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第4章 ヨナクニへ
第1話 陸上自衛隊与那国駐屯地
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与那国島は東西に長いサツマイモのような島である。
面積28.95平方キロで、小笠原諸島の硫黄島や父島より若干大きい程度だ。人口約1,700人、年平均気温23.8℃、年間降水量2,353.6mm。石垣島からは約127キロの国境の島で、台湾(中華民国)宜蘭県蘇澳鎮までは約111キロしかなく、年に数回晴れて澄んだ日には、水平線上に台湾の山々を望むことができる。島は東西に細長く、ちょうどサツマイモのような形をしていて、起伏は激しい。自転車で3~4時間で一周が可能な大きさだ。
日本最西端の島であり、東京からの直線距離は約2,000キロメートルを超え、日本の領土の中で東京から最も離れた島である。安全保障上重要な位置にあるため、2016年に陸上自衛隊の与那国駐屯地が開設されて沿岸監視隊が配備された。自衛隊員とその家族320人が移り住み、人口の20%近くを占めるようになった。
沿岸監視隊は陸上自衛隊に所属し、日本の沿岸を航行する船舶の情報収集を主任務とする。任務は情報収集であり国境警備隊ではない。侵攻してきた敵の迎撃は他の部隊が行うため、武器は隊員および装備品を防護するための小火器のみである。隊長は2等陸佐で与那国駐屯地司令を兼務する。
島の北岸の中央に2千メートル級の与那国空港がある。空港の滑走路の東側の先にフェリーターミナルがある。与那国町役場はそこから約500メートルの市街地中心にある。
陸上自衛隊与那国駐屯地は、島の西岸にあり、町役場から約9キロ、車で15分程度の距離にある。
島は東西約12キロ、南北約4.5キロ。島の平地は北岸に集中していて、南岸には一部しか平地がない。島南部はほぼ丘陵地帯になっている。島で最も標高の高いのは宇良部岳で231メートル。
紺野、エレーナたちは島の空港近くの祖納港フェリーターミナルにオスリャービャとペレスヴェート、ポモルニク型エアクッション揚陸艦一号艇と二号挺で与那国島に到着した。
畠山、広瀬は、島の西岸、陸上自衛隊与那国駐屯地から500メートルの久部良漁港に三号艇と四号挺で到着した。
久部良港フェリーターミナルで、ポモルニク揚陸艦一号艇と二号挺は全面デッキを開き、沖縄から搬送してきた機材を積み下ろす。港には与那国駐屯地司令の河野2等陸佐(二佐、中佐)が出迎えに来ていた。
「迎えに参りました。与那国駐屯地司令の河野二佐であります」と敬礼をした。畠山が答礼する。「水陸機動団石垣島臨時分遣隊の畠山三佐であります!こちらが水陸機動団の副司令の広瀬二尉であります!そして、こちらが防衛装備庁の・・・」
南禅が「畠山、顔見知りだよ。河野ちゃん、お久しぶりね」と言った。河野がなぜか顔を赤らめる。「南禅二佐、羽生二佐、お久しぶりであります!」と言う。
「まあ、他人行儀なこと。私を忘れちゃった?」と南禅。
「南禅、こんなところで・・・あの・・・なんだ、後で・・・」と河野。
畠山が「羽生さん、なんすか?この二人?」と羽生に聞いた。「あ~、この二人はね、一時期恋人だったんだよ」と羽生。「ほぉ~、南禅さん、モテるんですね?」「外見はこの通りだから、そりゃあモテるよ。紺野も同じだ。しかし、中身は魔女だ。みんな後で気づくんだよ。エレーナがよく言う体の相性とか、ありゃあ、片手落ちだよ。性格、生活習慣の相性だってあるわけで・・・」
広瀬が「羽生さん、私とソーニャは両方ともバッチリですよ!」と言う。「ま、割れ鍋に綴じ蓋。お互い補完して生きていくってことだ。それがうまくいかないと離婚になるわな」
「羽生!くだらん話はいいから、本題に入ろう!」と南禅が言う。何を言ってやがる?自分は『私を忘れちゃった?』なんて言っていて。
「よし、河野、本題だ。東京から連絡は来てるな?」
「統合幕僚監部双方から連絡があった。事情は理解している。しかし、そんなに事態が急変しているなんて思っても見なかった」
「そりゃ、そうだ。こっちも諜報情報が入ったのはここ数日のこと。ただし、東ロシア共和国経由で寧波の指令部高官の直接情報が入っているから確度は非常に高い。つまり、ここ数日内に起こる、ということになる」
「そうか。まったくなあ。独身だからちょうどいいと言われて与那国島に赴任、住心地も良く満足してたんだけどな」
「遅かれ早かれこの島はこういうことに巻き込まれる運命だった。地政学的にこれほど台湾に近いんだからな。さて、」
この与那国駐屯地は、沿岸監視任務だ。任務は情報収集。国境警備隊じゃあない。武器は隊員および装備品を防護するための小火器のみ。ということで、敵の海上戦力、航空戦力、陸戦隊が押し寄せてきたら、島民の保護、島のインフラ防衛はおろか自分らも守れない。
大事なのは、遠隔操縦観測システム、通信情報収集システムの保護だ。敵に取られる訳にはいかない。それで、畠山、広瀬の水陸機動団400名を配置することとした。広瀬の部下の三尉を隊長として、河野の指揮下につける。
で、沖縄経由でいろいろと装備を持ってきた。与那国駐屯地は3.5、1.5、半トントラックと高機動車しかあるまい。銃だって旧式の89式5.56mm小銃だろう?
