彼女たちの屋根裏 (生活シリーズ① 新版)

✿モンテ✣クリスト✿

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第11話 女子プロレスの道場

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 東京◯ィズニーランドから戻った安納沙織と木村正雄は、響子の提案で『テラスコーポⅠ』の201-202号室に集まった。マンションに着いた二人は、汗ばんだ手で恋人繋ぎを続けていたが、エレベーターの中でようやく手を離し、「ふぅ」と同時に息をついた。「木村さん、手、汗でベタベタでしたね」と沙織が笑うと、木村は「安納さんのせいですよ。あんなスリ捕まえるなんて」と苦笑いで返した。ドアが開くと、響子の声が響き渡った。「おかえり! さあ、早く入って! ウナギが冷めるわよ!」

 部屋に入ると、ダイニングテーブルには豪華な鰻重が並び、香ばしい匂いが漂っていた。響子はゴスロリ風のエプロンを着て、「どう? 私のセンスでしょう?」と得意げに胸を張った。沙織は「うわっ、九条さん、こんな高いもの頼んじゃって…私、給料日前なんですけど」と目を丸くしたが、響子は「いいから座りなさい。私のおごりよ。スリを捕まえたお祝いなんだから」と強引に椅子に押し込んだ。木村も「いや、僕も何か出しますよ」と遠慮したが、「木村さんはゲストなんだから黙って食べて!」と一蹴され、二人とも響子のペースに巻き込まれた。

 ウナギを食べながら、沙織は「これ、茶色いけど美味しいですね。デートでもOKですか?」と響子に尋ね、鰻を頬張りながら目をキラキラさせて「木村さんと一緒に食べたらもっと美味しいかも!」と無邪気に笑った。響子は「特別に許可するわ。スリ捕まえたご褒美よ」とニヤリ。木村は「安納さん、あの脚をかける動き、プロレスみたいでしたね」と感心し、沙織は「実は私、プロレス技が得意で…」と目を輝かせた。響子が「そういえば、午後は弟の道場に行く約束よね。裕二に連絡済みよ」と言うと、沙織は「やった! 恋人繋ぎの証拠、ちゃんと認められたんですね!」と拳を握った。木村は「道場か…楽しみです」と呟きつつ、パワードユニットの改良アイデアが頭をよぎった。

 沙織は出発前に鏡を見て、「木村さんにカッコいいとこ見せたいな」と呟き、髪を整えてスキップしながら玄関に向かった。食事が終わり、三人は響子の弟・九条裕二が管理する『テラスコーポⅡ』へ向かった。裕二は響子より5歳年下の34歳で、プロレス好きが高じてインディー団体の支援者になっていた。マンションは『テラスコーポⅠ』と異なり、住民はレスラーやその関係者が多く、1階に道場、2~3階が宿舎という異色の構造だ。到着すると、九条裕二が玄関で出迎えた。

「姉ちゃん、遅いよ。道場はもう訓練中でさ、みんな汗だくでやってる」とぶっきらぼうに言うと、沙織に目をやって「おお、君が安納沙織さんだろ? 姉ちゃんから電話で聞いてたよ。プロレス好きで、恋人繋ぎの証拠まで送ってきたってさ。いやあ、楽しそうな子だね。今日はリングで思いっきり楽しんでくれよ」とニッコリ笑った。響子は「裕二、余計なこと言わないでよ。私が沙織ちゃんのプロレス好きを自慢しただけなんだから」と頬を膨らませ、沙織は「えへへ、九条さんにまで知られてるなんて」と照れ笑いした。木村は「電話って…そんな話までしたんですか?」と響子に小声で尋ねた。

 道場に入ると、汗と笑い声が響き合い、リングでは訓練生たちが汗だくで練習していた。裕二が「美咲さん、姉ちゃんたちが来たよ。この子が安納沙織、プロレス好きの警察官だってさ」とトレーナーに声をかけると、藤原美咲が振り返った。彼女は50歳を過ぎても筋肉質な体を保ち、鋭い目つきで指導に当たっていた。沙織は「うわっ、本物のリングだ! 九条さん、この人、有名なんですか?」と興奮気味に尋ねると、裕二は「藤原美咲だよ。全女で『鉄腕クイーン』の異名を取った選手さ。引退後はインディー団体の育成に力を入れてる」と説明した。響子は「鉄腕って…沙織ちゃんに似てるかもね」と笑い、木村は「確かに…」と頷いた。

 藤原が三人に気づき、「お客さんか? 見学だけならあそこで見ててくれ」とリングサイドのベンチを指したが、沙織が「見学だけじゃなくて、私もやりたいんですけど!」と手を挙げると、道場内が一瞬静まり返った。響子が「沙織ちゃん、やめなさいって!」と慌てて止めようとしたが、藤原は沙織をじろりと見て、「ほう、面白い子だね。裕二から聞いたよ、警察官なんだろ? その姿勢と腕の筋肉、素人じゃない感じがするね。いいよ、訓練生と一緒に基礎からやってみな」とニヤリと笑った。木村は「安納さん、大丈夫ですか?」と心配そうに呟いたが、沙織は「大丈夫です! プロレス、ずっとやってみたかったんです!」と目を輝かせた。

 沙織は訓練生たちとリングに上がり、前転や後転、受け身の練習を始めた。藤原が「もっと腰を落とせ! 動きが硬いぞ!」と厳しく指導すると、沙織は「はい! 頑張ります!」と汗を拭きつつ笑顔で応えた。響子は「沙織ちゃん、意外と真面目ね」と感心し、木村は「筋肉の動き、参考になりますね」とノートにメモを取り始めた。だが、沙織は基礎練習で満足せず、藤原に近づいて「組み手とかやりたいんですけど、ダメですかね?」と無邪気に聞いてしまった。道場内が再びざわつき、響子は「何!?」と目を剥き、木村は「え?」とペンを落とした。

 藤原は一瞬驚いた後、「お前、プロ相手に何!? 面白い奴だな」と笑い、「おい、彩花! お前が相手だ。この女子警官と組手してみな。プロの力を見せるんだよ」とNo.1訓練生を指名した。彩花は20代半ばの屈強な女性で、「了解しました!」とリング中央に立った。沙織は「よろしくお願いします!」と礼をし、藤原の「始め!」の掛け声で組み合った。彩花が力強くタックルを仕掛けた瞬間、沙織は反射的に腰を落とし、相手の背後に回り込んでジャーマンスープレックスを繰り出した。バーン! と大きな音が響き、彩花がマットに叩きつけられ、動かなくなった。

 道場一同が唖然とし、響子は「沙織ちゃん、何!?」と叫び、木村は「す、すごい…」と呆然。藤原は目を丸くした後、「お前…素人じゃないな!?」と沙織に詰め寄った。沙織は「えっと、警察の訓練で投げ技やってただけで…」と照れ笑いしつつ、「やりすぎました?」と首を傾げた。訓練生たちは「彩花が一撃で…」「警察ってこんな強いのか?」とざわつき、裕二は「姉ちゃん、この子、怪物だよ」と笑った。響子は「怪物って…私のマンションの住人よ!」と反論しつつも、どこか誇らしげだった。
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