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第四章 風に吹かれた種の行方
決意新たに
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散々涙を流した後は見つからないように涙を必死で誤魔化し、静音さんにこってり絞られた。
もしかしたら静音さんにはバレてるかもしれないけど。
暫くは大人しくしてたけど、この部屋に居ると陽菜との思い出がいつまで経っても消えてくれないので
俺は施設を出る事にした。
今まで貯めた貯金を封筒に入れて書置きを残す。これで完璧だ。
陽菜が頑張るって言ってるのに俺がいつまでも腐ってる訳にはいかない。
元々出る予定ではあったので少し早いが計画を実行しよう。
俺は夜寝静まった頃にそっと抜け出した。
夜の街、初めて歩くな…。ちょっと不安だ。
「あら、ボク?家出してるの?」
知らないお姉さんが話しかけてきた。
「い、いえ、してないです!」
正しくは家出じゃなくて、引っ越しだもんな…。嘘は言ってない。
「そんな大きな荷物抱えてこんな夜にフラフラしてたらそりゃ家出って思うわよ?」
「ははっ、そうですか、なんかすみません」
「ね、行くところ無いならお姉さんが面倒見てあげよっか」
なんだか舌なめずりしてる。怖いな、夜の街…。
「け、結構です、ごめんなさい!」
「あ、ちょっとまってぇ!」
俺は脇目も振らず駆け出した。駄目駄目、人気のない所に行こう。
そしていつも陽菜と来てた公園に着いた。
よし、あのタコみたいな遊具の中ならだれにも見つからないはず。
そして、中に入り込み、バッグを枕に寝転ぶ。なんだか夜の公園で寝るのも、新鮮で良いかも?
ここは今日から俺のお城だ!不法占拠も何のその…!
しかし、静かだ…。何も聞こえない。暗いし。
そして腕に何か這うような感覚がして声にならない声をあげて、腕を見る。
な、なんだ虫か…。ビックリした。
ここって幽霊とか出たりしないよな…?
考えるだけで、身震いしてしまう。一度考えると、頭が恐怖で支配されて、振り払えなくなる。
あー駄目だ。無理にでも寝よう…。そうだ、陽菜を数えながら寝るか。
陽菜が一人、陽菜が二人、陽菜が三人……
陽菜が3567…。
結局、寝れなかった…。もう朝になりそ…。時計持ってきて良かった。
あ、新聞配達…。行くしかない。お金無いし。
結局寝れないままバイトに行き、そのまま学校に向かった。
学校に早く着いたら少し寝れるかも。
「琉弥、おはよ」
「え、優奈…?」
「やっぱり早かったね」
「いやいや、どういう事?」
「琉弥の事だからあんまり家に居たがらないかなーって思ってさ、早く来てたのさ」
なんていうか、こいつ俺の事俺より理解してないか?陽菜の事を伝えた時もわざと明るく振舞ってくれたし。
落としたはずの鞄だって優奈が持ってた。直ぐに届けてくれても良いはずなのに、多分俺が誰にも会いたくないんだろうって思って、気を遣って…。
「なんか、眠そうだね?」
「そ、そんな事は無い、全然眠くないから」
「ふーん、なら良いけど」
優奈は信じてない様子だった。くっ、まぁ明らかに寝不足と疲れがきてるから仕方ないか…。
良く考えたら風呂にも入れない…。シャワー浴びたい。
どうするか…。思い切って優奈の家で借りるか!?でもそこまで頼れないよな。
あ、俺勉強教えてあげてるんだし、これくらいはお返しで貰っても良いはず。
色々な考えが巡りながら放課後まで過ごした。
そして放課後になり、優奈にお願いしようとしてみる。
「なぁ、優奈、大事なお願いがある」
「ん、どしたの?」
俺は真剣な表情を浮かべる。いやまてよ、シャワー借りるなら両親が居たら借り辛くなりそうだ。
「お前の家、今、両親いる?」
「…え、居ないけど」
よし、大丈夫だ。
「そうか、なら今から優奈の家行ってもいいか?」
「えっ、う、うん…良いけど」
優奈の顔が赤くなる。体調でも悪いのか?まぁシャワー借りるだけだ。優奈にはゆっくりしててもらおう。
そして優奈と二人で帰り道を歩く。優奈がなんだかずっと俯いている。具合悪そうだ。
そのまま優奈の家に行き部屋へ到着する。
「あのさ、優奈体調悪いの?」
「え、あ、わ、悪くないけど、なんで?」
「いや、悪いなら日を改めようかなって」
「全然悪くないっ!大丈夫…です」
優奈が言うならきっと大丈夫だろう。少なくとも嘘はついてないはず。
「じゃあ、あの、シャワー借りてもいい?」
「…うん」
「ありがとうっ、優奈は無理しないでベッドでゆっくりしてなよ」
「は、はい…」
なんかやたら優奈が緊張してるような気がする。俺が部屋に居る事なんて今に始まった事ではないのに。
そしてシャワーを借りた。やっぱりシャワーは良いな、全てを洗い流してくれるようだ。
な、なんだこのジャンプ―すっごく良い匂いするな。
綺麗さっぱりと洗った俺は風呂場を出る。
あ、バスタオル用意されてる。さすが優奈だ。
そしてそのまま部屋に戻る。優奈がベッドの端に座って、俯いてた。
「シャワーありがと、助かったよ」
「う、うん、あの、こちらこそ」
「こちらこそ?」
「な、何でもないよ」
優奈の様子が少しおかしい、本当は熱があるんじゃないのか?
