中華乃蠱惑 (南少佐シリーズ②)

✿モンテ✣クリスト✿

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登場人物と時代背景

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◯南辰之助少佐
 元幕府旗本の家系出身の陸軍少佐。30歳。日露戦争開戦前に上海の租界の動静を探る任務を帯びる。クララ(正妻)、ヘレナ(養女)、子供たちを伴い上海に赴任。アフリカ時代からヘレナと肉体関係にあり、その後にクララとも関係を結び、現在も三人で肉体関係を維持。中国人家政婦とアメリカ人婦人の誘惑に直面。
◯クララ
 南の正妻(戸籍上)。30歳。ボーア人の血を引く金髪碧眼の美女。アフリカで南とヘレナの関係を知りつつ肉体関係に加わり、現在も南とヘレナを共有。上海社交界の花形だが、敬虔な信仰と家族を守る意志で誘惑を拒む。戸籍上、千鶴と辰麿の母。
◯ヘレナ
 南の養女(戸籍上)。20歳。クララの姪で、ボーア人の美貌を持つ。アフリカで南と最初に肉体関係を結び、辰麿の実母。クララと共に南を共有し、社交界でエドワード兄妹に誘惑され籠絡寸前までいくが、クララに救われる。
◯千鶴・メルウェ(ちづる・めるうぇ)
 南とクララの娘。2歳。1901年生まれ。戸籍上クララの子として登録。上海に同行する。
◯辰麿・メルウェ(たつま・めるうぇ)
 南とヘレナの息子。2歳。千鶴の弟として1901年生まれ。戸籍上クララの子として偽装登録。上海に同行する。

◯李秀蘭(リー・シューラン) 秀蘭シューラン
 南家が雇った若い中国人家政婦。美貌と流暢な英語で南を誘惑するが拒絶される。
◯ジェームズ・ハリソン・カーター(James Harrison Carter)
 アメリカ人の青年実業家。上海社交界でヘレナを誘惑するプレイボーイ。愛人エレノアを通じて南を誘惑。
◯エレノア・マーガレット・デービス(Eleanor Margaret Davies)
 ジェームズの愛人でふしだらな婦人。妖艶な美貌で南を誘惑し、一家の危機を深める。
◯エドワード・チャールズ・スペンサー(Edward Charles Spencer)
 英国貴族の息子。妹イザベルと共にヘレナを誘惑し、籠絡を試みる。
◯イザベル・ローズ・スペンサー(Isabel Rose Spencer)
 エドワードの妹で同性愛者。兄と共謀し、ヘレナに肉体関係を迫り、籠絡寸前まで追い詰める。



1903 - 1904


経済的隆盛と租界の繁栄:
 日清戦争(1894-1895)後の下関条約で外国に工業企業権が与えられ、上海は外国資本の流入で急成長。1903年時点で、英米仏露などの租界が拡大し、黄浦江沿いには欧米風の建築が立ち並ぶ。露清銀行(1896年出店)や香港上海銀行の成功により、金融ハブとしての地位が確立。サスーン家などのユダヤ資本が活躍し、貿易と投資が活況を呈していた。

社会の二極化:
 租界では欧米人が豪奢な生活を享受する一方、租界外の中華民国市民は貧困と搾取に苦しむ。アヘン貿易の影響や外国支配への反発がくすぶりつつも、租界内は華やかな社交界が花開いていた。



 清国の衰退と外国支配:
 1903年、清国はアヘン戦争(1840-1842)や日清戦争で列強に主権を大幅に奪われ、上海の租界は事実上の外国領土。1911年の辛亥革命で中華民国が成立するまでは清朝が名目上の統治者だが、租界では英米仏露が治外法権を握り、清国政府の影響力はほぼ皆無。上海市民は租界の繁栄から疎外され、民族意識が徐々に高まりつつあった。



緊張の高まり:
 日本とロシアは満州と朝鮮半島の支配権を巡り対立。1903年後半、日本はロシアの南下政策に危機感を強め、交渉が難航。ロシアはバルチック艦隊の増強を計画し、アフリカ航路やスエズ運河経由での極東派遣を検討。日本はこれを察知し、南少佐のような諜報活動を強化。1904年2月の旅順奇襲(開戦)に向けた準備が進行中だった。



協力と警戒の混在:
 アメリカは日露戦争前、日本をアジアでの対ロシアの代理勢力と見なしつつ、自国の中国利権(門戸開放政策)を守る立場。上海のアメリカ租界では実業家や宣教師が活動し、日本との関係は友好的だが、経済的競争も存在。南少佐の任務には、アメリカ租界の動向監視も含まれる。



日英同盟と仏露への対抗:
 1902年の日英同盟により、日本は英国と連携し、ロシアと同盟するフランスに対抗。上海では英国租界が最大勢力で、日本と協力関係にあるが、フランス租界やロシア租界は監視対象。欧州列強は中国利権を分け合い、日本は列強間の隙間を突いて影響力を拡大しようとしていた。
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