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島津洋子・森絵美編
第10話 絵美と横浜で3
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ぼくらはお勘定をして、須賀さんにバイバイして、コペンを出て左に曲がって、ケーブルカーに行った。
「あら、雰囲気がまた違うわね?」
「コペンハーゲンがユニークなんであって、こっちが本来のバーなんだろうね?」
「落ち着いているわ」
カウンターに座る。
バーテンが来た。「明彦、綺麗な女性を連れてるね?」とピートが言う。ちょっとカマっぽい言葉遣いで、優男に見えるが、ジムに通ってボクシングをやっている。ブルースリーみたいな体のヤツだ。喧嘩の時は無茶苦茶活躍する。
ピートがカウンターから乗り出して、「何にする?明彦?お嬢さんは?」と言った。
「ピート、彼女は絵美。絵美、彼はピート」
「ピートさん、初めまして。私、ブランディーをもらおうかしら?」
「何にしましょう?」
「コルドンブルー、いただけますか?」
「ハイ、了解。明彦は?」
「メーカーズマークがいいかな?」
「ロックだね、わかった」
「ああ、ピート、絵美のもダブルでね」
「彼女、強いの?」
「強いんじゃないか?」
「大丈夫よ」
「まあ、何度も頼むの面倒じゃないか?」
「じゃあ、おまえのはトリプルにしないといけないじゃないか?」
「あ!そうしよう」
店は六分の入りだった。十一時になっていた。
「ちょっと酔ってきたかな?明彦」
「右に同じ。六時半から飲んでいるからなあ」
「どう?ちょっと、可愛い女の子で喋ってよろしい?」と、ツンとすまして絵美は言う。
「キミがそう思うんならどうぞ」
「投げやり口調ねえ?」と、彼女はぼくに向かって言った。
「だって、キミが可愛い女の子やりたいっていうのなら、どうぞ、としか言いようがないじゃないか?」
「あ!あ!そういうの?明彦は、絵美のことが好きじゃないんじゃない?本当は?」と、グラスを親指と人差し指で持って、ブラブラさせながら、絵美は言った。
「好きじゃなかったら、女性問題なんて話しませんとも」
「それ、おかしい!いくら好きでも、刺激の強い話だと思わない?そういう話を聞かされて、絵美がなんとも思わないと思ったの?」
「そうは思わなかったけど、絵美、気にしないっていったじゃないか?」
「いっただけだよ、絵美は。でも、本心ではそうは思わなかった」
「何が絵美の本心なんだ?」
「だって、絵美だって、そりゃあ、複雑だもん。女の子だから。明彦がそんなに女の子がいて、みんなとメイクラブしていたら、絵美だって、気にするもの・・・絵美だって、普通の感情はあるのよ。明彦が、他の女の子を抱いていたりしたら、嫉妬するじゃない?じゃあ、これから、真理子さんじゃないけど、絵美を抱いてくれる?明彦?」
「おい、絵美!そういう口調、止めようね」
「アハハ、ばれた?こういうので、キミ、キュンとなるの?」
「絵美らしくないもの。でも、ちょっとキュンとなったのは事実だな」
「そ?・・・明彦、絵美が抱いてって言ったら、抱いてくれる?」
「それは、ぼくが絵美を抱きたいときで、絵美が抱かれたかったら、ぼくはキミを抱く」
「それまで、私は楽しみに待ってます。セックスが女と男の人質で、それで、にっちもさっちもいかなくなる、なんて私には信じられないから。私が明彦とするときは、あれ?いつだろう?まだ先だね」
「あんまり先だとね、ぼくは待ちきれなくて・・・」
「明彦、メグミさんと真理子さんまではいいけれど、あんまりお茶目が過ぎると、私でも怒るよ」
「わかってます。さすがにね、もうお茶目は止めるよ」
「その方がよさそうよ」
「絵美が怒るとそれはそれは怖そうだからね」
「夜叉になるかもね?」
「なんでも話すよ、絵美には」
「信じてるって。さ、飲みましょ、まだまだ夜は長い」