「大丈夫か?優奈」
俺は優奈に近づいておでこに手をあててみる。少し熱っぽい気がする。
「あ、あの本当に大丈夫だから、その、あたしもシャワー浴びてきていいかなっ」
「お、おう、俺はゆっくりしてるよ」
なんだか優奈がやけに緊張してるので俺まで緊張が伝わり、硬直してしまう。
「じゃ、じゃあ行ってくる、あのベッドで寝て待っててもいいからっ」
「わかった、ありがとう」
あんまり寝てなかったので、喜んでベッドで寝転がる。その瞬間全身に心地の良いだるさが来る。
あー、駄目だこれ。凄く気持ちいい奴だ。このいつでも寝れるって時の目をつぶってる時が一番良いな。
そういえば静音さん、俺の事探してるのかな。あー、お金少し持っておけばよかった。
考えなしに行動するってこういう事かぁ…。お腹もすいたなぁ。
陽菜はちゃんと元気でやれてるかな?そういえば美樹ちゃんがもう学校来てないって言ってたな。
美樹ちゃんも寂しがってるだろうな。今度美樹ちゃんと遊びに行くか。
あー、優奈、シャワー貸してくれてありがとう。ベッドも貸してくれてありがとう。
優奈は頼りになるんだなぁ…。陽菜はそれが苦しかったんだよな…。
馬鹿だなぁ、陽菜。俺は陽菜が居るだけで良かったのにな。
ガチャっとドアが開く音がする。優奈が戻ってきたのかな。でもなんだか力が入らないな。
色んな考えがグルグル回りながら近づいてくる足音と共に俺は深い闇へと誘われた。
もしかしたら静音さんにはバレてるかもしれないけど。
暫くは大人しくしてたけど、この部屋に居ると陽菜との思い出がいつまで経っても消えてくれないので
俺は施設を出る事にした。
今まで貯めた貯金を封筒に入れて書置きを残す。これで完璧だ。
陽菜が頑張るって言ってるのに俺がいつまでも腐ってる訳にはいかない。
元々出る予定ではあったので少し早いが計画を実行しよう。
俺は夜寝静まった頃にそっと抜け出した。
夜の街、初めて歩くな…。ちょっと不安だ。
「あら、ボク?家出してるの?」
知らないお姉さんが話しかけてきた。
「い、いえ、してないです!」
正しくは家出じゃなくて、引っ越しだもんな…。嘘は言ってない。
「そんな大きな荷物抱えてこんな夜にフラフラしてたらそりゃ家出って思うわよ?」
「ははっ、そうですか、なんかすみません」
「ね、行くところ無いならお姉さんが面倒見てあげよっか」
なんだか舌なめずりしてる。怖いな、夜の街…。
「け、結構です、ごめんなさい!」
「あ、ちょっとまってぇ!」
俺は脇目も振らず駆け出した。駄目駄目、人気のない所に行こう。
そしていつも陽菜と来てた公園に着いた。
よし、あのタコみたいな遊具の中ならだれにも見つからないはず。
そして、中に入り込み、バッグを枕に寝転ぶ。なんだか夜の公園で寝るのも、新鮮で良いかも?
ここは今日から俺のお城だ!不法占拠も何のその…!
しかし、静かだ…。何も聞こえない。暗いし。
そして腕に何か這うような感覚がして声にならない声をあげて、腕を見る。
な、なんだ虫か…。ビックリした。
ここって幽霊とか出たりしないよな…?
