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再臨譚
27、異国人の事情
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突然やってきた謎のブロンド美男子に名を呼ばれた光は目を丸くしていた。
だが、すぐに気を取り直し。
「あ、賀茂光は私だが」
「あぁ、あなたでしたか。初めまして、私はバチカン市国教皇庁から参りました。ジョンと申します」
訪問してきたブロンド美男子は、光の前に手を差し伸べながら名乗った。
その手を握り返しながら。
「お初にお目にかかる。しかし、なぜキリスト教総本山の方が?」
光はエクソシストが日本に訪問してきた理由を問いかけた。
だが、その質問に答えを返した人物はジョンではなく。
「それについては私の方から答える。賀茂、蘆屋はジョン氏と共に来てくれ」
いつの間にやってきたのか、局長の保通だった。
保通は伝えることを伝えると、すぐに踵を返し、部屋を出て歩き出した。
おそらく、局長室へ向かうのだろう。
一体、局長の口から何が語られるのか。
その疑問を残しながら、光と満はジョンとともに保通の後ろをついていった。
「そういえば、ジョンさんは日本語が堪能ですね?どこかで勉強を?」
「えぇ、日本にいる友人から教わりました。時々、電話をするのですっかり慣れてしまいました」
その道中、満とジョンは和気あいあいとした雰囲気で会話をしていた。
一方、上司である以前に実の父でもある保通に呼び出しを受けたことに、光は胃痛を感じているらしく。
――い、いったい、何の話だ?まさか今回の一件の進捗が思わしくないから、ほかの職員に任せて私たちはジョンさんと一緒に行動しろとか命令するのか?
と、青い顔で思考していた。
彼女の名誉のために補足すると、光は別に外人が嫌いというわけでも、苦手というわけでもない。
だが、いったい、何を言われるのかがわからないため、本来ならば心配しなくてもいいことまで心配してしまっているせいで、思考が変な方向へ向かってしまっている。
もっとも、普段の調子であっても、日本語が流ちょうであるため、言語の心配はないが、何を話したらいいのか、自分の言葉が失礼にあたらないかなど、話題や態度が心配になり、緊張してしまっていただろうが。
「実は、日本の教会でもお世話になった経験がありまして。それ以来、大陸とは違う形で形成された日本文化に興味が湧いてしまいましてね」
「なるほど。確かに、大陸との間を海に隔てられているこの国の文化は少しばかり特殊ですからね」
一方で満の方はジョンと和気あいあいとした雰囲気で会話を続けていた。
彼女の祖先であり、今も調査局にその存在を危険視され続けている悪霊、蘆屋道満がこと呪術に関する知識に貪欲であったことが影響しているのか、満もまた、未知に対する興味関心が強い傾向にある。
インターネットなどを通じ、海外の情報を手軽に得ることができるようになった昨今ではあるが、文章を読むだけと実際に見てきた人間の話を聞くのでは、情報の濃度が違う。
特に、道満が生きていた平安の頃と比べて、比較的安全かつ気軽に行き来ができるようにはなってきた異国の地ではあるが、時間的または経済的余裕の有無もあり、やはりまだ壁はある。
満もそんな人間の一人ではあるが、知りたいという欲求のほうが勝るらしい。
行きたいけれども行くことができない衝動を解消するかのように、ジョンにあれこれと質問をぶつけてきていた。
「入ってくれ」
だが局長室に到着したことで、その質問攻めも数分で終了した。
一行は保通に促されるまま、局長室に入り、応接用のソファーに腰かける。
それと同時に、彼女たちと向かい合うような形で保通がソファーに腰かけ。
「さて、早速だが本題に入る。が、その前に賀茂」
「は、はい!」
「今回の一件は以前、お前に預けた案件と関連がある。ゆえに、こうしてお前と蘆屋を呼んだ。そのことを頭に入れておけ」
「……はい」
まるで光が、突然呼び出されたことに対して動揺していることを見透かしているかのような言葉だ。
仮に局長が保通ではない、ほかの誰かであったなら、こんな言葉は投げていない。
血のつながった父親である保通であったからこそ、彼女が動揺していることに気づき、こうして声をかけているのだ。
そして、その言葉が届いたのか、ようやく、光は落ち着きを取り戻し、普段のたたずまいに戻った。
それを見計らい。
「さて、それでは話を始めるとしよう。まず、さきほども話したが、こちらの男性はバチカン市国教皇庁に所属するエクソシスト、ジョン=グレース氏だ。とある依頼で討伐しそこねた悪魔を追いかけてこの地に来たそうだ」
悪魔を討伐し損ねた、ということ自体、別に珍しいことではない。
悪魔祓いというのは本来、人間に憑依した悪魔を懇々と諭し、憑依した人間から出ていくよう説得する行為であり、悪魔を討伐するわけではない。
彼らが本来あるべき場所へと帰還するよう促し続けることが、悪魔祓いの本質なのだ。
「しかし、一度憑依した人間から引き離せば、それで終わりなのでは?」
「一般的なケースならそうです。しかし、中には違う人間に憑依しても同じような事件を引き起こす悪魔も存在するのです」
光の疑問に、ジョンは真剣な面持ちでそう返した。
「そして、そいつは私が何度も悪魔祓いを行い、その度に憑依をやめるのですが、また別の場所で同じような事件を引き起こすのです。そして、今回、かの存在はこの国に入り込んだ可能性があるのです」
聖書に記された聖句の言霊を受け、聖水やコインの霊力に浄化されながらも現世にとどまり、違う人間に憑依することができる力を持った悪魔が、今、日本に来ている可能性がある。
真実であるかどうかはともかく、ジョンのその言葉に光も満も戦慄を覚えた。
だが、すぐに気を取り直し。
「あ、賀茂光は私だが」
「あぁ、あなたでしたか。初めまして、私はバチカン市国教皇庁から参りました。ジョンと申します」
訪問してきたブロンド美男子は、光の前に手を差し伸べながら名乗った。
その手を握り返しながら。
「お初にお目にかかる。しかし、なぜキリスト教総本山の方が?」
光はエクソシストが日本に訪問してきた理由を問いかけた。
だが、その質問に答えを返した人物はジョンではなく。
「それについては私の方から答える。賀茂、蘆屋はジョン氏と共に来てくれ」
いつの間にやってきたのか、局長の保通だった。
保通は伝えることを伝えると、すぐに踵を返し、部屋を出て歩き出した。
おそらく、局長室へ向かうのだろう。
一体、局長の口から何が語られるのか。
その疑問を残しながら、光と満はジョンとともに保通の後ろをついていった。
「そういえば、ジョンさんは日本語が堪能ですね?どこかで勉強を?」
「えぇ、日本にいる友人から教わりました。時々、電話をするのですっかり慣れてしまいました」
その道中、満とジョンは和気あいあいとした雰囲気で会話をしていた。
一方、上司である以前に実の父でもある保通に呼び出しを受けたことに、光は胃痛を感じているらしく。
――い、いったい、何の話だ?まさか今回の一件の進捗が思わしくないから、ほかの職員に任せて私たちはジョンさんと一緒に行動しろとか命令するのか?
