重たい愛は如何ですか〜狂愛侍従と王子様〜

なつや

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歪みの章

俺という歪み

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 俺がまだ『山田優一』だった頃、死ぬ少し前に自分が普通じゃない事を理解した。

 俺が7才の頃、目の前で母親が父親を刺して殺した。
 父の浮気が発覚して、髪を振り乱して怒り狂っていた母を今でも覚えている。

 「貴方が憎くてしょうがないの…

 でも、それでも…どうしようもなく愛してるの

 ……2人だけの所にいきましょう?」

 そう言って2人は俺を置いて逝ってしまった。
 幸せそうに笑って逝った母を見て、俺は要らないのだと、捨てられたような気がしていた。

 俺が14才の頃、交際をしていた成人男性から「もう会えない」と言われた。
 理由を聞くと、もうすぐ結婚するからと言われた。
 俺の事を「愛してる」「君だけだ」「1番好き」と言っていたくせに…俺のこと捨てるんだ。
 俺だけだって言うから、俺はあんたの為にあげられるものは全部あげたし、求められるままに何でもしてきたのに。

 「うそつき」

 気づけば俺は彼を半殺しにしていた。
 あの時の母の気持ちが少しわかった気がした。でも、一緒に死にたいほど愛してた訳じゃない。

 彼と別れてからしばらくして、次は成人女性と交際を始めた。俺の事を「可愛い」と言い「全部私にまかせてね」とダメになるくらい甘やかしてくれた。
 でも俺の筆おろしをしたかっただけらしく、すぐ別の男の元へ行ってしまった。
 俺は彼女に元彼と同じような事をしてしまい、気づいたら彼女を殺してしまっていた。

 男性より、女性の方が脆いことに驚いた。


 それから16歳まで少年院で過ごし、23歳の頃彼女と出会った。

 オタクな趣味をもつ彼女は、俺が初めての恋人だったらしい。
 前歴のある俺に対して、相手が悪いと憤ってくれたり、両親の話を聞いて涙して俺を抱きしめてくれた。

 一緒にいればいる程、俺は彼女なしでは生きられなくなっていった。

 俺の生きる理由が彼女になっていた。

 相手の為なら何でもするし、できる。お互いの1番はお互いで、何よりも優先すべきものだと思っていた。


 それが悪かった。

 彼女は俺と同じ思いを返してはくれなかった。

 彼女は俺のこれは愛じゃない、依存だと言って拒むようになった。

 結婚を視野に入れて同棲をして3年、彼女は…俺を置いて出て行こうとした。
 だから、捨てないでくれと縋ったのに…もう別に付き合っている男が居ると彼女は言った。

 前々からしていた別れ話はお互いの主張で平行線で進まなかった。けれど彼女の中では既に俺とは別れていたらしい。

 頭の中で母が言う。

 『貴方が憎くてしょうがないの…

 それでも…どうしようもなく愛してるの

 ……2人だけの所にいきましょう?』

 俺は彼女とその男の元へ行った。
 彼女は俺としたゲームを楽しそうに他の男とやっていた。

 頭が真っ白になり、目の前が赤く染まる。

 男の怒号と彼女の悲鳴、物の倒れる音と割れる音……気づけば血に濡れた俺と、血を流して倒れる2人が部屋にいた。

 静まり返る部屋に、ゲームの音だけが木霊する。


 『ただ僕は、赦しが欲しかった。そして、一度でいいから……頭を撫でて欲しかったんだ。』


 もしも俺が傍に居たら、絶対に独りで死なせたりしないし、撫でて抱き締めて甘やかして、彼の全てを赦すのに……

 なんて……ゲームに思ってしまうくらい、俺には何も無くなってしまった。


 俺はただ一緒にいたかっただけなんだ。
 俺は母に愛された父のように、誰かを愛し愛されたかった。それが俺の知ってる愛の形だったから。


 もっと早く理解できれば良かったんだ。
 期待して、失望して、また期待して……

 こんな不毛な事を繰り返してしまうくらいなら

 …もう愛なんて求めない…
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