考えるだけで、身震いしてしまう。一度考えると、頭が恐怖で支配されて、振り払えなくなる。
あー駄目だ。無理にでも寝よう…。そうだ、陽菜を数えながら寝るか。
陽菜が一人、陽菜が二人、陽菜が三人……
陽菜が3567…。
結局、寝れなかった…。もう朝になりそ…。時計持ってきて良かった。
あ、新聞配達…。行くしかない。お金無いし。
結局寝れないままバイトに行き、そのまま学校に向かった。
学校に早く着いたら少し寝れるかも。
「琉弥、おはよ」
「え、優奈…?」
「やっぱり早かったね」
「いやいや、どういう事?」
「琉弥の事だからあんまり家に居たがらないかなーって思ってさ、早く来てたのさ」
なんていうか、こいつ俺の事俺より理解してないか?陽菜の事を伝えた時もわざと明るく振舞ってくれたし。
落としたはずの鞄だって優奈が持ってた。直ぐに届けてくれても良いはずなのに、多分俺が誰にも会いたくないんだろうって思って、気を遣って…。
「なんか、眠そうだね?」
「そ、そんな事は無い、全然眠くないから」
「ふーん、なら良いけど」
優奈は信じてない様子だった。くっ、まぁ明らかに寝不足と疲れがきてるから仕方ないか…。
良く考えたら風呂にも入れない…。シャワー浴びたい。
どうするか…。思い切って優奈の家で借りるか!?でもそこまで頼れないよな。
あ、俺勉強教えてあげてるんだし、これくらいはお返しで貰っても良いはず。
色々な考えが巡りながら放課後まで過ごした。
そして放課後になり、優奈にお願いしようとしてみる。
「なぁ、優奈、大事なお願いがある」
「ん、どしたの?」
俺は真剣な表情を浮かべる。いやまてよ、シャワー借りるなら両親が居たら借り辛くなりそうだ。
「お前の家、今、両親いる?」
「…え、居ないけど」
よし、大丈夫だ。
「そうか、なら今から優奈の家行ってもいいか?」
「えっ、う、うん…良いけど」
優奈の顔が赤くなる。体調でも悪いのか?まぁシャワー借りるだけだ。優奈にはゆっくりしててもらおう。
そして優奈と二人で帰り道を歩く。優奈がなんだかずっと俯いている。具合悪そうだ。
そのまま優奈の家に行き部屋へ到着する。
「あのさ、優奈体調悪いの?」
「え、あ、わ、悪くないけど、なんで?」
「いや、悪いなら日を改めようかなって」
「全然悪くないっ!大丈夫…です」
優奈が言うならきっと大丈夫だろう。少なくとも嘘はついてないはず。
「じゃあ、あの、シャワー借りてもいい?」
「…うん」
「ありがとうっ、優奈は無理しないでベッドでゆっくりしてなよ」
「は、はい…」
なんかやたら優奈が緊張してるような気がする。俺が部屋に居る事なんて今に始まった事ではないのに。
そしてシャワーを借りた。やっぱりシャワーは良いな、全てを洗い流してくれるようだ。
な、なんだこのジャンプ―すっごく良い匂いするな。
綺麗さっぱりと洗った俺は風呂場を出る。
あ、バスタオル用意されてる。さすが優奈だ。
そしてそのまま部屋に戻る。優奈がベッドの端に座って、俯いてた。
「シャワーありがと、助かったよ」
「う、うん、あの、こちらこそ」
「こちらこそ?」
「な、何でもないよ」
優奈の様子が少しおかしい、本当は熱があるんじゃないのか?
「大丈夫か?優奈」
俺は優奈に近づいておでこに手をあててみる。少し熱っぽい気がする。
「あ、あの本当に大丈夫だから、その、あたしもシャワー浴びてきていいかなっ」
「お、おう、俺はゆっくりしてるよ」
なんだか優奈がやけに緊張してるので俺まで緊張が伝わり、硬直してしまう。
「じゃ、じゃあ行ってくる、あのベッドで寝て待っててもいいからっ」
「わかった、ありがとう」
あんまり寝てなかったので、喜んでベッドで寝転がる。その瞬間全身に心地の良いだるさが来る。
あー、駄目だこれ。凄く気持ちいい奴だ。このいつでも寝れるって時の目をつぶってる時が一番良いな。
そういえば静音さん、俺の事探してるのかな。あー、お金少し持っておけばよかった。
考えなしに行動するってこういう事かぁ…。お腹もすいたなぁ。
陽菜はちゃんと元気でやれてるかな?そういえば美樹ちゃんがもう学校来てないって言ってたな。
美樹ちゃんも寂しがってるだろうな。今度美樹ちゃんと遊びに行くか。
あー、優奈、シャワー貸してくれてありがとう。ベッドも貸してくれてありがとう。
優奈は頼りになるんだなぁ…。陽菜はそれが苦しかったんだよな…。
馬鹿だなぁ、陽菜。俺は陽菜が居るだけで良かったのにな。
ガチャっとドアが開く音がする。優奈が戻ってきたのかな。でもなんだか力が入らないな。
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