改めて観てくださって、私にいろいろと教えていただけませんか?』と言うもんだから、『切り裂きジャックの寝室』とか、『レディ・ジェーン・グレイの処刑』とかの絵の説明をして、科学博物館に行ったんだ。その流れでアメ横で食べて飲んだ」
「ええ?尾崎さん、モテますね?・・・ちょ、ちょっと、優子、テンション下がってない?」
「ううん、残念だなあって思って。時間がずれていたらその子の代わりに私が尾崎さんに絵の説明をしてもらえたんだなあ、なんてね」
「優子さん、俺はね、社の同期の女性共から『KY』『女性心理をわからんボケ』と言われているんだ。確かにそうなんで認める。優子さんは偶然知り合ったが、一緒に居て楽しい。なんだろう?中学高校の同じクラスの女子の友達という感覚だな。その女の子は美香さんっていうんだけど、彼女が先、優子さんが先とか、そういう順位は・・・」
「尾崎さん、『優子さんは偶然知り合ったが、一緒に居て楽しい。なんだろう?中学高校の同じクラスの女子の友達という感覚だな』ってひどい。恋愛対象として優子は見られないってこと?」と智子。「智子!」と優子が怒鳴る。
「何言ってるのかなあ、優子は。誰がみても優子は尾崎さんに好意を持っていると思う。ねえ、マスター、そう思わない?」と智子がバーのマスターに同意を求めた。
バーカウンターの向こうで素知らぬ顔でグラスを磨いていたマスター(俺も尾崎紀世彦で迷惑している方だがマスターも松崎しげるなんて名前だ。同情する。しかし、色白なんだが)がグラス磨きの手を休めて「私もそう感じてますよ。三國さんが尾崎さんを見る表情は少女漫画のように目が星キラキラになってます。私としては尾崎さんに殺意すら感じますな」と言った。
「マスター!なんなの?『殺意すら感じます』って!」と智子。
「小林さん、文字通りです。なぜなら、三國さんがワインのソムリエ資格取得の勉強を初められたというを聞いたので『シメた!』と思ったんです。あ!新幹線のパーサーからソムリエに商売替えしたら、このバーで働いてもらってもいいかな、と。将来はビジネスパートナーだけじゃなくて、人生の・・・などと思っていました。だから、キラキラ目で三國さんが尾崎さんを見るので殺意がわきましたよ」
「マスター!その淡々とした調子で『殺意』なんて言葉、言っちゃダメ!なんだよ、マスターも優子ファンかよ。ねえねえ、マスター、私は?私は?」
「小林さんも美人で素敵だと思いますよ」
「チェッ!『も』を付ける!私は優子のおまけなのね?」
「まあまあ、智子さん、むくれるなよ。しかし、マスターに殺意を抱かれていたか。松崎しげるが尾崎紀世彦を殺したら、ニュースキャスター、困るぜ。『神田のBAR官兵衛の経営者、松崎しげる容疑者がアイスピックでお客の尾崎紀世彦さんの胸を刺して殺害しました。取り調べに依りますとバーのお客の女性YMさんとの間の痴情事件と言われております』なんてさ」
三人で神田駅まで歩いていった。彼女たちは大井町に住んでいるので錦糸町の俺とは反対方向だ。
ホーム下の階段で別れ際「尾崎さん、また出張の折にでも帰りにお酒を付き合っていただけますか?」と優子さんに聞かれた。
「そうですよ。男女の話が中途半端になっちゃったんですから」と智子さん。
「いいですよ。出張して帰ってきて、予定が合えば飲み友達がいる、というのはうれしいことだ。それもキレイな女性が二人。でも、来週は新幹線を使う出張はないんです。でも、連絡して下さい。優子さんと智子さんの新幹線業務に合わせて、俺が体が空いていたらまた飲みましょう」と答えた。
優子さんと智子さんと神田駅で分かれて、さて、どうしようか?と思った。考えるまでもない。
BAR官兵衛に尾崎は先に来た。優子と智子は東京駅で報告と引き継ぎ、着替えをしてからちょっと遅れてバーに来た。
尾崎は三國優子と小林智子に挟まれてカウンター席に座った。ショルダーバックを探る。口元を結んだビニール袋を取り出す。中に赤い箱が入っているのが透けて見える。
「これ、おみやげ。チルドだから帰ったら冷蔵庫に入れないとね」と俺は二人に袋を渡した。「もちろん毎日行き来しているからおなじみなんだろうけど、匂いを気にしてパーサーが買って帰ることはあまりないんじゃないかと思ってね」
「ありがとうございます。何です?」と優子。
「551蓬莱の豚まんと焼売。2箱ずつあるよ。あ!マスターの分も買ってきた。悪いんだけど冷凍庫に入れておいて」
「私にもですか?ありがとうございます。冷凍庫に入れておきます。帰りにお渡ししますね」とマスター。
「尾崎さん、ありがとうございます。言われるように、蓬莱の豚まん、熱々を大阪で食べますが、持って帰るのは商売柄問題がでます。先輩とクルーを組んだら文句言われます」と智子。