新小銃20式5.56㎜小銃にアドオン式グレネードランチャー、イタリアのベレッタのGLX160 A1を装着した銃二百丁、グリップと銃床を装着した単体のGLX160 A1百丁を持ってきた。通信士官だろうが、水陸機動団と一緒に戦闘してもらわないといけないからな。
それから、沖縄から分捕ってきた87式偵察警戒車3台、96式装輪装甲車(ロシアのタイフーンL相当)8台。
さらに、佐世保から沖縄に運んできた、03式中距離地対空誘導弾2輌、12式地対艦誘導弾1輌とその他車輌だ。沖縄の奴ら、本島の防衛はどうする!とかほざいていたが、バカ野郎!前線は、与那国、石垣、宮古であって本島じゃねえだろ?と言って、こっちに追加配備することにした。
海上戦力は、フリゲート護衛艦FFMくまの、潜水艦SS508せきりゅう、それから、ロシアのポモルニク揚陸艦四号艇を配置する。航空戦力は未定だ。今、空自の鈴木三佐がかき集めている。
「羽生、与那国町議会や沖縄県議会の承認が・・・」
「日本国民、日本国土のために憲法、民主主義はある。逆じゃない。このような非常時に民主主義的手続きをとっていたら、手遅れになり本末転倒だ。何も敵基地攻撃に使おうというんじゃない。敵の侵攻作戦の阻止に使おうと言うんだ。大丈夫だ。これら兵器の持ち込みは、首相官邸、統合幕僚監部が根回ししている。さらに、与那国町議会は紺野二佐がこれから町長らに説明する。島民退避の事態に町民、町議会なんて言っていられないだろう?」
「了解だ!・・・って、ちょっと待て!あそこに居るのはマスコミじゃないか!」
「ああ、あれはテレ◯の取材クルーだ。卜井アナ、藤田アナ、佐々木カメラマン、佐渡ヶ島で有名だろう?彼らは我々のチームだ。心配ない。無統制な報道の自由を行使しないという協定を結んでいる。俺たちとは佐渡ヶ島以来の戦友だよ」
「さて、そこでだ、河野、キミの部下を二班に分け、ちょっと沖合に出て、ポモルニク型エアクッション揚陸艦一号艇で訓練をしてみたいと思う。取り扱い注意の兵器があるんでね。地平線の向こうに出て試さないといけない代物なんだ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
与那国島南西の沖合
揚陸艦一号艇の艦上で羽生が単体のGLX160 A1に装着した2種類のパイクミサイルを河野に見せた。「これだ」
羽生がパイクミサイルをランチャーの尾部から装填した。「なんだね?それは?おかしなグレネードだ。ランチャーの先端から弾体がからはみ出している」と河野。
「これは、アメリカのレイセオン製パイクミサイルだ。標準の40mmグレネードランチャーから発射できる小型のレーザー誘導ロケットだ。スペックは、全長:427㎜、重量:770g、直径:40㎜、射程距離:2,000m。通常のグレネードの6~10倍の射程距離だ。なぜならロケットモーター内臓だから。発射後、2、3メートルでロケットモーターに着火する仕組みだ。固定および低速度で移動する中距離目標を攻撃可能。例えば海面を移動するホバークラフトとかだな」
このミサイルはレーザー誘導が可能だ。デジタル式セミアクティブレーザーシーカーを使用する。1人の兵士がターゲットを指し、別の兵士がこいつを発射して、目標に誘導する。
河野、レーザーシーカーを操作してくれ。この操作モニターにあるモード1は通常炸薬のパイクミサイル。レーザーシーカーの標準そのままで誘導される。
羽生は曳航していた標的ブイ2つを離させて、艦を1キロほど後退させた。
「河野、どうだ?シーカーを標準したな?」
「オッケーだ」
「じゃあ、発射する。3、2、1・・・」
パイクミサイルはランチャーを離れると数メートルの軌道を飛んだあとロケットモーターに点火した。速度を上げたミサイルは数秒で標的ブイに命中した。普通のグレネードよりも多少爆発力が大きいようだ。標的ブイは粉々になった。
「これは普通のグレネードランチャーよりも射程が長い。上陸を目論む敵の舟艇やホバーに有効だ」