と、青い顔で思考していた。
彼女の名誉のために補足すると、光は別に外人が嫌いというわけでも、苦手というわけでもない。
だが、いったい、何を言われるのかがわからないため、本来ならば心配しなくてもいいことまで心配してしまっているせいで、思考が変な方向へ向かってしまっている。
もっとも、普段の調子であっても、日本語が流ちょうであるため、言語の心配はないが、何を話したらいいのか、自分の言葉が失礼にあたらないかなど、話題や態度が心配になり、緊張してしまっていただろうが。
「実は、日本の教会でもお世話になった経験がありまして。それ以来、大陸とは違う形で形成された日本文化に興味が湧いてしまいましてね」
「なるほど。確かに、大陸との間を海に隔てられているこの国の文化は少しばかり特殊ですからね」
一方で満の方はジョンと和気あいあいとした雰囲気で会話を続けていた。
彼女の祖先であり、今も調査局にその存在を危険視され続けている悪霊、蘆屋道満がこと呪術に関する知識に貪欲であったことが影響しているのか、満もまた、未知に対する興味関心が強い傾向にある。
インターネットなどを通じ、海外の情報を手軽に得ることができるようになった昨今ではあるが、文章を読むだけと実際に見てきた人間の話を聞くのでは、情報の濃度が違う。
特に、道満が生きていた平安の頃と比べて、比較的安全かつ気軽に行き来ができるようにはなってきた異国の地ではあるが、時間的または経済的余裕の有無もあり、やはりまだ壁はある。
満もそんな人間の一人ではあるが、知りたいという欲求のほうが勝るらしい。
行きたいけれども行くことができない衝動を解消するかのように、ジョンにあれこれと質問をぶつけてきていた。
「入ってくれ」
だが局長室に到着したことで、その質問攻めも数分で終了した。
一行は保通に促されるまま、局長室に入り、応接用のソファーに腰かける。
それと同時に、彼女たちと向かい合うような形で保通がソファーに腰かけ。
「さて、早速だが本題に入る。が、その前に賀茂」
「は、はい!」
「今回の一件は以前、お前に預けた案件と関連がある。ゆえに、こうしてお前と蘆屋を呼んだ。そのことを頭に入れておけ」
「……はい」
まるで光が、突然呼び出されたことに対して動揺していることを見透かしているかのような言葉だ。
仮に局長が保通ではない、ほかの誰かであったなら、こんな言葉は投げていない。
血のつながった父親である保通であったからこそ、彼女が動揺していることに気づき、こうして声をかけているのだ。
そして、その言葉が届いたのか、ようやく、光は落ち着きを取り戻し、普段のたたずまいに戻った。
それを見計らい。
「さて、それでは話を始めるとしよう。まず、さきほども話したが、こちらの男性はバチカン市国教皇庁に所属するエクソシスト、ジョン=グレース氏だ。とある依頼で討伐しそこねた悪魔を追いかけてこの地に来たそうだ」
悪魔を討伐し損ねた、ということ自体、別に珍しいことではない。
悪魔祓いというのは本来、人間に憑依した悪魔を懇々と諭し、憑依した人間から出ていくよう説得する行為であり、悪魔を討伐するわけではない。
彼らが本来あるべき場所へと帰還するよう促し続けることが、悪魔祓いの本質なのだ。
「しかし、一度憑依した人間から引き離せば、それで終わりなのでは?」
「一般的なケースならそうです。しかし、中には違う人間に憑依しても同じような事件を引き起こす悪魔も存在するのです」
光の疑問に、ジョンは真剣な面持ちでそう返した。
「そして、そいつは私が何度も悪魔祓いを行い、その度に憑依をやめるのですが、また別の場所で同じような事件を引き起こすのです。そして、今回、かの存在はこの国に入り込んだ可能性があるのです」
聖書に記された聖句の言霊を受け、聖水やコインの霊力に浄化されながらも現世にとどまり、違う人間に憑依することができる力を持った悪魔が、今、日本に来ている可能性がある。
真実であるかどうかはともかく、ジョンのその言葉に光も満も戦慄を覚えた。
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