「そうでしょう?いつだったか、車内で熱々の豚まんを食べているリーマンがいて、近くの席の大阪のオバちゃんがクレームをしていたのを見たことがある。『たこ家道頓堀くくる』のたこ焼きのテークアウトなんか、『新幹線車内および駅構内でのお召し上がりはご遠慮願います』という注意書きシール”が貼られるようになった。確かに豚まんやたこ焼き、臭うからなあ。その内、新幹線で飲食禁止なんてことにならないか心配だよ」
「密閉された車内ですから匂いがこもりますものね。食べ物ではないですけど香水のキツイお客様もいて、さすがにクレームする方はおりませんが、私どもに顔をしかめて指差す方もおられます」と優子。
「香水がきついのは俺もダメだな。グリーン車を利用するのも普通車よりも空いているからだ。周囲に人が居ないのが快適だ。子供も少ないしな。会社では普通車運賃しか請求できないから自腹だよ」
「飛行機もそうなんでしょうが、新幹線の車内も社会の縮図、何があるかわかりませんよね」と優子が言う。
「クレーマーも多いんでしょう?あ!注文をしないと。君たちは何にする?俺はね、グレンリベットの12年をいただけます?」
「トリプル、ロック、ソーダを別グラスでしたね?」と尾崎の前回の注文を覚えているマスター。
「イエス。三國さんと小林さんは?」
「じゃあ、私は尾崎さんと同じものを」と優子。
「え~、二人共濃いのが好きなんだぁ。尾崎さんは新幹線の中でもミニチュアボトル3本でしたものね?」と智子。
「ダブルで十分しか持たない。トリプルなら十五分は持つ。勘定は同じだからな。頼まれる方もカクテルほど面倒じゃないが手間が3分の2に減る。洗い物も少なくなるだろ?」
「合理的なお考えです。ええっと、智子はぁ・・・メーカーズマークを・・・優子、睨まないで!わかりました!水割りにしません!ダブルのロックで。炭酸をお願いします」
「三國さん、行政指導?小林さんの水割り禁止なの?」
「智子の割り方だと酎ハイなみに割るからバーボンだろうが角瓶だろうが味がわからなくなっちゃうってことです。個人の好みなんですけどね。この子、ワインも値段で判断して味はわからず。そんなんじゃあ、ブショネを出されてもわかんないでしょ?って指導します!」
「ああ、コルクが緩んだりして酸化しちまった劣化ワインだな」
「尾崎さん、優子はお母さんみたいなんですよ。いつも叱られてます。一昨日もワインもそうだけど人間としても『ブショネ』になるな!と説教されました!」
「私はそこまで言ってないよ、智子。『私、ブショネのワインにならないもん!』って言ったのはあなたでしょ?」
「それは面白い表現だな。覚えておこう」
「優子は私の婚活のプロフカードもウソばっかりって言うんですよ!」
「だって、あなたのプロフは私のことじゃないの?」
「婚活のプロフカード?なんですか?それは?」
「へへ、え~、私、いつも持っているんですよ。印刷して大量生産。書くのも面倒なので。婚活で会った人に話しの接ぎ穂で渡すんですよ・・・これです!」
「小林さん、実際に婚活してるのですな。なるほど」
「智子でいいです。彼女も優子でいいですよぉ」
「智子さんに優子さん。わかった。了解。でも、俺は名字でお願いしますよ。『紀世彦』なんて止めて欲しい。俺のオヤジを恨むよ。ああ、プロフカードだね。どれどれ・・・」
「ふむ。智子さんの性格はサバサバしているんだね?」
「それ、私です。智子はウジウジのツンデレです」
「まあ、ウジウジのツンデレとは正直に書けないか・・・休日は博物館巡りで、デートは映画館、水族館、カウンターバー・・・」
「それも私のことです。私、一人で博物館や美術館に行くんですよ」
「な、なるほど・・・俺と同じだな・・・」
「私、優子をイメージして書きました!彼女のほうがモテる要素はあるので!だって、優子に言われる前に言いますが、オフの休日で場外馬券売り場なんて書けないでしょ?デートにいきたい場所って居酒屋かファミレス、食べ放題のビュッフェも同じくでしょ?身長も5センチサバを読んでます。163センチは優子の身長。正直書くとこうなります。優子に言われたんで正直に書いてみたんですが・・・」
「これが正直バージョン?」と尾崎。
「正直バージョン、智子作ったの?私にも見せてよ」と優子。
「飯伏幸太ってレスラーの?得意料理が冷凍食品全般・・・」
「智子、あなた、好きな歌手が柴田淳、華原朋美、指原莉乃ってみんなダメンズ好きなダメ女じゃないの?それに、趣味特技でセックス?!」
「身長はバレるから158センチに直すとして、あとは優子さんバージョンのほうが良さそうだな」
