重たい愛は如何ですか〜狂愛侍従と王子様〜

なつや

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始まりの章

幸福な目覚め

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 その日、7才になったばかりの私は父に連れられて王宮にある離れの塔に訪れていた。

 「今日からこれの世話をお前がする事になった。死なない程度に世話をしろ。」
 父はそう言って私を室内に押し入れ、来た道を引き返して行った。

 塔の4階、室内には正面に1箇所掃き出し窓があり、重たい深緑色のカーテンがかけられていただけだった。窓の他には何も無く、部屋の中央にベビーベッドが置かれていた。
 私は仕方なしにベビーベッドにゆっくりと近づいた。
 ベッドの中には白髪の赤子が居て、2つの赤い瞳が不思議そうに私を見つめていた。

 一目見た瞬間、雷に打たれた様に俺は前世を思い出した。


 *****


 前世は日本という国に産まれ、少々特殊な育ち方をしていたが、普通に社会人として生活をしていた。
 名前は山田優一、年齢は26歳。
 俺が死んだのは3年付き合ってる同棲中の彼女が居て、結婚を視野に入れていた頃だった。

 彼女は所謂オタクと言われる趣味を持っていて、俺は彼女と一緒にゲームをする事も多々あった。
 その内の1つが、【ILY~全てをキミに~】というゲームだった。

 【ILY~全てをキミに~】とは、ヒロインが悪政を働いている官僚や王を撃退し、色々ありつつ女王陛下になる成り上がり系RPGであり、撃退する際に協力してくれる攻略キャラと結婚したりもする恋愛要素のある乙女ゲーム作品だった。

 彼女はゲームが下手で、メインシナリオは俺がプレイしていた。
 攻略対象は5人。彼女は箱推しだった為、俺は隠しキャラ含む全てのキャラクター攻略を行った。
 中でもシヤンという侍従兼側近の隠しキャラは本当に骨が折れた記憶がある。二度とやりたくない。

 シナリオのクライマックスは全て同じで、悪の王がヒロイン達の前で自殺をして終わるのだ。

 彼女はイケメンとの恋愛要素が楽しめれば何でも良かったようで『最高の作品』と褒めていたが、メインでプレイしていた俺はそう思えなかった。

 ゲームの中でヒロインが撃退する白髪赤眼の王【ロイ・アンペール】彼はどの攻略シナリオでも服毒自殺をして終わるのだが、必ずヒロイン達の前で独白するシーンがある。

 『ただ僕は、赦しが欲しかった。そして、一度でいいから……頭を撫でて欲しかったんだ。』

 そう言って、ヒロイン達の目の前で服毒自殺をするのだ。
 ヒロイン達はそれを見ているだけ。会話ログには『倒れたロイ陛下は薄く微笑んでいるように見えた。』と表示され暗転。その後は攻略キャラと結婚式を挙げて幸せに暮らしましたでお終いだ。

 いや、こんな悲しい事があるだろうか。
 全キャラ攻略後、何度プレイしてもロイ生存ルートは存在せず、シナリオで『王が悪政を働いていた』と出るが、実際に働いてのは王宮官僚達だけで、ロイはお飾りの王だった。
 彼女には『ロイの強火オタクだね』と笑われたが、ロイ生存ルートを諦めきれなかった俺は、公式発売の【ILY~全てをキミに~キャラクター全図鑑】を購入。ロイの欄を読破した……が、本編には出てこなかったロイの裏話がそこには載っていた。
 ロイは双子だった事や赤眼だった為に秘匿され、死んだ片割れの代わりに生きていた事。
 裏話では『少年』と記載され、名前が載っていなかった事。

 ゲームの中で、彼は生きているのに生きていない存在となっていた事に俺は涙した。

 もしも俺が彼の傍に居たら、絶対に独りで死なせたりしないし、撫でて抱き締めて甘やかして、彼の全てを赦すのに……。

 『マジでロイの強火担だ笑』

 彼女はそう言って俺を指さして笑っていたな。


 *****

 今の俺の名前はシヤン・アンラジェ。
 前世を思い出して3秒程、私と俺が混ざりあったような感覚に手が震える。
 急激な情報量により頭痛がして、助けを求めるように無意識に俺は震えた手を彼に伸ばしていた。
 彼は反射での行動だろう、俺の指を握り締めて「キャハハ」と声を出して笑った。

 ―ああ、あの時のもしもが叶うのか…

 頭痛が治まる。感じられるのは握られた彼の手の温もりだけ。

 俺はこの笑顔を、彼を守れるのならどんな事もしようと心に誓った。
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