【完結】石垣島のソーニャ准尉 (近未来戦記②)

✿モンテ✣クリスト✿

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第3章 イシガキ作戦、イシガキへ

第8話 石垣島、離島フェリーターミナル1

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「イテテテテ」

 自衛隊沖縄地方協力本部石垣出張所近くのホテルの一室。朝起きて、紺野は頭を抱えた。午前二時からアニータとスヴェトラーナと一緒にバランタインの30年ものを三本空けたからだ。死にそうに頭が痛い。酒、強いなあ、ロシア姉ちゃんは、と紺野は思った。しかし、さすがにあいつらも私以上に飲んだから、多少は二日酔いだろ?

 紺野はサッと冷水シャワーを浴びて、部屋を出た。ホテルを出て市役所通りを右に曲がる。左手の離島フェリーターミナルには、ペレスヴェートとオスリャービャが停泊しているのが見えた。桟橋を少し歩いて、両艦が停船している方に行く。手前でバリケードが有り、自衛隊員が警備をしている。紺野は内閣情報調査室、自衛隊情報保全隊本部ではなく、佐世保基地営繕課の身分証明を見せた。隊員が敬礼する。
 
 ペレスヴェートのタラップではロシア兵が警備していた。こっちは顔パスだ。「紺野さん、おはようございます!」と英語で元気よく敬礼した。アニータ、スヴェトラーナ、ソーニャ以外、彼女は佐世保基地営繕課所属となっているのだ。しかし、エレーナ少佐かジトコ大将か、誰が選別したのか、この部隊、美人しかいないわね。この子も典型的な金髪碧眼、吸い込まれそうな碧い目。男が放っておかないわよね?
 
 若そうだわねえ。何才かしら?身長は私ぐらいだから、165センチ程度?「おはようございます。警備ご苦労さまです!」と答礼した。敬礼する右手が額に当たって二日酔いの痛みが走る。イテテ。

「石垣島はいかがかしら?」と彼女に話しかける。「ハイ!素晴らしいところです。日本列島が細長いとは地図でわかっておりましたが、こんな熱帯の島があるなど想像もしておりませんでした!あ!私、カテリーナと申します。伍長であります」若そうなのに伍長ということは成績優秀なんだ。

「カテリーナさん、お若そうね?年齢をお聞きしてもよろしいかしら?」
「ハイ!18才であります!」
「お若いわあ。私なんて、37才よ。羨ましい」
「ハ?小官は、日本人の女性の年齢が想像できません。てっきり・・・25才くらいかと思っておりました!」

 25才だってさ、25才!こんなお嬢ちゃんにお世辞を言う機転がきくはずはないわよ。若くみえるんだわあ、私!水陸機動団の広瀬に言って、25才よ!あんたの部下のゴリラ、一人、お貸しなさい!とでも言ってやるか?
 
「カテリーナさん、ご出身は?」
「紺野さん、小官は任務中でありまして・・・」あら、真面目!
「大丈夫よ。こんな朝早く、誰も来ないわよ。アニータ少尉に言っといてあげるから、おばさんとちょっとお話しようよ」う~ん、仕事柄、すぐ身上調査しちゃうんだよな、私。

「ハア・・・小官は、東部シベリアのブリヤート共和国ウラン・ウデの出身であります。所属は、東部軍管区、ハバロフスク基地であります」

 ブリヤート共和国?バイカル湖の近くね。ロシアでもすごく貧しい地域。平均給与は4万ルーブルぐらいだったかな?8万円くらい?モスクワの平均給与が11万ルーブル、22万円だったわね。ウクライナ戦役でも、ブリヤート共和国や北カフカースのダゲスタン共和国の兵士が投入されているって聞いてたけど。ウクライナじゃあ、モスクワ、欧州ロシアの人間は死んでないって話だったな。

「ブリヤート共和国?ごめんなさい、ロシアの地理に疎くて・・・」
「ハ!ブリヤートはバイカル湖の南にあります。モンゴル共和国と国境を接しております。モンゴルが近くですから、モンゴル系のブリヤート人が多いんです。小官もロシア人とブリヤート人の混血であります」

 ああ、やっぱり。ソ連時代、ブリヤート人は、男性だけが徴兵で連行されて、残ったブリアート女性がロシア人と半ば強制的に結婚させられたと聞いたことがある。

「バイカル湖の近く!お寒そうねえ?」
「ハイ、冬はマイナス20℃、夏はプラス20℃、寒暖の差が激しい大陸性気候の場所です」
「ご兄弟は?」
「ハイ、五男三女です。小官は五番目の子で次女です」いやいや、子供八人かあ。いくら補助があっても生活は厳しいわ。
「まあ、八人兄弟!でも、ブリヤートからハバロフスクはかなり遠いんじゃありません?」
「ハイ、ブリアートは貧しくて、職もあまりなく、東部軍管区に所属しておりますので、軍に就職した次第であります」

 カテリーナ伍長、利発そうね。気に入ったわ。アニータに言ってこいつをもらおうかしらね?

「カテリーナ伍長、ロシアの話、もっと聞きたいわ。今度非番の時に私と食事しない?石垣島を案内してあげる」
「ハ!よろしいのでありますか?」
「うん、アニータ少尉に許可もらうから、大丈夫よ」
「ハイ!ありがとうございます!」

使

 伍長と別れて、タラップを上った。カテリーナが岸壁から見上げて敬礼をしている。しっかし、頭痛はするし、腰が痛い。もう年なのかしら。筋トレしないと。昨夜みたいな侵入と観察は、アニータ、スヴェトラーナみたいな若いのに任せないといけないわね。カテリーナもどこかで使い道があるかもしれないわ。
 
 アニータ少尉の居室兼執務室に行くと、広瀬二尉がすでに来ていた。あれだけ飲んだのに、普通の顔色で涼しい顔で広瀬と話している。ロシア女と飲むのはよそう。彼女らみたいにアルコール分解酵素を我々日本人は持っていない。
 
「紺野二佐!今朝はご馳走になりました!」今朝ね、今朝だよ、午前四時まで飲んでましたよ。今、午前七時半だぜ、3時間半しか経ってないよ。それを元気な大声出して。
「アニータ、あんた、頭、痛くないの?」
「ハイ?なぜ?」
「三人でウィスキー三本空けたんだよ?」
「まったく普通でありますが?」

「広瀬、ロシア女は化け物だよ。ソーニャもお仲間だ。考え直したほうがいいよ」とソファーに座っている二尉に言った。
「二佐、小官は、二佐の言われる化け物でも好きであります!」
「恋は盲目だもんなあ。で、広瀬はなんでここに?」
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