ずっとあとになってわかったことだが、ぼくのお茶目はこれでおしまいでも何でもなく、何度もグチャグチャになって、我が妹のようにスッパリと切り捨てなんてできなかった。そして、我ながら呆れたことに、ぼくはそれらグチャグチャをすべて包み隠さず絵美に話した。彼女は、そのたびに呆れ怒り、しばらく連絡しないでちょうだい!と宣言したが、それでも、ぼくはどうすればいいのか?という方向性を指し示してくれた。
それで、ぼくらは呆れたことに、知り合った1979年の二月から1983年の二月まで、なんと四年間もの間、これだけ親しいのに、お互いこれだけ欲しかったのに、セックスなんてしなかったのだ。まるで、セックスしたらぼくと他の女の子のグチャグチャの間柄と次元が同じになってしまうのが怖かったかのように。
ケーブルカーで飲んでいて、もう午前0時半になっていた。
絵美もかなり酔ってきたようで口調も怪しい「ねえねえ、明彦」と絵美がぼくにすり寄ってきて言う「絵美、酔っぱらってきたぞ」
「今頃になって、『酔っぱらってきたぞ』なんていう認識が始まったの?もうずいぶん前から、ぼくらは酔っぱらっているよ。十番館からどのくらい飲んだのだろう?」
「え~っとね、私は十番館でジンフィズ二杯とブランディー三杯、コペンでブランディーサワーを三杯、ここでレミーを三杯、といったところかしら?明彦も同じペースで飲んでいるから、かなり大変な量を飲んだようね」
「よく覚えているなあ、ぼくはもう忘れちゃったよ。だけど、となると、お互いボトル一本くらいの量を飲んじゃったってこと?」
「そのようね、これ以上は無理だわ」
「普通の女の子だったら、かなり前に『もう無理!』って宣言していると思うよ。まったく、先週初めてあったときから、ぼくらはいつも酔いどれているねえ」
「あら?日曜日は飲まなかったわよ?」
「ワインを飲んだじゃないか?上野で?」
「ワインなんてお酒じゃないわよ」
「ふたりで三本飲んだんですけど?」
「そうだっけ?」
「そうです」
「ふむ、じゃあ、三回のデート、すべて飲んでいて、今日はいちばん飲んだのね?」
「そうです、まあ、絵美と飲むから気持ちよく飲めるけどね」
「私もそうなの。でも、もうミリラフォーレには行かない。次の機会に取っておきましょう」と絵美はぼくの顔をのぞき込みながら、「ねえねえ、酔い覚ましに歩きましょ。山下公園に行こうよ。それでキスするの?どう?」と、目をクルクルと回しながら言った。ぼくが面食らうことを絵美は突然言う。
「まったく、お嬢さん、これでキスしたら、ぼくのウィスキーと絵美のブランディーが混ざり合って、もしもライターで火をつけたら発火しちゃうよ」
「それ、いいわね。燃え尽きて灰になるまでキスしようよ」
「そこまでしたら、ぼくは絵美が欲しくなっちゃうじゃないか?」
「それで私も欲しくなったらすればいいわよ」
「さっき、『するのはまだ先ね』と言っただろう?」
「状況次第ね」
「よくわからないなあ・・・まあ、いいや、お勘定して出よう」
ぼくらはケーブルカーを出て、腕を組みながら、中華街の東門を抜けて、ニューグランドの横を通り道路を渡って山下公園に入った。右に曲がる。
「なぜ右に行くの?」と絵美が訊く。
「氷川丸のずっと向こうまで行くんだよ。そっちがキスするのに静かでいいんだ。あまり人がいない。ぼくらと同じ目的のカップルしかいないんだ」
「地元だからね、ご経験がおありでしょうし?」と、ぼくを見上げて絵美は目をクルクル回しながら言う。
「そんなに何人もの経験はありません。一人だけです」
「その話もいつかしてくれる?」
「ハイハイ、しましょう。でも、今はぼくらの話をしようよ」
「そうそう、そうだったわね」
ぼくらは、山下公園の奥の方、山下橋の近くまで歩いていった。
「ほら?」
「誰もいないのね?」
「もう午前1時だものね」
