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第六話 柚葉視点
しおりを挟む「心因性の記憶障害だと思います。」
柚葉との会話を終えた院長がこう言った。つまり記憶障害の原因はストレスや精神的ダメージによるものだということになる。頭を怪我した後遺症ではないことに両親は安堵した。代わりに、入院中に心理療法士のカウンセリングが週一回のペースで加わった。
院長が病室を去り柚葉と両親の3人だけになった。両親がお互いに何から話せば良いかと模索する。柚葉が待ってるとお父さんから話を切り出した。
1番目はスマホのことだった。柚葉のスマホは事故の衝突でひしゃげてしまい、もう使えない状態だった。お父さんが新しいスマホに変えようと提案したが、柚葉は使わないことを理由に解約を願い出た。
2番目は受験のことだった。結果的にいえば柚葉は藤の宮高校を受験できなくなったのだ。願書の提出が間に合わなかったことと、入試日が柚葉の足の手術日に重なった。これには柚葉も落ち込まずにはいられなかった。
両親は心配して他にも高校はあるからと言ってくれたけど、今までの努力が無駄になってしまったと柚葉は涙を溢した。
それからというもの、柚葉は焦燥感に駆られひたすら学校から出された特別課題や勉強をこなしていった。
今、私に出来るのはこれしかないから。
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