「まあ、そうだ。次に、レーザーシーカーのモードを2にしてくれ。モード2はレーザーシーカーの標準20メートル上空で爆発するように設定してある。そしてこれが」と河野に同じようなパイクミサイルを見せた。「これが炸薬の代わりに燃料気化弾を詰めたもの」
「燃料気化弾?って、それは・・・」
「まあ、いいから、標準しろ。じゃあ、発射する。3、2、1・・・」
標的ブイの頭上、20メートルでパイクミサイルが爆発した。燃料が気化して直径100メートルほどの蒸気雲が広がったかと思うと着火されて、普通のグレネードの数倍の大きさの爆発雲となった。その雲はしばらく消えない。十数秒続いた。標的ブイは通常炸薬の比ではなく、衝撃波で吹っ飛んで水面下に消えた。
「なんだ?これは?あんな爆発雲の大きさだと、かなりの大きさの上陸用舟艇やホバーでもいちころだぞ?乗員も・・・」
「ああ、爆発雲が目標の直上で炸裂すれば、上陸用舟艇やホバーの乗員も瞬時に死亡する。北朝鮮や米軍のものは酸化エチレンと酸化プロピレンを使用している気体爆薬だが、これはナノ粒子以下の超微粒子のマグネシウムとアルミニウムも添加してある。だから、正確には気体爆薬の燃料気化爆弾とサーモバリック爆薬のハイブリッドだ。爆発力は、北朝鮮や米軍の燃料気化爆弾の2倍程度になる」
「おいおい、相当物騒だぞ、これは」
「だから、通常炸薬とこれと比較して撃ってみせた。諸君」と羽生はこの光景を見ていた与那国島駐屯隊員と畠山の部隊隊員に向かっていった。「通常炸薬かこれか、どちらを使用するかは、諸君の上官が指示する。見ての通り殺傷能力は甚大だ。爆発蒸気雲の直下では、敵兵器は甚大な損傷を受ける。敵兵士は衝撃波と無酸素で即死する。よって、我が方の海上航空戦力が敵艦を撃ち漏らし、敵の陸戦戦力が上陸を敢行しようとする時に使用して欲しい。あるいは、敵陸戦戦力が接近し、我が方の戦力、兵器を奪取される危険にある時使用して欲しい。判断は貴官らに任せる。敵は我が方に倍する勢力で向かってくるだろう。普通兵器の防衛体制では我が方の不利は免れ得ない。現状の事態は演習と異なる。実戦、戦争である。心してくれたまえ。以上だ」
※西部方面情報隊
※主要装備
遠隔操縦観測システム
通信情報収集システム - ES用器材
1/2tトラック/73式小型トラック
1 1/2tトラック/73式中型トラック
3 1/2tトラック/73式大型トラック
高機動車
89式5.56mm小銃
―――――――――――――――――――――――――――――――――
与那国町役場
いやぁ、最近、佐世保からわざわざいつも自衛隊の駐屯の調整をしに来てくれるこの紺野さんという女性、いつも思うがアラフォーだろうけど凄い美人だよなあ、東京からくる観光客なんてレベルじゃないな、と町長は思った。おまけに今日はあのテレビに出ていたロシア軍の美人の少佐が一緒だよ。
でも、佐世保の営繕の事務職なんだからなあ。まさか、沖縄県知事や首相官邸のあの話じゃないよなあ・・・
面積28.95平方キロで、小笠原諸島の硫黄島や父島より若干大きい程度だ。人口約1,700人、年平均気温23.8℃、年間降水量2,353.6mm。石垣島からは約127キロの国境の島で、台湾(中華民国)宜蘭県蘇澳鎮までは約111キロしかなく、年に数回晴れて澄んだ日には、水平線上に台湾の山々を望むことができる。島は東西に細長く、ちょうどサツマイモのような形をしていて、起伏は激しい。自転車で3~4時間で一周が可能な大きさだ。
日本最西端の島であり、東京からの直線距離は約2,000キロメートルを超え、日本の領土の中で東京から最も離れた島である。安全保障上重要な位置にあるため、2016年に陸上自衛隊の与那国駐屯地が開設されて沿岸監視隊が配備された。自衛隊員とその家族320人が移り住み、人口の20%近くを占めるようになった。
