重たい愛は如何ですか〜狂愛侍従と王子様〜

なつや

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歪みの章

緋色の器2

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 シヤンが、魔法は想像力だって言っていた。

 僕は目をつぶって、シヤンのあのキラキラした蝶を思い浮かべた。
 キラキラした銀色の蝶。
 キラキラしたシヤンの蝶。
 キラキラしたシヤンの魔力。
 キラキラしたシヤンの笑顔。

 ぎゅっと両手を握って、お願いする。

 ─シヤンに会いたい

 「シヤン…」
 焦がれた名を声に出した瞬間、ポッと僕の魔力が揺らいで、折り紙みたいな蝶が生まれた。

 シヤンの蝶は模様も色も全部がキラキラしていたけど、今生まれたこれは……瞳以外は凹凸のない形だけの白い蝶。
 魔力の供給が安定していないようで、身体の中央から羽根に向かって少し色が薄くなっている。

 歪な形の僕の蝶。

 でも、これで……


 *****

 僕はそれから毎日王宮に向かって蝶を飛ばした。
 魔力が安定しなくて、生み出してからしばらくすると白色から半透明になっちゃうけど…


 今日もシヤンはキラキラしてかっこいい。
 塔で着ていた白いシャツも綺麗で好きだけど、王宮に合わせた黒いタイがついたお洋服もかっこいいし、塔では付けて無かった黒い手袋も、シヤンの綺麗なお手てを更に素敵に魅せてる。

 すごくかっこいいんだよ?
 でもさ、だからって……

 弟…アイツ、シヤンが嫌がってるのわかんないのかな?

 今日も昨日も……いや、僕がシヤンを見るようになる前からだと思うけど、無駄にシヤンに抱き着こうとしたり、手を握ろうとしたり……

 シヤンはちゃんと嫌だって言ってるのに、なんなの??

 ─本当にアイツ…嫌いだなぁ…


 シヤンの仕事が終わるのはすごく遅い時間。今までの僕なら寝てる時間…でも僕は少しでもシヤンを感じていたいから、ベッドに入ってはいるけど、シヤンのお仕事が終わるまでは寝ないようにしてる。
 シヤンが王宮の人達にお別れをしたら、僕のお休みの時間。

 その日はたまたま眠りが浅かったみたい。

 ──ギシッ…

 僕の前の方でベッドが軋む音がした。
 夢と現実の間で、うつらうつらしてたら…上からぎゅっと何かに抱きしめられた。


 「…ただいま」

 耳元で小さく囁かれた声は……僕が欲して止まない……シヤンのものだった。

 ─これは夢かな……

 ─夢なら…覚めないで…ずっと…

 閉じた眼から、ポロっと涙が零れた。

 「ごめんね…こんな時間にしか帰ってこられなくて…」

 シヤンはそう言って、暖かい手が僕の頬を撫でてくれた。
 そして、「もう少しだけ待ってて」と僕を抱きしめてくれた。
 しばらく温もりに浸っていると、前から寝息が聞こえてきて、僕はうっすらと眼を開けた。

 ─あぁ…

 僕は小さく笑ってまた眼を閉じた。



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