ぼくは絵美を抱きしめた。絵美がぼくの顔を両手で挟んで、「あら?明彦、身長こんなに高かったかしら?」と言った。「今頃気付いたの?」「だって、これほど近距離で見たことなかったもの。ふ~ん、あのね、私たち、キスするとすると、鼻が邪魔ね?」「そりゃあ、真正面からしたら鼻がぶつかる」「鼻が高いのも考えものね?」「試してみないと・・・」とぼくは絵美の唇に軽く触れる。「45度だな」「何が?」「顔の傾き」「こら!計算していないで、ちゃんとキスするの」
どのくらいキスしていただろうか?「う~ん、いい感じよ、明彦」「ぼくもそう思う」「私、家に帰るのイヤになっちゃうな」「こらこら、午前様だけど帰ると言ったんでしょ?」「そうなんだよねえ」「今日じゃなくてもいいじゃないか?」「まあね、今日である必然性はない。今何時?」
「え~っとね・・・」と、ぼくは絵美の首筋越しに時計を見た。「午前二時」
「もう、そんなに経ったの?」
「時間が流れるのが早いね」
「帰ろっかな?」
「うん、タクシーを拾ってあげるよ」
「一緒に乗っていこ?」
「遠回りだよ、目白までなら首都高ですぐだけど、ぼくの家に寄ると第一京浜にいったん降りないといけないし・・・」
「いいじゃない、絵美は構わない」
「じゃあ、一緒に乗っていこう」
タクシーはすぐつかまった。運転手さんに「目白までですが、途中で鶴見によって、ぼくをおろして欲しいんですけど」と説明する。「じゃあ、横浜駅の東口前を通って、第一京浜をまっつぐ行った方がいいね?鶴見駅から弁天町に抜けて、それで首都高に乗ればいい」「それが一番近道のようですね。じゃあ、それでお願いします」
タクシーの中でぼくらは手を握り合った。「明彦、次はいつ会えるの?」
「う~ん、明日、あれ?今日だ、メグミが旅行から帰ってくる。今日と土曜日と日曜日はあけておかないと殺されちゃうだろうな」
「込み入った話をしたら、ますます殺されると思うわね?」
「そうだ、妹に何とかさせよう。なんと情けない兄貴なんだろうか?」
「それが一番落ち着く方法だと思うわよ」
「まあ、メグミに連絡してみるよ、それから決めよう」
「じゃあ、今日電話してね、何時でも構わないから」
「電話するよ」
タクシーが鶴見まで来てぼくをおろした。
「じゃあね」「またね」と言ってタクシーは行ってしまった。
「あら、雰囲気がまた違うわね?」
「コペンハーゲンがユニークなんであって、こっちが本来のバーなんだろうね?」
「落ち着いているわ」
カウンターに座る。
バーテンが来た。「明彦、綺麗な女性を連れてるね?」とピートが言う。ちょっとカマっぽい言葉遣いで、優男に見えるが、ジムに通ってボクシングをやっている。ブルースリーみたいな体のヤツだ。喧嘩の時は無茶苦茶活躍する。
ピートがカウンターから乗り出して、「何にする?明彦?お嬢さんは?」と言った。
「ピート、彼女は絵美。絵美、彼はピート」
「ピートさん、初めまして。私、ブランディーをもらおうかしら?」
「何にしましょう?」
「コルドンブルー、いただけますか?」
「ハイ、了解。明彦は?」
「メーカーズマークがいいかな?」
「ロックだね、わかった」
「ああ、ピート、絵美のもダブルでね」
「彼女、強いの?」
「強いんじゃないか?」
「大丈夫よ」
「まあ、何度も頼むの面倒じゃないか?」
「じゃあ、おまえのはトリプルにしないといけないじゃないか?」
「あ!そうしよう」
店は六分の入りだった。十一時になっていた。
「ちょっと酔ってきたかな?明彦」
「右に同じ。六時半から飲んでいるからなあ」
「どう?ちょっと、可愛い女の子で喋ってよろしい?」と、ツンとすまして絵美は言う。
「キミがそう思うんならどうぞ」
「投げやり口調ねえ?」と、彼女はぼくに向かって言った。
「だって、キミが可愛い女の子やりたいっていうのなら、どうぞ、としか言いようがないじゃないか?」
「あ!あ!そういうの?明彦は、絵美のことが好きじゃないんじゃない?本当は?」と、グラスを親指と人差し指で持って、ブラブラさせながら、絵美は言った。
「好きじゃなかったら、女性問題なんて話しませんとも」