沿岸監視隊は陸上自衛隊に所属し、日本の沿岸を航行する船舶の情報収集を主任務とする。任務は情報収集であり国境警備隊ではない。侵攻してきた敵の迎撃は他の部隊が行うため、武器は隊員および装備品を防護するための小火器のみである。隊長は2等陸佐で与那国駐屯地司令を兼務する。
島の北岸の中央に2千メートル級の与那国空港がある。空港の滑走路の東側の先にフェリーターミナルがある。与那国町役場はそこから約500メートルの市街地中心にある。
陸上自衛隊与那国駐屯地は、島の西岸にあり、町役場から約9キロ、車で15分程度の距離にある。
島は東西約12キロ、南北約4.5キロ。島の平地は北岸に集中していて、南岸には一部しか平地がない。島南部はほぼ丘陵地帯になっている。島で最も標高の高いのは宇良部岳で231メートル。
紺野、エレーナたちは島の空港近くの祖納港フェリーターミナルにオスリャービャとペレスヴェート、ポモルニク型エアクッション揚陸艦一号艇と二号挺で与那国島に到着した。
畠山、広瀬は、島の西岸、陸上自衛隊与那国駐屯地から500メートルの久部良漁港に三号艇と四号挺で到着した。
久部良港フェリーターミナルで、ポモルニク揚陸艦一号艇と二号挺は全面デッキを開き、沖縄から搬送してきた機材を積み下ろす。港には与那国駐屯地司令の河野2等陸佐(二佐、中佐)が出迎えに来ていた。
「迎えに参りました。与那国駐屯地司令の河野二佐であります」と敬礼をした。畠山が答礼する。「水陸機動団石垣島臨時分遣隊の畠山三佐であります!こちらが水陸機動団の副司令の広瀬二尉であります!そして、こちらが防衛装備庁の・・・」
南禅が「畠山、顔見知りだよ。河野ちゃん、お久しぶりね」と言った。河野がなぜか顔を赤らめる。「南禅二佐、羽生二佐、お久しぶりであります!」と言う。
「まあ、他人行儀なこと。私を忘れちゃった?」と南禅。
「南禅、こんなところで・・・あの・・・なんだ、後で・・・」と河野。
畠山が「羽生さん、なんすか?この二人?」と羽生に聞いた。「あ~、この二人はね、一時期恋人だったんだよ」と羽生。「ほぉ~、南禅さん、モテるんですね?」「外見はこの通りだから、そりゃあモテるよ。紺野も同じだ。しかし、中身は魔女だ。みんな後で気づくんだよ。エレーナがよく言う体の相性とか、ありゃあ、片手落ちだよ。性格、生活習慣の相性だってあるわけで・・・」
広瀬が「羽生さん、私とソーニャは両方ともバッチリですよ!」と言う。「ま、割れ鍋に綴じ蓋。お互い補完して生きていくってことだ。それがうまくいかないと離婚になるわな」
「羽生!くだらん話はいいから、本題に入ろう!」と南禅が言う。何を言ってやがる?自分は『私を忘れちゃった?』なんて言っていて。
「よし、河野、本題だ。東京から連絡は来てるな?」
「統合幕僚監部双方から連絡があった。事情は理解している。しかし、そんなに事態が急変しているなんて思っても見なかった」
「そりゃ、そうだ。こっちも諜報情報が入ったのはここ数日のこと。ただし、東ロシア共和国経由で寧波の指令部高官の直接情報が入っているから確度は非常に高い。つまり、ここ数日内に起こる、ということになる」
「そうか。まったくなあ。独身だからちょうどいいと言われて与那国島に赴任、住心地も良く満足してたんだけどな」
「遅かれ早かれこの島はこういうことに巻き込まれる運命だった。地政学的にこれほど台湾に近いんだからな。さて、」
この与那国駐屯地は、沿岸監視任務だ。任務は情報収集。国境警備隊じゃあない。武器は隊員および装備品を防護するための小火器のみ。ということで、敵の海上戦力、航空戦力、陸戦隊が押し寄せてきたら、島民の保護、島のインフラ防衛はおろか自分らも守れない。
大事なのは、遠隔操縦観測システム、通信情報収集システムの保護だ。敵に取られる訳にはいかない。それで、畠山、広瀬の水陸機動団400名を配置することとした。広瀬の部下の三尉を隊長として、河野の指揮下につける。
で、沖縄経由でいろいろと装備を持ってきた。与那国駐屯地は3.5、1.5、半トントラックと高機動車しかあるまい。銃だって旧式の89式5.56mm小銃だろう?
