重たい愛は如何ですか〜狂愛侍従と王子様〜

なつや

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歪みの章

青の独白2

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 今日はシヤンが僕の侍従になって1ヶ月。
 僕はこの日の為に準備していた『サファイアのピアス』をプレゼントした。
 本当は指輪をあげたかったんだけど、シヤンの仕事の邪魔になっちゃうのと、指輪は大人になった時にずっと一緒にいる人にあげるものだって言われたからピアスになった。

 宝石はたくさんあって迷ったけど、サファイアには『ずっと好き一途な愛』って意味があるって教えてもらったから、これしかないって決めた。


 僕が大人になったら、シヤンにサファイアの指輪をあげようと思ったのは内緒だよ。



 シヤンは嬉しかったのか、俯いて泣き出してしまった。
 本当は笑って欲しかったんだけど、こんなに喜んでくれるなら、渡して良かった!

 僕は泣いて喜んでいるシヤンの頭をヨシヨシって撫でてあげた。

 ふふ、次は笑って喜ぶ顔を見せてね。

 *****

 午前中のたくさんのお勉強が終わって、今はちょっとお休みの時間。

 お庭に出てシヤンに紅茶を入れてもらう。
 僕は上機嫌に香りの良い紅茶を飲む。
 シヤンは紅茶を入れるのがすごく上手で、僕の大好きな物の1つなんだ。

 しかも今日は特別。
 シヤンが僕のあげたピアスをつけてくれている。

 シヤンが動く度にキラキラと光って、僕のシヤンだよって教えてくれてるみたい。

 すごく嬉しくて、赤くなってるシヤンの耳に触ってお仕事の邪魔をしちゃった。
 だからかな、近くで物が割れる音がした。

 危ないからっていつもより早くお休みの時間が終わっちゃった。
 もっとシヤンを見ていたかったのに……

 *****

 午後の剣術と魔法の訓練を頑張って、あとは夕飯まではお菓子を食べながらお休み。

 「え、今日はシヤンともう会えないの?」

 ルテュールが言うには、今日はおじさん…シヤンの父ペールに呼ばれてお家に帰るらしい。
 僕はもっとシヤンと居たいのに…
 そう思って膨れてると、ルテュールが「シヤン様はロイ様が好きなので、笑って送って差し上げれば喜んでくださいますよ」って。

 …確かにそうだ。シヤンは僕のこと大好きだもん。まだ笑った顔を見てないし、明日もシヤンとは会えるんだから。

 「早く帰ってきてくれ!」
 僕はお願いと一緒に、笑ってシヤンを送り出して、ルテュールと手を繋いで部屋に向かった。

 *****

 「ロイ様、本日の茶葉は私の実家から送られてきた茶葉を使用した物になります」

 ルテュールが慣れたように紅茶を入れてくれる。
 シヤンの入れてくれる物とは違うけど、ルテュールの紅茶も僕は好きだ。

 「今日は…シヤン様のご実家、アンラジェ家で食されているマドレーヌをご準備させて頂きました!それも、シヤン様がロイ様の為に選定し、ご準備して下さったそうですよ!」

 机の上に紅茶しか置いて無かったから不思議だったけど、ルテュールはイタズラが成功したみたいな顔で僕に笑う。

 「それはほんとか!?シヤンが!?食べたい!すぐ持ってきてくれ!!」

 少し行儀が悪いけど、そんな事よりもシヤンが僕の為にしてくれた事が嬉しかった。

 そっか、シヤンも今日が1ヶ月だって覚えてて、一緒にお祝いしたかったんだ!

 嬉しいな、嬉しいな!!

 ルテュールが部屋から出て行って、嬉しすぎて落ち着かない僕は一旦深呼吸をした。

 吸った空気から紅茶のいい香りがして、僕は1口紅茶を飲む。

 「…ん?なんか、味がいつもと違う?」

 不思議に思ってカップを机に戻した途端「おぇっ…!?」とお腹から喉へと気持ち悪い何かが上がってきた。喉が痛くなって、目がチカチカする。
 すぐに机とカップをなぎ倒した。

 これ、授業で習った毒だ!

 王族は毒で殺されちゃうことがあるから、授業で毒について教わるし、もう少し大きくなったら毒に慣れる訓練をするって聞いてた。

 「ル、ルテュールっ!!」
 ずっとお腹も喉も気持ち悪くて、暑いのに寒い。変な汗がいっぱい出てくる。

 助けて、たすけて!

 ──ガチャッ!ガチャッ!

 ──ドンドン!ドンドン!

 「ルテュール!誰かっ!」

 何度も扉を開けようとするのに、痛いくらいに強く叩いてるのに、開かない。誰も来ない。

 きもちわるい、喉が痛い。
 周りがぐるぐるして、立ってられなくて、扉にもたれかかった。

 「た、たすけて…シヤン…」

 死にたくない、痛いのは苦しい。
 僕はぐるぐるする視界で、端の方にキラキラ光るそれを見つけてしまった。

 「…シヤン?」

 天井の近くに、あの日見た銀色の蝶が飛んでいた。

 僕は知ってる。あの日見た蝶は、監視魔法だって。

 なんで?

 「なんで見てるのにたすけてくれないの??」
 口からいっぱい血が出て、何度もたすけてって言ったよ?
 なんで何も言ってくれないの?

 なんでなんでなんでなんでなんでなんで
 なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで?

 ……僕があの子じゃないから?

 「……はは、ははは……あはははははは!!!」

 理解わかった途端に、僕はおかしくなっちゃったみたい。
 僕と同じ顔で、シヤンに笑ってもらえるあの子が羨ましい。
 シヤンに大事にされて、シヤンに愛してもらって、幸せそうに笑ってた僕の顔あの子が羨ましい。

 カーペットの敷かれた床にごろりと大の字で仰向けに寝転んだ。


 僕、シヤンに愛されるあの子になりたい……


 僕の魔力が身体を包んで、もう1人の僕になる。


 「…シヤン、ねぇ、たすけて」


 シヤンが笑ってくれるなら、僕は僕じゃなくなってもいいよ。

 だから……僕を…

 「……」

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