「それ、おかしい!いくら好きでも、刺激の強い話だと思わない?そういう話を聞かされて、絵美がなんとも思わないと思ったの?」
「そうは思わなかったけど、絵美、気にしないっていったじゃないか?」
「いっただけだよ、絵美は。でも、本心ではそうは思わなかった」
「何が絵美の本心なんだ?」
「だって、絵美だって、そりゃあ、複雑だもん。女の子だから。明彦がそんなに女の子がいて、みんなとメイクラブしていたら、絵美だって、気にするもの・・・絵美だって、普通の感情はあるのよ。明彦が、他の女の子を抱いていたりしたら、嫉妬するじゃない?じゃあ、これから、真理子さんじゃないけど、絵美を抱いてくれる?明彦?」
「おい、絵美!そういう口調、止めようね」
「アハハ、ばれた?こういうので、キミ、キュンとなるの?」
「絵美らしくないもの。でも、ちょっとキュンとなったのは事実だな」
「そ?・・・明彦、絵美が抱いてって言ったら、抱いてくれる?」
「それは、ぼくが絵美を抱きたいときで、絵美が抱かれたかったら、ぼくはキミを抱く」
「それまで、私は楽しみに待ってます。セックスが女と男の人質で、それで、にっちもさっちもいかなくなる、なんて私には信じられないから。私が明彦とするときは、あれ?いつだろう?まだ先だね」
「あんまり先だとね、ぼくは待ちきれなくて・・・」
「明彦、メグミさんと真理子さんまではいいけれど、あんまりお茶目が過ぎると、私でも怒るよ」
「わかってます。さすがにね、もうお茶目は止めるよ」
「その方がよさそうよ」
「絵美が怒るとそれはそれは怖そうだからね」
「夜叉になるかもね?」
「なんでも話すよ、絵美には」
「信じてるって。さ、飲みましょ、まだまだ夜は長い」
ずっとあとになってわかったことだが、ぼくのお茶目はこれでおしまいでも何でもなく、何度もグチャグチャになって、我が妹のようにスッパリと切り捨てなんてできなかった。そして、我ながら呆れたことに、ぼくはそれらグチャグチャをすべて包み隠さず絵美に話した。彼女は、そのたびに呆れ怒り、しばらく連絡しないでちょうだい!と宣言したが、それでも、ぼくはどうすればいいのか?という方向性を指し示してくれた。
それで、ぼくらは呆れたことに、知り合った1979年の二月から1983年の二月まで、なんと四年間もの間、これだけ親しいのに、お互いこれだけ欲しかったのに、セックスなんてしなかったのだ。まるで、セックスしたらぼくと他の女の子のグチャグチャの間柄と次元が同じになってしまうのが怖かったかのように。
ケーブルカーで飲んでいて、もう午前0時半になっていた。
絵美もかなり酔ってきたようで口調も怪しい「ねえねえ、明彦」と絵美がぼくにすり寄ってきて言う「絵美、酔っぱらってきたぞ」
「今頃になって、『酔っぱらってきたぞ』なんていう認識が始まったの?もうずいぶん前から、ぼくらは酔っぱらっているよ。十番館からどのくらい飲んだのだろう?」
「え~っとね、私は十番館でジンフィズ二杯とブランディー三杯、コペンでブランディーサワーを三杯、ここでレミーを三杯、といったところかしら?明彦も同じペースで飲んでいるから、かなり大変な量を飲んだようね」
「よく覚えているなあ、ぼくはもう忘れちゃったよ。だけど、となると、お互いボトル一本くらいの量を飲んじゃったってこと?」
「そのようね、これ以上は無理だわ」
「普通の女の子だったら、かなり前に『もう無理!』って宣言していると思うよ。まったく、先週初めてあったときから、ぼくらはいつも酔いどれているねえ」
「あら?日曜日は飲まなかったわよ?」
「ワインを飲んだじゃないか?上野で?」
「ワインなんてお酒じゃないわよ」
「ふたりで三本飲んだんですけど?」
「そうだっけ?」
「そうです」
「ふむ、じゃあ、三回のデート、すべて飲んでいて、今日はいちばん飲んだのね?」
「そうです、まあ、絵美と飲むから気持ちよく飲めるけどね」
「私もそうなの。でも、もうミリラフォーレには行かない。次の機会に取っておきましょう」と絵美はぼくの顔をのぞき込みながら、「ねえねえ、酔い覚ましに歩きましょ。山下公園に行こうよ。それでキスするの?どう?」と、目をクルクルと回しながら言った。ぼくが面食らうことを絵美は突然言う。
「まったく、お嬢さん、これでキスしたら、ぼくのウィスキーと絵美のブランディーが混ざり合って、もしもライターで火をつけたら発火しちゃうよ」
「それ、いいわね。燃え尽きて灰になるまでキスしようよ」
「そこまでしたら、ぼくは絵美が欲しくなっちゃうじゃないか?」
「それで私も欲しくなったらすればいいわよ」
「さっき、『するのはまだ先ね』と言っただろう?」
「状況次第ね」
「よくわからないなあ・・・まあ、いいや、お勘定して出よう」
ぼくらはケーブルカーを出て、腕を組みながら、中華街の東門を抜けて、ニューグランドの横を通り道路を渡って山下公園に入った。右に曲がる。
「なぜ右に行くの?」と絵美が訊く。
「氷川丸のずっと向こうまで行くんだよ。そっちがキスするのに静かでいいんだ。あまり人がいない。ぼくらと同じ目的のカップルしかいないんだ」
「地元だからね、ご経験がおありでしょうし?」と、ぼくを見上げて絵美は目をクルクル回しながら言う。
「そんなに何人もの経験はありません。一人だけです」
「その話もいつかしてくれる?」
「ハイハイ、しましょう。でも、今はぼくらの話をしようよ」
「そうそう、そうだったわね」
ぼくらは、山下公園の奥の方、山下橋の近くまで歩いていった。
「ほら?」
「誰もいないのね?」
「もう午前1時だものね」
ぼくは絵美を抱きしめた。絵美がぼくの顔を両手で挟んで、「あら?明彦、身長こんなに高かったかしら?」と言った。「今頃気付いたの?」「だって、これほど近距離で見たことなかったもの。ふ~ん、あのね、私たち、キスするとすると、鼻が邪魔ね?」「そりゃあ、真正面からしたら鼻がぶつかる」「鼻が高いのも考えものね?」「試してみないと・・・」とぼくは絵美の唇に軽く触れる。「45度だな」「何が?」「顔の傾き」「こら!計算していないで、ちゃんとキスするの」
どのくらいキスしていただろうか?「う~ん、いい感じよ、明彦」「ぼくもそう思う」「私、家に帰るのイヤになっちゃうな」「こらこら、午前様だけど帰ると言ったんでしょ?」「そうなんだよねえ」「今日じゃなくてもいいじゃないか?」「まあね、今日である必然性はない。今何時?」
「え~っとね・・・」と、ぼくは絵美の首筋越しに時計を見た。「午前二時」
「もう、そんなに経ったの?」
「時間が流れるのが早いね」
「帰ろっかな?」
「うん、タクシーを拾ってあげるよ」
「一緒に乗っていこ?」
「遠回りだよ、目白までなら首都高ですぐだけど、ぼくの家に寄ると第一京浜にいったん降りないといけないし・・・」
「いいじゃない、絵美は構わない」
「じゃあ、一緒に乗っていこう」
タクシーはすぐつかまった。運転手さんに「目白までですが、途中で鶴見によって、ぼくをおろして欲しいんですけど」と説明する。「じゃあ、横浜駅の東口前を通って、第一京浜をまっつぐ行った方がいいね?鶴見駅から弁天町に抜けて、それで首都高に乗ればいい」「それが一番近道のようですね。じゃあ、それでお願いします」
タクシーの中でぼくらは手を握り合った。「明彦、次はいつ会えるの?」
「う~ん、明日、あれ?今日だ、メグミが旅行から帰ってくる。今日と土曜日と日曜日はあけておかないと殺されちゃうだろうな」
「込み入った話をしたら、ますます殺されると思うわね?」
「そうだ、妹に何とかさせよう。なんと情けない兄貴なんだろうか?」
「それが一番落ち着く方法だと思うわよ」
「まあ、メグミに連絡してみるよ、それから決めよう」
「じゃあ、今日電話してね、何時でも構わないから」
「電話するよ」
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