新小銃20式5.56㎜小銃にアドオン式グレネードランチャー、イタリアのベレッタのGLX160 A1を装着した銃二百丁、グリップと銃床を装着した単体のGLX160 A1百丁を持ってきた。通信士官だろうが、水陸機動団と一緒に戦闘してもらわないといけないからな。
それから、沖縄から分捕ってきた87式偵察警戒車3台、96式装輪装甲車(ロシアのタイフーンL相当)8台。
さらに、佐世保から沖縄に運んできた、03式中距離地対空誘導弾2輌、12式地対艦誘導弾1輌とその他車輌だ。沖縄の奴ら、本島の防衛はどうする!とかほざいていたが、バカ野郎!前線は、与那国、石垣、宮古であって本島じゃねえだろ?と言って、こっちに追加配備することにした。
海上戦力は、フリゲート護衛艦FFMくまの、潜水艦SS508せきりゅう、それから、ロシアのポモルニク揚陸艦四号艇を配置する。航空戦力は未定だ。今、空自の鈴木三佐がかき集めている。
「羽生、与那国町議会や沖縄県議会の承認が・・・」
「日本国民、日本国土のために憲法、民主主義はある。逆じゃない。このような非常時に民主主義的手続きをとっていたら、手遅れになり本末転倒だ。何も敵基地攻撃に使おうというんじゃない。敵の侵攻作戦の阻止に使おうと言うんだ。大丈夫だ。これら兵器の持ち込みは、首相官邸、統合幕僚監部が根回ししている。さらに、与那国町議会は紺野二佐がこれから町長らに説明する。島民退避の事態に町民、町議会なんて言っていられないだろう?」
「了解だ!・・・って、ちょっと待て!あそこに居るのはマスコミじゃないか!」
「ああ、あれはテレ◯の取材クルーだ。卜井アナ、藤田アナ、佐々木カメラマン、佐渡ヶ島で有名だろう?彼らは我々のチームだ。心配ない。無統制な報道の自由を行使しないという協定を結んでいる。俺たちとは佐渡ヶ島以来の戦友だよ」
「さて、そこでだ、河野、キミの部下を二班に分け、ちょっと沖合に出て、ポモルニク型エアクッション揚陸艦一号艇で訓練をしてみたいと思う。取り扱い注意の兵器があるんでね。地平線の向こうに出て試さないといけない代物なんだ」
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与那国島南西の沖合
揚陸艦一号艇の艦上で羽生が単体のGLX160 A1に装着した2種類のパイクミサイルを河野に見せた。「これだ」
羽生がパイクミサイルをランチャーの尾部から装填した。「なんだね?それは?おかしなグレネードだ。ランチャーの先端から弾体がからはみ出している」と河野。
「これは、アメリカのレイセオン製パイクミサイルだ。標準の40mmグレネードランチャーから発射できる小型のレーザー誘導ロケットだ。スペックは、全長:427㎜、重量:770g、直径:40㎜、射程距離:2,000m。通常のグレネードの6~10倍の射程距離だ。なぜならロケットモーター内臓だから。発射後、2、3メートルでロケットモーターに着火する仕組みだ。固定および低速度で移動する中距離目標を攻撃可能。例えば海面を移動するホバークラフトとかだな」
このミサイルはレーザー誘導が可能だ。デジタル式セミアクティブレーザーシーカーを使用する。1人の兵士がターゲットを指し、別の兵士がこいつを発射して、目標に誘導する。
河野、レーザーシーカーを操作してくれ。この操作モニターにあるモード1は通常炸薬のパイクミサイル。レーザーシーカーの標準そのままで誘導される。
羽生は曳航していた標的ブイ2つを離させて、艦を1キロほど後退させた。
「河野、どうだ?シーカーを標準したな?」
「オッケーだ」
「じゃあ、発射する。3、2、1・・・」