「でしょ?尾崎さんもそう思うでしょ?正直バージョンだとクズ女でしょ?」
「いや、智子さん、そんな卑下しないで。居酒屋はいいんじゃないか?俺もホッピーとか好きでさ、この前の雨の日曜日も上野のアメ横の居酒屋でモツ焼き食ってホッピー飲んだよ」
「あら、私も日曜日の午後に上野の美術展に行ってました」と優子。「上野の森美術館『怖い絵』展。空いていると思ったのに長蛇の列で。1時間並んだわ」
「ほほぉ、俺もそこ行ったんだ。午前中だったが。同じく1時間並んだ」
「偶然ですね。時間がずれていたら・・・それでアメ横にお一人でモツ焼きを食べてホッピーを飲まれたんですね・・・」と優子。
「いや、それがね、俺が絵のマチエールのことで独り言を言っていたら、女の子がそれを聞いていて『第一章から改めて観てくださって、私にいろいろと教えていただけませんか?』と言うもんだから、『切り裂きジャックの寝室』とか、『レディ・ジェーン・グレイの処刑』とかの絵の説明をして、科学博物館に行ったんだ。その流れでアメ横で食べて飲んだ」
「ええ?尾崎さん、モテますね?・・・ちょ、ちょっと、優子、テンション下がってない?」
「ううん、残念だなあって思って。時間がずれていたらその子の代わりに私が尾崎さんに絵の説明をしてもらえたんだなあ、なんてね」
「優子さん、俺はね、社の同期の女性共から『KY』『女性心理をわからんボケ』と言われているんだ。確かにそうなんで認める。優子さんは偶然知り合ったが、一緒に居て楽しい。なんだろう?中学高校の同じクラスの女子の友達という感覚だな。その女の子は美香さんっていうんだけど、彼女が先、優子さんが先とか、そういう順位は・・・」
「尾崎さん、『優子さんは偶然知り合ったが、一緒に居て楽しい。なんだろう?中学高校の同じクラスの女子の友達という感覚だな』ってひどい。恋愛対象として優子は見られないってこと?」と智子。「智子!」と優子が怒鳴る。
「何言ってるのかなあ、優子は。誰がみても優子は尾崎さんに好意を持っていると思う。ねえ、マスター、そう思わない?」と智子がバーのマスターに同意を求めた。
バーカウンターの向こうで素知らぬ顔でグラスを磨いていたマスター(俺も尾崎紀世彦で迷惑している方だがマスターも松崎しげるなんて名前だ。同情する。しかし、色白なんだが)がグラス磨きの手を休めて「私もそう感じてますよ。三國さんが尾崎さんを見る表情は少女漫画のように目が星キラキラになってます。私としては尾崎さんに殺意すら感じますな」と言った。
「マスター!なんなの?『殺意すら感じます』って!」と智子。
「小林さん、文字通りです。なぜなら、三國さんがワインのソムリエ資格取得の勉強を初められたというを聞いたので『シメた!』と思ったんです。あ!新幹線のパーサーからソムリエに商売替えしたら、このバーで働いてもらってもいいかな、と。将来はビジネスパートナーだけじゃなくて、人生の・・・などと思っていました。だから、キラキラ目で三國さんが尾崎さんを見るので殺意がわきましたよ」
「マスター!その淡々とした調子で『殺意』なんて言葉、言っちゃダメ!なんだよ、マスターも優子ファンかよ。ねえねえ、マスター、私は?私は?」
「小林さんも美人で素敵だと思いますよ」
「チェッ!『も』を付ける!私は優子のおまけなのね?」
「まあまあ、智子さん、むくれるなよ。しかし、マスターに殺意を抱かれていたか。松崎しげるが尾崎紀世彦を殺したら、ニュースキャスター、困るぜ。『神田のBAR官兵衛の経営者、松崎しげる容疑者がアイスピックでお客の尾崎紀世彦さんの胸を刺して殺害しました。取り調べに依りますとバーのお客の女性YMさんとの間の痴情事件と言われております』なんてさ」
三人で神田駅まで歩いていった。彼女たちは大井町に住んでいるので錦糸町の俺とは反対方向だ。
ホーム下の階段で別れ際「尾崎さん、また出張の折にでも帰りにお酒を付き合っていただけますか?」と優子さんに聞かれた。
「そうですよ。男女の話が中途半端になっちゃったんですから」と智子さん。
「いいですよ。出張して帰ってきて、予定が合えば飲み友達がいる、というのはうれしいことだ。それもキレイな女性が二人。でも、来週は新幹線を使う出張はないんです。でも、連絡して下さい。優子さんと智子さんの新幹線業務に合わせて、俺が体が空いていたらまた飲みましょう」と答えた。
優子さんと智子さんと神田駅で分かれて、さて、どうしようか?と思った。考えるまでもない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる

