中華乃蠱惑 (南少佐シリーズ②)

✿モンテ✣クリスト✿

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上海租界の誘惑1

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 1894年の日清戦争後、清国は下関条約で工業企業権を諸外国に譲渡し、外国資本が中国に殺到した。1896年、露清銀行が上海に出店し、1897年末には香港上海銀行の株価が176%のプレミアムを記録した。1899年、インドシナ銀行が進出し、上海は金融と貿易の中心として急成長した。香港の高税率に対し、上海は課税が緩く、租界が用意されていたため、サスーン家などのユダヤ資本が移転し、第一次世界大戦後に全盛を迎えた。

 1920年代、上海は最盛期にあったとされるが、本物語は1904年2月の日露戦争開戦を数ヶ月前に遡る。租界の豪奢な邸宅と中国人の貧困が対照的だったこの時期、陸軍参謀本部から南辰之助少佐に司令が下った。「上海のロシア租界、フランス租界、アメリカ租界の動静を探れ。」1903年11月、ノシ・ベとポート・サイドの拠点を閉鎖した南は、正妻クララ、養女ヘレナ、子どもの千鶴・メルウェと辰麿・メルウェを伴い、上海に赴任した。

 彼らの関係は複雑だった。1901年、アフリカで南は当時17歳のヘレナと肉体関係を結び、その後にヘレナの叔母クララとも関係を持った。日本国籍取得のため、クララを正妻、ヘレナを養女とし、ヘレナの実子である辰麿をクララの子として戸籍を偽装した。ノシ・ベでのアビツェとマリアムとの交わりを経て、ポート・サイドで五人が最後に絡み合った後、南一家は新たな地で結束を試されることになる。現在も南、クララ、ヘレナの三人は肉体関係を続けている。



 南一家はフランス租界に居を構えた。コロニアル風の邸宅の窓からは黄浦江が見え、南はロシア租界の港を監視した。任務は厳格だったが、夜になるとクララとヘレナとの濃密な時間が彼を癒した。

 1901年、17歳だったヘレナは南と肉体関係を結び、その後に叔母クララが加わった。1904年、20歳となったヘレナは母となり、少女の青さを脱ぎ捨て、成熟した女の肉体を纏っていた。彼女の金髪はより深みを増し、碧眼は妖しく輝き、豊満な胸と丸みを帯びた臀部が旗袍チーパオ(チャイナドレス)の下で揺れた。肉欲はアフリカ時代以上に燃え上がり、南への欲望だけでなく、叔母クララの被虐的な乱れにも向けられていた。

 ある蒸し暑い夜、邸宅の寝室で三人の交わりが始まった。ヘレナは南の軍服を脱がせ、「旦那様、私を満たして」と囁きながら、彼の首筋に舌を這わせた。彼女の熱い息が南の耳に吹き込まれ、彼の陰茎が硬くなるのを感じると、ヘレナは狡猾な笑みを浮かべた。クララはベッドの端に座り、敬虔な信仰と肉欲の間で揺れながら、ヘレナの動きを見守っていた。だが、ヘレナは叔母を見逃さなかった。「叔母様、そんな顔で見てないで、私と一緒に乱れましょう」と甘く誘い、クララの手を引き寄せた。

 ヘレナは南の腰に近づき、旗袍チーパオ(チャイナドレス)をたくし上げ、白い太腿を露わにした。彼女の秘部が南の陰茎に擦りつけられ、愛液が滴ると、「あぁ…旦那様、もっと深く…」と喘いだ。南が彼女の腰を掴み、激しく突き上げると、ヘレナの豊満な胸が揺れ、汗が首筋を伝った。彼女はクララを横に引き寄せ、「叔母様、私が旦那様に抱かれるのを見て、疼いてるでしょう?」と囁き、クララのドレスを剥ぎ取った。クララの白い肌が月光に照らされ、豊満な乳房が震えた。ヘレナはクララの乳首に唇を這わせ、舌で転がしながら、「叔母様、こんなに硬くなってる」と嘲うように笑った。

 クララは「ヘレナ…やめなさい」と呟いたが、声は弱々しく、秘部が熱く濡れるのを止められなかった。ヘレナの手がクララの太腿を滑り、秘部に指を沈めると、「叔母様、こんなに濡れてるじゃない」と甘く責めた。クララが「あぁ…!」と喘ぎ、被虐的に身をよじると、ヘレナの肉欲はさらに燃え上がった。彼女は南の陰茎を秘部から引き抜き、クララの前に跪かせ、「叔母様、旦那様を味わって」と命じた。クララは信仰に抗いきれず、南の陰茎を口に含み、熱い舌で舐め上げた。南が「クララ…」と呻くと、ヘレナはクララの臀部を叩き、「もっと激しくして」と煽った。

 ヘレナは南の腰に寄り添い、陰茎を秘部に迎え入れ、腰を激しく振った。「旦那様、私の中で果てて」と喘ぎながら、クララの髪を掴んで自分の秘部に押しつけた。クララの舌がヘレナの愛液を舐め、南の陰茎とヘレナの結合部を貪ると、ヘレナが「あぁ…叔母様、最高よ!」と叫んだ。三人の汗と愛液が混ざり合い、ベッドが軋む音が響いた。南はヘレナの成熟した肉体に翻弄され、クララの被虐的な乱れに溺れた。ヘレナは二人を支配するように貪り、少女から成女へと変わった彼女の欲望が寝室を満たした。



 南一家がフランス租界に居を構えて間もなく、クララとヘレナは上海の社交界に足を踏み入れた。1904年初頭、上海の租界は日露戦争の緊張をよそに、華やかな舞踏会と贅沢な夜会で溢れていた。クララとヘレナはボーア人の血を引く金髪碧眼の美貌で、たちまち注目を集めた。彼女たちのデビューは、フランス租界のグランドホテルで開かれた新春舞踏会だった。

 クララは深い琥珀色の髪を優雅にアップに結い、パリ製の絹のドレスを纏った。ドレスは淡いクリーム色で、胸元に繊細なレースが施され、裾には銀糸の刺繍が揺れた。30歳の彼女の豊満な胸と引き締まった腰がドレスの曲線に浮かび上がり、敬虔なクリスチャンらしい慎ましさを保ちつつも、成熟した女の魅力を放っていた。ヘレナは20歳の若さを活かし、鮮やかなエメラルドグリーンのドレスを選んだ。肩を大胆に露出したデザインで、彼女の白い肌と金髪が際立ち、腰に巻かれたサッシュが成熟した肉体を強調した。二人とも、南アフリカのダイヤモンドをあしらったネックレスを首にかけ、ボーア人の気品を漂わせていた。

 舞踏会場は絢爛豪華だった。天井にはシャンデリアが輝き、クリスタルの滴が燭光を反射して虹色にきらめいた。床は磨き上げられた大理石で、壁には金箔の装飾が施され、フランス風の優雅さが漂っていた。楽団がワルツを奏で、男女が華やかに踊り、笑い声とグラスの触れ合う音が響き合った。テーブルにはシャンパンが並び、銀のトレイにはキャビアやフォアグラ、トリュフを乗せたカナッペが山積みにされていた。クララはシャンパンを手に持つも口をつけず、信仰心から節度を守った。一方、ヘレナはグラスを傾け、微かな酔いに目を輝かせた。

 英国租界での舞踏会でも二人は輝いた。英国総領事館主催の夜会では、クララが深紅のベルベットドレスで登場した。背中が大きく開き、彼女の白い背筋が露わになった。ヘレナは薄紫のシフォンドレスを選び、裾に花弁のようなフリルが揺れ、少女から成女への変貌を印象づけた。会場は英国風の重厚さで満たされ、暖炉の火が暖かく揺らめき、オーク材の家具が荘厳さを添えた。食事はローストビーフやプディングが供され、赤ワインが惜しみなく注がれた。クララは礼儀正しくナイフとフォークを操り、ヘレナは肉の脂に舌鼓を打った。

 社交界での二人の評判は瞬く間に広がった。フランス租界では「気品あるボーアの貴婦人」とクララが称され、ヘレナは「若さと美の化身」と囁かれた。英国租界では、クララの穏やかな微笑みが紳士たちを魅了し、ヘレナの奔放な笑顔が貴婦人たちの嫉妬を誘った。彼女たちは舞踏会の華となり、招待状が途切れることはなかった。

 だが、舞踏会場の暗がりでは、上流階級の秘密が蠢いていた。フランス租界のホテルのバルコニーでは、英国貴族の妻が若いフランス商人の腕に抱かれ、熱いキスを交わしていた。彼女の夫は別の部屋でアメリカ人女優と絡み合い、シャンパンに濡れた唇を重ねていた。英国租界の庭園では、銀行家の妻がロシア将校と茂みに隠れ、ドレスの裾をたくし上げて喘ぎ声を漏らした。こうした不倫の光景は、絢爛たる舞踏会の裏で日常茶飯事だった。クララはこうした場面に気づきつつも目を背け、信仰で心を保った。ヘレナは好奇心を抑えきれず、暗がりの情事を覗き見ては、南とクララへの肉欲をさらに募らせた。

 クララは敬虔な信仰で南への忠誠を守りつつ、ヘレナとの共有を受け入れていた。彼女の心は社交界の華やかさと不貞に揺らぎつつも、家族への愛で踏みとどまった。ヘレナは南との絆を深めつつ、社交界の誘惑に心が揺れ、舞踏会の暗がりで見た背徳が彼女の欲望を刺激した。二人は社交界の花形として君臨しつつ、それぞれの内なる戦いを抱えていた。
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