パイクミサイルはランチャーを離れると数メートルの軌道を飛んだあとロケットモーターに点火した。速度を上げたミサイルは数秒で標的ブイに命中した。普通のグレネードよりも多少爆発力が大きいようだ。標的ブイは粉々になった。
「これは普通のグレネードランチャーよりも射程が長い。上陸を目論む敵の舟艇やホバーに有効だ」
「まあ、そうだ。次に、レーザーシーカーのモードを2にしてくれ。モード2はレーザーシーカーの標準20メートル上空で爆発するように設定してある。そしてこれが」と河野に同じようなパイクミサイルを見せた。「これが炸薬の代わりに燃料気化弾を詰めたもの」
「燃料気化弾?って、それは・・・」
「まあ、いいから、標準しろ。じゃあ、発射する。3、2、1・・・」
標的ブイの頭上、20メートルでパイクミサイルが爆発した。燃料が気化して直径100メートルほどの蒸気雲が広がったかと思うと着火されて、普通のグレネードの数倍の大きさの爆発雲となった。その雲はしばらく消えない。十数秒続いた。標的ブイは通常炸薬の比ではなく、衝撃波で吹っ飛んで水面下に消えた。
「なんだ?これは?あんな爆発雲の大きさだと、かなりの大きさの上陸用舟艇やホバーでもいちころだぞ?乗員も・・・」
「ああ、爆発雲が目標の直上で炸裂すれば、上陸用舟艇やホバーの乗員も瞬時に死亡する。北朝鮮や米軍のものは酸化エチレンと酸化プロピレンを使用している気体爆薬だが、これはナノ粒子以下の超微粒子のマグネシウムとアルミニウムも添加してある。だから、正確には気体爆薬の燃料気化爆弾とサーモバリック爆薬のハイブリッドだ。爆発力は、北朝鮮や米軍の燃料気化爆弾の2倍程度になる」
「おいおい、相当物騒だぞ、これは」
「だから、通常炸薬とこれと比較して撃ってみせた。諸君」と羽生はこの光景を見ていた与那国島駐屯隊員と畠山の部隊隊員に向かっていった。「通常炸薬かこれか、どちらを使用するかは、諸君の上官が指示する。見ての通り殺傷能力は甚大だ。爆発蒸気雲の直下では、敵兵器は甚大な損傷を受ける。敵兵士は衝撃波と無酸素で即死する。よって、我が方の海上航空戦力が敵艦を撃ち漏らし、敵の陸戦戦力が上陸を敢行しようとする時に使用して欲しい。あるいは、敵陸戦戦力が接近し、我が方の戦力、兵器を奪取される危険にある時使用して欲しい。判断は貴官らに任せる。敵は我が方に倍する勢力で向かってくるだろう。普通兵器の防衛体制では我が方の不利は免れ得ない。現状の事態は演習と異なる。実戦、戦争である。心してくれたまえ。以上だ」
※西部方面情報隊
※主要装備
遠隔操縦観測システム
通信情報収集システム - ES用器材
1/2tトラック/73式小型トラック
1 1/2tトラック/73式中型トラック
3 1/2tトラック/73式大型トラック
高機動車
89式5.56mm小銃
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与那国町役場
いやぁ、最近、佐世保からわざわざいつも自衛隊の駐屯の調整をしに来てくれるこの紺野さんという女性、いつも思うがアラフォーだろうけど凄い美人だよなあ、東京からくる観光客なんてレベルじゃないな、と町長は思った。おまけに今日はあのテレビに出ていたロシア軍の美人の少佐が一緒だよ。
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「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
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