継母令嬢はかつての悪役──小さき王子と紡ぐぬくもりの宮廷

象乃鼻

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第10話 新生王国の光と遠い影

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 馬車が王都の大広場へ到着すると、街路には温かな拍手と歓声が待っていた。学舎の生徒たち、衛兵、村長たちに混じり、城下の人々が笑顔を向ける。

「おかえりなさい、継母様、王子様!」
「ただいま戻りました」

 美咲は立ち止まり、深くお辞儀を返す。レオンも誇らしげに帽子を取って一礼すると、周囲から「未来の王さま!」と声が飛んだ。

 王宮執務室に戻ると、美咲は新たな書類の山に目を通していた。先日まとめた農村支援計画に加え、貿易拡大による王国財政改善案、そして教育カリキュラムの見直し案──。

 そこへ、執事長が静かに扉を開き報告する。

「継母令嬢様、隣国シリオスから貿易使節が到着されました。外交儀礼の準備が整っております」
「わかりました。すぐに宴席の案内を手配してください」

 新たな友好の門出が、王国の未来をさらに広げる。美咲はほほ笑みつつ、資料をまとめて宰相へ手渡した。

「貿易協定が成立すれば、王都の市場に海外の陶器や香辛料が入り、民の暮らしは豊かになります」
「継母様の先見の明には、いつもながら驚かされます」

 宰相も頷き、二人は外交の成功を確信した。

 夜、王宮のバルコニー。満天の星空の下で、美咲とレオンが肩を寄せ合っていた。

「今日は貿易使節のおもてなし、ありがとう」
「いえ、王子様に学んでほしいことばかりですから」

 レオンは小さく笑い、夜風に揺れる髪をかき上げた。

「継母様、僕、この先もずっと勉強して、人々を守れる王子になるよ」
「あなたなら必ずできる。私はいつでも、あなたのそばにいるから」

 二人の間に、誰にも侵せない絆が強く結ばれている。

 深夜の執務室。美咲は窓辺のペンスタンドに手を伸ばし、一通の手紙を書き上げた。

ーーーーーーーーーーーー
「親愛なるシリオス姫殿
 先日のご訪問は、我が国にとって大いなる喜びでした。今後とも互いの文化と友誼を深め、民の幸福を追求してまいりましょう
 光の王国
 継母令嬢 美咲」
ーーーーーーーーーーーー

 封をしながら、美咲は小さく息を吐く。

 ――改革と外交、教育と医療──。この数ヶ月で、世界は確かに変わり始めた。だが遠方には、まだ見ぬ嵐が静かに膨らんでいる。次なる挑戦は、王国の外から訪れるかもしれない。

 月明かりが書斎を優しく照らし、書きかけの新たな計画書が机に残されている。そこには、「海洋探検隊の結成準備」という見出しが書かれていた。

 ――家族と民とともに、未知の海を越え、新たな光をこの手で掴む。その日まで、継母令嬢と小さな王子の旅は、まだ終わらない。
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